世界を襲っているコロナウイルス関連の記事としてマスクや空気清浄機などレポートしてきましたが、今回はこのコロナ禍で、必要とされる洗濯機の機能についてお話しします。残念ながら日本のメーカーにはほとんど見られないのですが、ドイツのミーレ社の洗濯機には「消毒」というコンセプトがあります。
ミーレの洗濯機の魅力は「ブレない」コンセプト
世界を襲っているコロナウイルス。マスク他レポートしてきましたが、コロナ予防に洗濯機も一役買います。今回取りあげたいのは、ドイツミーレ社の洗濯機のコンセプトです。
ミーレは知る人ぞ知る世界的な高級家電メーカー。中でもパソコン、スマートホンで世界を変えてしまった、故スティーブ・ジョブスをして、「足すものも引くものもない、完全な出来。」という意味の言葉で評したのは有名な話です。
セレブでも愛用者多数。セレブは普段着でも高いのを着ます。ユニクロだと、1日着て使い捨てもあるのでしょうが、そんなことをすると大出費です。そんな時、役立つのがミーレの洗濯機。本当に衣類を傷めずにきれいにしてくれます。私も、古いマウンテンパーカーを試したことがあります。都市、田舎、アウトドアで付いた汚れが見事に落ちました。新品同様。最後陰干しで、完全復活した時は、看板に偽り無しと思いましたね。
また、アメリカのコンサートツアーなどでも使われます。ステージ衣装は一点モノが多く、作りは繊細、しかもコンサートで汗みどろ。そんな場合でも、きちんとキレイにしてくれます。またヨーロッパ中央に位置する国の有名なバレエ団はミーレをお供に地方興行を行うそうです。
ついでに言うと、バチカン市国の地下にも備えてあります。聖職者の服は、基本手洗いなのですが、バチカンは世界で最も多くの聖職者が集まるところですので、手洗いでは追いつかないのでしょう。手洗いに一番近い洗濯機ということで、納入されたのでしょうね。
ミーレが考える洗濯システムは、きちんと使うとそれほどまでに衣類に優しいのです。
「衣類ケア」というコンセプト
ミーレの思想は「衣類ケア」です。衣類を傷めずに、汚れを落とすことというより、新品に近いところまでも戻すというのが、その考え方です。昔は衣類が高価でした。我が国の着物は、仕立て直しで、親子でも着られる衣類ですから、上質の着物は遺産として、親から子へと引き継がれるものでした。
ミーレの創業は1899年。日本人の多くが着物を着ていたことです。海外でも安い、使い捨ての衣類は、なかったころです。
当然、洗濯で衣類を傷めることは厳禁。ということで、彼らは、「布素材ごと」に、洗濯の4要素を定めて行きます。4要素というのは「時間」「温度」「機械力」「洗剤力」のことです。
この内、「機械力」というのは洗濯機の物理的仕様、ドラムのサイズ、内面形状、揺れ具合、などがそれに当たります。「時間」「温度」はプログラムです。また「洗剤力」ですが、ミーレは自社で洗剤も作っています。洗濯は、洗剤の化学力と、機械の物理力を、いかに上手くつかうのかが鍵で、それを「温度」と「時間」でコントロールしているわけです。
このため、例えば、極端な時短などとは無縁です。10分で汚れが落ちるとキャッチフレーズにしているメーカーもありますが、まぁこれは余程条件が重ならない限り無理ですね。大学で化学を学んだ私はそう思います。
実際に洗った時の感想を言うと、衣類に無理をさせていない感じです。洗剤が効果的な温度で、適量な水(湯)量に使い、汚れが十分取れるまで、衣類を傷つけないように丁寧洗う。実に丁寧な職人のようなアクションです。
汚れをおとすために、この4つの要素を最適化しているというわけです。
逆にいうと、汚れを落とし、新品同様に戻すことが第一であり、あと30分で洗濯乾燥させたいのだがという人間主観の要望には対応していません。要するに、自然に、理に逆らうことはできないのです。
そして、布種類ごとに設定というのも変わりません。布と言っても、木綿と絹では天と地とも性質が違います。クリーニングに出すと衣種ごとに分けますが、あれと同じです。衣、食、住をきちんとケアするためには、どうすれば良いかをずっと考えてきた製品で、しなければならないことはするという考え方です。
「衛生」というコンセプト
現在の東京は、洗濯物を室内干しすることが多いです。理由は、帰宅時間が遅い人が多いためでしょう。また、花粉症の人が、花粉飛散時期に衣類を外に干すことはできないです。欧米なら乾燥機を回してとなりますが、勿体ない精神に富む日本人は、室内干しする人が多いですね。
ところが、手早く乾かないと、中でニオイ菌が繁殖し、臭くなります。この時、香料がいっぱい入った洗剤、柔軟剤を使う人もいますが、これは別のニオイで覆い隠しているだけで、洗濯物のクサイにおいは取れていないのです。
これをとるには、ニオイ菌を殺し、洗ってやることが必要です。消毒液につけるという手もありますが、着ているものを全てを消毒するには、大変です。お勧めは、お湯洗い、60℃のお湯で洗うと、ニオイは取れます。
お湯機能を持っているのは、少ない水量で洗う「ドラム式」。私は、そう言った意味でも、物理的にか落ちない泥汚れが殆どない都会の人は、お湯洗いができるドラム式をお勧めします。
で、今、ニオイ菌の話をしましたが、これは菌を殺す話で、一種の熱湯消毒にあたります。
ちなみに、ミーレの洗濯機は、木綿の場合、最高90℃のお湯で洗うことができます。何故ここまで高温かというと、もちろん消毒のためです。下着、シャツ、など普段着を衛生的に保つためです。これは、ミーレの創業が、スペイン風邪の流行より前だったため、引き継がれた機能かも知れません。感染症と戦うには、手洗い、マスク、そして衛生状態を保つことが不可欠ですから。衣類ケアを考え抜いたメーカーの智恵でもあります。
ウイルス対策に「90度洗い」が心強い
ここまで骨太のコンセプトは、日本の家電メーカーにありません。日本メーカーの機能が多いと言っても、ここまでしっかりした思想で貫かれてはいません。いろいろな技術を持っていながらです。
お湯の温度を上げるのに、すごい技術は要りません。しかし、いざという時、差が出るのも事実です。コロナは、当分収まりそうにない昨今、安心して生活できるようにするには、欲しい機能でもあります。
コロナウイルスは、プラスチックの表面でかなり長く生存することがわかっています。繊維は水分を吸収しますので、それより早くは不活化すると思いますが、お湯洗いをした方がベターだと思います。ただどのくらいの温度で完全不活化できるのかは不明ですが、SARSのウイルスから考えて、60℃が一つの目安と考えられています。※日本のドラム式洗濯機でも、60℃まで温度を上げることができる機種はあります。(人間の体温以下では不活化できません。)
90℃のお湯洗いは、確かに日常的にはオーバースペックです。が、感染症と向き合わなければならない場合、実に心強いです。確かに、ミーレは最高の洗濯機と言うにふさわしい洗濯機でもあります。誰でも買える値段ではないのですが、その考え方は学ぶべきところが多々あります。もし、お金を出してもいいと言う人には、W1をお勧めします。ミーレのエッセンスが、詰め込まれた逸品です。
W1 洗濯機
WCI 660 WPS
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。