エアコンは、エア・コンディショナーの略。つまり、空気の状態を整える、空気を快適な状態に保つ機器です。普通のエアコンにできるのは、冷房、暖房、除湿まで。しかし、一部の機種は加湿や換気にも対応しています。今回は、1台5役ともいえるダイキン工業の多機能エアコンを紹介します。
コロナ禍の「換気」
エアコンも、選ぶのが大変な製品ですよね。まず、メーカーが多い。そして、各メーカーが多機能な上位モデルからシンプルな下位モデルまで多彩な機種を揃えています。さらに、それぞれの機種に部屋の広さに応じた製品があります。
カタログを見ると専門的な内容が多いし、店頭で説明を聞いても細かな風の設定やお掃除機能といった話になりがち。こうした機能も大事ですが、今回のメインテーマは「換気」です。
一般的なエアコンでは、換気はできない。
エアコンは、室内機と室外機でワンセット、室内機と室外機が配管でつながっています。そして、室内機から暖かい空気や冷たい空気が出てくるので、エアコンをつけておけば換気できていると思っている人が少なくありません。
実際は、室内機は部屋の中の空気を取り込んで、それを温めたり冷やしたりして部屋に戻しているだけです。一般的なエアコンは、外の空気を取り込んでいません。
室内機と室外機をつないでいる配管の中では、冷媒ガスと呼ばれる気体が行き来していて、このガスを使って熱を移動させています。この冷媒ガスが外に出ることはなく、もしも漏れたら冷暖房ができなくなってしまいます。
ダイキンが優れている理由
以前は、複数のメーカーが換気できるエアコンを発売していた時期もありました。また、室内の空気を外に出す、つまり排気機能が付いたエアコンを発売しているメーカーもあります。しかし現在、外の空気を取り込めるエアコンを発売しているのはダイキンだけです。
ただし、一部の上位モデルに限られていました。しかし、2020年の秋に発表された2021年モデルは換気機能付きモデルが大幅に増えています。
ダイキンのエアコンといえば、うるるとさらら。略して、うるさら。うるるが加湿機能を表していて、さららが除湿機能を表しています。
除湿機能は、ほとんどのエアコンに装備されています。一方、加湿機能があるのもダイキンのエアコンだけです。加湿だったら加湿器を使えばいいと思うかもしれませんが、加湿器を使っていて意外に面倒なのが給水です。定期的に、タンクに水を入れる必要があります。
新鮮な外の空気を取り込むのはダイキンのエアコンだけ。
ダイキン製エアコンの加湿機能が優れているのは、室外機から外の空気を取り込んで、その空気から水分を取り出して室内を加湿するという独自の方式にあります。そのため、給水する必要がありません。
ただ、この機能を実現するために空気を送る配管が追加されています。室内機と室外機をつなぐ管が普通より一本多いのです。そして、この管を利用することで屋外の空気を室内に運ぶことができます。つまり、換気が可能というわけです。
快適さを損なわず換気ができる
ただ、ここでもよく誤解があります。「外の空気を取り込む」というと、外の空気だけを暖めて(あるいは冷やして)室内に出ていると思う人がいます。実際は、室内の空気に外の空気を混ぜているだけで、大部分の空気は室内を循環しています。
「なんだ」と思わないでください。仮に、外の気温が5度の日に、設定温度20度で暖房運転したとしましょう。空気の温度を一気に15度も上げるには大変な電力と強い暖房能力が必要です。しかも、同じ量の空気を屋外に出す必要があるので、暖めた空気がどんどん逃げてしまいます。冷房のときも、逆のことが起こります。
24時間換気システムをご存じでしょうか。2003年の建築基準法の改正で設置が義務付けられた装置で、これ以降に新築された住宅は、戸建てでもマンションでも必ず設置されています。
換気能力は、24時間換気システムと同じくらい。
