最新の研究成果から、食べ物を口にしない時間を長く取ると、健康面で多くのメリットが得られることが明らかになってきました。その最たるものが、「オートファジー」の解明です。オートファジーとは、古くなった細胞を、内側から新しく生まれ変わらせるしくみのことです。【解説】青木厚(あおき内科・さいたま糖尿病クリニック院長・医学博士)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

青木厚(あおき・あつし)
あおき内科・さいたま糖尿病クリニック院長・医学博士。2002年、福井医科大学(現福井大学)卒業。長野赤十字病院、川崎市立川崎病院、自治医科大学附属さいたま医療センターに勤務したのち、自治医科大学大学院医学研究科に入学。2014年、修了。2015年、青木内科・リハビリテーション科を開設。専門は、糖尿病、高血圧、高脂血症、生活習慣病。書籍に『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)などがある。

8時間食事術とは

8時間食事術」とは、8時間以内に1日のすべての食事をとる食事法のことです。

医師である私自身も、この食事法で16kgもの減量に成功し、最大で78cmあったウエストは70cmになりました。9年たった現在も、身長170cmで体重53kg、体脂肪率6.6%の体形を維持しています。

私が8時間食事術を始めたきっかけは、40歳で舌ガンを経験したことでした。早期のうちに見つかったことも幸いし、ガン自体は手術で無事取り除くことができましたが、同じような生活を続けていたら、ガンを再発する恐れもあります。

また、私は30代後半から太り始め、腹部に内臓脂肪がつき、ちょっとしたメタボ体形になっていました。そのままでは糖尿病や高血圧、脂質異常症、動脈硬化なども心配でした。

そこで私は、さまざまな医学論文や書籍を読みあさりました。そして、糖尿病をはじめとする生活習慣病の患者さんたちの治療を通して得た自分自身の経験や知識も踏まえて、「どのような食事をすれば、最も無理なく、ストレスなく、病気を遠ざけることができるか」を真剣に考えました。

その結果、たどりついたのが8時間食事術、すなわち1日に16時間以上、食べない時間を作る食事法だったのです。

以前の私は、朝昼晩、等間隔で1日3食、バランスのよい食事をとっていました。しかし、8時間食事術に切り替えて4カ月後には、ポッコリおなかが平らになり、冒頭に述べたとおり、小太り中年体形から超スリムな体に変身しました。

そのうえ、体が元気で疲れにくくなり、カゼやインフルエンザをうつされることもなくなりました。見た目も若返り、50歳で髪はフサフサ、白髪もありません。もちろん、ガンが再発する気配もありません。

肥満が解消するだけでなく、体の内側から若返り、病気や老化を遠ざける究極の食事法なのです。

「食べない時間」が細胞の修復機能をオンにする

従来の食事療法は、カロリー制限や糖質制限など、「食べるものの量や内容を制限する」方法が主流でした。

一方、8時間食事術は「何を食べるか」、よりも「ものを食べない時間を増やす」ことに主眼を置いた食事療法です。これを「間欠的ファスティング」といいます。「ファスティング」とは、断食のことです。

ファスティングは、細胞の質の劣化や病気を防ぐ食事療法として世界的に注目が高まり、ここ14〜15年で論文数が急増しました。そうした最新の研究成果から、食べ物を口にしない時間を長く取ると、健康面で多くのメリットが得られることが明らかになってきたのです。

なぜ、カロリー制限でもなく、糖質制限でもなく、
「8時間食事術」なのか?

断食、カロリー制限、糖質制限の体に及ぼす効果を、さまざまな点で比較した模式図。図中の矢印の長さが、その効果の度合いの目安。断食は、カロリー制限や糖質制限に比べて際立ってオートファジーのしくみを活性化する

画像: 『Nutrients』(2019年11巻4号)の論文「断食の役割──人間における食事の頻度とタイミングの健康に与える影響」より改変

『Nutrients』(2019年11巻4号)の論文「断食の役割──人間における食事の頻度とタイミングの健康に与える影響」より改変

その最たるものが、「オートファジー」の解明です。オートファジーとは、古くなった細胞を、内側から新しく生まれ変わらせるしくみのことです。

細胞は主にたんぱく質で作られており、日々の生命活動の中で、古くなったり壊れたりするものも出てきます。それらの多くは外に排出されますが、排出しきれなかったものは細胞内にたまり、細胞を衰えさせ、体の不調や病気の原因となります。

オートファジーは、そうした不要なたんぱく質を集めて分解し、新たなたんぱく質を作るのです。

ただし、オートファジーは、食べ物によって得られた栄養がじゅうぶんにある状態では、ほとんど働きません

最後に食べ物を口にしてから10時間たつと、肝臓に蓄えられた糖がなくなって脂肪が分解され、エネルギーとして使われ始めます。そして16時間たつと、いよいよオートファジーが機能し始めるのです。

