私自身、腸と鼻の関連性を実感した出来事がありました。過敏性腸症候群になったときに、花粉症も発症したのです。その後、みそ汁を飲むなど腸のバリア機能を修復する生活を送ったところ、症状が改善しました。鼻炎対策としては、粘膜保護作用のあるβ–カロテンを含む、緑黄色野菜を入れた「コマツナみそ汁」がいいでしょう。【解説】関由佳(内科医・みそソムリエ・メディカルフード研究家)
解説者のプロフィール
関由佳(せき・ゆか)
内科医・みそソムリエ・メディカルフード研究家。学生時代から予防医学に興味があり、野菜ソムリエ、みそソムリエの資格を取得。食事で血糖値をコントロールする方法を学び、ダイエット外来や糖尿病治療にそのメソッドを応用し栄養指導を行う。2013年にニューヨークの料理専門学校に留学し、その後約半年間ミシュラン星つきレストランや精進料理店などでインターン後帰国。現在は小西統合医療内科で女性のための栄養療法を担当しながら、岡山大学大学院で腸内環境と発酵豆の関係について研究中。著書に『みるみる痩せる!味噌汁ダイエット』(宝島社)などがある。
花粉症の人の多くが便秘や下痢をしている
私は内科医として糖尿病、高血圧などの患者さんを診察する中で、花粉症を併発しているかたをよく見かけてきました。
そうした患者さんの多くが、常に便秘であったり、下痢で腸の状態が悪かったりします。
くしゃみや鼻水、鼻づまりは、鼻の中という限定された部位だけの問題ではありません。全身の状態、特に腸と大きく関係しているのです。
鼻の中は粘膜で覆われ、ホコリなどの異物を外に出すバリア機能があります。
このバリア機能は皮膚や腸などに備わっていて、中でも腸は総面積が約20畳とたいへん広いため、腸のバリア機能が破壊されると全身に影響が及ぶのです。
腸の粘膜やその下の層には、体を病気から守る免疫細胞があります。その数は非常に多く、全身の免疫細胞の約6割が腸に集中しているといわれています。
主な免疫細胞が、体の中で細菌やウイルスなどを退治する白血球です。
腸のバリア機能が破壊されて病原体が侵入すると、免疫細胞が活性化します。この状態が長く続けば、免疫が誤作動を起こし、少しの異物にも過剰に反応するアレルギーが引き起こされます。
免疫細胞は血流に乗って移動するため、免疫の誤作動は全身に及びます。
鼻の場合は、少量のホコリなどでも、くしゃみや鼻水が出て排出しようとしたり、鼻づまりを起こしてブロックしようとしたりするのです。
胃腸の状態が全身に影響する
実は私自身、腸と鼻の関連性を実感した出来事がありました。
大学時代に、過敏性腸症候群(腸に炎症などは認められないのに、下痢と便秘、激しい腹痛を繰り返す病気)になったときに、花粉症も発症したのです。
その後、みそ汁を飲むなど腸のバリア機能を修復する生活を送ったところ、腸と鼻の症状が改善しました。
昨年12月に、「血球は腸でも生成されることがわかった」というニュースが、『ニューズウィーク日本版』で配信されました。
アメリカのコロンビア大学の研究チームが、腸移植を受けた患者21名を5年にわたって追跡調査し、移植された腸にドナー(臓器提供者)の造血幹細胞が存在することを突き止めたのです。
造血幹細胞とは、赤血球や白血球、血小板といった血球を作り出すもとになっている細胞です。これまで、骨の中心部にある骨髄の造血幹細胞から、血球は作り出されていると考えられていたのです。
ただ、腸には白血球がたくさん存在しているので、造血幹細胞も存在していることは私にとって不思議ではありませんでした。
また、「あなたの体は、あなたが食べたものからできている」という英語のことわざがあるように、胃腸の消化力が、全身や血液の状態に影響を及ぼすことは、古くから知られていたことです。
みそ汁は朝に飲むのがお勧め
自分の消化力に合った質と量の食べ物として、お勧めなのが、みそ汁です。
みその成分には、傷ついた粘膜の修復に役立つ必須アミノ酸や亜鉛、マグネシウム、鉄などがあります。
また、新陳代謝を促すビタミンB群も豊富で、活性酸素(体内で増え過ぎると細胞を傷つけ老化の一因となる)を除去するメラノイジンも含まれています。
鼻炎対策としては、粘膜を保護する働きのあるβ–カロテンを含む、緑黄色野菜を入れるといいでしょう。コマツナがお勧めです。
みそ汁は1日に1~2回飲むのがよいのですが、最適なのは朝。温かいみそ汁を飲んでホッとリラックスすることも、鼻炎を抑えることにつながるからです。
意志とは無関係に体をコントロールする自律神経のうち、交感神経が副交感神経よりも優位になり過ぎると、アレルギーが悪化することがわかっています。
多くのかたが朝を慌ただしく過ごして、交感神経が優位になっています。この時間にみそ汁を飲んで落ち着くと自律神経が整って、1日を気持ちよく過ごせるはずです。
くしゃみや鼻水などに悩まされているということは、全身にもなんらかの問題があるというサイン。「未病」のうちに治すために、この機会に一度、食生活を見直してほしいと思います。