手持ち式スティック型掃除機は年々軽量化していますが、私は軽すぎるものより、1.5kg前後の中堅モデルをおすすめしたいと思います。なぜなら、欲しい機能が全部搭載されたフラッグシップモデルは重すぎるし、反対に本体が軽すぎる最新のものは、吸引力が弱くなったり、ヘッドが軽すぎて浮いてしまってうまく掃除ができない、という問題が出てくるからです。
手持ち式スティック型掃除機はどれが買いか
「より軽く」を追求しているが…
手持ち式スティック型掃除機は、ここ最近「より軽く」を追求しています。
重さでいうと、フラッグシップは2kg以上、中堅が1.5kg前後と2kg前後、そして最先端が1.2kg前後というところでしょうか?
では、どれを買えば良いのか、その昔トヨタが「いつかはクラウン」とCMをうったように、フラッグシップ、大型モデルを目指せばいいのでしょうか? それとも、技術の最先端を行く1.2kg前後の最軽量モデルを買った方がいいのでしょうか?
2021年の春は、双方とも違います。今買うなら、1.5kg前後の中堅モデルです。
フラッグシップモデルはなぜ重いのか?
さて、フラッグシップはなぜ重いのでしょうか?
理由は簡単です。ユーザーの要望が全て詰まっているからです。
60分連続稼働できるバッテリー、強い吸引力を実現するモーター、楽に前に突っ張ってくれるパワーブラシ、ワンタッチでゴミ捨て可能なダストボックスなどなど、ユーザーの要望が全て詰まっています。しかし、これらを全て詰め込むことが間違えのもとなのです。
「手持ち式」スティック型掃除機は、手に持つハンディ掃除機に、長いポール(補助管)とヘッドを付けたものです。このため、かなりのウェイトがハンディ掃除機の部分に集まっています。その分、手にえらい負担がかかります。これを解決するために、使い易い掃除機を作るためには、本体を軽くしなければなりません。軽量化は手持ち式スティック型掃除機が持って生まれた大きな課題なのです。
本体は何でできているのかというと、一番重いのは「バッテリー」。次に「モーター」です。そしてそれに「ゴミ捕獲システム」が続きます。しかし、ユーザーの要望を思い出してください。「60分連続稼働できるバッテリー」、「強い吸引力を実現するモーター」。ようするに、強く、強力にとあるわけです。どうしても重くならざるを得ません。熊のような男性ならといざ知らず、大半の女性など力の弱い女性だと持て余すことになります。
2kg以上、時には3kg近くある、手持ち式スティック型掃除機のフラッグシップは優れた性能を持っているのですが、使いにくい。初めの数分、腕が疲れないうちは良さを享受できるのですが、それから先はただただ腕がつけれるだけ。言い方を変えると、お金を出して苦労を買うような一面があります。
1.2kgのスティック型掃除機は足りないものが多い
前段で述べました通り、軽量化で一番の主眼はバッテリーとモーターです。この2つだけで徹底軽量化を目指すと、2kgをちょっと切るくらい、1.7〜1.9kgです。しかし、それから、500ml ペットボトル1本分以上の軽量化するためには、どうしても身を削ります。
目に見えることろでは、ヘッドが小さくなります。ポールも細く、短くなります。全部、ギリギリまで詰めます。それで足らない場合は、新素材を採用するなどします。出来上がったのもは確かに軽い。三歳児でも扱いに困ることはないレベルです。
振り回せるので、扱いやすい。しかし、その一方、二つの問題点が新たに出てきます。一つは、ヘッドが跳ね上がりやすく、浮きやすくなったことです。浮くとゴミの吸い込みが極端に落ちます。特に困るのが隅の掃除。今まで、自重、ヘッドなどの掃除機自体の重さで浮かなかったものですから、気にしなかったのに、急に「慎重に扱って」と言われると困ってしまいます。
もう一つは、大きなゴミが吸えなくなることです。