というのも、オートファジーは、体や細胞がストレスを受けた際にも生き残れるように体内に組み込まれたシステムで、飢餓状態になったときこそ働きが活発化するからです。

オートファジーによる細胞の生まれ変わりが起これば、不要なものや老廃物が一掃され、全身の細胞や組織・器官の働きが活性化し、肥満の解消はもちろん、病気になりにくく若々しい体になるのです。

空腹の時間を設けないと内臓は疲れる

下の表は、食事の頻度とタイミングが体に及ぼす影響をまとめたものです。食事と間食を1日に数回とり、朝食抜きで、夜遅くに食べ物を口にし、脂質や糖質を多くとる食生活は肥満を招く典型的なパターンです。

こうした食生活は、食べ過ぎを招き肥満につながるうえ、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが増えて、血管の状態も悪くなります。食事のたびに血糖値が上がるため、血糖値を下げるインスリンを分泌するすい臓にも負担がかかります。

食事の間隔が短いと、内臓は休む間もなく働き続けることになるので疲弊し、消化機能が低下。消化しきれなかった食物が腸内に残って腐敗し、腸内環境も悪化します。

さらに、肥満で内臓脂肪が増えると、脂肪細胞から悪玉ホルモンが分泌され、体内に慢性炎症が起きたり、インスリンの効き目が低下したりと、体に悪影響を及ぼします。

体への影響
●インスリン感受性が低下する
(インスリンの効きが悪くなり、血糖値の上昇やインスリンの過剰分泌を招き、太りやすくなる)
●空腹感が強まる
●体内の炎症反応が高まる
●サーカディアンリズムが乱れる
●腸内環境が悪化する

空腹の時間が少ない「太る食事」
▪️1日6回食べる
▪️朝食抜き
▪️深夜に食事や間食をする
▪️高脂肪、高糖質の食事をとる
▪️食事の間隔が短い(空腹の時間が少ない)

画像1: 医師がすすめるファスティング「8時間食事術」のやり方 何を食べるかより「空腹の時間」に注目!

体への影響
●ミトコンドリアにおけるエネルギー産生が盛んになる
●インスリン感受性が高まる(高血糖の改善)
●総コレステロール値が下がる
●空腹感が抑えられる
●体内の炎症を抑える
●オートファジーが活性化する
●サーカディアンリズムが整う

空腹の時間が長い「やせる食事」
▪️1日2〜3食
▪️朝食を食べる
▪️最後の食事は夕方4時〜5時に終える
▪️深夜の食事や間食を避ける
▪️たんぱく質を積極的にとる
▪️1日12〜16時間は食べない(空腹の時間を長くとる)

画像2: 医師がすすめるファスティング「8時間食事術」のやり方 何を食べるかより「空腹の時間」に注目!

一方、1日12〜16時間ものを食べない時間(空腹の時間)を設ける食事法は、体に多くのプラス効果をもたらします。

まず、内臓を休める時間を確保できるので、内臓の消化・吸収・解毒・排泄機能が高まり、腸内環境も改善して免疫力も高まります。

ものを食べない時間を長く取るほど、血液中の糖質や脂質が減り、血液や血管の状態が改善されます。体内の余計な脂肪も分解され、エネルギー源として使われていきます。

特に、ポッコリおなかの一因であり、さまざまな悪玉ホルモンを分泌する内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて落ちやすいという特徴があります。

加えて、オートファジーが活性化して細胞の生まれ変わりが促進され、体の不調や老化が改善されます。

さらに、朝食をとり夜食を避ける食習慣は、体に備わっている1日周期の生体リズムに沿っているので、睡眠・覚醒のサイクルや体温調節などの生理活動が乱されません。

そのため「8時間食事術」は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心臓の血管の病気、アレルギー、ガン、認知症など、さまざまな病気の予防や改善に役立つと考えられるのです。

ナッツとヨーグルトはOK

8時間食事術では、1日のうち8時間は「食べてOK」の時間です。好きなタイミングで食事をとり、基本的には、何をどれだけ食べるのも自由です。

何も食べずに16時間も過ごすのはつらそうに見えるでしょうが、実際はそうでもありません。私たちは毎日約8時間は睡眠をとっています。寝ながらものを食べる人はいませんし、睡眠中は空腹を感じることもありません。

睡眠時間の前後に合計8時間の「空腹の時間」を割り振れば、「おなかが空いた」「何か食べたい」といった思いにさほど苦しむことなく過ごすことができます。

「食べてOK」の時間をいつにするかは、自分の生活スタイルに応じて決めるのが成功のコツです。下に、モデルケースを紹介しました。

《ライフスタイル別「8時間食事術」》

基本スタイル
体内時計に合致したいちばん健康的な方法

画像3: 医師がすすめるファスティング「8時間食事術」のやり方 何を食べるかより「空腹の時間」に注目!

