「テレワーク」に「ホームスクーリング」。新型コロナウイルス流行の影響で、家で仕事や学習を進めていくことが多くなりました。例えば、学校で出された宿題を何枚も自宅でプリントアウトしなければならないことも。そこで出来るだけ「安く」印刷できるプリンターにニーズが集まっています。キヤノン「ピクサス TS8430」はインクコスパがよく、今の時代にぴったりな機能を備えたプリンターです。
プリンターのコストを抑える方法はある?
盛夏になれども、コロナは猛威を奮っており、今年は、本当にボロボロな年になりそうです。しかしそれでもしなければならないものがあります。「仕事」に「教育」。日常だったこの2つが、大きな曲がり角を迎えております。仕事は「テレワーク」、教育は「ホームスクーリング」。双方とも、家で仕事、学習を進めます。
特に学校教育は、メインの教科書だけで進めることはありません。補足のために、死ぬほどプリントを配ります。これを今は、電子データとして配布、家でプリントアウトするのが当たり前とのこと。ちょっと前の時代でしたら、OSがサポートしていない、ソフトを持っていないなど、すごく手間がかかったのですが、今の時代、そこまでのデジタル格差はありません。ネット環境さえあれば、全員な同じようなプリントを印刷することが可能です。それも含み、今、子どもがいる家のプリンターはかなり頻繁に使われているそうです。
しかしプリンターは、ゲームがゲーム機ではなく「ソフト」で儲けるのと似たビジネスモデル。「インク」が結構かかります。今回は、安くプリンターを使う方法です。
インクが高い理由は?
「写真再現」で発達したインクジェットプリンター
インクジェットプリンターが注目を浴びたのは、1990年代の中頃。丁度デジタルカメラの発達に合わせるように発達したプリンターです。
インクジェットプリンターは、インクを極々少量、ピコサイズの玉にしてペーパーに吹き付けます。それがペーパーに当たって色をなすわけです。基本色は、色の三原色「マゼンダ(赤系)」「シアン(青系)」「イエロー」、そして「ブラック」です。ブラック、黒色は三原色を混ぜ合わせると作られるのですが、黒は多量に必要です。そのため、別途用意します。そして、すべての色の基本色になる「白」はペーパーの色です。
これにインクによって再現しにくい色を「特色」として加えます。インクが「高い」のは当然といえます。混ぜ合わせる割合を変えることにより、いく通りもの色を正確に再現するからです。
黒色インクだけ「別」にする
黒をデカタンクにして顔料化したキヤノン
ところが黒は別です。黒は、すべての色を吸収します。つまり一番強い色をいうことが言えます。しかも、それが多用されます。3色を重ね黒にすると3倍量のインクが必要です。このため「黒」は別にあつらえたわけです。
このように、インクジェットプリンターは写真と一緒に開発されてきたわけですが、実際のプリントは、主には年賀状の宛先、回覧板、ちょっとした情報など、黒一色で済むことが多い。というより、かなりの場合、黒だけでこと足ります。
ここに目をつけたのがキヤノン。黒をデカタンクにして「顔料」化しました。インクジェットは通常染料系のインクを使っています。それは混ぜ合わせ、いろいろな色を出さなければならないからです。しかし黒は違います。単色で、そのまま使われます。また、顔料だと周りに飛び散り、滲むことはないですから、シャープに印字できます。字が読みやすい。また、水にあたっても滲み出すようなこともありません。
2020年8月に発売された、キヤノンのインクジェットプリンター、ピクサス TS8430、TS7430もそういう考え方で作られています。
写真には写真画質、プリントのような書類に関しては安価にプリントできるいいとこ取りのモデルです。
純正ではない「互換インク」を使えば安いのでは?
互換インクをプリンターメーカーが嫌う理由
プリンター市場には「互換インク」と呼ばれるインクが存在します。これを使うとさらに安くプリントすることが可能です。しかし、プリンターメーカーは互換インクを勧めません。どうしてでしょうか?
