甘酒の材料であるこうじには多くの酵素が含まれ、消化を助けてくれる働きがあります。甘酒納豆を食事にプラスすることで、胃腸の働きを整えてくれることが期待できるでしょう。栄養価も抜群で、納豆と甘酒から、たんぱく質、ビタミン、食物繊維、ミネラルなどを摂取できます。【解説・レシピ】栗生隆子(発酵生活研究家)
解説者のプロフィール
栗生隆子(くりゅう・たかこ)
発酵生活研究家。自然の暮らし、発酵生活を実践したところ、長年患った腸の病気が完治。講演や執筆活動で発酵の楽しさ、すばらしさを伝えている。著書に『豆乳グルグルヨーグルトで腸美人! 』(マキノ出版)、『腸を元気にする”つくりおき”発酵食』(コスミック出版)など。管理人を務めるフェイスブック「TGG豆乳ヨーグルト同好会」、ブログ「ようこそ! 発酵Cafeへ」でも情報発信中。
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甘酒納豆とは
納豆菌とこうじ菌のWパワーで腸内環境が整う
もともと、私が「甘酒納豆」を作り始めたのは、山形の伝統食「こうじ納豆」がヒントになっています。こうじ納豆は、こうじ菌と納豆菌という2つの菌が取れる栄養食で、自分で作ることもできます。
作り方は、納豆、ニンジン、塩昆布に生こうじを混ぜて、しょうゆ・みりんで味付けするだけ。とても簡単です。味もおいしく、ご飯が進み、保存食としても重宝します。ただし、こうじ納豆は作ってすぐに食べると、こうじが硬いので、何日か寝かせる必要がありました。
そこで「生こうじの代わりに甘酒を混ぜたら、こうじの硬さがなく、すぐに食べられるのでは?」と思いつきました。すると、すでに甘酒納豆を作っている先達もいらっしゃって、私もチャレンジしてみることにしたのです。
作り方は、納豆と手作りの甘酒を混ぜて、しょうゆを足すだけですが、食べてみてそのまろやかな味わいにビックリ!甘酒の甘みによって納豆臭さが薄まり、これなら納豆が苦手な人にも食べていただけると思いました。
栄養価も抜群で、納豆と甘酒から、たんぱく質、ビタミン、食物繊維、ミネラルなどを摂取できます。
甘酒の材料であるこうじには、多くの酵素が含まれ、消化を助けてくれる働きがあります。特に夏は、冷たいものを食べたり、暑さによって胃腸の働きが弱りがちですが、甘酒納豆を食事にプラスすることで、胃腸の働きを整えてくれることが期待できるでしょう。
甘酒納豆は、作ってから冷蔵庫で約1週間保存できるので、私は作り置きしていて、食事のたびに少しずつ食べるようにしています。
甘酒納豆を食べ始めてから、疲れにくくなり、血行がよくなったのを感じています。これで、クーラーなどによる夏の冷えにも負けません。
納豆菌もこうじ菌も、腸内で善玉菌を増やしてくれるので、Wパワーで腸内環境を整えてくれます。
そのままでも料理と合わせてもおいしい
甘酒納豆は、手作りの甘酒があればそれで作ったほうがいいのですが、スーパーで売っている甘酒でもOKです。酒かすの甘酒ではなく、米こうじの甘酒を使ってください。米こうじの甘酒は、白米から作られたもの、玄米から作られたもの、どちらでもかまいません。
甘酒納豆は、忙しい朝の食事としても役立ちますし、毎食ごとにお漬物感覚で添えて、栄養を補っていただくのもいいと思います。
総菜として、「おかず甘酒納豆」を作っておくのもお勧めです。こちらは山形のこうじ納豆の甘酒版で、ニンジンや昆布を加えたものです。ご飯のおともとして、夏の食欲が湧かない時期にもぴったりです。
ぜひ作ってみて、そのおいしさと体が元気になる菌の力を実感してみてください。
基本の「甘酒納豆」の作り方
【材料】(2人分)
・納豆…3パック(120g)
・しょうゆ…大さじ1
・甘酒…大さじ1(手作りの甘酒の場合は小さじ2)
※すぐ食べるだけなら、1パックだけでもいい。その場合は、しょうゆ・甘酒…各小さじ1。
【作り方】
❶納豆を器に入れ、しょうゆ、甘酒を加える
❷よくかき混ぜ、蓋ができる保存容器に移す
◎保存は冷蔵庫で1週間ぐらいを目安にする
「おかず甘酒納豆」の作り方
【材料】(2人分)
納豆…3パック(120g)
しょうゆ…大さじ2
甘酒…大さじ3(手作りの甘酒の場合は大さじ2)
ニンジン…1/4本
昆布…3cm角
炒りゴマ…小さじ1
【作り方】
❶ニンジンは薄くスライスして千切りにする。昆布は軽く火であぶって柔らかくなったら、ハサミなどで細く縦長に切る
❷納豆を器に入れ、しょうゆ、甘酒を加える
