漢方では、頻尿の原因は大きく分けて二つあると考えます。一つは、排尿に関わる臓器である、腎臓と膀胱の働きの低下。もう一つは、体の冷えです。どちらが原因でも、全身の血流をよくすることが頻尿の改善につながると考えます。【解説】石原新菜(イシハラクリニック副院長)
解説者のプロフィール
石原新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長。医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での研修を経て、医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法での治療にあたっている。『女のキレイは30分で作れる』(マキノ出版)、『酢ショウガで体すっきり!ずっと健康!』(宝島社)など、ショウガや健康の著書、監修書多数。テレビやラジオへの登場も多い。
血の巡りをよくし頻尿を改善する酢ショウガ
加齢とともに、トイレの間隔が短くなったと嘆く方は少なくありません。
漢方では、頻尿の原因は大きく分けて二つあると考えます。一つは、排尿に関わる臓器である、腎臓と膀胱の働きの低下によるものです。
特に腎臓は、五臓六腑のうちでも水分代謝との関わりが深く、腎臓の働きの衰えを表す「腎虚」という状態は、頻尿の原因と考えられています。
もう一つは、体の冷えです。寒い場所で長く過ごすと、誰でもトイレの間隔が近くなるもの。これは、体温を上げるために体が余分な水分を尿として排出するためです。
また、冷えが原因で腎虚になる場合もあります。漢方では、この二つのうちのどちらが原因でも、全身の血流をよくすることが頻尿の改善につながると考えます。
血流がよくなれば、当然体温は上がりますし、体に十分な酸素と栄養素が行き届くため、衰えてしまった腎臓や膀胱の回復も期待できます。
この全身の血流をよくするためにお勧めしたいのが、「酢ショウガ」です。
酢ショウガはその名の通り、ショウガを酢に漬けて作る健康食です。当院では、冷え症はもちろん、肩こりや腰痛、肥満、高血圧など、血流の悪さが招く病気や不調に悩まされている方に、酢ショウガを勧めています。
ショウガは、辛味成分であるジンゲロールと、ジンゲロールを加熱した際にできるショウガオールに、血管を広げて血流をよくする効果があります。
さらに、ジンゲロールには、血液中の中性脂肪や、LDL(悪玉)コレステロールを減らす働きもあります。
血液中にこれらが多い状態が続くと、血管の内壁には余分な脂がへばりつき、血液は流れづらくなります。この状態を放っておくと、血栓(血液の塊)ができて血管がふさがれます。
ショウガのジンゲロールは、血液をいわゆるサラサラの状態にすることで、血流をよくするのです。
酢は、主成分である酢酸に、血液中の中性脂肪を減らしたり、血圧の上昇を抑えたりする効果があります。
根菜やネギ類と食べれば頻尿改善効果がアップ
酢ショウガは、量を多少食べ過ぎても問題はありません。ただ、空腹時に食べ過ぎると胸やけなどが生じることもありますので、ご注意ください。
また、酢ショウガは、子宮脱などの物理的に膀胱が圧迫されたことが原因で起こる頻尿への効果は期待できません。
間質性膀胱炎(原因が不明の膀胱炎)による頻尿の場合は、酢ショウガの酢の刺激により、症状が悪化することがあります。下腹部に痛みや不快感などの変化が現れたら、食べるのをやめて医療機関を受診することをお勧めします。
漢方では、人間の体の部位と似た動植物を食べることで、その部位が健康になるという考え(相似の理論)があります。
頻尿の場合、腎のあるへそより下の部位が植物の下半身にあたる根茎と似ているとして、根菜類を積極的に食べることを勧めます。
大地に根を張るゴボウや山芋などと酢ショウガをあわせて食べれば、より高い頻尿改善効果が期待できます。
