俺が心不全になった原因は、タバコ、サウナ、それにクルマの運転。みんな好きだけど、お医者さんによると、みんな心臓に悪いっていうんだよね。だけど、それでも我慢するようになりました。我慢っていうのは、しているうちに慣れてくるね。【体験談】冠二郎(歌手)

プロフィール

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冠二郎(かんむり・じろう)
歌手。1944年、埼玉県秩父市生まれ。1967年、ビクターレコードより『命ひとつ』で歌手デビュー。1976年、コロムビアレコードへ移籍。翌年、『旅の終わりに』が大ヒットし、その後、NHK紅白歌合戦に3度出場を果たす。今年は、闘病しながら完成させた最新作『さみだれ』が好評を博している。

血液を送り出す力が健康な人の半分に!

皆さんにとって、歌手としての俺のイメージは、ヒット曲の『炎』で、「セイヤ!」と叫ぶような力強い姿だと思います。ところが、今年(2019年)の1月、慢性心不全で死にかけたんです。

そのころは、3月に発売する新曲『さみだれ』のレコーディングの真っ最中。でも、呼吸が苦しくて全然歌えないんです。二度めの歌入れのときは、前回よりもさらに調子が悪くて、まともな息継ぎができない。納得いく仕上がりにならず、再度歌入れは延期になりました。

3年前に結婚した31歳下の女房が、日ごろから健康診断の数値に目を光らせていたから、特に問題はなかったんです。ただ、NT-proBNPとかいう数値だけ高いっていわれてたけど、もう、なんのことだか全然わかんないしね。

この数値は、心不全の危険性を示すということで、俺の場合はそれが1400。基準値が125以下だっていうから、ものすごく高いでしょ。

お医者さんに聞いたけど、「歌手にはよくあることだから気にしなくてもいい」ということで。でもあとで考えたら、やっぱり心臓が悪くなってた証拠なんだけど、お医者さんがそういうなら、それ以上は突っ込めないしね。

1月17日には、新曲のジャケット撮影があったけど、前日から体調は最悪。のどはゼエゼエとひどいぜんそくみたいな状態で、おまけに体の節々が痛くて。なんとか撮影を終えて、そのまま病院へ直行しました。

そうしたら、即入院。診断結果は、インフルエンザ、肺炎、高血圧、心機能低下、うっ血性心不全と、もうめちゃくちゃ。

肺に水がたまってるばかりか、心臓に血液を送る動脈が狭くなって、血液を送り出す力が健康な人の半分くらいしかなかったっていうんだから。集中治療室に入って、4日めに冠動脈を広げる手術を受けました。

その後、20日間ほど入院したので、担当の先生に「体力が落ちているから転ばないように」と注意されました。転ぶわけないとたかくくってたら、ベッドから起き上がろうとして足をすべらせ、背骨が「ゴキッ」。

このとき、背骨を2ヵ所、圧迫骨折してました。そうとは知らずに、痛みを我慢して2月15日のレコーディングに臨みました。なにしろ、この日に録音しないと発売に間に合わない。だから、必死の思いで歌ってなんとか新曲を出せました!

画像: 闘病しながら完成させた最新作『さみだれ』

闘病しながら完成させた最新作『さみだれ』

我慢というのはしているうちに慣れるもの

俺が心不全になった原因は、タバコサウナ、それにクルマの運転。みんな好きだけど、お医者さんによると、みんな心臓に悪いっていうんだよね。

タバコはいうまでもないけど、サウナは、冷たい水風呂と交互に入るのが、心臓に負担になるらしいんです。ほんとに大好きで、毎日入ってましたよ。

浴びるほど飲んでた酒は、30年前にすでにやめていたので、今年はタバコとサウナもやめました。寂しいけど、クルマも売り払ったんです。

おまけに、血糖値も高いっていうので、甘い物も塩分が濃い物もダメだと。もう、何食べていいのかわからないよ。

旅先のホテルで、食事がバイキングだったから、俺は大好きなキムチとメロンソーダを取ったんです。すると、「こんなの体に悪い!」って、女房が取り上げちゃうの。

かわりに出されたのが、シシャモと茶碗蒸し。しょうがないから、我慢してボソボソと食べてたけど、怒りが爆発して食事のあとケンカになりましたよ。

子供のころから、塩っからい物ばかり食べてきたのは確か。だから、塩分を控えなきゃいけないっていうのは、ほんとにキツいんですよ。

だけど、それでも我慢するようになりました。我慢っていうのは、しているうちに慣れてくるね。二人でウチにいるときは、俺のことを心配して、心をこめて塩分を抑えた料理を作ってくれるんです。ありがたく食べなきゃいけない……。

今の俺にとって、大切なのは、若い女房と歌。この二つを守るためなら、どんなことにだって耐えるつもりです。塩もサウナも「セイヤ!」と我慢。そうやってできるだけ長く健康を保って、これからも女房のために、ファンの皆さんのために、元気に歌い続けます!

地中海食や和食で塩分を控えめに(東京医科歯科大学教授 古川哲史)

心不全とは、さまざまな要因から心臓が機能を果たせなくなった状態をいいます。

全ガン患者の5年生存率が、66%なのに対して心不全は47%。しかも、いったん入院すると20%近くまで下がる深刻な病気です。

冠さんのケースも、重篤な状態だったといえます。喉がゼエゼエとするのは喘鳴といって、心不全の進行で肺に水がたまった心臓ぜんそくの症状です。

心不全の予防改善には、生活習慣の見直しが不可欠です。禁煙はもちろん、血圧、血糖値の管理のために食事への配慮が必要です。地中海食や塩分控えめの和食をとるようにしましょう。

激しい運動は禁物ですが、息が少し上がるくらいの有酸素運動は推奨できます。

画像: この記事は『壮快』2019年12月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年12月号に掲載されています。

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