睡眠不足が続く人を、漢方では「腎」が弱っていると考えます。「腎」にダメージを与える行動を「久立」と呼び、立ち仕事が多いことを表します。起きている時間が長く夜更かししがちな点も。睡眠の質を高め成長ホルモンの分泌を促したり、体内時計を整えたりするなど、習慣を少し変えてみてください。食事では、亜鉛やマグネシウムなどを多く含むナッツや豆を食べるようにしましょう。【解説】大久保 愛(薬剤師)
執筆者のプロフィール
大久保 愛(おおくぼ・あい)
薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。アイカ製薬株式会社代表取締役、漢方生薬研究所開発責任者、一般社団法人腸内細菌検査協会理事、株式会社東進メディカルアドバイザー。秋田県出身。昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。秋田の豊かな自然の中で、薬草や山菜を採りながら暮らす幼少期を過ごし、漢方や食に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとした医療と美容の専門家として活躍。おうちで薬膳を手軽に楽しめる「あいかこまち」を開発。漢方カウンセラーとして、年間2000人以上の悩みに応えてきた実績を持つ。著書『1週間に1つずつ 心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は発売1カ月で7万部のベストセラーに。そのほか、女性の体に特化した『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)を出版するなど、「食薬」の普及を行っている。
▼アイカ製薬(公式サイト)
▼@Ai_loveflower(Twitter)
▼aivonne85(Instagram)
本稿は『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/Eriy
「腎」が弱ると不眠体質になる!
●眠りが浅い/物忘れが多い
●抜け毛・薄毛が気になる
●耳鳴りがする
●顔や足がむくむ
●骨密度が低い
●更年期症状がある/生理痛で腰が重だるい
●足腰がだるい/太りやすい
●頻尿・尿漏れ
不眠体質とは?
睡眠不足が続く人を、漢方では「腎」が弱っていると考えます。そして、「腎」にダメージを与える行動を「久立」と呼び、立ち仕事が多いことを表します。起きている時間が長く、夜更かししがちな点も。寝る前に音楽を聴いて睡眠の質を高め、成長ホルモンの分泌を促したり、朝起きる時間を固定して体内時計を整えたりするなど、習慣を少し変えてみてください。食事では、「腎」に必要な亜鉛やマグネシウムなどを多く含み、カリッポリッと良い音のするナッツや豆を食べるようにしましょう。
漢方で考える
「腎」の働きは、腎臓の働きに内分泌系の働きが加わった感じだと考えていただけるとよいと思います。「腎」は「気・血・水」のうち「水」の働きに深くかかわります。例えば、寒いときにトイレが近くなるのは「腎陽虚」です。腎臓には、ろ過機能により水分や血圧を調整する働き、骨を強くする働きなどがあります。この働きに支障があることを総じて「腎虚」といいます。また、寝不足が続くと記憶力や耳鼻科系の不調を感じることがあり、これを「腎陰虚」といいます。
不眠体質にお勧めの「食薬」は、生命力の強い食材に、BGMや会話など食事中の音も楽しむ料理です。
食事は、誰と一緒に食べるか、どんな会話をするか、どんなBGMがかかっているかも大切です。
特に、睡眠前である夕食時は、心地の良い時間を過ごせるように意識しましょう。
カリッと良い音のする実や種で「腎」を支えましょう。
不眠が大敵な理由
睡眠は成長ホルモンと深い関係があります。成長ホルモンは、その名のとおり、骨などの成長はもちろん、細胞の修復も促します。
睡眠時間が減ったり、眠りが浅かったり、昼夜逆転の生活を送っていたりすると、成長ホルモンの恩恵が受けられません。細胞の修復が遅く、疲労蓄積、新陳代謝の低下、老化の加速、傷の治りが遅くなるなど、さまざまなデメリットがあります。
また、睡眠不足は女性ホルモン・甲状腺ホルモン・ストレス時に出るホルモンなどの内分泌系全般にもダメージを与えます。
さらに、睡眠時には脳のリンパの流れが促され、脳にたまった老廃物を排泄していく時間でもあります。睡眠不足により老廃物が蓄積すると、記憶力の低下や認知症、うつ病などにも関係したり、リンパの滞りから耳鳴りや難聴などの原因となったりすることもあります。
不眠と女性ホルモン
女性の寿命が男性よりも長いのは、女性ホルモンにより睡眠の質が良くなることが理由の1つとされています。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあり、生理後にエストロゲンの分泌が増えるときには眠りが深くなります。そして、排卵以降に増えるプロゲステロンもまた、睡眠の質を高めます。そのため、女性のほうが男性よりも睡眠が深くなりやすく、寿命も長くなっているといわれています。
ただし、逆もあります。睡眠の質が悪かったり、睡眠時間が短くなったりすると、生命維持を優先するために女性ホルモンの分泌がおろそかになり、生理不順など女性ホルモンの乱れが起こることもあります。
忙しい時期でどうしても睡眠時間が削られるときには、栄養をたっぷりとって、心地よいBGMなど、さまざまな癒しをとり入れて睡眠の質を上げていきましょう。
食生活での注意
人工調味料のとりすぎはNG
▼有害物質 人工調味料・人工甘味料
寝不足で脳が疲れているときは、味覚が鈍感になり、濃い味つけの料理のほうがおいしいと感じることがあります。そして、料理をするのも面倒になって、レトルト食品やファストフードなどを利用しがちです。
この状態が長く続くと、日々の食事から摂取する栄養が偏るだけでなく、人工調味料に慣れてしまって、自然な味つけに戻しにくくなります。
また、「エネルギーを補給しなければ」と思って、甘いものや栄養ドリンクなどを摂取している人も多いのではないでしょうか?
最近では、女性向けに糖質オフの栄養ドリンクも出回っていますが、要注意です。老化や動脈硬化などの原因となるAGE(終末糖化産物)を、ブドウ糖の10倍の速さで発生させるといわれる人工甘味料が含まれることがあるからです。
日々の食事を手っ取り早く済ませようとせずに、寝不足のときこそ家庭の調味料の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
あなたに必要な「食薬」木の実や種をとり入れた心地よい食事の時間で「腎」を整えて快眠体質に
寝不足で「腎」が弱くなると、老化が加速します。
ビタミンとミネラルを補給してぐっすり眠ること大切。
木の実・種・豆など、「腎」を整える生命力の強い食材をとり入れましょう。
不眠体質を改善する食材リスト
●納豆
●酢
●ひよこ豆
●うずらの卵
●カシューナッツ
●マッシュルーム
●クルミ
●栗
●枝豆
●キクラゲ
●小豆
●玄米
●ギンナン
●山芋
●アーモンド
●ヒジキ
●ピーナッツ
●モヤシ
●黒豆
●黒ゴマ
●ピスタチオ
●ラム肉
なお、本稿は『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。 詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(6)「便秘解消と食事の関係 おすすめの食材は?」の記事もご覧ください。