また、タマネギやニンニク、ラッキョウなどのネギ(アリウム)属と、酢ショウガを合わせるのもお勧めです。どちらも血流をよくする効果があるので、体が温まり頻尿改善につながるでしょう。
頻尿改善の特効食酢ショウガの作り方
【材料】
・ショウガ……200g(市販のもので2~3個)
・酢……約200ml(ショウガが浸る程度の量)
・ハチミツ……大さじ1(好みで増減してもよい)
・密閉できる保存瓶……1本(ガラス製がお勧め)
※ショウガは、辛味成分の強い根ショウガの方が、有効成分が多くなるのでお勧め。辛味が苦手な人は、新ショウガを使ってもよい。
※皮に栄養成分が多いので、皮ごと用いる。
※使用する酢は、米酢、黒酢、リンゴ酢など、醸造酢であればなんでもよい。
【作り方】
❶ショウガを切る
ショウガはよく洗い、皮をむかずにみじん切りにする。
※チョッパーやフードプロセッサーを使っても便利。ただし、その際もショウガを小さめに切ってから入れるとよい。
※ショウガは薄切りにしてもよいが、みじん切りにした方が、いろいろな料理に加えやすい。
❷レンジで加熱する
(1)を耐熱容器に入れ、少量の水(分量外:大さじ1~2程度)を加えてラップをかけ、電子レンジ(600W)で1分30秒ほど加熱する。
※加熱することにより、ショウガの体を温める効果がアップする。
※水を加えるのは、加熱中にショウガが焦げるのを防ぐため。
❸酢を加える
(2)の粗熱が取れたら、保存瓶に移し、酢を注ぎ入れる。
❹ハチミツを加える
(3)にハチミツを加え、全体を軽くかき混ぜる。ふたをして冷蔵庫で一晩漬け込めば出来上がり。
【食べ方】
カレーやみそ汁、煮物、ドレッシングなどに混ぜると、辛味が苦手な人でも食べやすい。
【1日に食べる量の目安】
1日に大さじ2~3杯をとるのがお勧め(酢とショウガの両方をすくった量)。
【保存方法と保存期間】
冷蔵庫で保管し、2週間ほどで食べ切るようにする。
■頻尿に効く「酢ショウガ」の食べ方
根菜類 + 酢ショウガ
漢方には、人間の体の部位に似た動植物を食べることで、その部位がよくなるという「相似の理論」があります。
頻尿の場合、腎のある部位と植物の下半身に当たる根菜が相似になるため、ゴボウや山芋とあわせて食べるのが効果的です。
ネギ属 + 酢ショウガ
タマネギやニンニク、ニラなどのネギ属には、血流をよくする効果があります。この食材は冷えを解消する効果もあるので、酢ショウガと合わせることで、より血流改善が期待できます。オニオンスライスや、ニラ玉などの上にかけて食べるのがお勧めです。
夜のトイレの回数が減り尿もれパットも不要に
実際に酢ショウガを常食したことで、頻尿が改善した方の例をご紹介しましょう。
70代の女性Aさんは、ひどい夜間頻尿で、夜は1時間おきにトイレに起きていました。時々トイレに間に合わなくなることがあったので、尿もれパットも使用している状態でした。
Aさんは加齢の影響で、腎虚に陥っていました。そこで、酢ショウガと、下半身に筋力をつけるための軽いウォーキングを試してもらいました。
すると、頻尿は徐々に改善。半年後には、夜間のトイレの回数は2回に減りました。トイレにも間に合うようになり、尿もれパットの使用もやめることができたのです。体力がつき、冷え症も改善したと、Aさんは喜んでいます。
酢ショウガは、そのままでもおいしくいただけますが、煮魚や刺し身、サラダ、冷ややっこ、みそ汁などのおかずに足しても楽しめます。
お湯や紅茶、炭酸などに入れて、ドリンクとしていただくのもよいでしょう。
酢ショウガは、1日に大さじ2~3杯を目安に食べてください。2週間ほどで、体が温まるなどの変化を実感できるようになるはずです。
ただし、酢ショウガの血流改善効果は3~4時間ほどしか持続しません。少量ずつ、こまめに食べることをお勧めします。