従来にない製品が購入できたり、支援を募っている人を応援できたりするのが「クラウドファンディング」だ。ここでは、基礎知識から、代表的なサービス、購入の手順まで、わかりやすく解説しよう。
クラウドファンディングの基本がわかるQ&A
Q.
そもそもクラウドファンディングって何?
A.
「クラウドファンディング」は、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、インターネットを介して、不特定多数の人々から少額ずつ資金を集めることを指す。
資金調達といえば、金融機関からの借り入れや関係者からの出資などが一般的だったが、クラウドファンディングの登場により、手軽になり、テストマーケティングも行えるため、一気に裾野が広がった。
企業などの団体だけでなく、個人でプロジェクトを立ち上げることもできるので、「誰もが起案者や支援者になれる」のが大きな特徴だ。
インターネットの普及に伴い、2000年代に次々とクラウドファンディングサービスが登場。日本では2011年に始まったが、東日本大震災の年だったこともあり、資金調達の手段としてだけでなく、寄付をする際のサービスとしても注目された。
●購入型クラウドファンディングの仕組み
Q.
どんな種類がある? 利用するメリットは?
A.
いろいろな種類があり、資金調達の方法や支援者へのリターンのあり方で分類される。最も一般的なのが「購入型」だ。プロジェクトに対して支援者がお金を出資し、そのリターンとしてモノやサービスを得られる。
支援者がプロジェクトにお金を寄付する「寄付型」の場合、リターンは発生しない。
事業者が仲介して小口の資金を集め、大口化して企業に融資し、成果などに応じて金銭のリターンを得られる「投資型」もある。
自治体がふるさと納税によって寄付を募る「ふるさと納税型」も人気が高い。
メリットとしては、購入型の場合、新しい発想の製品や日本未発売の製品を購入できることや、早期に出資するほど高い割引率でお得に購入できることなどがある。
●同じクラウドファンディングでもさまざまな種類がある
購入型 | 起案されたプロジェクトに対して支援者が資金を提供し、支援者はそのリターンとしてモノやサービスを得る。 |
寄付型 | 起案されたプロジェクトに対して支援者がお金を寄付。リターンを得ることは基本的にない。 |
投資型 | 企業が個人投資家から出資を募り、投資家は、成果や出資額に応じた金銭的なリターンを受け取る。 |
ふるさと納税型 | 自治体が災害支援など、解決したい課題に対し、ふるさと納税の仕組みを利用して寄付を募る。 |
●早割が適用されることもある
Q.
お金が戻ってこないとか、リスクはないの?
A.
各プロジェクトは、公開前にクラウドファンディングサイトから審査を受けている。また、活動報告などを見ることで、実行者の対応も確認できる。
しかし、プロジェクトが目標金額に達しなくても返金されなかったり、リターンが提供されなかったりする可能性もある。こうしたリスクを補償する仕組みを用意しているサービスもあるので、支援前に確認するといいだろう。
●「CAMPFIRE」は保険を用意
Q.
利用するには何が必要? どうやって進めればいい?
A.
利用には、基本的にパソコンやスマホなど、ネットにつながる機器があればOK。各サイトは、会員登録が必要になる場合が多い。
購入型なら、まず気になるプロジェクトを見つけ、リターン(商品)の詳細を確認し、募集期間内に決済を行う。
決済方法はサイトにより異なるが、多くがクレジットカードやコンビニ支払いなどに対応する。支援後は活動報告を確認し、リターンが届くのを待とう。
●支援したら活動報告を確認
大手企業の利用も多い購入型サイトの代表的存在「Makuake」
新商品や新サービスなど多彩なプロジェクト展開
購入型のクラウドファンディングを数多く提供する「Makuake」は、2013年にサービスを開始。便利グッズやIoT家電といった新商品の開発を支援するプロジェクトが多いが、アートや音楽、社会貢献、地域活性化などのプロジェクトも少なくなく、バリエーションに富んでいる。
これまでのプロジェクトの中には2億円以上の資金調達を達成した商品もあり、大手企業とのパートナーシップを組んでいるのも大きな特徴の一つだ。
リターンとして商品を受け取るだけでなく、募集期間終了後の商品を直接購入できる「Makuakeストア」や、プロジェクト実施中の商品が直接見られたり、一般発売した商品を購入したりできる「MakuakeSHOP」(全国13店舗)など、さまざまなサービスを展開している。
Makuake
https://www.makuake.com/
