【糖尿病の食事と運動】医師が実践した克服メニューを大公開

美容・ヘルスケア

合併症の危険レベルに入るほど、血糖値が高かった私は、自分の糖尿病を生活習慣を変えることで克服できるのか試してみたのです。そして、薬に頼らず、食事と運動で重度の糖尿病を克服しました。ここでは、糖尿病患者さんの食事と運動のポイントについて、少しご紹介したいと思います。【解説】渡邊昌(国立健康・栄養研究所元理事長・アジア太平洋臨床栄養学会会長・医学博士)

解説者のプロフィール

渡邊昌(わたなべ・しょう)
国立健康・栄養研究所元理事長。アジア太平洋臨床栄養学会会長。医学博士。
1941年、平壌生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。アメリカ国立癌研究所、国立がんセンター病理部を経て、同疫学部長。その後、東京農業大学教授、国立健康・栄養研究所理事長を歴任し、公益社団法人生命科学振興会理事長として専門誌『ライフサイエンス』『医と食』を主宰。現在、アジア太平洋臨床栄養学会会長を務める。著書に『最新版 糖尿病は薬なしで治せる』(角川新書)など多数。

食事と運動で重度の糖尿病を克服

私は、薬に頼らず、食事と運動で重度の糖尿病を克服しました。その成功体験は、2004年に『糖尿病は薬なしで治せる』(角川新書)として上梓され、驚くほどの反響がありました。本を読まれた糖尿病の患者さんたちから、私と同じように「食事と運動」を続けることで、合併症を予防し、今も元気に過ごしているという、喜びのお便りをよくいただきます。その度に、医師として、「こういう医療もあるのだ」と、うれしくなります。

とはいえ、予備軍も含めて糖尿病の患者数は、今もなお増加する一方。また、食事や運動による治療のあり方にも、新しい考え方や研究報告など、少しずつ変化が出てきています。ここでは、糖尿病患者さんの食事と運動のポイントについて、少しご紹介したいと思います。

糖尿病を改善する食事のポイント

水溶性食物繊維の摂取で善玉菌を増やす

まず取り上げたいのは、腸内細菌と糖尿病との関係です。
腸内細菌は、善玉菌と悪玉菌に大別されていましたが、今では一概に分けられなくなってきました。それでも、善玉菌を増やして腸内環境を整えることは、健康のために欠かせません。糖尿病の予防・改善においては、さらに大切になります。

最近の研究では、糖尿病患者の腸内には善玉菌が少なく、悪玉菌が多いことが明らかになっています。なかでも注目されるのは、ブドウ糖と脂肪の代謝に重要な酪酸(短鎖脂肪酸)を作り出す善玉菌(酪酸産生菌)が減少傾向にある点です。善玉菌が減り、酪酸が十分に作られなくなると、血糖コントロールに大きな支障を来すと考えられます。
ですから、私は食事で、腸内の善玉菌のエサになる水溶性食物繊維を多く含む根菜類海藻類などを積極的にとるように心がけています。

合併症の予防に抗酸化食品を積極的にとる

次に、合併症を予防する食事について述べましょう。糖尿病で最も気をつけるべきは、合併症を起こさないことです。高血糖になると代謝が悪くなり、AGEという糖化物質を作ります。それが、細い血管を詰まらせ網膜症・腎症などの合併症や、動脈硬化など太い血管を損傷する主な原因になります。

合併症を防ぐには、体内に発生した活性酸素の害を抑制する抗酸化物質が必要です。抗酸化物質とは、ビタミンCやビタミンEのほかに、βカロテン、ポリフェノール、イソフラボンなどです。ですから、これらを多く含む野菜果物をとることが大事です。

主食を玄米にして腸内環境を改善

私のふだんの食事は、昼は外食が多く、好きな物を食べていますが、朝晩は基本的に玄米ご飯を主食にしています。
玄米には、白米にはないビタミンやミネラル類が多く含まれています。食物繊維も多いので、お通じがよくなり、腸内環境の改善にも有効です。

おかずは「孫わ優しい」で考える

おかずは、野菜の煮物や炒め物、魚の照り焼きや網焼き、果物などです。それに、豆腐やワカメ、キノコ類をたっぷり入れたみそ汁や、お吸い物を添えます。間食には、ナッツ類を少量つまみます。

