【SDカードの種類と寿命】認識しない、データが消える原因は? 耐久性と価格の違いを専門家が解説

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SDカードは、軽量コンパクトで大容量が特徴。スマホやカメラの記録媒体として普及したが、SDカードには、唯一といえる弱点がある。それが耐久性だ。大切なデータが消失した、メモリーカードを認識しない、そんな話はよく聞く。それを回避するためには、耐久性の高いSDカード製品を選択したい。SDカードの耐久性を左右する「書き込み方式」について知っておこう。書き込み方式には、SLC、MLC、TLCの3つの方式がある。

耐久性を重視するならSLC方式がいい

結論から先に言ってしまうと、「SLC」という書き込み方式を採用したSDカードが、最も耐久性が高い。
データ保持力を重要視する産業用のSDカードとして、SLC方式の製品が存在する。
産業用、高品質で大容量製品が存在せず、高価だが、安心感という点では選択する価値がある。

SDカードは、長期保存に不向きである

SDカードは、一般的に長期保存に不向きとされている。それは、SDカードの記録原理や構造に理由がある。
SDカードの内部には「セル(Cell)」と呼ばれる、電池のように電気を溜める素子が無数に配置されている。
このセルに電気を溜めることで、デジタルデータの基本である「0か1」というデータを保存する仕組みになっている。

セルに溜めた電気が永遠に保持されていれば、データが消失することはないのだが、残念なことに、そうもいかず、数年~十数年という長期間にわたり、SDカードに通電せずに保管すると、セルから自然に電気が抜けてしまい、データが消失する。
デジカメで撮影した写真データを、SDカードのまま机の引き出しに入れておくと、数年で写真が綺麗さっぱり無くなっている、という悲劇が起きてしまうわけだ。

SDカードは、使い減りする

SDカードは、長期保存でデータ消失する恐れがあるだけでなく、繰り返しデータの読み書きをすると、データの読み書きができなくなる、認識しなくなる、という弱点もある。
その原因も、SDカードの構造にある。

SDカードは、内部のセルに電気を溜めることでデータを記録するわけだが、このセルの蓋に相当する部分が、データの書き込みを繰り返すことで弱くなってしまい、セルに溜めた電気を保持できなくなってしまう。

書き換え回数の限度は、書き込み方式によって異なるのだが、一番寿命の短い方式である「TLC」方式の場合、約1000回といわれている。
この1000回とは、ひとつのセルの書き換え回数のことなので、例えば、16GBのSDカードに容量いっぱいまでデータを書き込み、それを消して、またいっぱいまでデータを書き込むという行為を1000回繰り返すと、そのSDカードはデータを記録できなくなる、というわけだ。

SDカードには、3つの書き込み方式がある

SDカードの書き込み方式には、1つのセルに、何段階のデータを書き込むかにより、3つの方式がある。

SLC(シングル・レベル・セル)

SLCは、1つのセルにデジタルデータ(二進法)の、1桁である1bit(ビット)に相当する「0か1」の2つの値をを記録する。
セルに電気が溜まっている状態が「0」、溜まっていない状態が「1」となる。

MLC(マルチ・レベル・セル)

MLCは、1つのセルにデジタルデータ(二進法)の、2桁である2bitに相当する「00」「01」「10」「11」の4つの値を記録する。
セルに電気が溜まっていない状態が11で、セルに溜まった電気の量を3段階に分けて満タンを00、3分の2程度溜まった状態を01、3分の1程度溜まった状態が10となる。

TLC(トリプル・レベル・セル)

TLCは、1つのセルにデジタルデータ(二進法)の、3桁である3bitに相当する「000」から「111」までの8つの値を記録する。
セルに電気が溜まっていない状態が111で、セルに溜まった電気の量を7段階に分けて、満タンを000、7分の1程度溜まった状態が110となる。

出典:Panasonic(SD Memory Card)

panasonic.net

SLCは耐久性が高い、TLCは価格が安い

SDカードの書き込み方式は、大容量化と低価格を目指し、TLCからMLC、TLCと発展してきた。
セルの数で考えると分かりやすい。
同じセルの数ならば、MLCはSLCの半分のセルの数で同じ記録容量を確保できる。
TLCなら、SLCの4分の1のセルの数で同じ記録容量となる。同じセルの数ならTLCが最も大容量となるし、セルの数が少ないTLCは価格も安くできる。

しかし、この大容量化、低価格化で犠牲になったのが、耐久性である。
最もシンプルな方式であるSLCの場合、セルに電気が入っていれば、満タンでも、ほんの少ししか残っていなくても、空っぽでない限り「0」とカウントする。

長期保管で電気が抜けかけていても、抜け切らないかぎりデータを保持できるので、長期保存に向いている。
TLCの場合、セルに溜まっている電気の量を7段階に分けているので、セルに溜めた電気が7分の1以上抜けてしまうと、記録したときと違う値になってしまう。
つまり、正確なデータだ読み出せなくなり、保存データが消失したことになってしまうわけだ。

また、書き込み方式によって、書き換え回数の上限(書き換え寿命)にも差がある。

各方式の書き換え上限は、
SLCの場合は、約10万回
MLCの場合は、約1万回
TLCの場合は、約1000回
といわれている。

長期間にわたり、書き換えを繰り返す用途には、SLCが向いている。
例えば、常時動画撮影のデータを保存し、データが満杯になると古いデータを消して書き換えるような、ドライブレコーダーや防犯カメラの記録用には、SLC方式のSDカードが向いていることになる。

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まとめ

SLCのSDカードは耐久性抜群だが、容量が小さく、価格もかなり高価なので、家庭で使うすべての用途にSLCのSDカードを使うというのは現実的ではない。

デジカメやビデオカメラといった用途には、MLC方式のSDカードを使うのがいいだろう。
TLCに比べると格段に耐久性が高いし、価格も高価ではあるものの、納得できる範囲である。
SLC方式やMLC方式を採用しているSDカードカードは、高耐久性をうたうと同時に、SLCチップ、 MLCチップ採用と明記している。
逆に、記録方式、チップの種類を明記していない製品は「TLC」方式と考えればいいだろう。

◆福多利夫
デジタル家電関連の記事を得意とする、モノ系ホビー系のフリーライター。一般財団法人家電製品協会認定の家電総合アドバイザーでもある。長年にわたり月刊「特選街」の制作に携わる。パソコン関連の著書も多い。

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福多利夫(フリーライター)

デジタル家電関連の記事を得意とする、モノ系ホビー系のフリーライター。一般財団法人家電製品協会認定の家電総合アドバイザーでもある。長年にわたり月刊『特選街』の制作に携わり、パソコン関連の著書も多い。

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