【鎌田實医師の健康法】70歳で骨密度130%!かかと落としとスクワットを「頑張らず」に続けることがコツ

美容・ヘルスケア

マイオカインは、血糖値や血圧を下げる働きをし、ガンやうつのリスクを下げ、記憶力をよくするという研究結果が出ている、夢の若返りホルモンです。運動して筋肉を鍛えると分泌されますが、筋肉量の多い太ももを鍛えることで、より効率的に分泌させることができるのです。【解説】鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)

解説者のプロフィール

鎌田實(かまた・みのる)
東京生まれ。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。1988年、諏訪中央病院の院長に就任。地域一体となった医療や、食生活の改善・健康への意識改革を普及させる活動に携わる。2005年より、同病院名誉院長。『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)など著書多数。

女優・黒柳徹子さんもスクワットで元気!

僕は「スクワット」と「かかと落とし」を10年以上前から推奨しています。場所も取らず、道具もいらないシンプルな運動なのに、効率よく筋肉や骨を鍛えられるからです。

シンプルなので高齢者でも簡単に行うことができます。女優の黒柳徹子さんが毎日スクワットを行い、元気でいらっしゃることからも、その効果はおわかりいただけるでしょう。

実は3年前までは、僕はスクワットとかかと落としを毎日行ってはいませんでした。その当時、医者の不養生もあって、体重は80kgまで増えました(身長171cm)。しかも目がかすんだり、息がすぐに上がるようになったりと、体力の衰えを感じるようになったのです。

危機感を抱いた僕は、スクワットを、毎日真剣に行うようにしました。すると、好きなものを食べているにもかかわらず70歳の今、体重は9kg、ウエストは9cmもダウン! おかげで、おしゃれするのも楽しくなりましたし、筋肉のすばらしさに目覚めることができました。

筋肉は鍛えなければどんどん衰えていきます。

しかも、50歳からは毎年1%ずつ筋肉が衰えていくという論文もあります。人生100年時代、自分の好きなことをし続けるために、スクワットとかかと落としが、簡単でお勧めなのです。

まず、なぜスクワットがいいのかをご説明します。

それは、「太もも」を鍛えられるからです。太ももは体の中で最も筋肉量が多い部分で、ここを鍛えると、階段や坂道がつらくなくなり、歩くのも走るのも楽になります。筋肉がついたことで、ひざの痛みがなくなる人も多いものです。

さらに、太ももを鍛えると「マイオカイン」という、若返りホルモンが分泌されるメリットがあります。

マイオカインは、血糖値や血圧を下げる働きをし、ガンやうつのリスクを下げ、記憶力をよくするという研究結果が出ている、夢の若返りホルモンです。

運動して筋肉を鍛えると分泌されますが、筋肉量の多い太ももを鍛えることで、より効率的に分泌させることができるのです。

かかと落としで血糖値や血圧も下がる

何歳になっても元気で歩くためには、筋肉だけでなく骨もたいせつです。僕の骨密度は130%もありますが、それは15年以上前から、かかと落としを毎日続けているからでしょう。

かかと落としは、立った状態で両足のかかとを上げて、同時にストンと落とすだけの簡単な動きです。それだけなのに、骨を再生する骨芽細胞に刺激を与えて強い骨を作り、骨密度のアップが期待できるのです。

かかと落としという「骨活」を行うと、次のような健康効果も期待できます。

骨粗鬆症の予防
骨密度の低下を防ぐ

転倒・骨折の予防
ふくらはぎや前すね骨筋を強化する

高血圧・糖尿病・動脈硬化・脳梗塞・メタボの予防
オステオカルシンという骨ホルモンが分泌され、血糖値や血圧を下げる

認知症の予防
第二の心臓といわれる下肢の筋肉を刺激することで、全身の毛細血管を循環させる

美肌効果
毛細血管の循環がよくなると肌が若返る

幸せホルモンの分泌
リズミカルに行うことで、セロトニンという幸せホルモンが分泌される

このようにかかと落としは、簡単であるにもかかわらず、すばらしい効果をもたらしてくれるのです。

1日5分!筋肉と骨を鍛えて若返る 「スクワット」と「かかと落とし」のやり方

スクワット(1)
反動スクワット
■1セット10回×1日3セット

両足を肩幅に広げて立ち、両手を頭の上に上げる。このとき、つま先はまっすぐ前に向ける

ゆっくりとひざを曲げながら、同時に手を下ろしていく。その際、息を軽く吸いながら行う。ひざはつま先と同様、まっすぐ前に向ける。つま先よりひざが前に出たり、ひざが内向きに倒れたりしないように注意する

太ももが床と平行になるまでお尻を突き出す。手をお尻の横まで下ろし、そのまま5秒キープする

ゆっくりと息を吐きながら立ち上がる。息を整えながら手を下ろして一休みする。再び(1)の姿勢に戻り運動を開始する

スクワット(2)
イスありスクワット
■1セット10回×1日3セット

両足を肩幅に広げて立ち、ゆっくりとひざを曲げて、お尻を後ろに引くイメージで、腰を落とす

ゆっくりと呼吸しながら、5秒ほど同じ姿勢を保つ。その後、ゆっくりと(1)の姿勢に戻る

さらに慣れてきた人は手を胸の前で組んで行うと高負荷になり、効果的!

