ピザは、イタリア料理店やデリバリーの人気メニューの一つ。お店で食べたり、買って食べる人も多いと思いますが、思い立ったときに自宅で意外と簡単に作ることができます。今回は食品学専門家・青山先生直伝レシピ第2弾として、手軽に作れるピザ生地とトマトソースをご紹介。ズボラ栄養士の私が、より簡単に少ない道具で作れるようアレンジしてお届けします。ワイン片手に手作りピザを囲んで、おうちでイタリア旅行気分を満喫しませんか?
基本レシピは食品学専門家の直伝
今回もレシピを教えてくださったのは、私の恩師で食品学専門家の青山佐喜子先生です。博士(学術)・管理栄養士・製菓衛生師・食生活アドバイザーとして多方面でご活躍中です。青山先生直伝レシピ第2弾は、ピザ生地とトマトソースです。
【青山先生直伝レシピ第1弾】→【焼き肉たれの作り方】肉が柔らかくジューシーになる甘口と辛口の2種類
今回の自家製トマトソースとピザ生地は、子ども向けの食文化体験講座のために考案されたもの。小学1年生から中学1年生までの参加者一人ひとりが小麦粉から生地をこね、トマトソースを作り、トッピングも楽しんだそう。
今回のレシピは卒業後に伝授していただいたので、私自身も初チャレンジです。小学1年生でも楽しんで作れるレシピなら、私にもできるはず。さっそく作ってみましょう!トマトが服につくとシミ抜きに苦労するので、エプロン必須です。
まずはピザのトマトソース作り
【材料】(できあがり約300g)
トマトの水煮(ホールトマト)…400g(1缶分)
タマネギ…中1/4個(約50g)
ニンニク…1片(約10g)
オリーブオイル…大さじ2(24g)
ローリエ(ローレル)…2枚くらい
塩、コショウ…少々
【作り方】(調理時間 約20分)
(1)トマトの水煮をザルで漉す。優しくトマトを潰しながら、ザルに擦りつけるようにするとよい。
(2)タマネギはみじん切り、ニンニクは包丁で押さえて潰す。
(3)深めの鍋にオリーブオイルとニンニクを入れ、火にかける。低い温度からニンニクをゆっくり炒めて香りを油に移す(2〜3分が目安)。次にタマネギとローリエを入れ、色がつくまでじっくりと炒める(5分くらい)。
(4)(3)の鍋に(1)の漉したトマトを加え、10〜15分ほど弱火で煮込む。ぽってりとしたら、塩、コショウで味を整える。
(5)粗熱がとれたら、容器に入れる。
調理時間20分といっても、ほぼトマトを漉す時間と煮込む時間だけ。最初のトマトを漉す手間さえ惜しまなければ、想像以上に簡単です。完成したトマトソースは、冷蔵保存して1週間以内に使い切りましょう。ジッパー付きフリーザーバックに入れて平らにして冷凍すればポキポキ割って活用できます(冷凍保存は2ヵ月程度までを目安にしてください)。
次に、ピザ生地にチャレンジ!
青山先生直伝レシピをベースに、身近なボウル1つで発酵までできる作り方にアレンジしました。ボウルを大きめのタッパーに変えて作ることも可能ですが(実際に試してみました)、タッパの四隅に粉が残りやすく、やや粗い生地の仕上がりになります(それでも焼いたらピザっぽくはなりました)。
【ピザ生地】(できあがり約350g・ピザ 2〜3枚分)
強力粉…200g(カップ2弱)小麦粉 カップ1=110g
砂糖…8g(大さじ1弱)砂糖 大さじ1=9g
食塩…4g(小さじ2/3)食塩 小さじ1=6g
ドライイースト…6g(小さじ2弱)ドライイースト 小さじ1=3.3g
ぬるま湯(25〜38℃)…130ml(カップ2/3弱)水 カップ1=200g
植物油…8g(小さじ2)油 小さじ1=4g
*重量後ろの( )は計量器がない場合の目安量ですが、きちんと計量することをおすすめします。
【作り方】(調理時間 約25分 *発酵時間除く)
(1)ボウルにふるった強力粉を入れ、その上に砂糖、塩、ドライイーストを置く。
(2)ぬるま湯を(1)のボウルに入れ、まんべんなく行き渡るように混ぜる。さらに、手に生地が付かなくなるまで、しっかりこねる。
(3)ひと塊にまとまってから、50回以上ボウルの中で打ち付けるようにしてこねる。
*パンこねマットや消毒済みのまな板などに生地を移してこねてもOK。
(4)油を手につけながら、よくこねる。オイルが生地の中へ入り、べとつかず、なめらかになじむようになるまでこねる。ピザのもっちりとした弾力のもとになるグルテンをしっかり作るため、油はこのように、あとから加えるのがポイント。
(5)生地を丸め、表面に油(分量外)を薄くぬる。生地を入れたままのボウルにラップをし、冷蔵庫で一晩おいて、もとの2倍の大きさになるまで発酵させる(一次発酵)。大きめのフタ付き容器に移し替えたり、Lサイズのジッパー付き保存袋に入れて冷蔵発酵させることも可能。
※オーブンで発酵させる場合は25〜38℃設定で20〜40分が目安、ぬるま湯を張った大きな鍋や発泡スチロール箱に、ラップしたボウルを入れて発酵させることもできます(夏場は室温でも発酵可能)。この場合、室温にもよりますが、生地が2倍の大きさに膨らむまで1時間から数時間かかると思います。ホームベーカリーで生地だけ作れる場合は、文明の力に頼ってください。
発酵した生地を伸ばし、いざトッピング!