2013年にスタートし、日本のクラウドファンディングサイトの中でも、「購入型」の代表的な存在。IT企業、サイバーエージェントの子会社が運営しており、シャープやダイキンなどの大手企業も活用してきた。特に、デジタル系のガジェットなどに強く、新しいもの好きには見逃せないサイト。支援者は「サポーター」と呼ばれ、応援コメントなどをサイト上に投稿可能。
●高額の資金調達に成功した製品も多い
●「ふるさと納税型」の支援も行っている
●活動レポートで進捗状況がわかる
テーマやジャンルが多彩で、掲載件数はトップクラス「CAMPFIRE」
利用者も多く、保険付きで安心して支援できる
日本のクラウドファンディング黎明期からサービスを提供している「CAMPFIRE」。購入型が中心だが、寄付型のプロジェクトなどもあり、累計4万件近いという掲載数は日本最大級で、高額の資金調達を果たした例も多い。
プロジェクトの内容も多岐にわたり、家電の開発支援や新店舗の開業支援といったものだけでなく、病気の子供のための商品開発やアイドル活動の支援、地域活性化のためのプロジェクトなどもあり、地方自治体も利用している。
2017年には、クラウドファンディングとしては日本初の「クラウドファンディング保険」を提供している。これはリターンが実行されなかった場合、支援金額の80%を上限として保険金を支払う仕組み。初めてクラウドファンディングを使う人にとっても、安心して支援できるだろう。
CAMPFIRE
https://camp-fire.jp/
2011年にサービスを開始し、音楽、本・漫画、アート、映画など、さまざまなジャンルのプロジェクトが集まる。中には3億円超えの資金調達を実現したプロジェクトもあり、国内有数のクラウドファンディングサイトとなっている。「CAMPFIRE」以外にも、地域特化型の「FAAVO」、パルコと共同運営する「BOOSTER」など複数のサービスを展開している。
●人気のリターンが一目でわかる!
●1回だけでなく継続的な支援もできる
●まちづくりに役立つプロジェクトも多い
TSUTAYAと同じ運営会社でエンタメ系に強い「GREEN FUNDING」
2013年にスタートした「GREEN FUNDING」は、CCCグループであることを活用し、写真集や絵本の出版、CD・DVDといったエンタメ系のプロジェクトに強いのが特色の一つ。プロジェクトの掲載数よりも、成功率を重視しており、平均支援総額は340万円で、業界最高水準といえるだろう。
また、IoT家電やスマホ関連などのデジタルガジェットにも強く、大手メーカーなども利用している。商品によっては、実物をリアル店舗である「蔦屋家電」のショールームで見ることも可能だ。
さらに、共通ポイントのTポイントが使えるのも、大きな特徴だ。支援する際に使えるだけでなく、支援金200円ごとに1ポイントがたまる仕組みもあるのは、うれしいところ。
GREEN FUNDING
https://greenfunding.jp/
TSUTAYAなどを運営するCCCグループによるクラウドファンディングサイト。IoT家電やスマート家電はもちろん、出版、CD、DVDなどのエンタメ系に強いのが特徴。アイドル、写真、スポーツなども用意。
日本初のクラウドファンディングで支援型が多い「READYFOR」
「READYFOR」は、日本で最初に登場したクラウドファンディングサイトだ。プロジェクトの実行者は中学生から80代のシニアまでと幅広く、社会貢献や地域貢献といったプロジェクトが充実している。ほかのサイトとは異なり、単純に最新ガジェットを開発するための支援というのは少ない。
寄付型のプロジェクトが数多く提供されているのが特徴で、寄付をした場合は税額控除を受けられるのも、メリットとなっている。気軽にチャリティに参加するには、いいきっかけになるサイトだろう。
また、被災地で活動する支援団体に寄付をする「緊急災害支援プログラム」や、ふるさと納税を利用した「ガバメントクラウドファンディング READYFORふるさと納税」も展開する。
READYFOR
https://readyfor.jp/
2011年にスタートしたクラウドファンディングサイトで、READYFORが運営する。購入型と寄付型が多く、中でも、新型コロナウイルス発生後は、社会貢献や地域貢献に対するプロジェクトが目立っている。
ふるさと納税を活用したプロジェクトを数多く展開「ふるさとチョイス」
ふるさと納税紹介サイトの大手「ふるさとチョイス」では、「ガバメントクラウドファンディング」という仕組みを用意。
