おいしいコーヒーを淹れるためには、さまざまな器具の知識や技術を覚えることが必要になる。ここではそんな器具や抽出技術の基礎知識を解説。しっかりと覚えて、おいしいコーヒーを淹れられるようになろう。
[別記事:【コーヒーの基礎知識(7)】2つの抽出方法「透過式」と「浸漬式」の違い 器具を使い分けて楽しもう!→]
淹れ方一つでコーヒーの味は大きく変わる
コーヒーを淹れるといっても、ドリップ、フレンチプレス、エアロプレスなど、たくさんの抽出方法がある。その中から、どのような器具を使うかによって、コーヒーの味は大きく変わってくる。
しかし、コーヒーの味を左右するのは、器具だけではない。同じ器具を使っても、淹れ方一つで味は変わってくるのだ。
例えばペーパードリップ。同じドリッパーを使っても、コーヒー粉の量、湯の温度、豆の挽き方によっても変わってくれば、湯を1回で注ぐのか、それとも数回に分けて注ぐのかでも違ってくる。
そこで器具を製造する各メーカーは、その器具を使ったコーヒーの淹れ方を製品に添付するのだが、それはあくまでも目安。人それぞれ味の好みがあるので、その淹れ方を参考に、自分に合った淹れ方をすればいい。
本誌で紹介する淹れ方は、コーヒー専門教育機関「UCCコーヒーアカデミー」がおすすめするコーヒーの淹れ方だ。実際にUCCコーヒーアカデミーで教鞭を振るう現役の講師に、どのように淹れればおいしいコーヒーが味わえるのか、器具別に解説してもらった。
「コーヒーが趣味」という方が増えております。豆選び、焙煎、抽出など、味が完成していくまでにはたくさんのポイントがあり、奥深さを感じていただけると思います。コーヒーを楽しむことで、生活により豊かさがもたらされること間違いありません。
川口雅也 講師
・UCCコーヒーアドバイザー
・UCCコーヒー抽出士
・UCCコーヒー鑑定士
・(ブラジル)コーヒー鑑定士
・(アメリカ)CQI認定Qアラビカグレーダー
コーヒーの抽出技術は、繰り返し行うことで確実に上達します。力まず ”コツコツ”と”楽しみ”ながら「珈琲道」を極めていきましょう。この本を通じて、みなさまのコーヒーライフがより充実した豊かなものになる一助としていただけたら幸いです。
小山勝宝 講師
・UCCコーヒーアドバイザー
・UCCコーヒー鑑定士
・(ブラジル)コーヒー鑑定士
・(アメリカ)CQI認定Qアラビカグレーダー
・(アメリカ)CQI認定Qロブスタグレーダー
コーヒーの楽しみ方は人それぞれです。この本をご覧いただいたみなさまのコーヒーライフが、より豊かになることの一助になることを心より願っております!
今田 束 講師
・UCCコーヒーアドバイザー
・UCCコーヒー鑑定士
・(ブラジル)コーヒー鑑定士
・UCCコーヒー抽出士
もちろんここで紹介する淹れ方も、目安として捉えてほしい。まずは紹介するとおりにコーヒーを淹れてみて、慣れてきたらコーヒー粉の量や挽き方、湯の注ぎ方などを工夫してみる。そうすることを繰り返して好みの味を探っていけば、コーヒーの楽しさとその奥深さがわかってくるはずだ。
そのためにも抽出器具だけでなく、ミルやスケール、温度計などの道具もそろえておきたい。自分の感覚だけでなく、さまざまなことをきちんと数値化することで、正確にコーヒーを淹れられるようになる。日ごろから正確にコーヒーを淹れておけば、何をどれくらい変えれば味がどのように変わるのかもわかりやすい。
Coffee Academy
「UCCコーヒーアカデミー」は、日本初のコーヒー専門教育機関。コーヒーのすべてを体系的に、段階的に楽しく学ぶことができ、国内最大級の規模を誇る。
コーヒー初心者には90分間の実習「体験コーヒーセミナー」、コーヒーを基本から学びたい人には「ベーシックコース」、コーヒーを深く学び尽くしたい人には「プロフェッショナルコース」、より専門的な知識と技術を学びたい人には「スペシャリストコース」と、さまざまな講座を開設しており、数多くのコーヒースペシャリストを輩出している。
受講は、神戸校と東京校で実習と座学を受けられるほか、オンラインによるセミナーも開講している。
テイスティングや焙煎もできる東京校。メインセミナールームには、大型スクリーンや4台のTVモニターがあり、講師の細かい作業もしっかり見られる。
抽出に関わる5大要素を覚えておこう
「豆の量」は、量が増えれば抽出量も増えるので、多ければ濃く、少なければ薄くなる。ホットコーヒー1杯分の目安は、湯量160ccの場合、粉10~12gが適量だ。
「焙煎度合い」は、浅いほど酸味が強く、深いほど苦みが増す。好みで選べばいいが、抽出器具による相性もあるので、考慮して選びたい。
「豆の粒度」は、粗ければさっぱりした味わい、細かければ濃厚な味わいとなる。ただし、抽出器具によって粒度が決まることも多いので、器具に適した粒度を選ぼう。
「湯の温度」はペーパードリップの場合、92~96℃が適温。この間で調整して好みの味を出すといいだろう。ちなみに、湯温が低いと酸味や甘みが目立った軽い味わいに、高いと苦みや渋みが抽出された重ための味わいになる。
そして「抽出の時間」も味を左右する。コーヒーは湯に触れている時間が長いほど苦みや渋みが出て濃厚に、短いと酸味が立った味になると知っておこう。
抽出の5大ポイント
おいしくないと思ったらNGをチェック
コーヒーがどうも上手に淹れられない、そんな人もいるのではないだろうか? そうなってしまう原因は、やらなければいけない手順が抜けている、もしくは状態のよくないコーヒー豆を使用している可能性がある。
まず、つい省いてしまいがちなのが、器具の温め。湯煎して器具を温めておくと、成分の抽出温度を一定に保つことができるので、おいしいコーヒーを淹れることができる。しかし湯煎を怠ると、せっかく適温にした湯が冷たい器具に冷やされてしまい、思うようにおいしい成分を抽出することができなくなってしまうのだ。
状態のよくないコーヒー豆というのは、焙煎後に長い時間が経ってしまったもの。コーヒー豆は焙煎直後から酸化が始まり、時間とともに劣化していく。粉の状態では10日以内、豆の状態なら30日以内に飲みきるようにしたい。
このほかにも、気を付けておきたいNG行為がいくつかあるので、しっかりと覚えておこう。
抽出に必要な道具一覧
器具をそろえてコーヒーライフを始めよう!
