スーパーやコンビニで購入できる「紙パックの日本酒」。コロナ禍で「宅飲み」が増えた人も多く、安くて美味しい「パック酒」へのニーズが高まっています。そこで、特選街web編集部では「本当に美味しいパック酒はどれか」を徹底調査。おすすめの9銘柄を紹介します。ところで、2021年の節分は2月2日ですが、皆さんは「恵方呑み(えほうのみ)」をご存知ですか? やり方は恵方巻と同じ。恵方を向いて、好きな銘柄の日本酒をお猪口やグラスで飲むだけ。今年の恵方は「南南東」です。ぜひ恵方を向いて、願い事を思いながらコスパ最強の「パック酒」で福を呼び込みましょう。
本当に美味しい「パック酒」はどれだ?
コンビニやスーパーなどで買うことができ、お手頃価格な紙パックの日本酒。料理酒のイメージも強いですが、きちんと銘柄を選べば、毎日の晩酌や、宅飲みにぴったりなお酒に出会えます。日本酒のソムリエといわれる利酒師、米・食味鑑定士のライター、そして特選街web編集部イチの日本酒ツウを自負する私・ミヤモトの、三者による「本気レビュー」をお楽しみください。
3名の日本酒ツウがおすすめを厳選
▼戸嶋ルミ(SSI認定利酒師)
スポーツ専門ウェブサイトの編集を経てフリーランスのライター、カメラマンに。メインの執筆ジャンルはスポーツ。SSI認定利酒師として日本酒イベントや飲食店での勤務歴もあり。野球とバスケ観戦が生きがい。
▼多賀一晃(米・食味鑑定士)
大手メーカーの企画開発担当として、オーディオ・ビデオといったメディアの画質、音質の官能評価を長年経験したのち、独立。米・食味鑑定士の資格を所有。米、酒、コーヒーの香り、味の官能評価も行い、特に日本酒、発酵食品といった日本の食文化に造詣が深い。広島県出身。
▼宮本温子(特選街web編集部員)
「獺祭」を生んだ酒どころ、山口県東部出身で、無類の酒好き。コロナ禍では、お取り寄せを使ってクラフトビールや地酒を家で楽しんでいる。好きな山口の日本酒は「五橋(ごきょう)」「東洋美人」「雁木(がんぎ)」。
パック酒の評価方法
評価条件をそろえるため、すべて常温(約15℃)、ガラスコップで試飲を行いレビューします。
日本酒は純米酒、醸造酒、純米吟醸酒など、さまざまな種類がありますが、この記事ではざっくり辛口と甘口に分類し、おすすめのパック酒を紹介していきます。
また、それぞれのパック酒を、(1)味わい、(2)おすすめの飲み方、(3)コストパフォーマンスの3項目に分けて評価します。
日本酒
高清水 辛口パック
味わい
全国燗酒コンテスト2020の「お値打ち熱燗部門(55℃)」にて最高金賞を受賞している実力派の一品。辛口の日本酒が好きな方にオススメしたい日本酒です。常温では香りは控えめで、口当たりは柔らか。口に含むと穏やかな甘味と米の味が舌全体にじんわりと広がり、旨味をしっかりと感じることができます。
最高金賞受賞の実力派!
おすすめの飲み方
飲み干したあとも舌に残る旨味の余韻を楽しむことができますが、塩味と合わせると途端にキレの良さを発揮。酸味も強くないため、食中酒として活躍すること間違いなしです。枝豆やさきいか、おかき・煎餅など塩気のある米菓、おでん(出汁の効いた煮物)などコンビニで揃う定番系おつまみとの組み合わせが良好で、ついつい飲んで食べてのループが止まらなくなってしまいます。
コスパ
お値段は900mlで903円(税込)。日本酒の一般的なサイズである四号瓶が720mlなので、900mlは量もしっかりあります。また、食中酒としてのパフォーマンスを考えるなら、かなりコスパは高く感じます。
松竹梅 純米酒(セブンイレブンプレミアム)
味わい
「松竹梅」で有名な宝酒造がある京都市伏見は、日本の三大日本酒の産地。(他の2つは兵庫の灘、広島の西条。灘と伏見は辛口、西条は甘口)古来よりおいしいお酒の産地として知られ、今も多くの酒造メーカーがあります。
セブンイレブンは、これはと思ったお菓子・食品メーカーとよくコラボレーションします。これもその一つ。精米歩合 78%、アルコール度 14〜15%。口当たりが非常にふくよかで、柳腰の美女のような柔らかさが出ています。また香りも、純米酒にはない、淡い(それなりというべきか)吟醸香も感じられます。パッケージをよく読むと、香りのために純米大吟醸酒を10%ブレンドしてあると書いてありますね。純米大吟醸は、日本酒の中では王様ともいえますが、それをブレンドさせるあたり、流石にセブンイレブンと言ったといったところでしょうか。
柳腰の美女のような柔らかさ!
