弓を射たことがありますか? 筆者は、子どものおもちゃ程度のもので遊んだことはあるものの、本格的な弓で的を射たことはありませんでした。弓に矢など、そろえる道具も多そうで、安全性の問題など、かなり挑戦のハードルが高いだろうと、まったくの未経験だったのです。しかし、WEBで検索してみると、地元で、手ぶらで、しかも無料で体験ができることを知り、挑戦してきました。その様子をレポートします。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータ元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラバッグなどのカメラアクセサリー、車中泊グッズなどの記事も執筆している。目下の悩みは月1以上のペースで増えるカメラバッグの収納場所。
実際にアーチェリーに挑戦し、矢を放つまでのプロセスは?
まずは「自分の住む地域」+「アーチェリー」で検索してみる
我が家の近くにアーチェリー場なんてあっただろうか?
挑戦するのはいいけど、すごく遠かったり、ものすごくお金が掛かったりするのは嫌だと思うのは筆者だけではないと思います。
そこで、最初にしてみてほしいのが「自分の住む地域(地名)」+「アーチェリー」でのググってみることです。
北海道に在住の筆者の場合、「千歳市 アーチェリー」で検索したところ、「千歳アーチェリー協会」のWEBページがヒットし、トップページの「初心者体験会開催中(要事前予約)」という記載を確認して、体験会の予約を行いました。
「自分の住む地域」+「アーチェリー」で検索がうまく行かない場合は、「全日本アーチェリー連盟」の「加盟団体事務局一覧」にある事務局の連絡先から近くの練習場などを紹介してもらうのもよいでしょう。
初心者体験の用具貸出は無料+実費といった印象
筆者は、千歳アーチェリー協会のWEBページから、事務局長の茂木健二さんに連絡をとり、定例の練習会がある土曜日の午前中に初心者体験を予約しました。この際に、動きやすく比較的ピッタリとした服装で来ること以外は、特に必要なものはないこと、千歳アーチェリー協会では、用具は無料貸し出ししてもらえ、体験自体の費用も無料でした。
気になって、いくつかの団体の初心者体験会をWEBサイトなどでチェックしたのですが、多くのWEBページで用具の貸し出しは無料、体験費用は体育館などの場所を使用する際の実費程度というものが多く、有料でも1,000円以下でアーチェリーを体験できるというものが主流のようです。
ちょっと試してみたいと思っているレベルで考えても非常に安価だといえるでしょう。
最初は当然、安全についての解説である
約束の時間にアーチェリー場に行くと、千歳アーチェリー協会事務局長の茂木健二さんが出迎えてくれました。地元千歳市内にアーチェリー場なんて、どこにあるのだろうと思っていたのですが、普段ジョギングやエゾリスの撮影などで訪れる、北海道千歳市青葉公園にある、少年野球場の脇にかなりの規模であったのです。まったく知りませんでした。。。
上半身がある程度ピッタリとしたTシャツなどであれば、下半身は動きを妨げない程度の服装ならオッケーだそうなので、どんな格好をして行けばいいか悩んだときは、ジョギングレベルの運動着を意識すれば問題ないようです。
当然ですが、最初は安全講習になります。
時速200kmを越えるアーチェリーの矢は、厚さ数mmの鉄板を射抜くといわれており、死亡事故の可能性もあるので、かなりしっかりと行われます。
千歳アーチェリー協会の場合は「ようこそアーチェリーの世界へRev.1.03」を手渡され、A4用紙約4ページ分の「安全について」の解説が用意されていました。こちらは自宅でしっかりと目を通すようにいわれ、現場では、絶対に守らなくてはいけない「人に向けて弓を引いてはならない」「シューティングラインよりも前に出てはいけない」「的の刺さった矢の回収は「回収」の合図が出てから」といった、極めて重要で実践的な内容を念入りに解説いただきました。所要時間は約10分程度です。
さっそく弓を射る準備をする
実はもっと長いのでは…と思っていたのですが、安全の解説がはじまって10分ほどで「実際に弓を射たいでしょ」という茂木さんの言葉があり、「では、はじめましょうか」と弓などの道具の準備がはじまりました。
弓と矢だけではないの? と思いましたが、それ以外の道具もいろいろ出てきます。まずはアームガードです。
続いて、チェストカードとタブになります。
チェストガードは矢を放つときに弦が服に当たったり、巻き込んだりするのを防ぐアイテムです。
弦を引く際に指を保護するのが、タブ。
