本当に美味しい「パック酒」はどれだ?
コンビニやスーパーなどで買うことができ、お手頃価格な紙パックの日本酒。料理酒のイメージも強いですが、きちんと銘柄を選べば、毎日の晩酌や、宅飲みにぴったりなお酒に出会えます。日本酒のソムリエといわれる利酒師、米・食味鑑定士のライター、そして特選街web編集部イチの日本酒ツウを自負する私・ミヤモトの、三者による「本気レビュー」をお楽しみください。
3名の日本酒ツウがおすすめを厳選

▼戸嶋ルミ(SSI認定利酒師)
スポーツ専門ウェブサイトの編集を経てフリーランスのライター、カメラマンに。メインの執筆ジャンルはスポーツ。SSI認定利酒師として日本酒イベントや飲食店での勤務歴もあり。野球とバスケ観戦が生きがい。

▼多賀一晃(米・食味鑑定士)
大手メーカーの企画開発担当として、オーディオ・ビデオといったメディアの画質、音質の官能評価を長年経験したのち、独立。米・食味鑑定士の資格を所有。米、酒、コーヒーの香り、味の官能評価も行い、特に日本酒、発酵食品といった日本の食文化に造詣が深い。広島県出身。

▼宮本温子(特選街web編集部員)
「獺祭」を生んだ酒どころ、山口県東部出身で、無類の酒好き。コロナ禍では、お取り寄せを使ってクラフトビールや地酒を家で楽しんでいる。好きな山口の日本酒は「五橋(ごきょう)」「東洋美人」「雁木(がんぎ)」。
パック酒の評価方法
評価条件をそろえるため、すべて常温(約15℃)、ガラスコップで試飲を行いレビューします。
日本酒は純米酒、醸造酒、純米吟醸酒など、さまざまな種類がありますが、この記事ではざっくり辛口と甘口に分類し、おすすめのパック酒を紹介していきます。
また、それぞれのパック酒を、①味わい、②おすすめの飲み方、③コストパフォーマンスの3項目に分けて評価します。
日本酒<辛口>
高清水 辛口パック

味わい
全国燗酒コンテスト2020の「お値打ち熱燗部門(55℃)」にて最高金賞を受賞している実力派の一品。辛口の日本酒が好きな方にオススメしたい日本酒です。常温では香りは控えめで、口当たりは柔らか。口に含むと穏やかな甘味と米の味が舌全体にじんわりと広がり、旨味をしっかりと感じることができます。

評価者:戸嶋
最高金賞受賞の実力派!
おすすめの飲み方
飲み干したあとも舌に残る旨味の余韻を楽しむことができますが、塩味と合わせると途端にキレの良さを発揮。酸味も強くないため、食中酒として活躍すること間違いなしです。枝豆やさきいか、おかき・煎餅など塩気のある米菓、おでん(出汁の効いた煮物)などコンビニで揃う定番系おつまみとの組み合わせが良好で、ついつい飲んで食べてのループが止まらなくなってしまいます。
コスパ
お値段は900mlで903円(税込)。日本酒の一般的なサイズである四号瓶が720mlなので、900mlは量もしっかりあります。また、食中酒としてのパフォーマンスを考えるなら、かなりコスパは高く感じます。
松竹梅 純米酒(セブンイレブンプレミアム)

味わい
「松竹梅」で有名な宝酒造がある京都市伏見は、日本の三大日本酒の産地。(他の2つは兵庫の灘、広島の西条。灘と伏見は辛口、西条は甘口)古来よりおいしいお酒の産地として知られ、今も多くの酒造メーカーがあります。
セブンイレブンは、これはと思ったお菓子・食品メーカーとよくコラボレーションします。これもその一つ。精米歩合 78%、アルコール度 14〜15%。口当たりが非常にふくよかで、柳腰の美女のような柔らかさが出ています。また香りも、純米酒にはない、淡い(それなりというべきか)吟醸香も感じられます。パッケージをよく読むと、香りのために純米大吟醸酒を10%ブレンドしてあると書いてありますね。純米大吟醸は、日本酒の中では王様ともいえますが、それをブレンドさせるあたり、流石にセブンイレブンと言ったといったところでしょうか。

評価者:多賀
柳腰の美女のような柔らかさ!
おすすめの飲み方
味わいは淡麗辛口ではあるものの、強調されておらず、品があります。よって、特につまみがなくても、美味しく飲めてしまいます。日本酒を飲み慣れていない初心者にもお勧めな一品。普段の食卓や、どんなつまみにも合わせやすいといえます。
コスパ
1800mlで、888円(税抜)。今、コンビニで売り上げNo.1の日本酒である「菊水ふなぐち缶」(500ml 680円税抜)と比較すると、1000ml換算で493円と1360円。さらに、小ロットで純米大吟醸までブレンドしていると考えれば、かなり高コスパと言えるでしょう。

松竹梅
純米酒1.8L
北関酒造 おいしい純米酒

味わい
栃木のお酒。ブランド銘柄としては「北冠」ですが、紙パックでは、日本酒に詳しくない人でも馴染める「おいしい純米酒」が名前となっています。ちなみに、パッケージにある「清酒」というのは、「濁酒(にごりざけ)」に対する表記なので、そこまで気にしなくて大丈夫です。

