ぬか漬けは管理が難しいため失敗しがちですが、ヨーグルトみそ漬けなら、混ぜ合わせて野菜を漬けるだけ!おいしいのはもちろん、両者の菌の力が野菜に浸透し、腸内で「短鎖脂肪酸」という“やせ酸”が増えやすくなります。【解説】光武和彦(ホロス光武クリニック院長)
解説者のプロフィール
光武和彦(みつたけ・かずひこ)
ホロス光武クリニック院長。医学博士。日本産婦人科学会専門医。日本胎盤臨床医学会認定医。YNSA(山元式新頭鍼療法)学会認定医。久留米大学医学部卒業、同大学院博士課程(専門:栄養・代謝)修了。筑後市立病院産婦人科医長などを経て、1990年、光武産婦人科を開院。1997年、食事療法を中心とした肥満治療外来を開始し、診療を本格化。2013年、ホロス光武クリニックに改称し、現在に至る。
「ヨーグルトみそ漬け」基本の作り方
【材料】(作りやすい分量)
・プレーンヨーグルトまたは
豆乳ヨーグルト(作り方は下記参照)…200g
・みそ…100g
・お好みの野菜…300g
・塩…適量
【作り方】
❶野菜を漬けやすい大きさに切る。塩をすり込み10~20分ほどおき、出てきた水分をしっかりとふく。
※水分をしっかり出すことで、漬け床内の乳酸菌と酵母が野菜に入りやすくなる。
❷ヨーグルトとみそを、ボウルに入れてよく混ぜ合わせる。
※オリゴ糖とハチミツ(各分量外)を大さじ1ずつ加えると、乳酸菌と酵母が活性化しやすくなる。
❸ジッパーつき保存袋に(1)と(2)を入れて密閉し、冷蔵庫で1~2日保存して完成。
【食べ方と保存法】
●ヨーグルトみそを軽く洗い流し、食べやすい大きさに切る。夕食時、小鉢に山盛り1杯分食べる(できれば昼食時も)。
●冷蔵庫で10日ほど保存できる。漬けた翌日から食べられるが、できれば1週間漬けてから食べると、より乳酸菌と酵母が野菜に入り込むのでお勧め。なお、漬け床は食べないこと。
●漬かりぐあいは切り方や漬ける時間によって調節可能。また、野菜を漬けたあとの漬け床は、肉や魚などを漬けて再利用できる。ただし、水分が増すので、別の野菜を漬けるのは避けること。
《豆乳ヨーグルトの作り方》
【材料】(作りやすい分量)
・ 豆乳(無調整)…1L
・カスピ海ヨーグルト…130~200g
【作り方】
❶ヨーグルトメーカーの容器に材料を入れ、混ぜ合わせる。
❷温度を27度、タイマーを12時間にセットして、スタートボタンを押す。粘りが出る程度に固まったら完成。
【食べ方と保存法】
●冷蔵庫で保存。1週間以内に食べ切る。漬け床として使うほか、デザートとして食べたり、ヨーグルトみそ漬けにかけて食べたりしてもよい。食べる目安は1日200g。
●ヨーグルトメーカーがない場合は、容器に材料を混ぜ合わせ、常温でひと晩おいても作れる(27度の温度に近い環境に限る)。
ヨーグルトみそ漬けをよりおいしく効果的に作る裏ワザQ&A
野菜の水分を抜けば有用な菌が野菜に入る!
この項では、ヨーグルトみそ漬けの作り方に関する疑問点を解決していきましょう。
基本の作り方は上に記したとおりですが、ここでは、当クリニックでアドバイスしている、より高度な漬け方もご紹介します。手間はかかりますが、その分、味も腸への効果も向上します。参考にしてください。
Q1. 野菜に塩をすり込んで水分を抜く工程は必要ですか?
