シャンプーをするとき、自分では頭全体を万遍なく洗っていると思っている人がほとんどです。しかし、意外と洗い残しが多く、頭頂部、耳の後ろ、えり足がよく洗えていません。そして最も問題なのが、額の生え際です。【解説】金澤ゆかり(ヘアーロマンドK美容師・ケミアリスト)
解説者のプロフィール
ヘアーロマンドK美容師。ケミアリスト(ヘアケアと毛髪科学の専門家)。カットやパーマ、カラー、着付といった通常の施術に加え、白髪や脱毛に効くヘッドスパやシャンプーの指導なども行っている。
シャンプーのしかたで白髪・薄毛を改善できる
私は美容師として、かれこれ三十数年もの間、大勢のお客様の頭と向き合ってきました。
美容師の仕事というと、一般的にはカットやパーマ、カラーリングが主です。シャンプーや頭皮マッサージもしますが、それらはカットやカラーリングに付随するものと思っている人も多いでしょう。
そのように考えている美容師も多いと思います。しかし私は、シャンプーや頭皮マッサージは、髪にとって非常に重要であると考えています。なぜなら、シャンプーを丁寧にすれば、白髪や薄毛・脱毛を改善させることが可能だからです。
私が実践し、お客様にお勧めしているのは、頭皮をもみ洗いしながら行う「頭のもみ洗い」シャンプーです。
お店に見えるお客様の中には、この洗い方に変えてから、白髪が黒くなってきた人、薄毛が改善してきた人、へたっていた髪にボリュームが出た人など、目に見えて髪の状態がよくなってきたかたがたくさんいます。
白髪や薄毛、髪がやせるのは遺伝や老化のせいで治らないと考えている人が多いようですが、そんなことはありません。
髪質を改善するなら、高価なシャンプーが必要ですが、市販のシャンプーでも地肌の汚れをきれいに落とすと、白髪や薄毛・脱毛は改善します。当店のお客様は、1ヵ月から3ヵ月程度で、目で見てはっきりわかるほど改善されています。
白髪・脱毛の原因の一つは洗い残しによる毛穴の汚れ
私が、シャンプーのやり方を変えれば髪が変わることに気づいたきっかけは、店でお客様の頭をシャンプーしているときに感じた疑問からでした。
白髪の多いお客様でも、頭全体が真っ白というかたはあまりおらず、ほとんどが額の生え際、耳の後ろ、頭頂部、えり足に白髪が集中しています。
白髪の原因が老化なら、頭全体が同じように白くなるはずです。「なぜだろう」と考えて思い当たったのが、自分でシャンプーしたときに洗い残しが出やすい部分ということでした。
シャンプーをするとき、自分では頭全体を万遍なく洗っていると思っている人がほとんどです。しかし、意外と洗い残しが多く、特に額の生え際、頭頂部、耳の後ろ、えり足がよく洗えていません。
健康な頭皮は、青白く透き通っています。しかし、それがだんだん汚れが蓄積してくると、茶色がかってきます。
頭頂部を洗うときには、左右の指先を交差させないと、頭頂部の周囲だけを洗うことになります。耳の後ろは、逆側の手を頭の後ろから回して洗わないときちんと洗えません。えり足も、生え際までちゃんと洗っていない人が多いようです。
そして最も問題なのが、額の生え際です。女性の場合、ここの毛穴に、ファンデーションやフェイスパウダーが詰まっていることが多いのです。
ファンデーションやフェイスパウダーを額の生え際のラインまでぬるので、額の生え際の毛穴にも入り込みます。
加えて、自分でシャンプーをするときには、ほとんどの人が額のほうから頭の後ろ側に向かってこすりあげるようにして洗います。このため、額の生え際は洗い残しが多く、額の生え際の毛穴には汚れが蓄積されてしまうのです。
