【終活「相続」編(2)】遺言の書き方とルール 遺族がもめない遺言書の文例

暮らし・生活・ペット

近年、遺言書の作成数は増加傾向にありますが、一方で条件を満たさず無効になってしまう遺言書も増えています。自筆証書遺言を作成する場合、誰に何を相続または遺贈するのかを明確に書くことをはじめ、無効にならないようにするポイントを押さえておきましょう。

[別記事:【終活の「終」の準備とは】家族が困らないように「意思表示」をしておくことが大事→]

本稿は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

遺言の効力と「遺留分」を確認する

遺言の内容は原則として、法律で定められた相続の規定(法定相続分)よりも優先されますが、一方で法定相続人の「遺留分」という制限が設けられています。

遺留分とは、特定の相続人が最低限取得することのできる遺産の取り分のことをいい、亡くなった人が遺言を遺していたような場合でも、この遺留分を侵すことはできません

この遺留分を侵害する遺言を遺した場合、侵害された相続人が遺留分の取り戻しを請求する(「遺留分侵害額請求」)トラブルを招く可能性もあります。

遺留分の目安は法定相続分の1/2か1/3

相続人 遺産総額に対する遺留分の割合
妻のみ 妻:1/2
妻・子1人 妻:1/4、子:1/4
妻・子2人 妻:1/4、子:各1/8
子2人 子:各1/4
親2人 親:各1/6
妻・親2人 妻:1/3、親:各1/12
親2人・子2人 子:各1/4、親:0

遺言の作成と3種類の保管方法をチェック

遺言には通常の手続きで作成する「普通方式遺言」と、生命の危機に瀕したときに作成する「特別方式遺言」の2つの区分があります。

一般的には普通方式遺言の「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」が選ばれることが多いため、この2種類を紹介していきます。

自筆証書遺言」は自分で書く遺言書で、紙とペンさえあればいつでも書け、保管も自分でしておけます。しかし、所定のルールに従って書かなければ遺言書が無効になってしまうこともあります。

自分で遺言書を作成するのが不安な場合は、公証役場(※)で書く「公正証書遺言」がおすすめです。内容の不備などの心配がなく、原本も公証役場で保管してくれますが、手数料や証人の決定など、お金と手間がかかります。

※ 公証人(原則的に司法試験に合格した有資格者、もしくはそれに準じる学識経験者が任命される国家公務員)が遺言、各種契約の 認証、確定日付の付与などを行う、法務省管轄の役所のことです。国内で約300カ所に設置されています。

また、自筆証書遺言を自分で保管するのが不安だという人には、法務局で預かってもらえる「自筆遺言書保管制度」があります。預ける際に遺言の形式も確認してもらえます。

無効にならない自筆証書遺言を書く

近年の終活ブームなどにより、遺言書の作成数は増加傾向にありますが、一方で、条件を満たさず無効になってしまう遺言書も増えています。ここでは、自筆証書遺言が無効となってしまう例を紹介しますので、遺言書作成の際には注意してください。

自筆証書遺言は、その言葉どおり、本文が遺言者自身の手書きでなければ無効になります。そのうえで、遺言書の作成日署名押印も必要になります。

自筆証書遺言を作成する場合、誰に何を相続させるのか、または遺贈するのかを明確に書きましょう。「○○町の土地」というような不明瞭な内容では無効になってしまうため、地番や面積、地目などの情報も記入しましょう。

また、遺言書内で加筆や訂正、削除があっても無効にはなりませんが、訂正方法には細かなルールがあります。必ず確認するようにしましょう。

被相続人に配偶者がいる場合、共同で遺言書を残そうと考えている人もいるかもしれませんが、これは「共同遺言」といい、民法によって禁止されているため、無効になってしまいます。

さらに、十分な判断力がない認知症の人が書いた遺言書や、15歳未満の人が書いた遺言書も無効になるので注意しましょう。

自筆証書遺言書が無効にならないようにするポイント

本文はすべて自分で手書きすること(財産目録のみパソコンなどでの作成が可能)
遺言者の氏名をフルネームで書く
遺言書を書いた日付の年月日を書く(「7月吉日」などは無効)
遺言者の氏名の横に印鑑を押す(押印がないと無効。認印でもいいが、実印がベスト)
誰に何を相続するか、あるいは遺贈するのかを明確に書く
訂正や加筆、削除の場合はルールにのっとる

遺言がないと最悪の場合、家庭裁判所の審判をあおぐことに…

遺言がない場合、民法で規定される相続分の割合で遺産を分けるか、相続人全員で遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」を行うことになります。

遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ無効となるため、もし話し合いがまとまらなかった場合は、家庭裁判所での調停(遺産分割調停)や審判(遺産分割審判)に移行します。

