同僚が仕事でミスをしたとき、「あいつは、そそっかしいから、そのせいだ」などと思うことがありますよね。一方で、自分がミスをしたときには「上司の指示がわかりにくかったせいだ」と考えてしまうことはありませんか?「他人に厳しく自分に甘い」心理学的な効果について、書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 心理学』著者で文学博士の齊藤 勇さんに解説していただきました。
解説者のプロフィール
齊藤 勇(さいとう いさむ)
文学博士。立正大学名誉教授、日本ビジネス心理学会会長。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。専門は対人・社会心理学。「それいけ‼ココロジー」(日本テレビ)の監修・コメンテーターを務めるなど、心理学ブームを牽引。『図解 心理分析ができる本』(三笠書房)、『図解雑学 見た目でわかる外見心理学』(ナツメ社)、『イラストレート 心理学入門』(誠信書房)など、著書・監修書多数。
本稿は『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 心理学』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/桔川シン、堀口順一朗、栗生ゑゐこ
他人に厳しくしたくなる?「行為者-観察者バイアス」
他人の行動は「性格」や「能力」が原因で、自分の行動は「状況」が原因だと考えがち!
同僚が仕事でミスをしたとき、「あいつは、そそっかしいから、そのせいだ」などと思うことがありますよね。
その一方で、自分がミスをしたときには、「上司の指示がわかりにくかったせいだ」などと考えてしまうことはありませんか?
このように、ある種、「他人に厳しく自分に甘い」評価をしてしまうことも、心理学的な効果によるものです。
ヒトには、ある現象が起きたとき、その原因を知りたくなる「帰属」という心理作用があるので、行動の原因を知りたいと考えます。
このとき、同じ行動であっても、他人の行動は「性格」や「能力」が原因だと根拠なく考え、自分の行動は「状況」や「できごと」など、自分以外に原因があると考える傾向があるのです。
これを、心理学者ニスベットは、「行為者-観察者バイアス」と呼びました。
行為者‒観察者バイアス
同じ失敗でも、他人の失敗は内面に原因があると考え、自分の失敗は周りの環境に原因があると考えてしまう傾向のこと。
▼他人の失敗
相手の性格のせいで失敗したと考える!
▼自分の失敗
相手の行動のせいで失敗したと考える!
また、ヒトは、成功したときには自分の能力によるもので、失敗は他人や環境によるものだと考える傾向にあります。
これを「自己奉仕バイアス」といいます。
つまり誰もが、「他人には厳しく、自分には甘い」のです。
これを避けるには、第三者の視点で考え、状況を客観的に理解するよう努めることが重要です。
自己奉仕バイアス
成功は自分のおかげだと考え、失敗は他人のせいだと考える傾向。
▼自分の成功
「いい点数が取れたのは、自分ががんばったからだ」など、成功は自分の努力と能力のおかげだと考える。
▼自分の失敗
「こんな変な問題をつくる先生が悪い」など、失敗は他人のせいだと考える。
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なお、本稿は書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 心理学』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。心理学に興味をもって、「ちゃんと勉強してみよう」と思っても、専門書には専門用語が多く出てくるので、「むずかしい」と感じる人も多いのではないでしょうか? 本書は、これまで積み重ねられてきた心理学の研究を、知識ゼロでも楽しく読めるように、イラストや図解も豊富に使い、やさしく丁寧に解説しています。