24時間換気システムは、約2時間で部屋の空気を入れ替える能力があります。つまり、部屋を閉め切っていても2時間で室内の空気が入れ替わるのです。これによって、シックハウス症候群が減り、カビなどの予防にもなるとされています。
24時間換気システムの場合、お風呂やトイレなどの排気口から家の中の空気を外へ出して、その分、壁や天井などの吸気口から自然に空気が入ってきます。いわば、意図的にすきま風を作っているようなもので、外の空気がそのままの温度・湿度で入ってきます。
ダイキン製エアコンの換気機能も、空気が循環する量は24時間換気システムと同じくらい。換気運転をしていれば、法律で定められた目安と同じくらいのペースで室内の空気が入れ替わっていきます。
メリットは、室内の空気と混ぜて、暖めて(あるいは冷やして)から吹き出すこと。そのため、快適さが損なわれません。あるいは、暖房や冷房を行っていないときに、換気の機能(給気)だけ使うこともできます。
ダイキンの2021年モデルに注目
部屋を閉め切って空気の入れ替えがないと二酸化炭素(CO2)の濃度が上がるし、食べ物の臭いや生活臭もこもります。湿気が多いと、カビが増える原因にもなります。
換気は、いつの時代も健康で快適な生活に役立つ。
また、今シーズンは特に「換気の悪い密閉空間」の改善に関心が高まっています。厚生労働省が公表している資料は主に職場や商業施設に向けた内容ですが、一般家庭でも窓を開けにくい季節に適切に換気する方法は気になるところ。どんな時代でも、換気は健康的な暮らしの役に立つでしょう。
では、換気しながら冷房や暖房ができるダイキンの2021年モデルを紹介していきます。
壁掛形ルームエアコン(1)「うるさらX(エックス)」
▼ダイキンのフラッグシップモデルがさらに進化
冷房、暖房、除湿、加湿、換気の5機能を備えた最上位モデル。もちろん、加湿は給水のいらないうるる加湿で、除湿は室温が下がりにくい新ハイブリッド方式です。スマホからの操作や、この記事の後半で紹介しているBeside(ビサイド)にも対応しています。
また、熱交換器を水で洗浄する水内部クリーン、エアコン内部のカビや臭いの原因菌を抑制するストリーマ内部クリーン、フィルター自動お掃除など、衛生面が気になる人にうれしい機能が多いのも特徴です。さらに2021年モデルは、室内ファンが防カビ加工ファンへと進化しました。
下記の製品は主に20畳を想定したモデルですが、ほかに6畳用、8畳用、10畳用、12畳用、14畳用、18畳用、23畳用、26畳用、29畳用があります。部屋の広さにあった機種を選んでください。
壁掛形ルームエアコン(2)「うるさらmini(ミニ)」
▼寝室など狭い部屋を対象とした高機能モデル
うるさらXと同じく、冷房、暖房、新ハイブリッド除湿、うるる加湿、換気の機能を備えた上位モデルです。防カビ加工ファンなど一部の機能が省かれていますが、その分、価格が抑えられています。
寝室や子供部屋などの個室を想定したモデルで、下記の製品は8畳用です。ほかに、6畳用と10畳用があります。人の出入りが少ない寝室などは、特に給気形の換気機能がありがたいですね。
壁掛形ルームエアコン(3)「Vシリーズ」
▼お求めやすいクラスに換気機能を追加した注目モデル
換気機能は魅力だけど、最上位モデルは予算的に難しいという人に朗報です。2021年は、スタンダードクラスにも、換気しながら冷暖房ができる機種が追加されています。
このVシリーズは、うるる加湿には対応しないものの、新ハイブリッド除湿を搭載。また、ストリーマや水内部クリーンといった内部を衛生的に保つ機能もあるので、お買い得感があります。
下記の製品は主に12畳用ですが、ほかに6畳用、8畳用、10畳用、14畳用、18畳用があります。発売は、2021年3月30日です。
うるるとさらら天井埋込カセット形(4)「シングルフロータイプ」
▼リビングが大きな新築住宅で検討したい
店舗やオフィスでは、よく天井に埋め込まれたエアコンが使われています。一般の住宅でも、リビングなど広い部屋では、こうしたタイプを使うことができます。2021年は、天井埋込形の機種にも冷暖房、うるる加湿、さらら除湿に加えて給気型の換気ができる機種が投入されました。