【 向いている人 】
・65歳以上、主婦
・夕食を早い時間に食べられる人
・空腹を感じる時間を短くしたい人
【 メリット 】
無理なく取り入れられるため、体の負担が少なく、アンチエイジングや老化の予防効果も高まりやすい

午後6時頃など早い時間に夕食をとれる人は、朝食の時間を後ろにずらすといいでしょう(上図)。

働き世代の基本形
朝食抜き

画像4: 医師がすすめるファスティング「8時間食事術」のやり方 何を食べるかより「空腹の時間」に注目!

【 向いている人 】
・働き世代
・空腹を感じる時間を短くしたい人
【 メリット 】
朝食抜きのみで取り組みやすくアンチエイジングや老化の予防効果も高まりやすい

夕食の時間が遅くなる人は、朝食抜きにします(上図)。

働き世代の応用形
昼食抜き

画像5: 医師がすすめるファスティング「8時間食事術」のやり方 何を食べるかより「空腹の時間」に注目!

【 向いている人 】
・夕食が遅くなってしまう人
・集中しているときおなかが空かない人
【 メリット 】
仕事の効率が上がりやすい
ランチ代の節約になる
【 気をつけたいこと 】
朝食を食べる場合は、肉、卵、魚などのたんぱく質中心に取る。糖質を取り過ぎると、お昼頃に空腹感が強くなる

夕食の時間が遅くなり、しかも、日中、集中しているときにおなかが空かない人は、昼食抜きにするという方法もあります(上図)。

「空腹の時間」におなかが空いたら、ナッツ類ヨーグルトなどを食べます。これらは少量でも空腹感が和らぎ、体に必要な栄養素を補給できて腹持ちもよいので、空腹がつらいときは我慢せず食べてOKです。

飽食で栄養過多な状態に体は適応できない

「8時間食事術」に関する質問で多いのが、「1日3食しっかりとらないと体に悪いのでは?」「16時間も空腹を我慢できない」という2つの声です。皆さんも、同様の不安をお持ちかもしれません。

しかし、そんな心配は無用です。日本に1日3食の習慣が広まったのは、江戸時代のこと。原始時代から江戸時代まではせいぜい1日2食で、狩りや労働の間はものを食べないのがあたりまえでした。

人類の誕生以来、人間の体のしくみはほとんど変わっていません。人体には飢餓に備えて体内に栄養を蓄え利用するしくみは発達していますが、飽食で栄養過多な状態に適応するしくみは、まだ不十分なのです。

現代人の1日3食の生活は、それだけで食べ過ぎになる可能性が大いにあります。糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満、動脈硬化、ガンなど、現代人の生活習慣病の多くは、食べ過ぎが関係しています。

「食事のあと眠気や体のだるさを感じる」「最近、疲れやすくなった」「胃腸が弱っている気がする」「イライラや不安、無気力など気分の変動が激しい」といった症状に思い当たるものがある人は、食べ過ぎの可能性があります。

1日3食の最大の弊害は、胃腸を休ませる時間がなく、内臓が疲弊してしまうことです。内臓が疲れて消化機能が衰えると、食べ物からきちんと栄養素を吸収できなくなり、栄養不足で髪や肌のコンディションが悪くなったりします。

また、本来は肝臓で解毒されるはずの毒素や老廃物が体内に残ったり、体内で産生できるエネルギー量が減ったりして、体が疲れやすくなるなどの不調を招きます。

食べ物が胃腸で消化し終わるまで8時間くらいかかるので、朝昼晩と食事をとると、内臓を休ませる時間がなくなってしまいます。脳や体に休息が必要なのと同じく、内臓にも休みが必要です

食事をとらない時間を16時間確保してようやく、内臓は1日8時間の休息・メンテナンス時間を得られるのです。

空腹12〜14時間でもいい

食欲や空腹感は、頻繁に食べるほど高まる性質があります。特に、糖質の多い食事は、血糖値が乱高下し、食欲中枢が刺激されて、空腹感を強く感じます。

反対に、ものを食べない時間が長くなると、食欲は抑えられます。ものを食べない空腹の時間は、体内の糖質や脂質がエネルギーに変換され、盛んに消費される時間。活動エネルギーがじゅうぶんにあり、体は軽く頭の回転も速い、とても爽快で快適な状態です。

肥満解消だけが目的であれば、空腹の時間が12〜14時間程度でも、体内の脂肪が燃焼し始めます。8時間以内にすべての食事を終えるのが難しければ、10時間でもかまいません。まずは、無理なくできる範囲で試してみてください。

《あなたの「8時間食事術」は?》
24時間時計の絵に、あなたの「空腹時間」と「食べてOK」時間を書き入れてみましょう

画像6: 医師がすすめるファスティング「8時間食事術」のやり方 何を食べるかより「空腹の時間」に注目!
画像: この記事は『ゆほびか』2019年10月号に掲載されています。

この記事は『ゆほびか』2019年10月号に掲載されています。

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