一眼レフは、可動式のミラーや光学ファインダーのためのスペースが必要で、大きく重くなりがちだった。それに対しミラーや光学ファインダーを省略することで、小型軽量化を実現している。またハイスペックを求めるだけなら、今やミラーレス一眼を選ぶ時代になっている。現在、ミラーレス一眼を発売している国内メーカーは、以下の7社。ミラーレス一眼のみを扱う専業メーカー4社と、一眼レフタイプも扱うメーカー3社とに大きく分かれる。そしてミラーレス一眼のセンサーサイズには違いがあることを知っておこう。
一眼レフに比べて進化が著しいミラーレス一眼
●そもそもミラーレス一眼とは?
フィルム時代から長らく主流派を占めていた一眼レフは、可動式のミラーや光学ファインダーのためのスペースが必要で、そのぶん、どうしても大きく重くなりがちだった。それに対して、登場からちょうど10年を迎えたミラーレス一眼は、かさばるミラーや光学ファインダーを省略することで、大幅な小型軽量化を実現しているのが大きな特徴だ。
初期のミラーレス一眼は、一眼レフとは比べ物にならないほどAFが遅く、画面表示のタイムラグが大きいこともあって、動く被写体を撮るのはほぼ不可能だった。このころの印象が強かったからか、いまだに動きものは一眼レフでないと撮れないと思い込んでいる人も少なくない。
が、実際にはこの10年の間にミラーレス一眼は大幅な進化を遂げており、現在では、AF追従で20コマ/秒もの高速連写を可能にした機種も登場している。プロ仕様のハイエンド一眼レフが12~14コマ/秒であることを考えると、ミラーレス一眼がいかに高性能化したかがよくわかる。今や純粋にハイスペックを求めるなら、ミラーレス一眼を選ぶべき時代になっているのである。
ただし、こうした高性能化の波がミラーレス一眼全体に行きわたっていないこともあって、上位と下位のスペック差は一眼レフよりも大きい状態だ。そのため、どういう要素を必要とするかによって、機種選びの方向性も大きく変わってくる。
AF例えば、携帯性のよさや自分撮り関連の機能を重視するならマイクロフォーサーズやAPS-Cサイズのコンパクトタイプが手ごろな選択肢となる。半面、AFなどの性能はやや低めになってしまう。
スポーツや動物・野鳥などが主な被写体という人にとっては、AFや連写のパフォーマンスが重要となる。選ぶべきクラスは高級タイプになるが、その中でも動きに強いものを見極めないといけない。
一方、自然風景などのジャンルで求められる緻密な描写力、階調の再現性などの部分では、フルサイズや中判といった大型のセンサーを搭載したものが有利となる。ただし、カメラ本体だけでなく交換レンズも大きく重く、価格もぐっと高くなる。
単純にカメラ本体の価格だけで判断することは難しいこともあるので、以降ではミラーレス一眼の現状についておさらいしてみたい。
どんなメーカーがある?
現在、ミラーレス一眼を発売している国内メーカーは、以下の7社。ミラーレス一眼のみを扱う専業メーカー4社と、一眼レフタイプも扱うメーカー3社とに大きく分かれる。
●キヤノン
眼レフが主力で、ミラーレス一眼はエントリー~中級がメインだったが、この秋、フルサイズのEOS Rを発売。巻き返しに意欲を見せている。
●ニコン
コンパクトなNikon 1シリーズと入れ替わる形で、この秋、フルサイズのZ7とZ6が登場。今後は、ミラーレス一眼にも力を入れていくと表明している。
●ソニー
主力は、フルサイズのミラーレス一眼。AFと連写のパフォーマンスの高さは見どころだ。機種数も多いし、交換レンズも豊富で多彩。
●オリンパス
主力は、一眼レフスタイルのOM-Dシリーズ。機動性と高画質の両立を図っている。強力な手ブレ補正や防塵・防滴性も魅力だ。
●シグマ
APS-Cサイズのsd QuattroとAPS-Hサイズのsd Quattro Hがある。先ごろフルサイズミラーレス一眼の開発を表明した。
●パナソニック
ご存じ、ミラーレス一眼の元祖メーカー。独自の空間認識AF、充実した動画機能が強み。来年にはフルサイズミラーレス一眼を発売予定。
●富士フイルム