発酵後の生地伸ばしと成形に必要な基本道具は、クッキングシート、めん棒、包丁です。めん棒がない!という場合は、堅めのラップの芯でも代用できます(私も今回ラップの芯でやってみました)。
ピザの成形
(1)冷蔵発酵した生地を使う30分以上前に冷蔵庫から出し、室温で戻しておく(その間に具材を準備)。生地に手でパンチするようにガス抜きし、包丁で2〜3つに分割する(3分割で約20cmサイズのピザが3枚焼けます)。我が家は、オーブントースターで焼けるサイズが直径22cm程度なので、3分割しました。広めのオーブンで焼く場合は、2分割にして大きいサイズのピザを焼いてもOK。
(2)分割した生地を丸めて、生地の閉じ目を下にして置き、乾燥しないようラップなどをかけて10〜20分休ませる(ベンチタイム)。
(3)クッキングシートの上で生地をめん棒で丸く伸ばし、好みの大きさの円形にする。フォークで穴を開け(ピケ)、表面にオリーブオイル(分量外)を薄く塗る。ピザ生地の耳までオイルを塗るのが美しい焼き上がりのポイント!
「マルゲリータ」のトッピングから焼き上がりまで
ピザの基本、モッツアレラチーズとバジルだけで作れるシンプルな「マルゲリータ」に挑戦!
(4)トマトソースとモッツアレラチーズをのせ、オリーブオイル(分量外)を回しかける。
(5)ピザを焼く。オーブンの場合は220℃で10〜12分、オーブントースターの場合は高温(900〜1200Wくらい) で7〜9分が目安。
*ご家庭のオーブンやオーブントースターによって性能が異なるので、調整して好みの焼き加減と食感を探してください。なお、オーブンもオーブントースターもない場合は、魚焼きグリルやフライパンでも焼けます(フライパンの場合は表面がこんがりと焼き上がりにくいです)。
(6)焼き上がったら、仕上げのバジルを飾って完成!
目指した窯焼き風ピザに近い(やや自画自賛)、香ばしい焼き上がりと生地のもっちり感に、家族みんな感動!自家製トマトソースとチーズが絶妙に溶け合い、文句なしに美味しい!バジルの香りにも癒やされます。生地をもっと薄く伸ばしたり、強力粉の一部を薄力粉にしたりすると、歯ざわりがサクッとしたクリスピータイプのピザになり、違う美味しさを楽しめます。試してみてください。
手作りピザのバリエーション
手作りピザの魅力は、生地の大きさや厚み、トッピングを自由自在にアレンジできるところ。お好み焼きパーティ感覚で、ミニサイズのピザ生地に家族ぞれぞれ好きなトッピングをして焼いても盛り上がりそうです。さらに、ピザ生地はナン、フォカッチャ、グリッシーニにもリメイクできます。実際に作ってみたバリエーションの一例を紹介します!
ありあわせの食材で創作ピザ
冷蔵庫の余りもの一掃も兼ねた、具だくさんピザ。和洋問わず食材を選べるのも、おうちピザの醍醐味です。家族みんなでトッピングすれば、とても盛り上がります!