かかと落とし(1)
かかと落とし
■1セット10回×1日3セット

イスの背につかまり、両足を肩幅くらいに開いて、背すじを伸ばして立つ。つま先立ちになり、かかとを少し上げる

さらにかかとを上げ、背すじをピンと伸ばす

重心をかかとにかけながら、かかとをストンと床に落とす

かかと落とし(2)
かかと落とし【レベル2】
■1セット10回×1日3セット

イスの背につかまり、両足を肩幅くらいに開いて、背すじを伸ばして立つ

かかとをつけたまま、つま先をゆっくりと上げる。つま先を下ろすと同時に、かかとを少し上げる

さらにかかとを上げ、背すじをピンと伸ばす

重心をかかとにかけながら、かかとをストンと床に落とす

塾生600人が効果を実感!80代でも筋力が増えた!

スクワットとかかと落としは、僕が主宰している佐賀県の「鎌田實のがんばらない健康長寿実践塾」でも実践しています。

塾生は40〜80代の600人で、スクワットとかかと落としを1セット10回×1日3セット、ウォーキングを現状よりプラス10分を目標に、半年間、継続してもらいました。

その結果を西九州大学リハビリテーション学科の大田尾浩教授に集計してもらったところ、骨格筋量が増加し、腹筋と下肢筋力、歩行バランス、骨密度、片足立ち、歩行速度、注意力の改善が見られたのです。

このように、スクワットとかかと落としの効果は証明されています。

また、筋肉をつけるにはたんぱく質をしっかりとることが大事です。中高年は1日60gを目標にしてください。肉だけでなく、魚、卵、乳製品、豆腐などから3食でバランスよく、こまめにとることを意識するといいでしょう。

運動後30分は、たんぱく質を筋肉に吸収しやすくなっているので、スクワットをした後に牛乳を飲むなど、意識的に行ってください。

生きている間は自分の足で歩いて、行きたいところにいつでも行ける体を保っておきたいものです。僕も93歳まで趣味のスキーを続けたいという希望があります。

自分の人生の主人公は、自分です。人生を最後まで、120%楽しむために、スクワットとかかと落としで「筋活」「骨活」に励んでいただけるとうれしいです。

人生100年時代を無理せず楽しく生き抜く! 鎌田流「筋活」ポリシー

貯金より「貯筋」

ここ10年ほどの間に、筋肉のすばらしさが解明されてきました。運動して筋肉を強化すると、血糖値も血圧も下がります。

「マイオカイン」という筋肉作動物質が分泌されて、ガンや認知症、うつ病を予防する可能性もわかってきました。マイオカインは「若返りホルモン」とも「万能ホルモン」ともいわれています。

元気でおもしろい人生を実現するのは、筋肉なのです。

「1日でも長生き」ではなく「生きている限り楽しく」

「人生100年時代」といわれるけれど、100歳まで生きたいですか?それよりも、死ぬ日まで元気で、好きなことをしていたくはないでしょうか。

「レングス・オブ・ライフ」(命の長さ)ではなく、「クオリティ・オブ・ライフ」(命の質)。人生の質が大事なのです。

そのためにも筋肉勝負。筋肉は30代から減りだすといわれています。ムキムキになるためではなく、楽しく毎日を過ごすため、「筋活」がたいせつなのです。

目標(妄想?)→体作り

これから先の人生について、何がしたいのか、妄想に近くてもいいから考えてみることがたいせつです。「家族と温泉に行く」でも、「自分で歩いて近所に買い物に行く」でもいい。そこから、体作りに入っていけば、自然とがんばる気持ちが湧いてきます。

昨日より、今日は少しいい

小さな変化がわかると、やる気が持続します。変化は人それぞれ。以前より息切れしなくなった、階段を上がれるようになった、歩くのが楽になった、などでもいいのです。うれしくなると、快感ホルモンのドーパミンが出ます。楽しみながら取り組みましょう。

体・食・心の三角形バランス

まずは体から入るのがお勧め

体、食、心は互いに関連しあっています。

体が不調なときは、心が元気になることがたいせつです。心が疲れたときは体が元気になれば、心をいやしてくれます。心と体は密接につながっていて、双方に食が大きな影響を及ぼします。

この体・食・心のどこからスタートしてもいいのですが、お勧めは体作りから。体によい変化があると、体のことを考えて食事に気をつけるようになり、心も雑念が消えて前向きになる、とスムーズにつながっていきます。

まずは少しの運動を試してみてください。

無理はしない

体の不調を感じるときは、無理に運動しないでください。まして、どこか痛むところがあれば、様子を見たり病院に行ったりしてください。人生は長いので、ゆったりと構えて、また調子がよくなったら、始めればいいのです。

この記事は『ゆほびか』2020年1月号に掲載されています。

 

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