❸炒りゴマを加え、(1)を加える
❹よくかき混ぜ、蓋ができる保存容器に移す
◎保存は冷蔵庫で1週間ぐらいを目安にする
簡単!「甘酒納豆」 レシピ
「甘酒納豆じゃこ丼」
「甘酒納豆」のすばらしいところは、いろいろな料理にアレンジできる点です。しかも、甘酒納豆そのものにしっかり味がついていて、まろやかでコクがあるため、調味料はあまり必要ありません。納豆の臭いも控えめなので、ほかの食材の味をじゃますることなく、調和してくれるのです。
ご飯に甘酒納豆を乗せて、ちりめんじゃこ、ネギを加えるだけの「甘酒納豆じゃこ丼」など、シンプルだけれども栄養満点でおいしい料理がすぐに完成します。
【材料】
おかず甘酒納豆…大さじ3
ご飯…お茶わん軽く1杯
ちりめんじゃこ…大さじ1
万能ネギ(小口切り)…大さじ1
【作り方】
お茶わんに盛ったご飯に、おかず甘酒納豆を盛り、ちりめんじゃこ、万能ネギを散らす
「甘酒納豆きんちゃく」
甘酒納豆とチーズは、とても相性がよく、お酒のおつまみとしてもお勧めです。また、野菜と合わせると、ドレッシングいらずの簡単サラダができ、甘酒納豆レシピは尽きません。さらに、梅、カツオ節、海苔、ワサビ、ネギ、青ジソなどの薬味がおいしさを引き立ててくれます。
「甘酒納豆きんちゃく」は、袋状にした油揚げに甘酒納豆とチーズを入れて焼いたもの。おかずが足りないときに、ちゃちゃっと作れて、おなかも満たしてくれます。
【材料】
甘酒納豆…大さじ1
チーズ(5mm角カット)…小さじ1
長ネギ(白い部分をみじん切り)…小さじ1
油揚げ…1枚
つまようじ…2本
【作り方】
❶甘酒納豆、チーズ、長ネギを混ぜる
❷油揚げを半分に切って袋状に広げる
❸(1)を(2)に詰めてつまようじで留める
❹オープントースターで約3分、軽くこげがつく程度に焼く
「アボカド、長イモ、甘酒納豆のワサビしょうゆ和え」
納豆と同じネバネバ食材の長イモとアボカドを合わせて、ワサビしょうゆでいただくのは、夏バテ対策にぴったり。アボカドと納豆の組みあわせもおいしく、ヘルシーで栄養価の高いサラダが完成します。同じく、ネバネバ食材のオクラと甘酒納豆の和え物は、梅肉を加えた酸味がポイントになっています。
【材料】
甘酒納豆…大さじ3
アボカド…1/2個(1cm角切り)
長イモ…4cm(1cm角切り)
ワサビ…適量
しょうゆ…小さじ1
【作り方】
甘酒納豆、アボカド、長イモを器に盛り、ワサビしょうゆを上からかけていただく。
「オクラ、梅肉、甘酒納豆の和え物」
【材料】
甘酒納豆…大さじ3
オクラ…2本(生のまま薄く輪切り)
梅干し…1個(種を取り梅肉みじん切り)
カツオ節…1つまみ
【作り方】
甘酒納豆、オクラ、梅干しの梅肉をボウルに入れ、かき混ぜてネバりを出す。器に盛り、カツオ節をかける
「甘酒納豆冷やしうどん」
中華料理でおなじみの、肉みそを使ったジャージャー麺からヒントを得たレシピが、「甘酒納豆冷やしうどん」です。肉みその代わりに甘酒納豆を使い、大根おろしや青ジソ、温泉玉子といっしょにいただきます。うどんを、そうめんやそばに代えてもかまいません。暑い夏にぴったりのメニューです。
【材料】
おかず甘酒納豆…大さじ3
ゆでうどん…1玉
大根おろし…大さじ1〜2
青ジソ…2〜3枚(千切り)
海苔(千切り)…1つまみ
温泉玉子…1個
【作り方】
表示どおりにうどんをゆでて冷水にさらし、ざるにあげてお皿に盛る。甘酒納豆、大根おろし、青ジソ、海苔、温泉玉子を乗せる
「甘酒納豆オムレツ」
最後にご紹介するのは、洋風の「甘酒納豆オムレツ」です。中の具材は、おかず甘酒納豆を使えば、新たに具材を追加する必要もなく、野菜を切ったりする手間も省けます。納豆が苦手なお子さんにも、食べてもらいやすいメニューです。
【材料】
おかず甘酒納豆…大さじ4
玉子…3個
植物油…小さじ1
【作り方】
❶ボウルに玉子を割り入れ、かき混ぜておく
❷油をフライパン全体に敷き、中火で温める
❸玉子を入れ、弱火にして、調理箸でざっくり円を描くようにして玉子を半熟状にする
❹おかず甘酒納豆を玉子の下半分
に乗せる
❺フライパンを傾け、調理箸で甘酒納豆が乗っていない部分の玉子を甘酒納豆の上になるようにひっくり返す
❻フライパンを傾けても汁が垂れない程度に固まってきたら、近づけた皿に転がし移す
このように、料理にアレンジすれば、甘酒納豆がますます取りやすくなります。暑い夏は、甘酒納豆と冷蔵庫にあるもので、手軽に発酵食を取り入れて、どうぞ夏バテをしない体をキープなさってください。