2020年のファーウェイのフラッグシップモデル「P40 Pro 5G」が発表されました。今回のモデルはAIを強化してきたカメラが特徴。「通行人を除去」と「反射を削除」という2つの機能は思わず「ワアオ」と言ってしまうほどお見事。しかし「スマホ」として考えたらどうでしょう。今回は、「P40 Pro 5G」をタッチ&トライさせてもらった、第一印象をレポートします。
ファーウェイ「P40 Pro 5G」とは
5Gモデル前にあった米国とのトラブル
2020年は、5Gの年。「自動車の自動運転は5G以降」と言われていますが、理由は「途切れない」「どこでも確実に繋がる」と言われているからです。そうなると、軍事技術としても非常に重要だと言う事で、米国がファーウェイ製品を使うと機密が漏洩するとして、制裁措置を取ってもいます。
これに関しては、米国の主張が本当に正しいのかわかりませんが、しれっと嫌なことをする中国政府が仕切っている国ですから、あるかも知れません。
このため、P40 Pro 5Gに、ファーウェイはグーグルをフルに利用することはできなくなりました。大きいのは、グーグルプレイが使えなくなったこと。グーグルプレイで配布されるアプリの内部課金は、グーグルプレイが聴取しますので、ほとんどのゲームはアウト、支払い系のアプリもアウトなどの影響が出ています。またグーグルマップもアウトです。また、気付きにくいですが、グーグル クロームもブラウザーとしてプリインストールされていません。
これに対し、ファーウェイは、OSをEMUIというAndroidをベースにしたOS、グーグルプレイの代わりに、ファーウェイAppという似たような機能のアプリを開発、搭載。いろいろなアプリ供給を行っています。
そんな中でてきたのが、5Gモデルです。
やはりカメラがスゴイ!
AIをさらに強化
ファーウェイのPシリーズの目玉はカメラです。今回もやはりカメラです。しかし、2019年モデルのP30 Proのカメラも実にすごい。では、今回カメラをどうしたのかというと、AIを強化してきたのです。
AI強化だとわからないので、「通行人を除去」と「反射を削除」という2つの機能で説明します。
まずは「通行人を除去」。彼女の写真を撮る時、通行人が途切れるのを待った経験は、ほとんどの人がしたことあると思います。写真にする時、通行人を消せたらと思った人も多いのではないでしょうか? この機能は、そんな時に大いに威力を発揮します。
方法は、まず、2秒間連写します。その中から、AIが主要人物のベストショットと後ろに通行人がいない瞬間の背景を合成してしまうというモノです。そう、写真加工をした人ならわかると思いますが、ソフトを使えば、誰でもできるのです。しかし、はやくても数十分かかります。背景の切り抜き、合成はかなり面倒くさい編集に属します。それを3タッチでしてしまえるのが、これ機能です。
あまりの見事さに「ワァオ」と感嘆してしまいました。
次は、「反射を削除」です。これは、ガラスの向こうを撮したいときに邪魔になる、ガラスのキラキラを消し去る機能です。自分の顔など、反射しているのですが、キラキラしていないものに効果はありません。こちらはちょっと期待外れと思う人もいるかも知れません。こちらも撮影してからの編集です。
P30 Pはスペックですごいと思いましたが、P40 Pro 5Gはスマホ=小型PCのすごさを見せてくれるモデルです。
しかし買いにくいモデルといえる
「スマホ」としての魅力に欠ける?
完全なハイスペックなカメラを搭載したP40 Pro 5Gですが、やはりグーグルプレイほかが使えないのは、大きな痛手です。理由は、今までの集積が切れるからです。写真、音楽、動画、オフィスファイルなどは逃げ道があります。どれも中身が普遍的なものですから、ネットにアップしさえすれば、なんとか継続することができます。
多分、一番の問題は、ゲーム、マンガを含む電子ブック、地図でしょうね。しかし、手を拱いているわけでは無く、NAVITIMEとタイアップしたりしています。NAVITIMEが使っているのは、グーグルマップではありませんからね。しかし、星の数ほどあるゲーム、電子ブックはどうでしょうか?
いろいろなやり方はあるのですが、スマホの最大の魅力「一台で何でもできる」からちょっと外れるのです。このデメリットを、カメラの魅力は埋めていないと思うのです。
P30 Pの時は、カメラとして欲しいと感じたのですが、P40 Pro 5Gは、スマホとして厳しいと感じました。
最後に
元々の情報漏洩に端を発したことに、ファーウェイとグーグルが巻き込まれて出来上がった今回のモデル。スペックは超一流なのに、アプリがガタピシしています。これはもともとグローバルな企業の経済活動に、政治が顔を出し、グルーバルでなくなったためです。しかし、コロナ禍…マスクのことを思い返しても、品質など、モノの見方が政治家とメーカーで大きく食い違っていますし、日本国民もひどい目に遭いました。今回のモデルもそれに似たところがあります。
イイのに使えない、フルポテンシャルを出せない。モノを作ってきた経験のある私は、何とも言えない気持ちです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。