骨だしスープは、「腸もれ(リーキーガット症候群)」を改善し、体調不良やアレルギー疾患などを改善します。また、コラーゲンも豊富なため髪、肌、爪が若返ります。関節を健康にする各成分も多く含まれています。【解説】桑島靖子(桑島内科医院副院長)
解説者のプロフィール
桑島靖子(くわじま・やすこ)
桑島内科医院副院長。日本内科学会内科専門医。日本東洋医学会漢方専門医。日本抗加齢医学会専門医。30代に悩まされ続けた不定愁訴を、漢方と栄養療法でみずから克服。以来、漢方、栄養療法、点滴療法を取り入れた複合的なアプローチで内科疾患、不定愁訴の治療・予防に当たる。共著に『子宮を温める食べ方があった!』(青春出版社)などがある。
腸は免疫細胞の約7割が集まる健康の要
腸の働きを整える「骨だしスープ」
「腸は健康の要」といっても過言ではありません。食べ物の栄養を消化・吸収したり、毒素を排出したりする大切な臓器です。
また、体を病気から守る免疫細胞の約7割が集まるという点でも、その役割は重要です。
腸がきちんと働かないと、栄養を十分に消化・吸収できません。すると、毒素が体にたまり、免疫力も衰えて、さまざまな病気を招きます。
当院では、腸の働きを整える食事指導を、積極的に行っています。今回ご紹介する「骨だしスープ」は、病気治療の一環として患者さんに勧めている物です(作り方は下記参照)。多くのかたから、「飲んでよかった!」という声が寄せられています。
骨だしスープは、肉や魚などを骨ごと煮込んだスープです。近年増え続けている腸のトラブル「腸もれ(リーキーガット症候群)」を改善し、体調不良や病気を改善します。
腸もれとは?
腸もれとは、腸に炎症が生じて粘膜にすきまができ、そこから細菌や毒素、未消化のたんぱく質などが腸の外へもれ出す状態です。
腸もれが進むと、免疫機能が過剰に反応して、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患が起こります。さらに、全身に炎症が広がると、糖尿病、肥満、うつ、ガンなどの病気を引き起こします。
腸の炎症を抑え、すきまの修復に役立つのが、骨だしスープです。骨だしスープで腸が健康を取り戻し、消化・吸収能力や免疫力が回復することで、病気の改善につながるのです。
「骨だしスープ」の代表的な栄養素と効果
腸、肌、髪、関節にもいい成分がたっぷり
骨だしスープの代表的な栄養素と効果を紹介しましょう。
【グルタミン】腸の粘膜を修復
骨だしスープは、腸の粘膜を修復するグルタミンというアミノ酸(たんぱく質の構成成分)が豊富です。
アミノ酸は、消化酵素がなくても腸で吸収されるため、骨だしスープをとれば効率よくグルタミンが働き、腸の修復を促します。
特に、闘病中や病み上がりの人、ストレスが多い人、胃腸の消化能力が低下している人などには、グルタミンが有効です。グルタミンをしっかりとると、肌の新陳代謝も促されます。
【グリシン】腸の炎症を抑制
グリシンは、肝臓の解毒能力を高めるアミノ酸です。腸からもれ出た毒素の処理を促し、腸の粘膜の炎症を抑える働きがあります。炎症が治まれば、粘膜のすきまもふさがります。
腸に炎症があると、血糖値を下げるインスリンというホルモンの効きが悪くなり、過剰に分泌されます。インスリンはエネルギーを蓄える働きがあり、分泌が増えると中性脂肪の合成が高まり、太りやすくなります。
骨だしスープで腸の炎症を抑えられれば、糖尿病やダイエットにも有効です。
【コラーゲン】髪、肌、爪が若返る
骨だしスープには、コラーゲンも豊富です。コラーゲンは皮膚、髪、爪を構成する成分。潤いやハリのある肌、コシのある髪、丈夫な爪づくりに役立つとともに、腸粘膜を強化・修復する働きもあります。
【ミネラル】体の機能を調節
カルシウム、マグネシウム、リンなど、体の機能を調節するミネラルも、骨だしスープに多く含まれています。
マグネシウムは、現代人に特に不足しがちなミネラルです。血糖や血圧を調節したり、精神を安定させたり、鎮痛・エネルギー産生・解毒作用を促したりするなど、多彩な働きをします。
マグネシウムが豊富な天然塩を味つけに使うと、より効果が期待できるでしょう。
【関節を健康にする各成分】
骨だしスープには、関節や軟骨の成分であるグルコサミン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸が豊富に含まれており、関節炎の改善に役立ちます。
桑島式「骨だしスープ」の作り方
【調理器具】
鍋を使うのが基本。手早く作りたい人は圧力鍋、手軽に作りたいなら炊飯器やスロークッカー(保温電気鍋)を使うとよい。
煮干しなど、どんな動物の骨でもOK!
