感染症対策として、手洗い、普段の健康管理、適度な湿度に保つ、うつさないようにするための「咳エチケット」などがあげられています。今回は、湿度を保つのに必要な「加湿器」を取り上げてみましょう。加湿器には大きく3種類ありますが、特に「超音波式」についてはこまめなお手入れ(メンテナンス)が必要です。なぜその必要があるのか解説しましょう。
感染症対策と「湿度」の関係
コロナウィルスの蔓延で、世界中が大騒ぎする中、日本政府もようやく重い腰を上げ、いろいろなメッセージを発信し始めました。
その中に、個人でできる感染症対策として、次の4つが挙げられています。
感染症をもらわないために、(1)手洗い、(2)普段の健康管理、(3)適度な湿度に保つ、(4)うつさないようにするための「咳エチケット」などが対策としてあげられています。
(1)の手洗いですが、石鹸できちんと手を洗う、または、アルコールジェルで消毒をしましょう。アルコールジェルは、手がすぐ乾くので楽なのですが、ちょっと入手できなくなった位で、ヒステリックになることはありません。推奨されている方法で丁寧に手を洗いましょう。ちなみにアルコールは乾いた手でないと効き目がありませんので、ご注意ください。
感染症をもらわないための、(2)(3)に関しては体の調子を整え、免疫力を整えるということです。
(3)に関しては、次のように解説してあります。「空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下します。乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、適切な湿度(50~60%)を保ちます。」
特に、日本は多湿ですから、冬の低湿度はかなり喉に負担をかけます。この負担を軽くしようというわけです。
加湿器の選び方
加湿器を選ぶ時のポイントは、部屋で使うのか、近接で使うのかを決めることです。部屋でと決めた時は、その部屋畳数に合った加湿器を選ぶことです。
近接の場合は、自分の近くに置きやすいことです。いずれの場合も水分は顔より上に来る機種を選ぶのがポイントです。
特に「超音波型」の加湿器は、蒸気を出しているのではなく、細かな水滴を噴霧しています。このため、重い。つまり噴出時に顔あたりまでこないと、後は落ちるばかりです。せっかくの加湿したのに、勿体ないとなります。他の方式、「沸騰式」「気化式」「ハイブリット」は蒸気ですから問題ありません。
ちなみに、空気清浄機に組み込まれた加湿器ですが、空気清浄機と加湿器で適応畳数が違う場合があるので、注意が必要です。
最近の広いリビングでは、ダイニチ工業のLXシリーズなど、単独型がオススメです。
ハイブリッド式(温風気化+気化)加湿器
HD-LX1219-W
加湿器使用時には注意が必要
小型で、いろいろなデザインを作ることができる超音波式加湿器は、水煙が立ち、いかにも加湿している雰囲気があり、しかも安価で、人気があります。が、この超音波型加湿器で事故が起きたことがあります。
例を幾つか挙げましょう。
●1996 年 東京都
東京都の病院において新生児3人が肺炎や気管支炎を発症し、うち1人が亡くなった事故です。新生児 室の給湯設備の湯やミルクの加温器、加湿器からレジオネラ属菌が検出されました。同じ水を、加湿器によって新 生児室に菌が散布され集団感染となった可能性があります。
●2000 年 広島県
広島県の病院で2名の新生児のレジオネラ肺炎が発生。
●2007 年 新潟県
新潟県で 60 歳の男性がレジオネラ肺炎を発症し亡くなりました。部屋にあった超音波式加湿器か ら検出された菌と男性から検出された菌が一致し、加湿器が感染源と推定されています。
国立感染症研究所 感染症情報センター
●2018 年 大分県
大分県の高齢者施設で、80 ~ 90 代の男性3人がレジオネラ菌感染による肺炎を発症。うち 1人が亡くなっています。保健所の検査では、感染者2人がそれぞれ使用している部屋の超音波加湿器 から菌が検出されています。(他1人の部屋に加湿器はなかったが、感染者の部屋の近くに入所)
全部、レジオネラ菌です。レジオネラ菌は、エアロゾル感染、吸引・誤嚥感染、また土壌感染することもあります。レジオネラ菌は、60℃ 5分で殺菌できますが、超音波方式は、常温の水滴のまま空気中に放出します。このためレジオネラ菌も広まったわけです。
では、沸騰方式はどうか。衛生的には一番安全です。しかし、湯を沸かすのと同じですから、電気代がかかります。
また、気化式はどうか。空気中にレジオネラ菌を出すことはありません。が、長期間(数週間)置きっぱなしにして、カビが生えてしまい、その胞子が空気中に出ていたという話があります。これは結露を放っておいて、カビたのと同じで、これも健康によくありません。
加湿器を使う時のポイント
以上のようなことから、加湿器は「清掃」が、使いこなしの大きなポイントにもなります。やり方は、メーカーのマニュアル通りがセオリーです。が、手間をかけたくない人もいると思います。
この対応が今一番進んでいるのは、ダイソンの加湿空気清浄機「Dyson Pure Humidify Cool」でしょうね。搭載されたウルトラバイオレットクレンズテクノロジーは、強力なUV-Cライトで加湿水を一滴残らず直接照射して、水に潜む主な細菌を瞬時に除菌します。
Dyson Pure Humidify + Cool
PH01 WS
また、ダイキン工業も、「ストリーマ」と呼んでいる活性イオンを本体内部に溜め、加湿フィルターを除菌するなどしています。
加湿ストリーマ空気清浄機 (ホワイト)
MCK70W-W
安価な加湿器にはメンテナンスが必須
当然ながら、安価な加湿器にはそんなものは付いていません。清掃することが必要です。
さらに、誰にでも簡単な話を一つ。加湿器に使用する水を水道水にすることです。水道水は除菌なども施されていますので、すぐ使える水の中では、もっとも安全な水です。そして小まめに取り替える。それ以上のことはありません。
また、夏にしまい込むときも要注意です。清掃するのとともに、よく乾かしてください。湿ったまま仕舞うとカビが生えたりします。特に注意が必要なのは、フィルター類です。
きちんとした使い方をすると、家電もきちんと仕事をします。それを利用するなどして、この季節を乗りきりましょう。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。