撮像センサーの違うミラーレス一眼2モデルを比較した。フルサイズの「キヤノン EOS R」とマイクロフォーサーズの「パナソニック DC-G9」をピックアップ。交換レンズの価格と重さ、ボケの大きさ、ダイナミックレンジ、高感度性能の4つのポイントで比べてみた。
ミラーレス一眼のマイクロフォーサーズ機・フルサイズ機を比較
センサーが小さい割にボディサイズは大差ない?
フルサイズ
ミラーレス一眼
キャノン EOS R
24万8500円(ボディ)
※価格はすべて実売価格例で、記事作成時のものです。
マイクロフォーサーズ
ミラーレス一眼
パナソニック DC-G9
20万4400円(ボディ)
撮像センサーのサイズが違うペアで比べてみよう。
フルサイズ機は昨年10月発売のキヤノン・EOS R。マイクロフォーサーズは昨年1月発売のパナソニック・DC-G9だ。
フルサイズの画面サイズは36ミリ×24ミリ。マイクロフォーサーズは17.3ミリ×13ミリで、面積はフルサイズの約1/4となる。
このことから、パナソニックのDC-G9やDC-GH5を「大きすぎる」という声もあるが、撮像センサーはカメラを構成する部品の一つにすぎないことを見落としている。画像処理回路やEVF、モニター、バッテリーなどまでが1/4サイズになるわけではないのだ。
ここでは4つのポイントについてチェックしてみた。
1. 交換レンズは?
2. ボケの大きさは?
3. ダイナミックレンジは?
4. 高感度性能は?
1. 交換レンズは?
広角、標準、望遠の3本の大口径ズーム(パナソニックはF2.8固定の広角ズームがない)を3本ずつの価格と重さを合計したのが左の数字。高性能タイプでそろえても、撮像センサーサイズの小さなマイクロフォーサーズは、軽快かつ経済的なシステムが組めることがわかる。
キヤノンの大三元レンズ
合計金額:77万1930円
合計重量:3075g
※価格はすべて実売価格例で、記事作成時のものです。
パナソニックの大三元レンズ
合計金額:32万1810円
合計重量:977g
※マイクロフォーサーズレンズの焦点距離は、35ミリフルサイズ判に換算すると2倍の数値になる。
2. ボケの大きさは?
画角を統一して同じ絞り値で撮影した画像を見比べると、EOS Rのほうが背景が大きくボケているのがわかる。ボケを生かした絵づくりをしたいなら、フルサイズ機のほうが有利なわけだ。反対に、背景まできちんとピントを合わせたいときは、マイクロフォーサーズが有利だ。
フルサイズEOS R
マイクロフォーサーズDC-G9
3. ダイナミックレンジは?
カラーチャートの左側から光を当て、明暗の差を大きくした状態で、右下の黒が黒つぶれする暗さから、左下の白が白飛びする明るさまでの露出の差をチェック。DC-G9が5段あったのに対して、EOS Rは4段。黒つぶれは同等だが、白飛びが早いという結果となった。
マイクロフォーサーズ DC-G9
フルサイズEOS R
4. 高感度性能は?
高感度の画質は、画素当たりの受光面積が大きいほど高くしやすい。そうなるとフルサイズのEOS Rの画質がいいはずで、実際、ピクセル等倍で比較した印象では、2段分くらいの差があるように感じた。感度を上げて撮影する機会が多いなら、やはりフルサイズ機が有利といえる。
マイクロフォーサーズ DC-G9
フルサイズ EOS R
撮像センサーは、ボディより交換レンズのサイズや予算に影響大!
ボケの大きさや高感度性能はフルサイズが有利
一方、交換レンズは撮像センサーのサイズに大きく左右される。画角(画面に写る範囲)が同じであれば、フルサイズ用のレンズのほうが大きく重くなる。
例えば、いわゆる大三元レンズ(ハイスペックタイプの大口径ズームのこと)で比べると、3本を合わせた価格は2倍以上になるし、重さは3倍以上にもなる。つまり、軽快さや機動性を重視しつつ、経済性も考えた場合は圧倒的にマイクロフォーサーズが有利となるわけだ。
一方、写りではフルサイズが上回る部分が出てくる。いちばんの違いはボケの大きさ。同じ画角、同じ絞り値でなら、フルサイズ機のほうが大きなボケになる。
また、画素サイズが鍵となる高感度の画質もフルサイズのほうが上。ISO1600から暗部の描写に差が出始め、ISO3200になると、DC-G9は細部のつぶれが気になるのに対して、EOS Rはきちんと再現できている。
ダイナミックレンジは、普通はフルサイズ機のほうが有利なはずだが、DC-G9が予想以上の健闘を見せた。ただし、画像処理で極端な調整を行うような場合には、EOS Rのほうが粘り強さを発揮して、良好な仕上がりになってくれる。
解説/北村智史(カメラライター)