オーディオ機器の音質を評価するときには、さまざまな用語が使われている。例えば「解像度」。音の細部をどこまでキメ細かく描写できるかの能力だ。「現代的で高解像度なアンプ」というと、音楽の表現力や臨場感が豊かであることを表す。レビュー記事をスラスラと読み込めるように、よく目にする「音質評価用語」の意味や解釈をやさしく解説しよう。
本稿は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
レビュー記事でよく見かける
オーディオ「音質評価用語」辞典
【S/N(SN比)】
「えすえぬひ」と読む。これは専門用語で、「信号対雑音比」のこと。信号(Signal)の中にどれだけノイズ(Noise)が混ざっているかの割合だ。単位はデシベル(dB)で表し、この数値が大きいほど信号が強く高音質といえる。
【エッジ】
音の輪郭だ。実際にはないものだが、「エッジが立つ」といえば、クッキリと楽器音などが聴こえること。ただし、強調しすぎると耳障りになってしまう。
【エネルギー感】
音の力強さやエネルギーを感じさせる度合い。尺度はないが、筋肉質でパワーのある音はエネルギー感豊かである。
【音離れ】
音がスピーカーにまとわりつかず、パッと離れて朗々と鳴ること。鳴りっぷりのよさにつながる。
【音像(定位)】
音は見えないが、あたかも歌手や楽器がその場所にあるかのように位置が定まることを「音像定位がいい」という。
【音場】
音像に対して、より広い空間の音のイメージをいう。広がりや遠近感、ステージ感などにつながる。
【解像度】
音の細部を、どこまでキメ細かく描写できるかの能力だ。「現代的で高解像度なアンプ」というと、音楽の表現力や臨場感が豊かであることを表す。
【かまぼこ型】
「ドンシャリ」の反対で、かまぼこ断面のように低音、高音とも、だら下がりな音。中音域が強調された、典型的なナローレンジ(帯域が狭い)だ。
【空気感】
広くは人間や場所などが持つ雰囲気であるが、オーディオ用語の場合、音場と似たニュアンスで使われる。広い空間の音のイメージを指す。
【色彩感】
音にも色がある。「鮮やかで音色豊か、ゴージャスなサウンド」なら、色彩感に富み、華やかな表情といえる。
【浸透力】
音や音楽が心にしみ込む度合い。ただ聴こえるだけではなく、感動領域に達するサウンドに対して与えられる用語だ。
【セパレーション】
ステレオ再生において、左右の音が混ざらずに分離して聴こえるかどうか。音の漏れを「クロストーク」と呼び、これがセパレーションを悪くする要因。
【鮮度】
録音用語などで使われ、原音そのままの生き生きとしたフレッシュな音が出ているかどうかだ。
【タイト】
硬い音というより、引き締まった音だ。だぶついた「ルーズ」な音の反対である。
【ダイナミックレンジ】
音の強弱の対比のことで、「Dレンジ」ともいう。Dレンジが広いか狭いかで、音楽の抑揚表現が大きく異なる。狭ければメリハリのない音となる。
【立ち上がり/立ち下がり】
信号が入った瞬間にすぐ音が出るかどうかが「立ち上がり」で、スピード感ともいう。音が消えるときの反応が「立ち下がり」だ。音のキレ味に関係する。
【粒立ち】
個々の音が埋もれたり、曖昧になったりせず、粒が立ったように明快に聴こえること。
【透明感】
音に濁りや付帯音(余計なものが付くこと)がなく、無色透明の水のように純度の高い音に与えられる。ピュアなサウンドで見通しがいい。
【ドンシャリ】
「低音がドンと鳴って、高音がシャリッ」というように、低音と高音ばかりがやたら強調され、中音域が充実していない音をいう。
【倍音】
声や楽器が発する高調波成分のことで、「オーバートーン」や「ハーモニックス」ともいう。倍音豊かな音は響きがよく、艶やかだ。
【フラット】
帯域的な凹凸や味付けがなく、まっすぐ、すなおに伸びたナチュラルなサウンドをいう。
【量感】
その音が量的に多いか少ないかで、「ボリューム感」ともいう。「量感豊か」なら、たっぷりとしたリッチな音で、やせた音は「量感に乏しい」。
■解説/林正儀(AV評論家)
※情報は記事作成時のものです。
※この記事は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)に掲載されています。