おかずの材料は、「ま・ご・わ・や・さ・し・い(孫わ優しい)」というキーワードを目安に、朝晩のメニューを考えます。

「ま」は豆類。納豆、アズキ、豆腐、油揚げなど。「ご」はゴマ。クルミやギンナン、松の実などの木の実も含まれます。「わ」はワカメ。水様性食物繊維の多い海藻類一般を指します。「や」は抗酸化物質の多い野菜類。「さ」は。特に青魚です。「し」はシイタケなどのキノコ類。「い」はサツマイモやサトイモなどのイモ類です。
いずれもビタミンやミネラル、抗酸化物質、食物繊維などを豊富に含む割にはエネルギー(カロリー)が少なめ。意識してとると、糖尿病の改善に有効です。

「まごわやさしい」を意識して朝晩のメニューを考える

食欲との戦いに勝つ!

これらをよく噛んでゆっくり食べてください。糖尿病の人のいちばんの症状は「食欲」かもしれません。食欲との戦いに勝つには、まずよく噛んでゆっくり食べることです。そうすると、少ない食事量でも満足することができます。

一病息災という言葉があります。人間、一つくらい持病を抱えているほうが健康に気を配り、かえって元気で長生きをする、という意味です。糖尿病になってからの自身の人生を振り返ると、まさにそのとおりだと思います。

糖尿病は、合併症さえ予防すれば、自分の健康や生活のあり方、そして生き方をも見直す絶好のチャンス。そう考えれば、薬に頼らない治療の日々も、明るく楽しく、そして意味あるものになります。皆さんも、ぜひ、そのようなプラス思考で取り組んでほしいと思います。

「食事と運動」による治療で、体調は良好!

自分の糖尿病を「食事と運動」で克服できるか試したかった

私が重度の糖尿病とわかったのは、1994年、53歳のときでした。体重の急激な減少に異常を感じ、同僚の内科医に診てもらったところ、そう宣告されたのです。そのときの空腹時血糖値は260㎎/㎗、過去1~2ヵ月の血糖状態を示すヘモグロビンA1cは12.8%もありました。

当時、私は国立がんセンターの疫学部長でした。生活改善の重要性を提起しながら、多忙な仕事にかこつけて、自身の食生活はかなり乱れていました。また、ストレスも多かったのかもしれません。確かに肥満傾向にあることは気になっていましたが、それでもこの宣告は青天のへきれき。まさか自分が? と、ショックを受けたものです。

私の場合、合併症の危険レベルに入るほど、血糖値が高かったので、同僚の医師から薬の服用を促されました。しかし、薬には副作用の心配があります。服用には抵抗がありました。また、疫学部長として、自分の糖尿病を生活習慣を変えることで克服できるのか、試したいとも思いました。そこで私は、薬ではなく、「食事と運動」による治療を開始。真に有効で安全な方法は何か、自らの体で検証しながら治療に取り組むことにしたのです。

そして、260㎎/㎗だった空腹時血糖値が開始後1~2ヵ月で110㎎/㎗に下がり、12.3%だったヘモグロビンA1cも9ヵ月後には5.9%へ改善。いずれも安全圏まで戻すことに成功しました。

血糖コントロール成功のポイント

おすすめは「血糖値の自己測定」

それから25年。今も変わらぬ生活を続けています。甘い物が好きなので、血糖値は少し高めですが、体調はすこぶる良好です。私がうまく血糖コントロールできたポイントとして、血糖値の自己測定があります。
日常生活による血糖値の変化や、今、自分の行っている運動や食事がどれだけ効果があるのか、すぐに確認できます。改善の指標だけでなく、継続へのモチベーションを高めることにもつながるので、ぜひお勧めします。

最近は、血糖値を持続的に測定できる便利な装置(FGMやCGM)も発売されています。小さなセンサーを腕に装着し、継続的に血糖値を測定。その情報は、パソコンに取り込み、グラフ化することが可能です。また、センサーに読み取り機をかざすと、瞬時に血糖値を知ることもできます。

自己測定で血糖値の変化を知ろう!