私は、こうした洗い残しによる毛穴の汚れが白髪や脱毛の大きな原因ではないかと考えるようになりました。
原因の二つめは頭皮の血行の悪さ
気になっていたことがもう一つあります。それは頭皮の状態です。
白髪の多い部分や脱毛して薄くなっている部分、髪にハリやコシがなくなっている人の頭皮は、硬くなっているのです。
肩がこって硬いのは、肩の血行が悪くなっているのと同じように、頭皮も硬いのは、血行が悪くなっているのです。
頭皮の毛細血管は、毛根に栄養と酸素を送り届ける大切な役目があります。ここの血行が悪くなると毛根は打撃を受け、その結果、白髪や脱毛になると考えられます。
ですから、頭皮をもんで常に柔らかい状態にしておくのは、頭皮の血行をよくするうえでとても大切なことなのです。
洗い残しを防ぐ、頭皮の血行をよくする、この二つを意識して私が考案したのが、「頭のもみ洗い」シャンプーです。
自宅でも、シャンプーのやり方をこれに変えたお客様からは、「黒い髪が増えてきた」「白髪染めの間隔があいた」「髪にボリュームが出た」といった喜びの声を多数いただいています。
簡単でお金もかからない「頭のもみ洗い」図解
【洗う際の注意点】
※洗いすぎは頭皮から皮脂を奪ってしまうので、1日に何回も洗わない。1日1回でいい
※シャンプーは、アミノ酸のものが頭皮に優しく望ましい
◎シャンプー前の準備
◎メイクを落とす
メイクは必ず先に落とす。額のメイクを落とす際は、指を下方向に動かす。毛穴にメイクを詰まらせないようにするため。
(1)シャンプーを小分けにつける
シャンプーは、細かく分けてつけたほうが地肌を洗いやすい。額の生え際2ヵ所、つむじ、耳の後ろ、えり足につけていく。シャンプーの量は、ショートは1プッシュ、ロングは2プッシュが目安。
(2)頭を4分割して真ん中から耳に向かって洗う
◎頭を4分割して順番に洗う
全体をいっぺんに洗うのではなく、額の生え際(❶)、頭頂部(❷)、後頭部(❸)、えり足(❹)と4分割して、前から順番に洗う。
◎頭の真ん中から耳に向かって、もみ洗いする
❶~❹エリアとも、左右の手の指を、頭の真ん中に置き、左右の耳側に向かって、指の腹をスライドさせながら、もみ洗いしていく。
※髪の毛でなく地肌を洗う
※爪を立てず、指の腹を使って洗う
(3)洗い残しが多い4ヵ所は集中的に洗う
◎額の生え際とこめかみ
生え際のラインより少しだけ顔側に指の腹を当て、上に向かって指の腹をスライドさせながら生え際をもみ洗いする。こめかみも洗い残さないように注意。
◎耳の後ろ
左手を頭の後ろから回して、右耳の後ろの生え際をよくもみ洗いする。左耳の後ろの生え際は、右手を回してもみ洗いする。耳と反対の手を使うことで、耳の後ろに手が届きやすくなる。
◎えり足
えり足の生え際のラインより少しだけ下側に指の腹を当て、頭頂部に向かって指の腹をスライドさせながらえり足をもみ洗いする。
◎つむじ
つむじの上で左右の手の指を組み、その場で、マッサージするようにもみ洗いする。
(4)丁寧にすすぐ
シャワーのお湯で、丁寧によくすすぐ。洗いの3倍の時間をかけるつもりで。
※シャンプーの中には泡立ちをよくするために発泡剤が入っているものが多く、しっかりすすがないと残りやすい
(5)トリートメントする
毛先を中心にもみこむようにトリートメントをつけ、しっかりすすぐ。
(6)ドライヤーで乾かす
タオルでふいた後、ドライヤーはなるべく時間をかけず、手早く乾かす。手櫛で髪を小分けにしてはさんでドライヤーを当てると、乾きやすくセットしやすい。
※半乾きは髪を傷める
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