スマホ普及の一方で、コンデジが苦戦しています。そこで、デジカメメーカーは、スマホでできないこと、苦手なことに特化したモデルをプロデュースしました。今回は「簡単望遠」に特化した望遠鏡カメラ、キヤノン「PowerShot ZOOM」を紹介しましょう。
進化するスマホ、衰退するコンデジ
小さな子どもをのぞいて、今やスマートフォンはほぼ必需品となっています。国勢調査、青色申告などといった国が行うことも、「スマホで手続き」ができることが当たり前の時代になっています。持っていないと今の時代、デジタル格差にもなりえます。総理自ら、スマホ料金の値を下げさせようとするのは、むしろ当たり前のことと言えるでしょう。
しかし、スマホもかなり進化した結果、数年前のモデルでも、さほど不自由せずに使うことができます。最新の5Gモデルは、さすがに凄いのですが、5Gの普及が遅れている今、その魅力も半減です。
このためでしょうか。最近のスマホは、カメラ機能の進化が中心になっています。レンズが物凄いことになつています。1眼ではなく、2眼、3眼がドンドン出てきています。今まで逃げて後回しになっていた望遠もだいぶ良くなっており、かなり使える仕様になっています。
一方で衰退しているのが、5万円以下のコンパクトデジカメ分野。しかし、今まで、デジカメメーカーはこの土俵で売り上げを上げてきました。この市場を手放すことはできません。そこで、デジカメメーカーは、スマホでできないこと、苦手なことに特化したモデルをプロデュースしています。今回は「簡単望遠」に特化したキヤノン「PowerShot ZOOM」を紹介しましょう。
スマホは望遠が苦手?
最近のスマホは、望遠レンズを持っています。
意見が分かれると思いますが、私は「スマホはどちらかと言うと望遠が苦手」だと思います。せっかく使える仕様になった専用レンズがあるのに、なぜ望遠撮影は苦手なのでしょうか?
それはスマホは画面で操作するようにできているからです。望遠は、手元のちょっとした動きで大きく狂います。そんな時、滑りやすいサイドを指でホールディングしながら、画面操作するのはかなりしんどいです。
望遠に一番強いのはムービーカメラですね。鷲掴みホールディングなのですが、これが実にブレにくいのです。また楽に遠くを見ることができるので、望遠鏡としても使えます。欠点は重く、大きいこと。
望遠が苦手なスマホの補助として、軽くて小さな望遠を主体としたカメラがあれば良いのではないでしょうか。望遠鏡としても使えますしね。
スマホを補う望遠鏡型カメラ「PowerShot ZOOM」
PowerShot ZOOMは4つの特徴があります。
一つ目は、サイズです。手のひらサイズで、約145g。スマホと共に持ち歩いても邪魔にならない。
二つ目は、100mm / 400mm / 800mm の三段階ズームのみに絞ったことです。100mmは、ちょっと大きく撮りたい時、400mmは室内スポーツ、800mmは野外スポーツに最適です。これがボタン一つで、ポンポンポンと切り替わるのです。操作がめちゃ楽です。
三つ目は高速連写です。0.1秒/枚での連続撮影ができます。ただし高速連写間は焦点は固定されたままです。
四つ目は、スマホとの連携。通信、またはUSBケーブル接続による連携が可能です。これはネットに対してスマホが起点であることを意味します。この便利さに、ほとんどのコンパクトカメラは負けたと言えます。このため、これを蔑ろにすると商品として成立しません。極めて重要なことです。
Makuakeで「人気」をチェック
経営者は失敗することを許しません。だからこそ「やってみなはれ!」と言う言葉はすごいことです。ただ昔と違うのは、ネットを商品テストの一つの手段として使えるようになったことです。
クラウドファンディングによる人気チェックです。
PowerShot ZOOMをクラウドファンディングのMakuakeに掲載したところ、目標の1000台が、約6時間50分で完売するほどの人気を得たそうです。私も商品を見た瞬間、いいなぁと思ったのですが、同じように感じた人が、こんなにも居たなんてと驚きました。
まとめ
PowerShot ZOOMはスマホの弱点を優しくカバーするモデルであり、スマホの望遠に不満を持っていたユーザーに支持され売れると思います。スマホの弱点である望遠に絞り、簡単操作、スマホへの簡単接続など、コンセプトも明快。
しかし今まであったコンパクトデジカメ市場を代替えすることはできません。デジカメメーカー各社が数モデル、色違いも入れると十数モデル投入した市場を、たった1モデルで代替えすることはできないからです。
その上、世はコロナ禍。外出の機会も少なくなり、デジカメのニーズも伸び悩んでいます。デジカメメーカーにとって、かなりの危機的状況なのです。
そんな中でのヒット商品開発はとても厳しいですが、今回紹介したPowerShot ZOOMのように、支持されるモデルもあります。是非、いろいろなモデルを作り、スマホ普及後の一芸(?)カメラの市場を盛り上げて、我々により豊かなカメラライフを提供してくれることを期待しています。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き