【材料】
鶏、豚、牛、魚など、お好みの骨つきの食材を選ぶ。鶏と豚、鶏と煮干しなどを組み合わせていっしょに煮込んでもよい。
【鶏】
手羽中や手羽元、手羽先、もみじなど、いろいろな部位を使うと、コラーゲンやゼラチンを多く抽出できる。
【豚】 【牛】
豚スペアリブや豚足、牛なら牛テールを入れると、よりゼラチンが多く溶け出る。
【魚】
頭も入れるとゼラチンがより多く溶け出る。煮干しはそのまま使ってよい。
【ポイント】
◎野菜もいっしょに煮込む。ビタミンやポリフェノールなどが溶け出るほか、旨みが加わる。くず野菜でもよい。
◎骨はむき出しで煮ると、栄養成分が溶け出しやすくなる。できれば、ぶつ切りにしたり砕いたりして、骨の中心の骨髄が見える状態にすると理想的。いずれの食材も、薬剤や農薬が使われていない物を選ぶよう意識する。
◎酢を入れると有効成分が溶け出しやすくなる。2Lのスープに、大さじ2杯程度でOK(味に影響はしない)。
【作り方】
具材がつかる程度まで水を入れて煮込む。
大鍋であれば、弱火で1~2時間、コトコトと煮込む。肉の骨の場合は、煮込むほどエキスが出るので、できれば3時間以上煮込むとよい。煮干しの場合、数時間水に浸してから、弱火で10分程度煮出す。
圧力鍋の場合は量にもよるが、30分以上を目安に加圧するとよい。スロークッカーな
ら、夜にスイッチを入れて7~8時間保温すれば、翌朝に出来上がる。
どの食材もよく洗い、アクをこまめにとると雑味のない澄んだスープができる。
【保存方法】
煮出したスープの表面に浮いた脂を丁寧に取り、キッチンペーパーやさらしを敷いたざるでこす。こして冷ましたスープは、冷蔵庫で3~4日保存可能。冷凍なら1ヵ月ほど保存できる。小分けにして冷凍すると、さまざまな料理に活用できるので便利。また、鍋に残った具材は別の料理に活用するとよい。
【食べ方】
◎料理に活用した分も合わせて、1日に400~500mlを目安にとるとよい。
◎具材を入れて食べたり、お茶がわりに飲んだりしてとる。濃厚なだしが出ているので、そのままでもおいしく飲めるが、ミネラルが豊富な天然塩やみそ、カレー粉などを入れ、好きな味つけをしてもよい。
10年以上悩んだアトピー性皮膚炎が1ヶ月で改善
ここで、骨だしスープで腸が元気になり、病気が改善した患者さんの例をご紹介しましょう。
30代の男性Nさんは、10年以上、アトピー性皮膚炎に悩んでいました。ステロイドの塗り薬を使っても肌のジュクジュクやかゆみが治らないため、薬をやめてしまいました。
Nさんは、体調をくずして寝込むようになり、来院されました。血液検査の結果、極度の栄養不足に陥っていることが判明。腸が弱り、食事の栄養を十分に消化吸収できなくなっていました。
骨だしスープを毎日とるよう指導したところ、お母さんが鶏ガラでスープを作ってくれました。そして1ヵ月後、肌の赤みやジュクジュクが改善。半年後には、色白のキレイな肌に変身したのです。
さらに、Nさんといっしょに骨だしスープを飲んだお母さんは、乾燥肌が解消。肌が潤い、ほうれい線が薄くなりました。お父さんは1cm大のシミがほぼ消え、黒髪が増えたと喜んでおられました。
私も、骨だしスープをポットに入れてお茶がわりに飲んだり、野菜を入れて食べたりしています。皆さんもぜひ、健康づくりに骨だしスープをお役立てください。