秋から冬、家電量販店にはたくさんの暖房器具が並んでいます。その中から今シーズンも、高性能な電気ヒーター3機種を紹介したいと思います。具体的には、ダイキンのセラムヒート、ダイソンのHot+Cool、デロンギのマルチダイナミックヒーターです。どれも、知名度は高いのですが、そのわりによく理解されていなかったりします。買ってから後悔しないために、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
高性能電気ヒーターの特徴
「すごい!」と言われる一方で、向き不向きの差が大きい3台。
電気を使う暖房器具にはたくさんの種類がありますが、それぞれ特徴があります。それを知らずに買いに行くと選ぶのが難しいし、自分に合わない器具を買ってしまう可能性もあります。
暖房器具全般の特徴については、こちらの記事(暖房器具のおすすめ種類と特徴を徹底比較)を参照してください。
また、いわゆる電気ストーブの中にも多くの種類があります。これに関しては、こちらの記事(電気ストーブのおすすめ 種類と値段の違いはコレ!)が参考になります。
といったことを踏まえて、今回は電気を使って温めるヒーターの中から特に高性能な機種を3台ご紹介します。
どれも、部屋にあると「お、すげぇ!」と言われそうですが、実は向き不向きの落差が大きい製品でもあります。つまり、「これはいい!」という人がいる一方で、「これは違ったな」と感じる人も多いのです。それぞれの機器の特徴を、よ~く理解しておきましょう。
第3位ダイキン・セラムヒートERFT11XS-W
電気ストーブの中では最高クラスのハイパワー。
エアコンなどの空調機器で世界1位のダイキン工業から発売されている高性能な電気ストーブです。
電気ストーブ選びの記事の中でも書いていますが、電気ストーブはヒーター管の違いで暖かさに差があります。ダイキンのセラムヒートはシーズヒーターの仲間ですが、金属製の丈夫なヒーター管にセラミックコーティングを施して、一般的なシーズヒーターより多くの遠赤外線をより遠くまで飛ばすことができます。
遠赤外線ストーブ「セラムヒート
ERFT11XS
出力は、操作ダイヤルで300Wから1100Wまで切り替えることができます。また、首振りが可能で、タイマーや人感センサーも備えています。さらに、ヒーター管の角度を上下に変えられる(チルト)ほか、首を横向きにして幅広タイプの器具として使うこともできます。
ただし、あくまでも電気ストーブの仲間です。遠赤外線の量が多いので暖かさは抜群ですが、温風が出てくるわけではありません。長くつけておけば少しずつ室内温度が上がりますが、基本的に部屋の温度を上げることを目的とした器具ではありません。
電気代は、最強の状態(1100W)で使うと、1時間あたり30円くらい(東京電力の従量電灯Bの3段料金で計算)。しかし、もっと弱くして使うことが多いと思われます。今回紹介している3機種の中では消費電力を抑えやすい製品といえるでしょう。
第2位ダイソン Pure Hot + Cool LinkHP04WS N
きれいな温風を部屋中に届ける力強いヒーター
もともと「羽のない扇風機」として有名になった製品が進化して、今は空気清浄機+扇風機+電気ヒーターになっています(別途、空気清浄機+扇風機や空気清浄機+加湿器という製品もあります)。
ちなみに、Pureは空気清浄機を表し、Hotはヒーター、Coolは扇風機を表しています。最後のLinkは、スマホアプリに対応しているという意味で、「ダイソン・ピュア・ホット・アンド・クール・リンク」と読みます。
こう書くと、ほどほどの機能の組み合わせのようなイメージを持つ人がいるのですが、実はどの機能もトップクラスの高性能です。
まず、空気清浄機はPM0.1レベルの微細な粒子を99.95%除去します。これは、他社製品と比較すると最も高性能な数値となっています。さらに、煙や臭い、スプレー缶に含まれる有害ガスを吸着する活性炭フィルターも備えています。
次に、扇風機の機能。よく誤解されるのですが、エアコンのように空気を冷やす機能はありません。扇風機なので室温のままです。ただし、高性能な空気清浄機を通してきれいになった風が出てきます。
最後に、本題のヒーター機能です。しくみとしては、空気清浄機を通してきれいにした空気を、扇風機として吐き出すまえに内部の熱源で温めます。製品ジャンルとしては、セラミックファンヒーターになりますが、電気ヒーターの中では最もパワフルといわれます。
Dyson Pure Hot + Cool
HP04WSN
消費電力は、ヒーターとして使っているときは1400W。なので、1時間つけっぱなしにすると30円台後半の電気代がかかります(東京電力の従量電灯Bの3段料金で計算)。ただし、設定した室温まで上がると、しばらく温風が止まります。そして、寒くなってくると設定した温度に上がるまで温風を出す方式。そのため、常に40円近い電気代がかかるわけではありません。