理由は2つあります。1つ目は、色の保証ができないからです。前述した通り、ほとんどの色は3色の掛け合わせで作り出します。ところが、その時、正しい色が出ているのかという保証ができないのです。
2つ目は、インクジェットのキーパーツ、インクの吐出ノズルは、物凄く精密なパーツです。そのインクがそれに適しているのか、保証ができないのです。
今、インクジェットプリンターの基本開発はほぼ終了しており、通信機能などを充実させる方向へ進んでいます。このため、プリント部分に関しては、大きな変更は余りありません。このため、第三者メーカーが力を尽くせば、それなりのインクを作ることはできます。しかし、トラブルが起こった時の対処ができないのです。互換インクを使う場合、個人の責任で行ってくださいね。
インクジェットとレーザーのランニングコストの差
さて、最近のプリンター売り場では、インクジェットプリンターに並んで、レーザープリンターも売られています。値札を見ると、わりと安い。しかも、こちらの方は、会社で書類プリントするのにガンガン使っているタイプですから、今のお仕事、学習ニーズにはとても便利な上、経費削減を旨とする会社で使われているのですから、ランニングコストも安そうです。
そこでキヤノン製品で比較してみました。
インクジェット代表は、最新型のTS 8430。
6色インクを使い、キレイな写真をプリントするモデルです。価格は、税込3万2175円(8月18日現在、価格.comでの最低価格)。
A4 普通用紙にカラー書類を印刷した場合、9.9円/枚。(大容量、標準サイズのインクカートリッジ使用時)。L判、光沢ゴールド 写真専用紙に、フチなしで写真を印刷した場合、18.1円/枚(大容量)。19.4円/枚(標準容量)。
一方のレーザープリンター代表は、LBP622C。
A4専用の入門用カラーレーザープリンターです。価格は4万3111円(税込)。(8月18日現在、価格.comでの最低価格)。A4 普通用紙に、カラー書類を印刷した場合、18.0円/枚。モノクロだと3.4円/枚。写真印刷に関する情報はありません。というより、レーザープリンターの写真専用ペーパーは極めてレアで、普通紙に印刷します。で、専用ペーパーで印刷したインクジェットと比較すると、ちょっと残念な画質となることが多いです。
レーザープリンターのモノクロの印刷代のコスパの良さはかなりのものですね。持っていると、コピー1枚10円が高く感じられます。インクジェットプリンターのモノクロ印刷のデータが公表されていないのは残念ですが、9.9円/枚のカラー書類をプリントするときより安いのは明白ですから、今のキヤノンのインクジェットは、相当に頑張っています。
キヤノン「ピクサス TS 8430」の魅力
今回、例として使ったキヤノンの最新機種 TS8430は、流行のプリンターの要素をいくつも持っています。
例えば、最近は、プリンターの置き場をリビングにすることが多いようです。つまり家族共用ということです。このため、本体は小さいことやデザインがいいことが条件。
ここでレーザープリンターは脱落します。何たって大きい。それに対し、TS 8430の設置面積は、ほぼA4です。そして、ちょっとしたアクセントがついたボディは、黒、白、赤の基本色。昔でいう電話感覚です。
そして次は、スマホから操作ができることです。今や、日常写真は、スマホの時代。スマホでちょっと編集して、それをさっさと印刷。要するに通信機能バッチリの仕様というわけです。
そして写真のランニングコストも安い。当然、プリント、書類印刷も安い。スキャナーも標準装備なので、家でちょっとコピーしたい時は、楽々対応というわけです。
プリンターを、実に楽に使いこなせる時代になりました。コロナ禍で、いろいろな見直しがかけられています。
エアコンの場合電気代の見直しになりますが、プリンターはインク代に注目。昔と今では、かなり差が出ますので、これを機にプリンターも見直してみるといいかも知れません。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーを繋ぐ商品企画コンサルティング「ポップアップ・プランニング・オフィス」代表。米・食味鑑定士の資格を所有。大手メーカーでオーディオ・ビデオ関連の開発に携わる。趣味は東京散歩とラーメンの食べ歩き。