家庭でコーヒーを楽しむのに、最も手軽に淹れられるのがハンドドリップ。専門店でなくても器具が簡単に手に入るので、これから始める人には最適だ。
では、ハンドドリップをはじめるためには、どのような器具を準備すればいいのだろう?
まず必要になるのが、コーヒーを抽出するための「ドリッパー」、コーヒーの量を計るための「メジャースプーン」、コーヒー粉を漉すための「フィルター」、コーヒー粉に湯を注ぐための「ポット」、そして抽出したコーヒー液を溜める「サーバー」だ。挽いてあるコーヒー粉を買ってきて淹れるのであれば、これだけあれば準備完了。
ドリッパー
ハンドドリップの場合に必要なものはドリッパー。台形、円すい、一つ穴、三つ穴といった形状や、プラスチック、陶器、金属といった素材の違いもあり、それぞれに特徴がある。
メジャースプーン
豆や粉の分量を計るためのスプーン。スケールを使わない場合は、これがあると便利だ。すり切り1杯が8g、10g、12gと種類がいろいろあるので、きちんと確かめてから使おう。
フィルター
ハンドドリップで最もポピュラーなのがペーパーフィルター。台形や円すいなど、ドリッパーに合わせて形状を選ぶ必要がある。このほかにもネルや金属のフィルターもある。
ポット
ハンドドリップをする際に、湯を注ぐポットも必需品。普通のヤカンとは違い、注ぎ口が細くなっているので、少量の湯を回し入れるという作業がしやすい。
サーバー
抽出したコーヒーを溜めるための容器がサーバー。ガラス製のものがほとんどで、目盛り付きのものや二重構造のものなどがある。ステンレス製の魔法ビン構造のものは保温性が高い。
しかし、コーヒーは挽き立てを淹れるのがいちばんおいしい。さらに、コーヒーの香りは、挽いているときに最も強く出るので、ぜひともコーヒー豆は自宅で挽くことをおすすめする。
そのために必要となのが「ミル」あるいは「グラインダー」と呼ばれる器具だ。ミルには電動と手挽きがあり、1回に少量しか挽かないのであれば手挽きでOK。挽き立ての香りを楽しみながら、至福の時間を過ごせる。しかし、1回に3杯分以上淹れるのであれば、手挽きでは時間がかかって大変なので、電動がおすすめだ。
ミル/グラインダー
コーヒーをおいしく飲むためには、挽き立ての豆を使うこと。そのためにはミル(グラインダー)を準備しておこう。挽いている最中がいちばんコーヒーが香るので、その香りも楽しめる。
さらに、もっとコーヒーの抽出を楽しむなら「スケール」も準備したい。「コーヒースケール」と呼ばれる、重さと時間を計れる専用のものがあるが、一般的なキッチンスケールでもOK。コーヒー粉の量と抽出のための湯量を正確に計れれば、毎回同じように淹れることができる。
スケール
リッパーをセットしたサーバーを載せてコーヒーの抽出量などをモニターする。使う粉の量、抽出のために注ぐ湯量を正確に計ることができるので、毎回同じように淹れられる。
同様に湯温を正確に計るための「温度計」もあると、より正確に抽出できる。温度計を使わないで入れる場合は、沸騰した湯をポットに移せば、その時点で湯温は約95℃になる。そこから2~3分放置しておくと、92℃前後まで下がるので、好みのタイミングで注ぐようにしよう。
温度計
コーヒーを抽出するための湯温を計るために使用する。勘に頼らず正確に温度を知ることができるので、毎回同じようにコーヒーを抽出することができる。
各種ミルの使い方の手順や、さまざまな器具を使った抽出方法を学び、気になる抽出方法が見つかったら、さっそくその器具を準備してみよう。その瞬間から楽しいコーヒーライフが始まるはずだ。
■イラスト 田村 梓(ten-bin)
※この記事は『自宅で楽しむおいしい珈琲の淹れ方』(マキノ出版)に掲載されています。