A1. 必要です。むしろ、ヨーグルトみそ漬けは、この工程が肝心です。水分をしっかりと抜けば、乳酸菌と酵母が野菜に入りやすくなり、整腸効果がグンとアップします。
水分を抜くために塩を使いますが、高血圧や食欲過多の予防のためにも、塩分はやはり、極力摂取しないほうが賢明です。水分を多く抜けば塩分も抜けますので、しっかりと処理してください。
基本の作り方では、「10~20分おく」とありますが、野菜の上に漬物石やペットボトルなどの重しをおいて、しっかりと水分を抜くといいでしょう。
おく時間は、できれば5~6時間、余裕があれば8時間が理想です。例えば、前日の夜に重しをおいて、翌朝に出た水分を拭く、でもいいでしょう。ここまでおけば、野菜の体積が3分の1程度まで縮み、水分と塩分は、ほぼ抜けます。
また、野菜を切る際、あらかじめ細かくカットしてから重しをおけば、かなり水分は抜けていきます。
Q2. みそはどんなみそを使ってもいいですか?
A2. お好みの物でかまいません。私のお勧めは白みそです。きれいな色に漬かり、味も上品に仕上がります。
なお、切り方や漬ける時間により、味の濃さが変わります。濃い味にならないよう、ヨーグルトとみその比率は「2~3:1」程度にしましょう。
Q3. 保存期間はいつまでですか?
A3. 私の経験上、最大11ヵ月は冷蔵庫で保存可能です。ただし、ジッパーつき保存袋でしっかりと密閉することが条件です。漬けた野菜を取り出したら、再びしっかりと空気を抜いてください。空気の層が増えると酸化が進み、傷みやすくなります。
1週間から10日漬けると、保存袋の中に水分がたまります。この水分を捨てて、新たなヨーグルトを適宜追加します。これを毎週くり返せば、菌が元気になるうえ、1ヵ月間はおいしくいただけます。
万が一、腐敗臭がしたりカビが生えたりした場合は、廃棄してください。
Q4. 食べごろはいつですか?
A4. 漬けた翌日からでも食べられますが、できれば1週間以上漬けてから食べるのがお勧めです。古漬けのほうが、より乳酸菌と酵母が入り込んだ状態になります。
長く漬けると酸味が増しますが、これは、乳酸菌が入り込んだ証拠。あまりに強烈な酸っぱさで食べられない、舌がピリピリする、という場合を除けば、問題なくいただけます。
オリゴ糖とハチミツを加えれば菌が元気に!
Q5. 豆乳ヨーグルトの作り方で、カスピ海ヨーグルトを使用していますが、「乳製品は日本人の腸に合っていない」とあります(別記事)。使っても問題ないのでしょうか?
別記事:「ヨーグルトみそ漬け」解説→
A5. 問題ありません。乳製品ではありますが、あくまで種菌として使用するため、摂取量としては心配に及びません。カスピ海ヨーグルトで作ると、滑らかな仕上がりになるうえ、免疫調整作用のある菌が含まれているため、お勧めしています。
なお、ほかのヨーグルトを使って豆乳ヨーグルトを作ることも可能です。その際は、ヨーグルトメーカーの設定温度を43度にして、10~14時間保温して固まったら完成です。
最近では、ガセリ菌やR-1乳酸菌など、独自の乳酸菌を含んだヨーグルトが販売されています。これらの菌を享受するためにヨーグルトを利用するのも、腸のためには有効です。
Q6. 腸内の善玉菌をより増やすための漬け方はありますか?
A6. ヨーグルトとみそに、オリゴ糖を大さじ1加えて混ぜてから漬けると、乳酸菌が活性化します。さらに、ハチミツも大さじ1加えると、みその酵母も活性化するため、善玉菌の増加が期待できます。
また、豆乳ヨーグルトを作る際も、オリゴ糖を同様に加えると、乳酸菌の活性化を促します。
Q7. 漬ける野菜でお勧めはありますか?
A7. 旬の野菜や、色の鮮やかな野菜がお勧めです。抗酸化物質が豊富で栄養価も高いため、積極的にとりましょう。
なお、イモ類とサヤエンドウは、漬けるとえぐみが出るため、避けたほうが無難です。
以上、細かくお伝えしましたが、ヨーグルトみそ漬けは、手軽でおいしくなければ、長続きしません。最初は基本の作り方から始めて、さらに追求したくなったら、いろいろと試していけばいいと思います。
ぜひ、ヨーグルトみそ漬け作りを楽しんでください。
※この記事は『壮快』2019年10月号に掲載されています。