基本的には、消費電力1400Wの電気ヒーターなので、同じくらいの性能のセラミックファンヒーターと比べて極端に能力が高いということはないと思います。ただし、もともと高性能な扇風機なので、温めた空気を遠くまで送り届ける、部屋中に巡回させるパワーがあります。そのためダイソンは、他のメーカーの機種と比べて「最も暖める力が強い」といっています。
本体を前後に傾けたまま首振りもできるし、タイマーもあります。また、無料アプリを使ってスマホから操作したり、スマホの画面で使用状況を確認したり、曜日ごとにスケジュールを作ることもできます。たとえば、平日は朝6時になったら暖房運転を始めて8時になったら自動的に止めるといった使い方が可能です。
せっかく買うなら一年中役に立つ製品がいい、暖房中も室内の空気がきれいになってほしいといった人は検討してみるといいでしょう。
第1位デロンギ・マルチダイナミックヒーターMDHAA15WIFI-BK
じんわり暖かいヒーターが使い勝手のいい暖房器具に進化
デロンギといえばオイルヒーター、メーカー名が実質的に製品名のようになってきました。しかし、ここ数年でデロンギの主力製品が変化しています。
従来は、オイルヒーターという名前のとおり金属製のフィンの中にオイル(油)が入っていました。そして、そのオイルを電気で温めるとフィン全体からジワジワと暖かさが出て、部屋全体をじんわりと温めるしくみでした。
オイルヒーターは、暖かい風が出てくることはありません。あくまでも長時間つけておくと、じんわり温めてくれる器具です。そのため、小さなお子さんやペットがいる家、病気や介護で長く寝ている人がいる部屋などに向いているとされてきました。
こう書くと良い製品のように感じるかもしれませんが、オイルヒーターには温まるまで時間がかかる、暖かさを実感しにくい、そして電気代がかかるといったデメリットがあります。このあたりを考えないで買うと後悔する暖房器具No.1ではないかと危惧していました。
今も、こうしたオイルヒーターが売られていますが、デロンギの主力製品はパネルヒーターに移りつつあります。パネルヒーターは、いろいろな会社から発売されていますが、デロンギ製品の名称はマルチダイナミックヒーターといいます。
マルチダイナミックヒーター
MDHAA15WiFi-BK
パネルヒーターは、簡単にいうと内部に電気ヒーターが入っていて、その外側をパネルで囲ったもの。パネルは、ある程度は暖かくなりますが、やけどしたり火事になったりすることはまずないレベル。オイルヒーターと同様、安全性が高い暖房器具です。
そしてデロンギのマルチダイナミックヒーターは、オイルヒーターの弱点が大幅に改善されています。まず、部屋を暖める時間が約半分になりました。また、きめ細かな温度設定が可能になり、24時間対応のタイマー設定やECOモードにも対応しています。
さらに、ここで紹介している機種はWi-Fi機能を搭載し、スマホやスマートスピーカーからの操作にも対応。スマホを使って外からON/OFFや温度設定の操作が可能です。なお、スマホ操作が不要な人は、下位モデルのMDHU15-BKなどを選ぶといいでしょう。
消費電力は最強のときで1500W。この状態で1時間つけておくと電気代が40円近くになります(東京電力の従量電灯Bの3段料金で計算)。ただし、マルチダイナミックヒーターは温度設定やタイマー設定が可能なので常にこの料金がかかり続けることはないでしょう。
MDHAA15WIFI-BKは、使い方にもよりますが他の大型電気ヒーターと同じくらいの電気代で使用できる製品になっています。輻射熱で部屋全体を暖めたり、高い安全性といったメリットはそのままに、使い勝手が向上したデロンギのヒーターを今シーズンの1位としました。
まとめ
今回紹介した3台は、どれも優れた製品だと思います。しかし、それぞれの特徴を知って、適材適所で使わないと期待どおりの効果を得ることはできません。
他の記事でも書いていますが、暖房器具は1台で家全体あるいは部屋全体を暖めるのは難しいものです。全体的な暖房計画を考えながら、今回紹介した器具を上手に配置して暖かい冬をお過ごしいただければと思います。
電気代に関しては、こちらの記事(電気ストーブのおすすめ 電気代の目安と消費電力)も参考になります。
高山とほ(プロダクトライター)
約5年に渡って家電量販店の店頭に立ち、いろいろなお客様に対応した経験から「それぞれのお客様にとって最適な製品を選ぶポイントを的確に伝える」ことをモットーにしているモノ派のライター。学生時代に工業デザインを学び、日本製家電の黄金期に郷愁を感じる世代。アウトドアを好み、道具にはこだわるほう。