基本的に、弦は3本の指で引くのですが、このときの指を保護してくれるアイテムです。手や指の長さ、大きさ、好みなどで、さまざまなタイプのものがあるといいます。筆者は、こんなものを使っていることすら知りませんでした。使い慣れるまでモタモタします。
さらに、ボウスリングとクィーバーが必要です。
ボウスリングは、一般の人が普通にアーチェリーだと思っているリカーブボウは矢を射る際に弓を握らないので、弓の落下を防ぐためのアイテムになります。筆者がお借りした手首に掛けて使うボウスリングのほかに、指に掛けて使うフィンガースリングなどもあるそうです。
続いて、クィーバーです。
完全に「?」ですよね。
日本語でいうなら、矢筒になります。パンツやベルトに引っかけて、腰からつるすようにして使う仕組みです。慣れないと、結構動きづらくなります。
文章で解説すると、アイテム数も多いですし、なかなか複雑に感じますが、指導してくれる茂木さんが、ニコニコしながらあっという間に用意してくれたので、気が付くと、あとは弓と矢を持つだけという状態です。
アーチェリーの弓にも種類がある
テキパキと楽しそうに準備を進めてくれる茂木さん、気が付くと弓と矢も渡され、あとは的に向かって矢を射るだけという状態になっています。
初心者体験用の機材が選択できる場所もあるのかもしれませんが、今回筆者が体験したのは、アーチェリーのなかでも「リカーブボウ」というタイプのものです。
最近の流行としては、弓の上下に滑車の付いた「コンパウンドボウ」というタイプのものもあります。このあたりの違いは、アーチェリー初心者である筆者が解説するよりも、ほかの方々の解説文を読んでいただくほうがよいでしょう。また、弓自体は、細かくいくつものパーツにわかれており、道具としても細かなこだわりを発揮できる競技のようです。
はじめてアーチェリーを射てみた結果
基本的に当たればどんなスタイルでも構わない
茂木さんによると、アーチェリーの射ち方は、もちろん安全面の確保が第一優先であることが前提ですが、結果的に命中率が高いなら、好きなスタイルでよいとのこと。これがアーチェリーの特徴だといいます。とはいえ、まったく素人である筆者が、ほかの方が使っている的に比べて、かなり近くしてもらったとはいえ、そのままでは的に当てる自信すらありません。的に当てるための最低限の基本を教えてもらい、理解したポイントは下記の通りです。あくまで素人の理解なので、実際にアーチェリーを行う際は指導者の指示に従ってください。
(1)シューティングライン(射線)をまたいで的を自然な形でまっすぐ見る。
(2)弓を握ることなく、まっすぐ持ち、弦を引く手をアゴまでもってくる。
(3)弦がアゴの中心付近と鼻の先端に付くようにしてから、矢を放つ。
(4)弦を引く指は3本、親指と小指は折りたたんで弦に触れないようにする。
(5)弦を引く腕の脇を開き、ヒジを上に上げて弦を引く。
(6)サイトで的をねらって矢をリリース、リリース後も姿勢は崩さない。
茂木さんたちは、「方法」はどうでもいいので、同じ上下左右角で、同じ力で同じ位置で矢を放つことができるように、同じフォームで射るのが大切だ、といいます。しかし実際には、それが非常にむずかしく、矢を射る度にフォームはバラバラ、弓の引き具合も異なるので、同じ場所にはまったく当たりません。
思ったよりも的に当たるのがうれしい
初心者体験ということもあり、近くの的を使わせてもらっているので、ある程度は当たります。初心者用の弓なので弓の力も弱いのですが、バスンといった音で的に刺さる矢の感触は心地よく、非常におもしろいです。
結局、筆者は、練習開始の10時からお昼の12時過ぎまで、2時間みっちりとアーチェリーを楽しみました。
まとめ
なんで、もっと早くチャレンジしなかったのかと深く後悔
銃が撃ってみたい! とか、刀でものを切ってみたい! といったレベルの好奇心として「弓を射てみたい!」という気持ちは多くの人にあるではないでしょうか。筆者は、この「弓を射てみたい!」という好奇心を満たすには、銃や刀ほどではないものの、それなりの高いハードルがあると思っていました。
しかし、実際にはとても簡単に、自宅の近くで、なにも用意する必要もなく、しかも無料で弓を射る体験ができました。これだけで十分チャレンジする価値はあるでしょう。
いままでにない体験、というだけでアーチェリーの初心者体験チャレンジは価値があると思います。さらに筆者は、望遠レンズでの撮影にも似た快感をアーチェリーに見いだしてしまい、原稿を書いている間にも2回目の練習に行ってきました。
ハマる人、ハマらない人には当然好みもあるでしょうが、射る際のフォームはもちろん、道具なども含め、奥が深く、筆者は今後もしばらく続けて行こうと思っています。
まだ、弓を射たことがないという方には、ぜひ初心者体験だけでも強くおすすめします。