洗濯は、いろいろな要素が組み合わさる、料理に並ぶ「深い」家事です。最低でも「布」「汚れ」「水」「洗剤」そして「洗濯機」の5要素を見極め、上手く組み合わせる必要があります。この時、お役に立つのが「取説」こと取扱説明書。しかし、分厚く、取っつきにくいのも確か。今回、この「取説」に何が書かれているのかを、分かりやすく説明したいと思います。題して「洗濯機の取説」の取扱説明書です。

洗濯とは

洗濯という行為は、「使った衣服を使う前の状態に戻す」衣類ケアの1つで、衣類の汚れを落とす行為を指します。

人が衣類を使うと、汚れが付きます。その汚れは、大きくは3つに分けられます。
①人から分泌される汗や皮脂
②外部から付着する、主に食品による汚れ(ケチャップ、カレーなど)
③最後は「泥汚れ」です。

泥汚れは、繊維の間に土の粒子が詰まった汚れですが、他の2つは、繊維に汚れが付着、もしくは染み込んだ状態です。

洗濯とは、これらの汚れを、洗剤及び洗濯機の力を借りて、水に移し、衣類をキレイにすることです。上手に洗濯するためには、「衣類」「汚れ」「水」「洗剤」「洗濯機」を把握する必要があります。

標準的な洗濯とは

ちょっと仰々しく書き始めましたが、複雑過ぎると、人は、四六時中洗濯ばかりしていなければならなくなります。
もし、毎日のように布の種類が変わるのであれば、そうでしょう。しかし、当然そのようなことはないわけで、広く普通に使われている衣類をベースに「標準」を作ります。

具体的には、JEMA(日本電機工業会)で決められており、そのホームページには、
衣類4.2kgの場合の「標準」として、
●子供用スカート1枚(混紡200g)
●くつ下4足(混紡各50g)
●ブラウス2枚(混紡200g
●子供用ズボン1枚(混紡200g)
●スカート1枚(混紡400g)
●スリップ2枚(混紡各150g)
●エプロン1枚(混紡200g)
●ハンカチ4枚(綿各15g)
●ブリーフ4枚(綿各50g)
●ワイシャツ2枚(混紡各200g)
●半袖肌着3枚(綿110g)
●タオル5枚(綿各70g)
●バスタオル3枚(綿各300g)
とあります。

これで分かる通り、布の標準は「混紡もしくは綿」です。また、水の標準は「日本のどこでも確実に手に入る水道水」です。

では「洗剤」「洗濯機」はどうかと言うと、これはメーカーの自由で、メーカーごとに異なります。
このため「標準コース」と言っても、A社とB社で中身は異なるのです。

メーカーの洗濯機は、「混紡もしくは綿」に付いた「普通の汚れ」を、「水道水」と、「お店で売っている洗剤」を使って、洗濯を行うのが「標準」というわけです。

水道水

日本は、世界でも稀な軟水の国です。軟水はミネラル分が少ないため、泡立ちが良く洗濯に適した水です。

しかし、水道水と定義されても、問題がないわけではありません。水の温度は、問題になります。水道水は、衛生のため、水の成分管理はしますが、温度管理はしません。一般的には、冬は5℃、夏は25℃。平均で15℃といわれています。

洗剤をよく働かせるためには、水の温度は高い方が望ましく、欧州で一般的な「お湯洗い」をすると、洗濯物はすごくキレイになります。しかし、日本の標準はあくまでも「水道水」です。5℃の冷たい水でも汚れが落ちるように、日本の洗濯機は設計されています。

洗剤は何でも良いのか?

洗剤は、種類がいろいろあります。
「粉末」「液体」「ジェルボール」。家電メーカーから見たときの、洗剤の標準は「液体」です。理由は簡単。もっとも出荷量が多いからです。

では、どのメーカーの「液体洗剤」との組み合わせがいいのか? というと、答えは「どれを使っても良い」です。
洗剤の成分の中で、汚れを落とすのは「界面活性剤」と呼ばれる成分。そのほかの成分は、それをサポートする、もしくは香料などの洗濯物の質を高める成分です。このため、界面活性剤が適量以上入っていれば、洗剤として使えるからです。

そのことは「取説」を見ると、よく分かります。
その洗濯機開発時、メジャー洗剤を、どれ位の量で使うべきかが、一覧表でまとめられています。当然、表中の洗剤は全て、開発時にテストしてあります。