下記の製品は主に18畳用ですが、ほかに10畳用、12畳用、14畳用、16畳用、20畳用があります。発売は、2021年3月30日。後付けは難しいので、新築やリフォームの際に検討するといいでしょう。
うるるとさらら(5)「床置形」
▼実はメリットが多い床置形のうるさら
一般家庭では壁掛形のエアコンが主流ですが、ダイキンには床置形の製品もあります。置き場所を確保する必要がありますが、家具などと一緒に計画するとスッキリ収まります。また、床に近いところから風が出るので、特に暖房効果が高いといわれています。
2021年モデルでは、こうした床置形にも給気型の換気ができる機種が追加されました。もちろん、うるる加湿、さらら除湿にも対応しています。
下記の製品は主に14畳用ですが、ほかに10畳用、12畳用、16畳用、18畳用があります。発売は、2021年3月30日。なお、床置形も壁掛形と同様に室外機との接続(配管)が必要です。
オプションの『Beside』がすごい
換気が大切だと分かっていても、換気ができるエアコンがあっても、どんなタイミングで換気機能を使えばいいのか分からない、いちいち操作するのは面倒、という人もいるでしょう。そんな人には、オプションの『Beside(ビサイド)』という機器がおすすめです。
これは、AIQセンサー&AIコントローラーと呼ばれ、置いた場所の「温度」「湿度」「照度」「CO2濃度」「天気」「位置情報」を取得して分析します。そして、Beside専用のスマホアプリで、そのときどきの快適度を入力すると、AIがあなた好みの設定を学習していきます。
当初は、この機能を使って、いつも快適な状態を保てる、場所が変わっても自動的に自分好みの設定になる、といったことを目指していたそうです。しかし、換気が重要な時代になって、注目される機能が変化してきました。
CO2濃度上昇で自動的に換気運転
Besideは、CO2(二酸化炭素)濃度を取得していて、濃度が上がったら自動的にエアコンの換気運転を始めることができます。あるいは、外出先からスマホで室内の空気の状態を確認し、二酸化炭素濃度が上がっていたら換気運転を始めるといったことも可能です。たとえば、ペットが留守番しているような家で役に立つでしょう。
エアコンに換気機能がなくても、Besideがあれば、スマホやタブレットで室内の二酸化炭素濃度を確認できます。そのため、一定の濃度を超えたら、窓を開けたり換気扇を使ったりといった判断ができます。
ダイキン製のエアコンを使っている人、購入を考えている人は導入を検討してみるといいでしょう。2021年モデルなら、ごく一部の機種を除いてBesideと連係できます。ここ数年の機種なら、かなり対応しています。10年くらい前のエアコンだと、一部の機種だけが使用可能です。
まとめ
単に室内の空気を冷やしたり暖めたりするだけでなく、除湿や加湿、さらに換気までできたら、より一層快適なことは容易に想像できると思います。
加湿や給気型の換気まで対応できるのはダイキンだけ
細かな気流のコントロールやお掃除機能も魅力ですが、やはりエアコンの基本は「空気を良い状態に保つ」こと。冷房、暖房、除湿に加えて、給水が必要ない加湿や給気型の換気まで対応できるのは、今のところダイキンのエアコンだけ。
多機能な製品は予算が上がりますが、長く使うものですし、その間、自分や家族が快適で健康的に暮らせることを考えたら検討してみる価値が十分にあるのではないでしょうか。
◆高山とほ(プロダクトライター)
約5年に渡って家電量販店の店頭に立ち、いろいろなお客様に対応した経験から「それぞれのお客様にとって最適な製品を選ぶポイントを的確に伝える」ことをモットーにしているモノ派のライター。学生時代に工業デザインを学び、日本製家電の黄金期に郷愁を感じる世代。アウトドアを好み、道具にはこだわるほう。