おすすめの飲み方
味わいは淡麗辛口ではあるものの、強調されておらず、品があります。よって、特につまみがなくても、美味しく飲めてしまいます。日本酒を飲み慣れていない初心者にもお勧めな一品。普段の食卓や、どんなつまみにも合わせやすいといえます。
コスパ
1800mlで、888円(税抜)。今、コンビニで売り上げNo.1の日本酒である「菊水ふなぐち缶」(500ml 680円税抜)と比較すると、1000ml換算で493円と1360円。さらに、小ロットで純米大吟醸までブレンドしていると考えれば、かなり高コスパと言えるでしょう。
松竹梅
純米酒1.8L
北関酒造 おいしい純米酒
味わい
栃木のお酒。ブランド銘柄としては「北冠」ですが、紙パックでは、日本酒に詳しくない人でも馴染める「おいしい純米酒」が名前となっています。ちなみに、パッケージにある「清酒」というのは、「濁酒(にごりざけ)」に対する表記なので、そこまで気にしなくて大丈夫です。
実はブランド銘柄の「北冠」!
精米歩合は78%ですが、非常にすっきりとした味わい。純米酒らしさが際立ちます。裏面には「淡麗」「やや辛口」と表記がありますが、香りが割と立ち、香りから予想される辛さより、ちょっと辛め。アルコール度数が15度とやや強いからかも知れません。後味は微かに下の上に残るものの、さっぱり感もあります。
おすすめの飲み方
お酒単独ではなく、何かをつまみながら飲んだ方がより美味しく感じられます。つまみは、このお酒に負けないよう、塩辛、香の物など、味が明確なものがお勧めです。日本酒初心者より、飲み慣れた人向けと言えるでしょう。
コスパ
スーパーでの買値は、2000ml 768円(税抜)。圧倒的なコスパです。なお、同商品はスーパーやリカーショップなどで購入可能ですが、ネットでも同酒造の類似商品を購入することができます。
五橋 清酒 紙カップ
味わい
筆者の出身地である山口県のお酒。山口といえば「獺祭」や「東洋美人」などの日本酒で有名な酒どころですが、個人的に激推ししているのが「五橋」という銘柄。岩国名物の錦帯橋が名前の由来になっています。この「五橋」は瓶以外にもパック酒やカップ酒など多様なラインナップがあり、気軽に楽しみやすいです。
個人的に激推し!
口当たりは軽く、さらりと飲みやすいお酒ですが、飲み込む時にギュッとした旨味が口いっぱいに広がり、程よい酸味があるのがポイント。旨味が強く、やや辛口なのでほんのり舌先に刺激を感じるのですが、決して癖の強いお酒ではないです、むしろ日本酒初心者の方でもすっきり飲みやすい部類なのではないかと思います。
おすすめの飲み方
特に、冷酒でお刺身などと一緒に味わうと格別に美味しいです。冬は鍋物のおともに飲むのもおすすめです。個人的には冷酒がおすすめですが、ぬる燗にしても美味しいです。
コスパ
カップ酒(180ml)の価格は198円(税込)。パック酒のタイプもあるので、一度カップを飲んでみて気に入ったらパックタイプを購入するのが良さそう。
紙カップ
日本酒 山口県 180ml
玉乃光 純米吟醸冷蔵酒パック
味わい
こちらはスーパー「成城石井」オリジナルの商品で、延宝元年(1673年)創業の京都の老舗酒造が作る紙パック日本酒。純米吟醸酒98%に純米大吟醸を2%ブレンドした、リッチな一品です。
パッケージには香り高めとあるように、常温でも開封直後は香りを感じました。口に含んだときの旨味のプッシュはなかなか強め。フレッシュな酸味も程よく感じられる旨辛口タイプです。辛口好きはもちろん、純米酒が好きな人にもお試しいただきたい味わいです。
純米大吟醸ブレンドのリッチな一品!