例えば、日立のBW-DX120Cの取説に記されている洗剤は、「2018年9月現在」と但し書きが付けられていますが、
粉末合成洗剤として「アタック」「トップ」「アタックリセットパワー」「アリエール」
液体合成洗剤として「ナノックス」「アタックNeo」「部屋干しトップ」「アリエール」「アタック」「トップクリアリキッド」
液体中性合成洗剤として「アクロン」「エマール」
粉末石けんとして「そよ風」
液体石けんとして「洗濯用液体複合石けん」濃縮漂白剤として・・・。(疲れたので引用終了!)柔軟剤に至るまで延々続きます。
もう、ドラッグストアの洗剤棚を見るようです。
当然ですが、開発テスト以降、発売された洗剤に関しては掲載されていません。ジェルボールは新しくてもれていると思います。こちらは「洗剤メーカーの指示に合わせるように」と記載されています。

画像: 洗濯機メーカーが液体合成洗剤の標準としてテストすることが多い「アタックNeo」。 www.amazon.co.jp

洗濯機メーカーが液体合成洗剤の標準としてテストすることが多い「アタックNeo」。

www.amazon.co.jp

何故、ここまで念入りに書かれているかというと、「正しい量で使うのが一番重要だから」です。
ここの「正しい量」というのは、「衣類」「水」「洗剤」のことです。
洗剤は「化学の力」の部分のため、「量」がすこぶる効いてきます。
粉末石けんでありがちなのが、汚れが良く落ちるだろうと思って多めに入れたのに、溶けきれず残ってしまった。逆に、すすぎの時に溶けて、泡立ってしまった。どうしよう…というものです。正しい量はとても重要です。

もう一つ重要なのは、洗剤が洗い水の中に「均一に溶け込んでいること」です。
こうなるように、各メーカーで「洗剤の投入口」が決まっています。投入口で、洗剤を溶かし、水と混ぜ、均一に洗濯物に触れるようにするわけです。
よく、洗濯物に直に洗剤を掛ける人がいますが、これは完全に混ざるまでに時間がかかります。要するに、コースを勝手に短くしているのと同じで、場合によっては、仕上がりが悪くなります。

洗濯機の泣き所

「洗剤が化学」なら、「洗濯機は物理的な技術の集積」です。
なんたって、洗濯物と水とをグルグルかき混ぜ、衣類と衣類を擦りつけたり、槽壁に当てたり、物理的な力を与えるわけですから。そして、水、洗濯物を合わせると非常に「重い」です。そうですね、中学生を抱えて、グルグル回すようなモノです。兎に角大変です。
各メーカー共に、モーター、軸、そして制御に大金を投じて開発、検証します。日本の家電が、世界に飛躍できた理由の一つは、「質のよいモーター」を作ることができたからです。

しかし、この技術をサポートして欲しい旨が「取説」には書かれています。

一緒にかき混ぜて欲しいと言うのではありません。「洗濯槽をうまく回せるように、洗濯物を組み合わせて欲しい」ということです。

洗濯機で一番洗いにくいのが、「柔道の上着」だそうです。
厚手の刺し子の服です。水を吸うと大変重くなるわけですが、これが槽壁に貼り付くと「偏心」するのです。要するに片側だけ重くなるので、バランスが崩れるのです。そうすると、槽を回す負担が大きくなり過ぎ、回らなくなるのです。

「時短モードにしたのに、時間がすごく掛かった」という話がありますが、それは多くの場合、偏心が原因です。
起こり易いのは、すすぎ&脱水の時。偏心が起きると、洗濯機は何度も水を溜め、服を位置を入れ替え、槽を動かそうとします。時間も、そして洗濯時ランニングコストで一番高い、水道代がかかります。その上、洗濯機への負担も大きく、寿命も短くなります。

柔道の上着と似た事が起こりやすいのは、「厚手のバスタオル」と「ジーンズ」。
これらは、できる限り、他のモノと一緒に洗い、バランスが取れるようにしてください。4.2kgの内容を見ると分かるように、バスタオル以外のモノが、いろいろ入っている所がミソです。

このようなトラブルが無ければ、洗濯機は、メーカーが考えるベストの洗い方で洗ってくれるでしょう。洗濯機の機能は多彩で、ほとんどの汚れ、布地に対応できます。それも取説には細かくかかれています。

まとめ

洗濯は、料理に次いで面白い「家事」ですが、そのぶん奥が深いです。まずは、タダで手に入る洗濯の教科書「取説」を通読されることをお勧めします。特に、今まで洗濯をしたことがない、という男性諸氏、もしくは洗濯に自身がない人は一読されることをお勧めします。

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。

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