フィルムっぽい発色とクラシカルなテイストで人気が高いAPS-CサイズのXシリーズのほか、中判のGFXシリーズも選べる。
明らかに一眼レフ偏重体制だったキヤノンとニコン
現在、国内のカメラメーカーでミラーレス一眼を発売しているのは7社。かつてはいずれも一眼レフを発売していたが、この10年の間にミラーレスへとシフトが進んでいる。パナソニックが、世界初のミラーレス一眼となるLUMIX G10を発売したのが2008年。翌年にはオリンパスのPENE-P1も登場。この2社はミラーレス一眼へのスタートが早かっただけに、一眼レフに見切りをつけるのも早かった。
交換レンズメーカーとして知られるシグマは、一眼レフと同じSAマウントを採用したsdQuattroを2016年から投入。一眼レフからミラーレスにスイッチした。
2000年代にニコン製のカメラをベースにした一眼レフを発売していた富士フイルムは、2012年発売のX-pro1Xを皮切りに独自規格のXシリーズをラインアップ。ニコン頼みだった交換レンズシステムもすべて自社製とした。
ここまでの4社は、現在、ミラーレス一眼専業となっている。残る3社のうち、ソニーは一眼レフと同じAマウントを採用するSLT(一眼トランスルーセントミラー式カメラ。厳密には一眼レフではない)と、純粋なミラーレス一眼として開発されたEマウントの二つのラインを持つ。Eマウントは2010年に発売されたNEXシリーズが始まりだが、2013年にフルサイズセンサーを搭載したα7が登場。以来、シェアを大きく伸ばしている。
明らかな一眼レフ偏重体制を敷いていたキヤノンとニコンは、ミラーレス化の動きが最も鈍かった。それがようやくこの秋に、EOS R、Z7とZ6を相次いで発売。先行するソニーを追撃する姿勢を見せた。
また、パナソニックとシグマがライカLマウントを採用したフルサイズミラーレス一眼の開発を表明。これまではソニーだけだったフルサイズミラーレス一眼の市場で、今後は5社がしのぎを削ることとなる。
センサーサイズって何?
ミラーレス一眼の設計や画質に大きくかかわってくるのが、採用するイメージセンサーの種類やサイズだ。ここでは、それぞれにどんな特徴や違いがあるのかを解説していこう。
ミラーレス一眼に採用されているセンサーは5サイズ
ミラーレス一眼に採用される撮像センサーには、小さい順にマイクロフォーサーズ(4/3型)、APS-Cサイズ、APS-Hサイズ、フルサイズ、中判の5種類がある。
マイクロフォーサーズは、オリンパスとパナソニックが採用。交換レンズも含めて小型軽量化がしやすいため、機動性の高さと画質のよさを両立させやすいのが強みだ。センサーの発熱量も小さいため、長時間の動画撮影にも有利となる。半面、ボケが小さい、高感度にやや弱いといった面もある。また、今後、8K動画を実現できるだけの高精細化は難しいともいわれている。
APS-Cサイズは、一眼レフのデジタル化が始まったころに標準的だったもので、現在はキヤノン、シグマ、ソニー、富士フイルムの4社が採用している。小型軽量化も高感度化もある程度やりやすいし、専用設計のレンズが価格を抑えやすいこともあって、エントリークラスからハイアマチュア向けモデルまで、さまざまなモデルが選べる。
一まわり大きなAPS-Hサイズは、現状ではシグマのsd Quattro Hだけ。画質面ではAPS-Cサイズよりも有利だが、専用レンズがないなどの弱みもある。
フルサイズはフィルムの35ミリ判と同じ画面サイズを持ち、古くからのカメラファンに最もなじみやすい。マイクロフォーサーズやAPS-Cサイズに比べて高感度に強く、大きなボケが楽しめることなども魅力となっている。ただし、カメラ本体だけでなく、交換レンズも大きく重く、高価になってしまうのは泣きどころだ。キヤノン、ソニー、ニコンの3社に加え、今後はパナソニックとシグマが参入を予定している。
最も大きな中判は、富士フイルムのGFXシリーズのみが採用する。高精細な描写や階調表現、広いダイナミックレンジといった部分では絶大な強みを発揮するが、非常に高価になっている。
解説/北村智史(カメラライター)