おすすめの飲み方
旨味がしっかり感じられますが非常にキレが良く、味の余韻は比較的短いので、食中酒向けな印象です。塩気のあるおつまみ、特に醤油味と合わせると甘みがアップして感じられるので、試してみてはいかがでしょうか。
コスパ
300mlで484円(税抜)と、ここで紹介している他のお酒と比較すればやや高価な印象ですが、リッチなお酒を飲みきりサイズで購入したい時に重宝しそうです。ちょっとした自分へのご褒美にいかがでしょうか?なお、こちらの商品は成城石井限定商品のため、ネット販売は取り扱いがありません。ちなみに、玉乃光酒造の他ラインナップはネットでも購入可能です。
谷乃越 純米吟醸
味わい
パッケージには「飲めばわかる香り豊かな本格造り」とありますが、「純米吟醸酒」であるこの酒は、純米酒と一線を画す存在。典雅な香りと、日本刀のように、冴えたきりりとした味わいは、紙パックの安酒であることを忘れさせてくれます。
パッケージの味申告は「やや辛口」「やや淡麗」とのことですが、いずれもちょっと弱め。へんな癖はほぼなく、極めてナチュラルで、実においしい日本酒という印象です。
典雅な香りと日本刀のような味わい!
おすすめの飲み方
アルコールを飲み付けない若い世代に、ぜひお勧めしたいお酒です。おつまみにはプロセスチーズではなく、本格的なナチュラルチーズを合わせてもいいくらい品質の高いお酒と言えるでしょう。個人的には、ゴルゴンゾーラとのマリアージュが好きです。
コスパ
1.8L 990円。1000mlで、555円(税抜)。正直、居酒屋で飲む550〜600円/杯くらいのランクのお酒が遥かに下に見えるほどの風味なので、すこぶるお得です。吟醸なので純米より50〜60円高いですがこれも妥当でしょう。コスパ重視だが品質も譲れないという人におすすめします。ただし、純米酒より温度変化に弱いため、できる限り早めに飲んでください。
日本酒
真澄 パールライトカップ
味わい
獺祭や新政などの華やかな吟醸酒を好む方にオススメなのはこちら。常温でも香り高く、グラスに注ぐと甘く爽やかな吟醸香が広がります。口に含むと華やかな酸味と香りが鼻に抜け、みずみずしくフレッシュな味わいでさらりと飲めてしまいます。長野名産の酒造好適米「美山錦」「ひとごこち」などを使用しているだけあって、甘めながら淡麗な味わいです。クセもなく、日本酒はあまり得意ではないという方でも飲みやすいのではないでしょうか。
甘く爽やかな吟醸香が広がる!
おすすめの飲み方
飲み疲れしない軽快さから食前酒向けですが、洋食(特にイタリアン)との相性は良好。今回は常温でのテイスティングでしたが、よく冷やしてワイングラスで飲むのが適していると思います。日本酒らしさもありながら、白ワインに近い感覚で楽しむことができます。
コスパ
紙製カップ酒と侮るなかれ、コスパ最強の一品といえるでしょう。お値段はなんと、232円(税込)。日本酒を飲みたい気分の時に手軽に味わえる値段設定もありがたいです。
会津ほまれ 蔵の花
味わい
福島県喜多方市にある「ほまれ酒造」の「蔵の花」は、やわらかな口当たりとほのかな甘味が特徴。口当たりのやわらかさの秘密は、霊峰飯豊山の伏流水を地下100mよりくみ上げた超軟水の「喜多方名水」。この超軟水がふくよかでやわらかい味わいを生み出しています。とても飲み口のいい品のある味で、安酒感はまったくありません。
ただ「甘口」といっても、香りはかなり穏やかで、フルーツ香などの華やかな香りが特徴の甘口日本酒とは異なり、食事の邪魔をしない控えめな甘さです。よって、普段は辛口派の人も抵抗感なく飲めそうです。クセのなさと飲みやすさから、万人受けしそうなお酒です。
「安酒感」がまったくない!