軽量化で、落ちた吸引力をサポートするため、メーカーはポールなどの径を細くしています。吸引力を変えない工夫です。代償として、今までは吸っていた大きいゴミが吸い込めなくなります。今、家庭の大きいゴミと言うと、私の場合は、テーブルから転げ落ちたスナック菓子(かっぱえびせん、キャラメルコーンなど)ですかね。大人なら、その場なら拾って口に運ぶかもしれません。(3秒ルールはご自身の判断で)
しかし、幼い子供の場合はどうでしょうか? 生理学的に言うと、幼子のヨダレは黴菌への対抗力があるので、大人より有利なところもありますが、その後のことも考えると、「拾って食べちゃダメ!」です。躾でもあり、身を守る術でもあります。そのためには、掃除機に吸わせ除去するのが一番なのですが、径が細いと吸えない。それどころか、詰まってしまうこともあります。
それ以外に、元々の問題、軽量化により動作時間が短くなる、吸引力は弱くなるがあります。新素材など採用されると値段も上がります・・・。今の最新型、1.2kgクラスは、過ぎたるは及ばざるが如しを地で行っているような感じのモデルが多いです。
バランスの良い1.5kgモデル
おすすめ3モデルはこれ!
1.5kgクラスのモデルは、上手くダイエットに成功した手持ち式と言えます。確かに、バッテリー駆動時間は短い。しかし、標準で20〜40分、強で10分弱を確保。吸引力もそれなりですし、大きなゴミも吸い込みます。何より、楽に掃除ができます。
もう少しパワーが欲しい人は、1.9kgクラスのモノ(主にバッテリーとモーターの見直し)をお勧めしますが、こちらは「軽い」「自由自在」と感じるには、まだダイエットが足らない感じです。
と言うことで、今、手持ち式スティック型掃除機で一番のお勧めは、1.5kgクラスです。中でも、次の3モデルは、すごくお勧めです。(3モデルは、メーカー五十音順です。)
(1)ダイソン「dyson micro 1.5kg」
3月にもレポートさせていただきました、ダイソン社の「dyson micro 1.5kg」です。
一言で言うと「小型でもダイソン」。ダイソンは、かなり頑固なメーカーです。それはロボット掃除機で、隙間に潜るためには、抑えなければならない「本体高さ」より、「ちゃんとしたサイクロンシステムを搭載」させたことでもわかります。自分の技術とそれがもたらす効果に自信を持っています。
「dyson micro 1.5kg」でもその考えは同じです。軽量と使い勝手のバランスが、妥協せず、双方納得できる点を見出しています。
「エコモード」で約18分、「強モード」で約5分とバッテリーの持ちはそれなりですが、吸引力の低下は最低限に抑えてあります。いろいろな工夫がされていますが、ダイソンの他のモデルと一番の違いは、スイッチかも知れません。ダイソンはトリガースイッチが基本。ダイソンの特徴でもあり、ちょっと吸っては止めることが多い、ハンディ型にはとても便利です。が、一方、長時間使うと、指が引きっつてしまいます。このため、一部にボタン式スイッチを望む声があったのもも事実。そして「dyson micro 1.5kg」には、そのボタン式スイッチが採用されています。
モーターで一番電気を消費するのは「回り始め」です。トリガー式だと、すぐにon/offとなってしまいますので、それを嫌い変更したのだと思います。ギリギリまでバランスをよくするために、このようなアイコン的な特徴も変更するところにダイソンの姿勢が垣間見える感じです。
バランスの良いモデルで、誰でもラクラク掃除ができます。
(2)パナソニック「パワーコードレス」
MC-SB51J/MC-SB31J
ダイソンと共に推したいのが、パナソニックの「パワーコードレス」MC-SB51J/MC-SB31J。目立つダイソンデザインと異なり、ちょっと地味ですが、性能はピカイチです。
吸い込みもいい。「強」だと約6分、「自動」で約9〜25分。「ロング」で、パワーブラシをつか<br />ない時は60分。「自動」の出来がよく、ほぼ当モードで満足できると思います。