一般的なふるさと納税との大きな違いは、「返礼品」ではなく「使いみち」に重きを置いた点。自治体が抱える問題解決のため、ふるさと納税の寄付金の使いみちをより具体的にプロジェクト化し、そのプロジェクトに共感した人から寄付を受けるという仕組みになっている。
さらに、独自の取り組みとして、複数の自治体にまたがる「広域連携 ガバメントクラウドファンディング」も用意する。
ふるさと納税で地域の起業家を応援したり、災害の支援をしたりと、目的が明確なのが特徴。寄付のみの場合もあるが、返礼品が手元に届き、税額控除も受けられるのは、ほかのふるさと納税と同様だ。
ふるさとチョイス
https://www.furusato-tax.jp/gcf/?header
本体はふるさと納税紹介サイトで、全国1788自治体、25万点以上の特産品を「ランキング」や「自治体の寄付金使いみち」などから選べる。その中に、クラウドファンディングに特化したコーナーを用意している。
クラウドファンディングのようなショッピングサイト「+Style」
2016年にソフトバンクが開始。当初はものづくり支援型サイトで、企業や個人を問わずに新たなプロダクトを提案し、支援者を募っていた。現在は「ショッピング」と「プランニング」に特化し、運営はプラススタイルが行っている。
「ショッピング」では、日本未発売のIoT関連商品が購入できるようになっており、先行販売や受注販売のものも多い。一方、「プランニング」では、企業のアイデアに対して利用者が意見を伝えることで、一緒に商品を作り上げられる。料金は一切発生しないので、どんどん意見を投稿するといいだろう。
クラウドファンディングと異なり、確実に商品を購入できるのが最大の強み。最新家電などに興味がある人は、定期的にチェックしておいて損はない。
+Style
https://plusstyle.jp/
●日本未発売の最新IoT家電が見つかるかも
IoT家電から日用品まで、こんな商品を見つけた!
クラウドファンディングの仕組みや主要サイトを把握したら、実際にどんなプロジェクトがあるのか調べてみよう。必ずリターンが欲しいなら、すでに目標金額を達成したプロジェクトを選ぼう。
プロジェクトによっては、目標金額を大きく上回ったりすると、リターンの内容がグレードアップする場合もある。支援する前に活動報告などもチェックしよう。
また、支援金額ごとにリターンの内容が異なるプランが用意され、プランごとに支援できる人数が決められていることもある。各プロジェクトは締切期限が設けられており、話題のプロジェクトは枠が早く埋まりやすいので、早めに支援しておこう。以下では、注目のプロジェクト例を紹介する。
●4K解像度の高精細モバイルディスプレイを発見! @Makuake
●ポケットに収まる軽量エコバッグ @CAMPFIRE
●あえてモニターのないデジカメを製作 @GREEN FUNDING
●紛失対策付き完全ワイヤレスイヤホン @GREEN FUNDING
●新型コロナ対策として大学病院に寄付 @READYFOR
初めてでも支援は簡単!Makuakeで買ってみた
購入型クラウドファンディングで支援する方法は簡単。基本的に、インターネットで買い物をするのと同じような感覚で利用できる。ここでは「Makuake」での支援例を紹介しよう。
プロジェクトを支援するには、会員登録が必要になる。サイトにアクセスしたら、画面右上の「新規登録」をクリック。メールアドレスと任意のパスワードを登録する。
MakuakeではSNSのIDでもOKだ。メールアドレスの場合、認証メールが届くので、メールに書かれた「確認する」をクリックすると登録が完了する。
次に、気になるプロジェクト(リターン)のページを表示し、超早割や早割などから好みのプランを選び、「応援購入する」をクリック。内容を確認したら、送付先を入力して「保存」をクリックし、決済に進む。
●支援するには会員登録が必要。プランを選択して決済する
Makuakeでは、クレジットカード、コンビニ決済、ペイジー、GMOあおぞらネット銀行への銀行振込が選べる。
決済を終えると支援は完了。支援後は、実行者を励ますコメントを投稿してチャレンジを応援することもできる。自分のSNSなどでプロジェクトを紹介してもいいだろう。
あとはリターンが手元に届くのを待てばいい。届くタイミングに関しては、活動レポートとしてサイト上に投稿されることが多い。Makuake上で実行者からメッセージが届く場合もあるので、随時確認するといい。
万が一届かない場合などは、メッセージを介して実行者に連絡しよう。Makuake自体はあくまでも仲介者なので、問い合わせても対応してもらえないので注意したい。
●決済が終了したら、リターンの到着を待つ
■解説/今西絢美 (ライター)
※掲載内容は記事作成時のものです。