おすすめの飲み方
常温でもさっぱりと美味しく飲めますが、そこまで香りが強くないので、冷蔵庫でしっかり冷やして飲むことでキリッと味に角度が生まれたように感じます。どんなつまみにも合わせやすいので、晩酌や食中酒におすすめ。冷やせば生ハムやチーズなどの洋風のおつまみとの相性も◎
コスパ
筆者が購入したのは900mlで970円(税込)のもの。1000円以下で楽しめる日本酒だと考えたら、飲みやすさ・普段使いしやすさの観点からコスパ抜群といえます。
福徳長 米だけのす〜っと飲めてやさしいお酒 純米吟醸酒
味わい
福徳長「米だけのす~っと飲めてやさしいお酒」シリーズは純米酒、純米吟醸酒の2種類で展開していますが、今回は純米吟醸の方をチョイス。
さすが「すーっと飲める」と銘打っているだけあって、どんな食事の風味とも喧嘩しない馴染みの良さ。「甘口」と言い切ってしまうにはかなりナチュラルでさらりと飲めてしまいますが、ほんのり上品な甘味があり、後味には旨味を感じます。安いお酒特有の嫌なアルコール臭もありません。
どんな食事とも喧嘩しない馴染みの良さ!
おすすめの飲み方
おつまみがなくても飲めてしまうさっぱりしたお酒です。強いていうなら煮物や鍋など和食に合いそうですが、ライスワイン感覚でイタリアンに合わせても美味しく飲めそう。
コストパフォーマンス
このお酒のすごいところは、1800mlで1,362円(税込)という安さでありながら、米、米こうじ(すべて国産米100%)のみで、おまけに純米吟醸酒という圧倒的コストパフォーマンスの高さです。ご紹介したのは1800mlですが、他にも900ml(791円税抜)、500ml(493円税抜)とサイズ展開があります。
パック酒選びのコツ
以上、日本酒ツウがおすすめのパック酒を紹介してきました。しかし、実際にスーパーに行くと様々な種類のお酒が売られていて、「自分でもまだ飲んだことのない銘柄にチャレンジしたい」と思うこともありますよね。ここでは、パック酒を購入する際の「ポイント」を多賀一晃さんに教えてもらいましょう。
(1)まずは「純米酒」を飲んでみて
日本酒は、大きく「本醸造酒」「純米酒」に分かれます。基本原料は「米」「米こうじ」なのですが、本醸造酒には「醸造用アルコール」が加わります。このアルコールは米を発酵させたものではありません。これは、戦争で物資が不足しているとき、酒量を増やすために行われてきた手法です。個人的には、純米酒を強くお勧めしますが、醸造用アルコールも、味をすっきりさせる、香りを際立たせる効果があります。このため、有名な蔵元でも使われていることが多々あります。
(2)「精米歩合」もチェック
精米歩合とは、お米を何%削ったかを意味します。お酒を作るには、お米のエッセンス、デンプンを使います。その他の部分は雑味になるので、お米を磨くのです。そうして雑味を消します。
例えば、近頃有名な日本酒「獺祭」に、「二割三分」というお酒があります。これは残り23%になるまで磨いた、つまり77%捨てたことを意味します。実にすっきりした味です。(ただ、すっきりし過ぎて、私には物足りません。笑)
ちなみに、精米歩合が60%以下になると、分類は「吟醸酒」となります。お米だけで作ったものは「純米吟醸酒」です。ちなみに50%以下を「大吟醸酒」と呼びます。吟醸酒最大の特徴は「吟醸香」。日本酒最高の香りです。お米や、フルーツ、そしてフローラルの香りが交錯した香りで、芸術と言っても過言ではありません。海外の人にも人気が高いのは、この香り豊かな吟醸酒です。それと同時にお米を削る分だけ、出来上がりは少なくなりますので、高価なお酒になります。
(3)「製造年月」に注意せよ
前述のように品質の高い純米吟醸ですが、温度変化には弱いため、購入時はパッケージの製造年月をしっかり確認し、できるだけ最近に製造されたものを買うのをおすすめします。また保存は冷蔵庫で、開封後はなるべく早く飲み切るのがいいでしょう。
(4)「アルコール度数」も確認
アルコール度数にも注意しましょう。日本酒には「生酒」というものがあります。時々、料理屋でも振る舞われます。度数は約20度と、かなり高いです。このため、仕込み水で割って、14〜15度にして出荷します。ワインも似た様なアルコール度数ですが、この辺りが一番飲みやすいアルコール度数というわけです。
まとめ
コスパ最強で、お手軽なイメージのある「パックの日本酒」ですが、中には米と米麹だけを使った純米吟醸酒など、とてもコスパの高い商品もあり、調べれば調べるほど奥深い世界が広がります。美味しい銘柄をいくつか知っておけば、普段の晩酌や宅飲みで大活躍すること間違いなし。ぜひこの記事を参考にしながら、手軽に美味しい日本酒を味わってみてください。