誰にでも勧められるモデルですが、アレルギーを持ってい人には、是非使って欲しい。と言うのは、アレルゲン物質の有無の判断に使える「クリーンセンサー」を持っているからです。実際は、吸い込んだ空気の中にある20μm以上のダストの有無を赤外線センサーで判断します。このサイズは、ハウスダスト(ホコリダニのフン、脱皮カス、死骸。砕けたものも含む)、及び花粉(砕けたものも含む)と言うアレルゲンのほとんどを探知します。
元々、喘息の予防として、これらのアレルゲンを除去するために、掃除機をかける時は、20秒/m2が推奨されているのですが、正直あまりにもゆっくりで、守ると辛いところもあります。「クリーンセンサー」があると、感知してくれるので、そのまま吸わせた方がいいのか、別のところを掃除してもいいのかが、はっきりわかります。できれば、パナソニックだけでなく、全メーカーの掃除機に付けて欲しいくらいで、アレルギー性の病気を持っている人には、是非というモデルでもあります。
(3)日立 パワかるスティック
PV-BL30H
1.4kg。しかしパワフル。名は体を表すと言うか、だからそう名付けたと言うべきか。名前の「パワかる」は伊達ではありません。
「強」モードで約8分、「標準」モードで約40分(パワーブラシ使用)は並ですが、そのために他のメーカーはヘッドに付いているゴミ確認がし易いLEDまで除去したり、パワーブラシをなくしたりします。わかるんですが、なーんかケチ臭い、ちょっと息が詰まるようなところがあります。
日立のパワかるスティック PV-BL30(以下 パワかる)は「全部入り」の全部入りのラーメンのようにちょっとゴージャスな感じがします。(これはある意味、日立らしい!)と言うより、一段上の1.9kgクラスに対して、見劣りがしません。それでいて取り扱いが楽です。
みるべきはヘッドの充実度でしょうね。元々日本製の掃除機はヘッドの作りが良く、ダイソンもFluffyヘッドを、導入するまでヘッドでは負けっぱなし。これはヨーロッパ系のメーカーは、カーペットがある前提でヘッドを開発するためで、フローリング中心の日本とはちょっと事情が異なります。が、今は欧米でもフローリング、その上家の中では素足になると言う日本に近い生活を好む人も増えたとか。ただ、日本のメーカーは、そのフローリングに加え、畳、カーペットなどなど、いろいろな素材で試行錯誤を繰り返し、作り上げた逸品。そう簡単には負けません。それが日本メーカーのヘッドです。
パワかるは掃除機のかけ心地が、軽量モデルの中で一番上位モデルに近いです。その分、いい感じです。
そして、このモデルの特徴にもなっている「ゴミくっきりライト」。今までは、白色LEDが基本だったのですが、白色はモノの色を正確に映し出すためのもの。日立が採用したのは明るく見える「明るい緑」。これはいいですよ。ホコリが実にくっきり影を引いたように見えます。使うと「こんなところにもホコリが」と見逃しがなくなります。しかも7灯。かなりの範囲を照らします。上位モデルはLEDが付いているのですが、灯火管制を引かれたようなのが軽量型の常。贅沢は敵だ!です。そんな中、贅沢は素敵だ!と言わんばかりのモデルです。
家の中を隅々まできれいにする充実した掃除をしたい人にお勧めのモデルです。
集じん方式:サイクロン・サイクロン種類:フィルターあり
コードレス(充電式):○
ヘッド種類:モーター式(自走式)
集じん容積:0.15L
最後に
「手持ち式」スティック型掃除機は、長時間手で支え続けることが必要です。このため、大きいが故に尊っとからず。掃除機の重量バランス設計、そしてその機能を搭載するのかが大きなポイントになります。
ここにあげた3モデルは傑作品と呼べます。また個性的な面もあり、愛着の湧き易いモデルとも言えます。
自分に合った一台を、セレクトください。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。