【コーヒーにお酢!?】コーヒーの健康効果を高める「酢コーヒー」とは 酢酸とクロロゲン酸で肥満を予防

美容・ヘルスケア

コーヒーの「クロロゲン酸」には活性酸素を除去する抗酸化作用のほか、抗菌作用もあります。このクロロゲン酸の働きを助けるのが、酢に含まれる酢酸です。コーヒーに酢を加えて飲むことで、それぞれ単独で果たす役割以上の、大きな効果を期待できるのです。【解説】板倉弘重(品川イーストワンメディカルクリニック院長)

解説者のプロフィール

板倉弘重(いたくら・ひろしげ)
医学博士。東京大学医学部卒。品川イーストワンメディカルクリニック院長。カリフォルニア大学サンフランシスコ校心臓血管研究所に留学後、東京大学医学部第三内科講師を経て茨城キリスト教大学生活科学科教授に就任。『認知症の人がズボラに食習慣を変えただけでみるみる回復する!』(青萠堂)など、著書多数。

腸と肝臓で働き健康を守るコーヒーポリフェノール

コーヒーに酢」というと眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれませんが、少量の酢はコーヒーの味わいにさほど大きな影響を与えるものではありません。

それどころか、ほのかな酸味がコーヒーの苦みに意外なほどにマッチして味わいにまろやかさと奥行きを与えてくれます。新たな美味しさを発見できることでしょう。

人間の味覚は多様性を求めるもので、それが脳への刺激となります。コーヒーにいつもと異なる風味を加えることで、刺激作用による新たな健康効果も期待できるでしょう。

「コーヒーはカフェインを含むため、飲み過ぎは体に悪い」と言われたのは昔のこと。今は、コーヒーを1日に2杯以上飲むことが、健康によい効果を及ぼすと注目が集まっています。

コーヒーと健康の関わりを探る研究は、1990年代頃から盛んに行われてきましたが、近年ではコーヒーを飲むことで脳卒中(脳の循環障害により運動障害や言語障害などが起こる病気のこと)や心臓の病気、ガン、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、認知症、肥満などを予防できるという研究結果もあります。

コーヒーを飲んでいる人のほうが、飲んでいない人に比べて、さまざまな病気にかかりにくくなり、死亡率が低い傾向にあることが科学的に実証されてきたのです。

ポリフェノールの効率いい摂取にはコーヒーがいちばん!
首都圏在住の主婦109人に、食事、飲料などを1週間記録してもらい、ポリフェノールをどこから摂取しているのかを算出した(Fukushima Y et al.,J Nutr Sci,2014)

こうした健康効果は、コーヒーに含まれるポリフェノールの働きによるものです。

ポリフェノールは植物の果実や種子、果皮などに含まれる抗酸化物質で、その種類は5000以上あるとも言われています。コーヒーの香りや苦みの元となっている「クロロゲン酸」は、こうしたポリフェノールの一種で、コーヒー100mlについて15〜20mgほど含まれています。

コーヒーのクロロゲン酸には、体を酸化させて病気や老化を招く「活性酸素」を除去する抗酸化作用のほか、抗菌作用もあります。

コーヒーを飲むと、まずクロロゲン酸は胃腸へ届き、その抗菌作用で腸内の悪玉菌を抑えます。

腸内細菌は腸の病気はもちろん、脳を含む全身へ影響を与えることが研究でわかってきました。腸内細菌のバランスを整えることで、大腸ガンなどの胃腸の病気はもちろん、認知症など、さまざまな病気への予防効果も期待できるのです。

胃腸で働いたクロロゲン酸は、その後吸収されて、血液によって肝臓へと運ばれます。ここでもクロロゲン酸は抗酸化作用を発揮して酸化物を解毒します。

脂肪分と糖分をとりすぎる傾向にある現代人は、過剰に摂取された脂肪と糖質は肝臓に溜まり、脂肪肝となってしまいます。

脂肪肝は放っておくと肝硬変(肝臓が硬く小さくなり、機能を果たさなくなる病気)、や肝臓ガンなどの恐ろしい病気に進展しますが、これをコーヒーのクロロゲン酸が防いでくれるのです。

