大型家電に進出を続けるアイリスオーヤマですが、エアコンもユーザーから支持されている家電の一つです。先日発売されたGFシリーズは、多くの高機能エアコンが備えている「お掃除ロボット」を備えていません。代わりに高性能フィルターと空気清浄機を取り付けたアイリスオーヤマらしい発想のなるほど家電なのです。
アイリスオーヤマはエアコンの「価格」に注力
使わない機能が多すぎる最近の家電
PC、通信機器を除いて、各家庭には、大体30近い家電があります。当たり前すぎて、気にもかけない照明から始まって、大型家電と言われる、テレビ、エアコン、洗濯機、冷蔵庫。台所の必需品、炊飯器、オーブントースター、電子レンジ。衣類の手入れにアイロンは欠かせません。おーっと掃除機を忘れては行けません。そしてコロナ禍の今、換気に役立つ扇風機、空気清浄機も必需品。加えて、グルーミングにはドライヤー、シェーバー、電動歯ブラシ・・・・。
断捨離、シンプルライフ、贅沢は敵だ、と叫んだところで、必要とする人がいるのは事実。しかし、必需品が高いのも困り物。こんな時、総合家電メーカーに頑張ってもらい、安くて、必要機能に絞って、尚且つ品質がいい家電を期待したいのですが、どちらかというと、あまり使わない機能がごっちゃり、その分、お値段が高くなっています。そんな家電が多いですね。当然、そんなに売れません。
今、勢いを感じるのは、規模がまだ余り大きくないメーカーです。そして、そこはターゲット、要素を絞り込んでいます。
本日、ご紹介するアイリスオーヤマは「価格」。リーズナブルに感じる価格、値頃感を外さずに、現在、大型家電に絶賛(笑)進出中。そんな中、先日発売されたエアコンをレポートします。
リーズナブルプライス達成の必勝法は?
リーズナブルプライス達成のために、何をするのか? 決まっています。開発前から、価格を決めるのです。多くのメーカーは、ここを曖昧にします。開発費もありますし、どう振れるか、読みきれないところもあります。上役の前で「やれます!」と言い切って、未達成の場合、降格もあり得ます。
アイリスオーヤマは、そのリーズナブルプライスを社長が決めると聞いています。社長さんですからね。女房と同じ、逆らえません。となると、することは一つ。その価格内でベストな方法を選択するだけです。新技術を開発するのではなく、今世にある技術を利用するのです。今ある技術、世にある技術は、往々にして人口に膾炙されているます。誰もが理解できる。つまり「なるほど」となるわけです。こうした積み重ねが「なるほど家電」になるわけです。
エアコンに求められている機能
エアコンは「空調家電」です。空調というのは、人間が健康的な生活を送れるように、空気の質を調整することです。そして空調は次の要素があります。「二酸化炭素量」「温度」「湿度」「気流(風)」「浮遊微粒子」「揮発性化学物質」の6つです。
今、話題のコロナは、この「浮遊微粒子」に含まれます。またカビの胞子、細菌(カビ胞子+細菌=黴菌(バイキン))、ハウスダスト、花粉などが含まれます。
さて、大型家電の代表の一つ「エアコン」ですが、6つある要素のうち、基本、コントロールしているのは、「温度」「湿度」「気流」の3つ。湿度に関しては、除湿はできますが、加湿ができません。あの大型家電のエアコンでも、空気の要素全て面倒を見ることはできないのです。
まぁ、ダイキンなど、一部のモデルは、換気機能(二酸化炭素量を外気と同じにする)、加湿機能、空気清浄機能を持たせたモノもありますが、やはり高くなります。
その上、エアコンには持って生まれた弱点があります。それは冷房する時に、必ず水が出ることです。
エアコンは冷房時、室内の熱を外に逃すことで行います。面倒くさい理屈は抜きにして、冷蔵にすると熱交換器は冷たくなります。そこに暑い室内空気がくると、空気は当然冷えるのですが、水滴がで来ます。夏に氷を入れたコップの表面が水でビシャビシャになるようなモノです。当然、集められて外へ排出されます。が、日本は、温帯〜亜熱帯で多湿。微生物が住み良い環境です。このため水があれば、どこでもカビが生えます。その位、空気中にカビの胞子が飛びまくっています。ただし、異常繁殖しない限り、人間には害はありません。カビの胞子は空気中を飛んでいるのは、ごく当たり前のことで、人は進化の過程で、それに対する免疫を有しているからです。
このカビ、当然エアコンの中でも繁殖します。これは異常に属します。風源とでもいうべきエアコン、夏場の風呂上りなどは冷風を浴びるために下に陣取るエアコン。そこにカビが繁殖すると、出てくる風は、人間の免疫システムの許容量を超える量の胞子が出て来ます。
このため、今の高級エアコンには、自動お掃除機能が付いているのが大半です。面倒なフィルター掃除からも解放されるので一石二鳥というわけです。
今のエアコンには、ベーシックな3要素に加え、清潔な家電であることが求められています。
アイリスオーヤマはこう考える
空気清浄機を備えた「GFシリーズ」
お掃除ロボットというのは、面倒くさいモノです。エアコンの熱交換器のように大量には作られていません。メーカーごとに全く違うシステムです。同様なシステムを確立するとなると、開発行為が伴いますし、いろいろなテストもしなければなりません。
しかし、考えて見ると、使う前のエアコンは無胞子状態です。それなれば、空気をフィルターでろ過してやれば、同じ結果が得られるではないか。幸い、高性能フィルターは、コロナのため空気清浄機の普及率が上がっており、その分フィルターも安く手に入れられる。
さらに考えます。
それならば、エアコンの空気取り入れ口を、空気清浄機にしてしまうのは、どうだろうか? どうせ高性能フィルターは必要なんだし、部屋に空気清浄機を置く必要はない。
必要な課題を解決した上、プラスになる魅力が出て来たわけです。
これが、2021年より、ラインナップされたエアコン GFシリーズです。
実際の価格はどう?
GFシリーズは、最も小さい木造6畳用(鉄筋アパート:7畳)で、参考価格:98,780円(税込、施工費別。以下同様)。木造11畳用(鉄筋アパート:14畳)で、173,800円だそうです。かなりリーズナブルです。
気になるフィルターですが、3年ごとの取り替え、フィルター代は1万円を切るそうです。エアコンの掃除をお願いする時より安いです。
リーズナブルで、性能がよく、わかりやすい。アイリスオーヤマらしいエアコンです。
品番:室内機…IAF-2205GF、室外機…IAR-220…
プラス朗報が一つ。エアコンが安く、種類が豊富なのは、公務員ボーナス直後の土日です。この時は、3日間位で取り付けてもらえると思いますが、やぼ用他で、そのタイミングを逃すと、ドツボに嵌まりますね。「猛暑」の時は、7月中頃に頼んでも、8月終わりと言われたとか。今回、アイリスオーヤマは、新しい施工業者を増やし、施工待ちを最小に抑えるそうです。
アイリスオーヤマ、まだまだ、ユーザーを納得させてくれそうなところがありますね。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。