今、世代を超えて、アナログレコードやカセットテープが人気となっている。だが、いざ買おうとしても、どのように選んだらいいのか、いま一つわからないという人も多いだろう。そんなアナタに、レコード&カセット選びのポイントをお届けしよう。
中古レコードとの出会いはさながら宝探しのよう
店舗に出向いて中古レコードを探す際、特に初心者は、どこから手をつければいいのかわからないこともあるだろう。
「例えば、ジャズの場合は、好きなプレーヤーや楽器がとっかかりになります」
そう語るのは、首都圏にを中心に展開する国内最大のレコード店、ディスクユニオンのジャズ専門館「diskunion Jazz TOKYO」の店長・生島昇氏である。
「レコードの陳列棚は、プレーヤー別や楽器別に仕切板で分かれているので、まずは特定のコーナーに絞って探すのがおすすめです。そうするうちに、例えば、Aというサックス奏者の作品に参加していたBというピアニストが格好よかったから、今度はBのソロ作も聴いてみようといったふうに、徐々に興味の幅も広がっていくはずです」
また、正体不明のレコードを直感で買うのもありだという。
「いわゆる“ジャケ買い”のような買い方です。その場合、あえて試聴はしない。試聴という行為は、自分の好みでレコードをふるいにかけることでもあるからです。要は、直感買いでまったく知らない音楽に出会うことで、好みの外に出られるかもしれない。中古盤は安いものなら数百円からありますので、お財布と相談しつつ、ぜひお試しください」
中古ならではの判断基準として、盤質や特記事項にも注目したい。
「盤質はAからDまでランクがあり、Aはほぼ新品同様の盤、Bは目に見える傷はあるものの、ノイズが出るとは限らない盤、Cはノイズが確認できる盤です。Dは針飛びの可能性がある盤で、店頭に置くことはまずありません。ただ、すごくレアな盤は『傷だらけでも欲しい』という方もいらっしゃるので、例外的に“訳アリ盤”で出す場合もあります」
特記事項は、簡単にいえばレコードの血統書のようなもの。
「例えば’50年代にプレスされたレコードは、どうしても高額になるのですが、特記事項はその盤がオリジナルであることを示す情報、あるいは盤の値段を左右する要素が書かれています。正直かなりマニアックな領域なので、気になる方はスタッフにお聞きください」
現物品を買うのだから検盤・試聴は気軽にお願いしよう
現物を手に取れる実店舗では、その場で検盤(盤面をチェックすること)や試聴も可能だ。実は、ネットオークションなどで高額盤を購入したものの、針を落としてみたらノイズがひどかった、といった例も多いのである。
では、検盤する際のポイントは?
「検盤するときに真っ先に見るのは、実は盤面ではなくセンターホール(ラベル中央に空いた穴)。レコードを丁寧に扱う人は、ホールとターンテーブルのピンの位置をきちんと合わせて乗せます。でも、いい加減な人はピンの位置を確認せずに乗せるので、ホールの周辺に通称“ヒゲ”と呼ばれる擦り跡が残ります。このヒゲのあるなしで、その盤がどう扱われていたのか推察できます」
続いて、盤面のチェックだ。
「盤面は、店内の照明を盤に反射させるように角度を変えながら見ていくと、傷の有無がわかります。ただ、傷が見えても、その傷がレコードの音溝よりも浅ければノイズはほぼ出ません。もし判断に困る深さの傷があった場合はスタッフに『この傷、音に出ますか?』と遠慮なくお聞きください。もしくは、試聴してご自分の耳で確かめることもできます」
レコードショップ活用の3大ポイント
❶中古盤との出会いこそがレコードの楽しみ
お気に入りの1枚を見つけたり、偶然の出会いに興奮したり、一期一会的な巡り合いを楽しめるのが中古レコードの魅力。
❷録音の年代や盤そのものの価値を見るべし
ジャズの盛り上がりと録音技術のピークが合致した’50年代のモノラル録音は特に人気。ゆえに当時のオリジナル盤も高額に。
❸スタッフとコミュニケーションを取るべし
スタッフはレコードのプロ。気になることは遠慮なく聞いていいし、自分の好みを伝えれば、それに合った盤も教えてくれる。
解説/須藤 輝(フリーライター)
取材協力/diskunion Jazz TOKYO