まず「遺産分割調停」が行われますが、これは家庭裁判所での手続きとはいえ、あくまで話し合いでの解決を目的としています。

この調停でも解決しない場合、「遺産分割審判」となり、裁判所が遺産分割の方法を決定します。これは強制的な決定であり、納得がいかなくても従わなければならないものです。

相続する財産は詳細を記入する

前項で紹介したように、自筆証書遺言は紙とペンさえあればいつでも書くことができますが、遺言書の書き方には細かな決まりごとがいくつもあります。

例えば、不動産を相続する場合、住所ではなく登記上の所在地番家屋番号を記載したり、銀行預金を相続させる場合は銀行名、取り扱い支店、預金の種類、口座番号、名義を記載したりするなど、相続するものによって書き方が異なります。

ここでは、いくつか代表的な財産を相続する際の文例を紹介しています。これから遺言を書こうと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

 自筆証書遺言の文例1(自分で保管する場合)

遺言であるとわかるように書く
続柄まで詳しく書く
不動産は登記簿謄本どおりに書く
日付、住所、氏名、押印を忘れずに

自筆証書遺言の文例2(建物を相続させる場合)

(以下すべて当該箇所のみ紹介)

1.建物
所在 東京都文京区本郷●丁目
家屋番号 ●番●●号
種類 居宅
構造 鉄骨造スレートぶき地下1階付2階建
床面積 1階●●平方メートル、2階●●平方メートル、地下1階●●平方メートル

自筆証書遺言の文例3(マンション・敷地権付区分建物を相続させる場合)

1.敷地権付区分建物
(一棟の建物の表示)
所在 東京都文京区本郷●丁目●番
建物の名称 ●● マンション
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 東京都文京区本郷●丁目●番●
建物の番号 ●●
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 1階部分●●平方メートル
(敷地権の目的たる土地の表示)
符号 1
所在地番 東京都豊島区駒込●丁目●番●
地目 宅地
地積 ●●平方メートル
(敷地権の表示)
符号 1
種類 所有権
割合 ●●分の●●

自筆証書遺言の文例4(株式を相続させる場合)

1.株式
株式会社●●証券●●支店
口座番号●●
(1)株式会社●● 普通株式 ●●株
(2)株式会社●● 普通株式 ●●株

 自筆証書遺言の文例5(自動車を相続させる場合)

1.自動車
登録番号 練馬●●あ●●●●
種別 ●●
用途 ●●
車名 ●●●●
型式 ●●―●●●●
車台番号 ●●●●

自筆証書遺言の文例6(絵画を相続させる場合)

1.絵画
作品名 ●●●●●●●●
製作者 ●●●●
種類 西洋画
素材 ●●●●
サイズ 縦●●cm、横●●cm
制作年月日 平成●年●月●日

●本記事で紹介している情報は、2022年7月15日現在のものです。これ以降の法・制度改正等には対応しておりませんので、あらかじめご了承下さい。
●本記事で紹介している情報をもとに行動したうえで発生したトラブル・損害につきましては、一切の補償をいたしかねます。自己責任の範囲内で検討・実践してください。

■監修/小泉 寿洋(終活カウンセラー1級・ファイナンシャルプランナー(AFP))
■イラスト/宮坂希
※この記事は『老後とお金の不安が軽くなる 終活の便利帖』(マキノ出版)に掲載されています。

スポンサーリンク
暮らし・生活・ペット
シェアする
特選街web編集部

1979年に創刊された老舗商品情報誌「特選街」(マキノ出版)を起源とし、のちにウェブマガジン「特選街web」として生活に役立つ商品情報を発信。2023年6月よりブティック社が運営を引き継ぎ、同年7月に新編集部でリスタート。

特選街web編集部をフォローする
特選街web

PR

【ドライブ中に純正ナビでテレビ視聴!】データシステム・テレビキットシリーズから最新車種対応のカー用品『TTV443』が登場!
長時間のドライブで同乗者に快適な時間を過ごしてもらうには、車内でテレビや動画を視聴できるエンタメ機能が欠かせない。しかし、純正のカーナビは、走行中にテレビの視聴やナビ操作ができないように機能制限がかけられているのがデフォルト……。そんな純正...

PRガジェット

ドライブ中も車内でYouTubeや映画など楽しみたいあなたにおすすめ!データシステム『HDMI変換ケーブル』『テレビキット』テレビキャンセラー【PR】
車での長距離移動が増える年末年始。ドライブの楽しさを倍増するには、車内でテレビや動画を視聴できるエンタメ機能がマストだ。そこでお勧めなのが、データシステム社が販売している2つのアイテム! カーナビ画面でiPhone・iPadのアプリや動画を...

PRレビュー