評価者:多賀
実はブランド銘柄の「北冠」!
精米歩合は78%ですが、非常にすっきりとした味わい。純米酒らしさが際立ちます。裏面には「淡麗」「やや辛口」と表記がありますが、香りが割と立ち、香りから予想される辛さより、ちょっと辛め。アルコール度数が15度とやや強いからかも知れません。後味は微かに下の上に残るものの、さっぱり感もあります。
おすすめの飲み方
お酒単独ではなく、何かをつまみながら飲んだ方がより美味しく感じられます。つまみは、このお酒に負けないよう、塩辛、香の物など、味が明確なものがお勧めです。日本酒初心者より、飲み慣れた人向けと言えるでしょう。
コスパ
スーパーでの買値は、2000ml 768円(税抜)。圧倒的なコスパです。なお、同商品はスーパーやリカーショップなどで購入可能ですが、ネットでも同酒造の類似商品を購入することができます。

五橋 清酒 紙カップ

味わい
筆者の出身地である山口県のお酒。山口といえば「獺祭」や「東洋美人」などの日本酒で有名な酒どころですが、個人的に激推ししているのが「五橋」という銘柄。岩国名物の錦帯橋が名前の由来になっています。この「五橋」は瓶以外にもパック酒やカップ酒など多様なラインナップがあり、気軽に楽しみやすいです。

評価者:宮本
個人的に激推し!
口当たりは軽く、さらりと飲みやすいお酒ですが、飲み込む時にギュッとした旨味が口いっぱいに広がり、程よい酸味があるのがポイント。旨味が強く、やや辛口なのでほんのり舌先に刺激を感じるのですが、決して癖の強いお酒ではないです、むしろ日本酒初心者の方でもすっきり飲みやすい部類なのではないかと思います。
おすすめの飲み方
特に、冷酒でお刺身などと一緒に味わうと格別に美味しいです。冬は鍋物のおともに飲むのもおすすめです。個人的には冷酒がおすすめですが、ぬる燗にしても美味しいです。
コスパ
カップ酒(180ml)の価格は198円(税込)。パック酒のタイプもあるので、一度カップを飲んでみて気に入ったらパックタイプを購入するのが良さそう。
玉乃光 純米吟醸冷蔵酒パック

成城石井限定
味わい
こちらはスーパー「成城石井」オリジナルの商品で、延宝元年(1673年)創業の京都の老舗酒造が作る紙パック日本酒。純米吟醸酒98%に純米大吟醸を2%ブレンドした、リッチな一品です。
パッケージには香り高めとあるように、常温でも開封直後は香りを感じました。口に含んだときの旨味のプッシュはなかなか強め。フレッシュな酸味も程よく感じられる旨辛口タイプです。辛口好きはもちろん、純米酒が好きな人にもお試しいただきたい味わいです。

評価者:戸嶋
純米大吟醸ブレンドのリッチな一品!
おすすめの飲み方
旨味がしっかり感じられますが非常にキレが良く、味の余韻は比較的短いので、食中酒向けな印象です。塩気のあるおつまみ、特に醤油味と合わせると甘みがアップして感じられるので、試してみてはいかがでしょうか。
コスパ
300mlで484円(税抜)と、ここで紹介している他のお酒と比較すればやや高価な印象ですが、リッチなお酒を飲みきりサイズで購入したい時に重宝しそうです。ちょっとした自分へのご褒美にいかがでしょうか?なお、こちらの商品は成城石井限定商品のため、ネット販売は取り扱いがありません。ちなみに、玉乃光酒造の他ラインナップはネットでも購入可能です。
谷乃越 純米吟醸

味わい
パッケージには「飲めばわかる香り豊かな本格造り」とありますが、「純米吟醸酒」であるこの酒は、純米酒と一線を画す存在。典雅な香りと、日本刀のように、冴えたきりりとした味わいは、紙パックの安酒であることを忘れさせてくれます。
パッケージの味申告は「やや辛口」「やや淡麗」とのことですが、いずれもちょっと弱め。へんな癖はほぼなく、極めてナチュラルで、実においしい日本酒という印象です。

評価者:多賀
典雅な香りと日本刀のような味わい!
おすすめの飲み方
アルコールを飲み付けない若い世代に、ぜひお勧めしたいお酒です。おつまみにはプロセスチーズではなく、本格的なナチュラルチーズを合わせてもいいくらい品質の高いお酒と言えるでしょう。個人的には、ゴルゴンゾーラとのマリアージュが好きです。
コスパ
1.8L 990円。1000mlで、555円(税抜)。正直、居酒屋で飲む550〜600円/杯くらいのランクのお酒が遥かに下に見えるほどの風味なので、すこぶるお得です。吟醸なので純米より50〜60円高いですがこれも妥当でしょう。コスパ重視だが品質も譲れないという人におすすめします。ただし、純米酒より温度変化に弱いため、できる限り早めに飲んでください。