今のキッチンを大正の女性が見たら、どんな反応をするでしょうか? 家電がない時代の女性が、今の台所を見たら、きっと驚愕するでしょうね。その中でも、ビックリするのはきっと、エンターティメントクッキング家電というべき、ホットプレートではないでしょうか?家庭で、目の前で調理されるという考えは、当時なかったはずです。しかし、これがどの位うけがいいのかは、子どもを見ているとわかりますね。ホットケーキでも、焼きそばでも、お肉でも、目の前で焼くとテンションアゲアゲで、あっという間に食べてくれます。本日は、この「目の前で調理」と「独身」という相入れない様なキーワードでホットプレートをレポートします。
ホットプレートの魅力
昔は、独身=外食でしたが、このご時世。8時も過ぎれば、どこもやっていません。こうなれば、自炊の方が手っ取り早くもあります。えっ、料理はできないって!?
大丈夫、まかっせなさいと言うくらい楽勝なのが、ホットプレートでの焼き物。スーパーで好きなもの3つと、野菜を買ってきて、焼くだけ。タレもスーパーでいろいろな種類が手に入ります。買い方がうまければ、缶ビールを一本つけて、2000円でたらふく食べられます。
皿に取らずに、プレートから直接でも問題ありません。ホットプレートには「保温」モードがあります。一度焼けたら、熱々を保ってくれるというわけです。
ところで、このホットプレートに密かに流行を始めたものがあります。それは、基本となるホットプレートを「深」くすることです。
なぜ「深」化させるのか?
ホットプレートの原点は「鉄板」です。終戦後の日本、何もなかった時代、鉄板はそれなりの手間で手に入った様で、それを熱し、その上で料理したのが始まりと言います。これは一部のエリア(関西、広島)の話かも知れません。それはともかく、「鉄板」が基本ありきと思ってきださい。
そしてホットプレートは、家でも手軽に焼肉ができると、すごく流行します。特に関西では、焼肉に加え、土曜日のお昼は粉物(お好み焼き、たこ焼き)が当たり前の文化ですから、大流行します。一家に一台あるのではないでしょうか?
このため、「プレーン」「焼肉」「たこ焼き」という3つのプレートを伴ったホットプレートが完成します。
しかし、ホットプレートにも問題があります。単純にいうと「面積」。鉄板がモチーフですが、家電だと限界があります。このため、どのプレートも端から食材が飛び出さない様に、縁がフライパンの様に曲がっています。
そして今、それが「深」くなっているモデルが出始めました。深いと言っても、3.5cmですが、使い勝手は1cmで大幅に変わります。象印マホービンのホットプレート やきやき/EA-KJ30が、それに当たります。
理由は簡単で、深い方が作れる料理の量が増えるのです。例えば、焼きそば。普通なら2人分なのが、3人分作れるというわけです。
面積追加できないため、深さ追加というわけです。使ってみると、確かに量を作ることができます。
また、深いと料理の種類も増えます。パエリア、すき焼きなど、浅鍋で作る料理がレパートリーに加わるのです。
究極のホットプレートはグリル鍋?
これを突き詰めると、プレートを鍋にしてしまえという発想が浮かびます。元々、フライパンなどは鍋からの派生品ですからね。また、アウトドアでも鍋さえあればなんとかなりますし、カウボーイのお供はダッチオーブンでした。
家電では、「グリル鍋」と言います。当たり前すぎてインパクトには欠けるのですが、すこぶる便利。地に足がついた家電と言えます。代表として、タイガー魔法瓶 グリルなべ CQD-B300をあげます。
こちらの方は、深さ7cmです。焼き物に加えて鍋もできます。しかも「鍋」とつくこともあり、中身がこぼれても問題ないよう対応されています。具体的にはヒーターがプレートの下、剥き出しではないのです。ここら辺は、やはり日本メーカー。安全設計が光ります。
ただし弱点もあります。鍋ですので基本が円なのです。こうなると、広島のお好み焼きの様に、2つのエリアで別々のものを焼いて合体させるには、絶対スペースが足りません。量を作ることはできるのですが、絶対的な面積は小さいのが、弱点ですが、これはスペースを最大に活かしているということでもあります。
ちょいなべとグリル鍋の違いは?
今、人気の電気鍋にシロカのちょいなべがあります。いろいろなところで紹介され引っ張りだこ。このちょいなべとグリル鍋はどこが違うのでしょうか?
それはサポートする温度範囲です。ちょいなべは100℃までで、グリル鍋、ホットプレートは150〜230℃前後まで、グリル鍋は鍋なので100〜230℃、それ以下の低温にセットすることも可能ですが、温度での調整はできません。ちょいなべは水を基本にした料理以外は厳しいですが、代わりに100℃以下の温度コントロールは大得意。チョコレート湯煎も大得意です。
一方、グリル鍋は煮る、焼く、など料理全般に長けます。このため独身者が使うホットプレートとしては最強かも知れません。
まとめ
こんな便利な調理家電なのですが、私は2つの理由で、グリル鍋を自分で使うのか、否か迷っています。
1つめは、グリル鍋は「こたつ」と一緒。余りにも便利で、楽ちん。しかも直食べでも行ける。このため、ついつい食べてしまうことです。春、炬燵を片付けると、時間の流れが違ってきますよね。こたつでいつの間にか、だらだらしているわけです。その様に、グリル鍋は、ダラダラと食べられます。
そして、もう1つは、先述の広島のお好み焼きが焼けないことです。このスペース足らずをどうもっていくかです。一度、皿に開け、時間差で作るというのも考えたのですが、ちょっと虚しい。広島育ちなので、ちょっと譲りたくないところです。
ということで、超便利なグリル鍋、個人的にはまた購入に至りませんが、独身者なら超便利。焼き物から、お鍋までなんでもござれです。その上、エンターテイメント性に優れる。友達が来ても大丈夫。勧め品です。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。