糖尿病を改善する運動のポイント

運動によって血糖値が下がるしくみ

ここでは、私が実践した運動についてお話ししましょう。
糖尿病患者にとって、筋肉を使う運動をすることは、とても大事です。その理由を簡単に説明しましょう。通常、血糖値を下げるには、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが必要です。ところが、筋肉にはインスリンの力を借りずに、血中からブドウ糖を細胞に取り込み、エネルギーに変える独自のしくみがあるのです。

血糖値が下がるとは、血液中のブドウ糖が細胞内に取り込まれることです。
それには、まず“GULT”(ブドウ糖トランスポーター)というたんぱく質が、細胞質内から細胞膜に移動しなくてはなりません。GULTは、いわばブドウ糖が流れ込むドアで、このドアを開ける鍵の役割をしているのが、インスリンなのです。GULTには10種類以上の型がありますが、このうち筋肉に存在するGULT4は、インスリンの鍵なしにブドウ糖を細胞中に入れる特性があります。ただ、GULT4も細胞膜まで移動しなくては、ブドウ糖を取り込むことはできません。その移動に手を貸してくれるのが、筋肉を動かすエネルギーサイクルのなかで生み出される酵素=AMPキナーゼ)です。

つまり、運動をするほどAMPキナーゼが作られてGULT4を細胞膜に移動させ、インスリンの関与なしでどんどんブドウ糖を血中から取り込んでくれる。これが、運動によって血糖値が下がるしくみです。ですから、体を動かすたびに、「ああ、GULT4が働いてくれているなあ」とイメージすると、運動も楽しくなるのではないでしょうか。

条件は「適度な」運動を「食後」に

また、インスリンを必要としないので、働き過ぎの膵臓を休ませることにもつながります。ただ、運動で血糖値を下げるには「適度な」という条件がつきます。運動を激しく行うと、新たなエネルギー供給が必要と体がとらえ、肝臓に蓄えられているグリコーゲンをブドウ糖に分解し、血中に放出するのです。その結果、逆に血糖値が上昇することになります。

私が好んで行っている運動は、散歩水泳自転車こぎ(エアロバイク)などの有酸素運動です。それらを食後15分くらいから始めます。これは、特に「食後」というのがポイントになります。東京農業大学で教授をしていたときに行った研究で、食前の運動より、食事の10~30分後の運動のほうが血糖値を下げることがわかりました。

食前の運動は、必ずしも食後の血糖値の上昇を抑えず、むしろ血糖値の乱高下を起こすことさえありました。また、血糖降下薬を服用している人なら、低血糖を起こす心配もあります。それに対して食後に運動をすると、前述のようなインスリン以外のしくみが関与する血糖の取り込みによって、運動を終えたあとも血糖値が確実に下がります。毎日のこのくり返しが、やがて大きな効果となって実を結ぶのです。

食後の30分くらいの散歩が最も効果的

食後に行う運動としては、いろいろ行った結果、30分くらいの散歩が最も効果的です。軽く汗ばみ、呼吸が乱れない程度の散歩です。私は、毎日夕食の15分後にこうした運動を行うことで、本来なら食後血糖値が200㎎/㎗以上あるような状態から、140㎎/㎗以下にコントロールするようにしています。

有酸素運動とレジスタンス運動の両方を行うと効果が高い

筋肉に抵抗をかける運動「レジスタンス運動」とは

なお、最近は、有酸素運動とレジスタンス運動の両方を行うと、どちらか片方だけを行うより、血糖値を下げる効果が高いことがわかってきました。レジスタンス運動とは、スクワットなどの筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作をくり返す運動です。レジスタンス運動を続けると、筋肉量や筋力がアップし、インスリンが効きやすい体に変化していきます。

欧州糖尿病学会が発表した研究によると、有酸素運動とレジスタンス運動の両方を行うと、有酸素運動だけを行った場合に比べ、ヘモグロビンA1cは0.17%、空腹時血糖値は10.6㎎/㎗低下。レジスタンス運動だけを行った場合に比べ、ヘモグロビンA1cは0.62%、空腹時血糖値は35.8㎎/㎗も低下したそうです。

私は、食後の有酸素運動に加え、レジスタンス運動として、足首に1kgのベルトを巻いて歩いたり、階段を一段飛ばしで上ったりしています。血糖値の調整がうまくいかない人は、これらの運動をぜひ試してみてください。

渡邊先生が実践する血糖値の上昇を抑える運動

『散歩』

◎毎日、夕食の15分後から始め、30分行う。
◎軽く汗ばみ呼吸が乱れない程度。
※ 自転車こぎ(エアロバイク)もお勧め。
☆インスリンの効きをよくするレジスタンス運動も行う。
・階段の1段飛ばしや足首に重りを着けての散歩、など

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