おならは誰でもするもので、決して恥ずかしいことではありません。しかし、自分のおならが人より臭い、または臭すぎるのではないかと悩む方は大変多くいます。おならが臭くなる原因は腸内環境の悪化、特に食生活によって引き起こされる便秘にあります。善玉菌を優勢にし、便秘を解消することがおならの臭い対策に不可欠ですが、最も簡単な方法があります。それは、朝一番にコップ一杯の「常温の水」を飲むことです。(2020年5月18日更新)
【解説】後藤利夫(新宿大腸クリニック院長)
解説者のプロフィール
後藤利夫(ごとう・としお)
新宿大腸クリニック院長。1988年、東京大学医学部卒業。専門は大腸内視鏡検査で、無痛の「水浸法」という独自の検査法を考案。全国30以上の病院で大腸内視鏡検査を実践・指導。
▼新宿大腸クリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
おならが臭い原因は?
腸内環境の悪化で便もおならも臭くなる
おならは、誰でもするもので、決して恥ずかしいことではありません。とはいえ、自分のおならの悪臭が漂い、いたたまれない思いをするのは避けたいものでしょう。
おならは、大腸にたまったガスです。胃で消化された食べ物は小腸で栄養を吸収され、残りかすが大腸に送られます。その残りかすを腸内細菌が分解する際に、ガスが発生するのです。多くは便とともに排出されますが、ガスだけが肛門から出ると、おならになります。
日によって、おならのにおいに強弱があることは、皆さんも実感があるのではないでしょうか。食べた物や睡眠時間、ストレスの有無によっても、おならのにおいは変わります。
おならが臭いときは、腸内環境が悪化していると考えられます。前述したように、おならは、食べた物を分解した際のガスですから、食べた物や腸内細菌の種類によって、においが変わってくるのです。
臭いおならを防ぐ方法
便秘の解消が重要
腸内に善玉菌が増えると快便になり、便臭やおなら臭も軽くなります。逆に、悪玉菌が優勢になると、便秘になります。便が滞留することで、さらに悪玉菌が増加し、便もおならも臭くなるという悪循環に陥ります。
つまり、臭いおならを防ぐには、腸内の善玉菌を優勢にし、便秘を解消することが重要なのです。
最も簡単な便秘解消法は「朝いちばんの水飲み」
私が患者さんに勧める最も簡単な便秘解消法が、「朝いちばんの水飲み」です。朝、起きたら、まずコップ1杯の水をゆっくり飲んでください。腸を冷やさないように、暑い日でも常温の水がお勧めです。
私たちの内臓は、自律神経でコントロールされています。自律神経は、心身を活動的にする交感神経と、休息に導く副交感神経の二つが、バランスを取りながら働いています。
就寝中は副交感神経が優位になり、消化器官が活発になります。寝ている間に、便が小腸から大腸に移動して、朝には肛門の近くまで送られてきます。ここで水を飲むと、腸への適度な刺激となり、自然な排便につながるのです。
このとき、便の間にあるガスもいっしょに排出されるので、昼間、おならが出たとしても、においは軽減するでしょう。
腸内環境が悪化する最大要因は食生活
臭いガスを発生させる悪玉菌
さて、前述したように、腸内環境は、睡眠時間やストレスなどによっても変わりますが、最大の要因は食生活です。
例えば、肉や卵ばかり食べていると、たんぱく質や脂質を分解する酵素が足りなくなり、小腸で十分に消化されないまま大腸に送られます。これが悪玉菌の栄養源となり、分解される際に、硫化水素や二酸化硫黄、インドール、アンモニアなどの臭いガスを発生するのです。
一方、糖質や食物繊維は、善玉菌のえさになります。分解されて、炭素や水素、酸素になるので、においません。
長期間・過剰な糖質制限は腸内環境の悪化を起こす
最近、ご飯や麺類、イモ類などを断つ「糖質制限ダイエット」が流行しています。短期的には体重が減少しますが、腸内環境のことを考えると、長期間続けるのはお勧めできません。卵や肉、乳製品ばかり食べていると、腸内の悪玉菌が増え、便やおならのにおいが強くなります。
もちろん、糖質の過剰摂取は控えたほうがいいのですが、完全に食べないのは腸内環境を悪化させます。バランスを考えながら、糖質も適度にとりましょう。
便秘がガス腹も引きおこす
腸内で悪玉菌が増えて便秘になると、「おなかの張り」に苦しむ人が出てきます。これは、便だけでなく、ガスが腸内にたまることで起こる症状です。「ガス腹」ともいいます。おならは気体なので、便のすきまから排出されそうなものですが、そうはいきません。おならの元となるガスは、シャボン玉のように、表面が粘液に包まれているので、なかなか出られないのです。
おならが口臭や体臭の原因になることも
その一方で、おならは水に溶けやすい性質も持っています。大腸は、小腸から送られてきた液状の便から、水分を吸収して、形のある便にします。その際、悪玉菌が作り出す臭いおならが、水分に溶け込んで大腸から吸収され、血液に取り込まれて全身を巡ります。それが、口臭や体臭の原因になることもあるのです。
まとめ
おならのにおいを軽減するには便秘の予防・解消が不可欠!
おならのにおいを軽減するには、まず、便秘の予防・解消を心がけてください。朝の水飲みのほかにも、オクラやモロヘイヤ、ナメコなど、ネバネバした食品や、モズクやメカブなどの海藻類は、便をやわらかくして出やすくします。
また、前述したように、小腸での消化不良が大腸の悪玉菌を増やし、便臭やおなら臭を悪化させます。食べ過ぎず、常に腹八分目を心がけてください。ガス腹がつらく、食生活の改善などでも効果が現れないときは、消化器内科を受診しましょう。
おならの臭い対策はコレ!
- 朝の水飲み
- ネバネバ食品や、海藻類を食べる
- 肉や卵ばかり食べず、腹八分目を心がける
- 糖質を適度に摂る
▼こちらの記事もおすすめ▼