さらに、ポリフェノールは食事といっしょにとることで、糖分が体内に吸収されるのを抑制する働きも持っています。

同じくコーヒーに多く含まれるカフェインには、脂肪を分解し、脂肪燃焼とエネルギー消費を高める働きがあるため、コーヒーを飲めば、ポリフェノールとカフェインでダブルの肥満を抑制する効果も期待できるでしょう。

ほかにも、クロロゲン酸が脳に届けば炎症を防ぎ、認知症のリスクを低減します。

また、強い紫外線やパソコン、スマホなどのブルーライトを浴びると、目の網膜で発生する活性酸素をクロロゲン酸が抑制し、眼精疲労を防ぎ、近眼や老眼を防ぐ役割も担います。

コーヒーのクロロゲン酸は全身に届き、その抗酸化作用でさまざまな健康効果を発揮するのです。

《コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)》
体内の炎症・酸化を抑える
高血圧や脳梗塞などを回避する
血糖値を下げる
脂肪燃焼を促す

酢酸とポリフェノールにはうれしい相乗効果も

こうしたクロロゲン酸の働きを助けるのが、酢に含まれる酢酸です。

食品保存にも活用される酢酸は、高い抗菌作用を持ち、体内に入ると腸に届いて悪玉菌を減らします。

さらに、酢をとることで腸の血流が促進され、腸のぜん動運動が活発になる効果もあるのです。酢を摂取することで腸内環境が改善されると同時に、活性酸素の発生も抑制されます。

つまり、コーヒーと酢を同時に飲むことで、腸への相乗効果が期待できるのです。

昔から「酢を使った食事をとれば高めの血圧が下がる」と言われてきましたが、近年ではそれを裏打ちする研究成果も、次々に報告されています。

一方で、コーヒーのクロロゲン酸にも血管壁の内皮細胞(血管の内側を覆う細胞)を保護して血管をしなやかに保つ働きがあり、動脈硬化を防いで血圧を下げる効果が期待できます。

さらに、血糖値の上昇を抑える効果やダイエット効果など、酢酸とクロロゲン酸は、その健康効果を多数、共有しています。

コーヒーに酢を加えて飲むことで、それぞれ単独で果たす役割以上の、大きな効果を期待できるのです。

酢コーヒーの作り方

【材料】
インスタントコーヒー……大さじ1
黒砂糖(なければハチミツ)……小さじ1
お湯……200ml
お好きな酢……小さじ1

【作り方】
インスタントコーヒーと黒砂糖をカップに入れてお湯を注ぎ、溶かす
酢を入れて混ぜる

※コーヒーや砂糖、酢の量などは目安であり、お好みで調整してください
※コーヒーはインスタントではなく、ドリップコーヒーでも問題ありません。
※冷めてしまうと酸味が強くなるため、なるべく温かいうちにお召し上がりください

健康効果の高い酢コーヒーは1日3〜4杯を目安に

コーヒーのポリフェノールはたくさんとっても害はありませんが、コーヒーを飲むことで同時にカフェインも多くとってしまうので、注意が必要です。

コーヒーの健康効果を期待するならば、1日に4杯程度を目安にしましょう。

酢の酢酸は過剰に摂取すると胃腸を荒らしたり、歯の表面のエナメル質を溶かしたりする恐れがあります。酢は原液で飲むことはできるだけ避け、1日に大さじ1〜2杯程度を目安とするのがよいでしょう。

酢には穀物酢や純米酢、黒酢やリンゴ酢、ワインビネガーやバルサミコ酢など、さまざまな種類があります。それぞれ味わいの違いが楽しめますので、コーヒーとの相性を試して、お気に入りの酢を見つけるのもよいでしょう。

コーヒーのカフェインがどうしても気になるという人や妊娠中の方は、酢コーヒーに使うコーヒーはノンカフェインのものでも構いません。

ノンカフェインのコーヒーにも通常のものと同量のポリフェノールが含まれているので、同等の効果を得ることができるのです。

コーヒーを楽しむ時間は、ストレス発散にもなります。毎日の生活に酢コーヒーを取り入れて、ホッとひと息、体が喜ぶブレイクタイムを楽しんでください。

この記事は『ゆほびか』2019年11月号に掲載されています。

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