はちみつレモンピザ
クリームチーズ、ピザ用チーズ、レモンの輪切りを並べて、初夏らしい爽やかなデザートピザに。甘いピザも美味しいです!レモンは皮ごと食べるので、防カビ剤不使用の国産を選んでください。レモンを前日にハチミツに漬けておくと、味のなじみがいい感じです。
カレーのナン(ピザ生地アレンジ)
ピザ生地を細長く伸ばし、フライパンで両面焼けばナンに変身!片面2分ずつ程度で焼けるので、忙しいときの朝食にもおすすめです。
フォカッチャ(ピザ生地アレンジ)
ピザ生地からフォカッチャもできますよ。冷蔵庫で一次発酵後のピザ生地をいったんガス抜きし、もう一度丸め直して、乾燥しないよう霧吹きをかけ、オーブントースターの余熱で20分程度二次発酵させます。膨らんだら成形し、塩漬けオリーブ、岩塩、好きなハーブ(私はタイムを使用)をトッピングして焼きます。私は、オーブントースターの1300Wで10〜15分程度焼きました(機器の性能によるので、様子を見ながら焼いてください)。
自家製トマトソースは調味料としても万能
トマトには、昆布と同じうま味成分(グルタミン酸)が多く含まれているのが特徴。イタリアをはじめ、ヨーロッパの地中海沿岸地方では、トマトが出汁のような感覚で肉や魚料理のベースに使われています。自家製ソースには、トマトのうま味が凝縮されていますので、ぜひ活用しましょう。
ブルスケッタ風
オーブントースターでカリッと焼いたバゲットに、ニンニクの切り口をこすりつけ、自家製ソースを塗り、バジルの葉を飾れば完成!
トマトソースパスタ
フライパンでオリーブオイルと刻みニンニクを低温から熱し、食べやすい大きさに切ったナスを炒め、自家製ソースを加えて少し煮込み、ゆでたパスタを絡めて和えれば完成。
煮込み風ハンバーグ
ハンバーグのタネを熱したフライパンで両面に焼き色をつけ、自家製ソース+赤ワインを加えてハンバーグに火が通るまで蒸し煮すれば完成!
ほかにも、オムレツ、オムライス、鶏肉・豚肉・魚のソテー、ピカタ、フライなどに自家製ソースをかけるだけでワンランクアップの味になり、見た目の彩りもいい感じに。また、スライスしたナスやジャガイモにソースを挟んでラザニア風に焼いたり、カポナータやミートソースの味付けに使ったり。つい先日も、アクアパッツアのシメのリゾットに自家製トマトソースをトッピングしたら、美味しく味変しました。みなさんも、いろいろなアレンジを見つけて活用してもらえたら嬉しいです。
おうちピザは栄養バランスも優秀
好きなトッピングを楽しめる自家製ピザは、楽しいだけではなく、栄養バランス的にも優等生です。
◎タンパク質+脂質+糖質(炭水化物)の三大栄養素がバランスよく一度に摂れる
特に、朝起きたばかりの体は栄養不足の状態。三大栄養素を摂ると脳と体の活動スイッチが入り、勉強や仕事の集中力が高まると考えられています。
◎トッピングに共通するチーズがカルシウムの補給源に
今回作ったマルゲリータ1枚分に含まれるカルシウム量は約200mgで、最もカルシウムを多く摂る必要がある成長期12〜14歳の1日必要量の約1/4〜1/5程度をクリアできます(*)。
(*)実際に作ったマルゲリータピザ1枚分の栄養価を日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに計算、日本人の食事摂取基準(2020年版)の12〜14歳のカルシウム摂取推奨量(男:1000mg/日,女800mg/日)にあてはめた推定値
◎ビタミンや食物繊維も楽しみながら摂ることが可能
おうちピザなら、前項の創作ピザのような野菜たっぷりのトッピングや、フルーツを使ったデザートピザも自由自在。不足しがちな野菜や果物を楽しみながら摂ることができます。
◎トマトに多く含まれる抗酸化物質リコピンが加熱され吸収率がアップ
トマトの赤い色素リコピンは、抗酸化作用が注目される物質です。加熱することで体への吸収率がアップするとされています。トマトソースは、リコピンを効率的に摂取するのに最適な調理法なのです。
まさに、いいこと尽くめ! 気軽に手作りできることを実感し、わが家では休日の朝ごはんにピザを食べる頻度が増えそうです。
まとめ
手作りピザの大きな魅力は、初心者のチャレンジを柔軟に包み込んでくれるマンマ(母)のような懐の深さ。生地のこねがイマイチでも、発酵不足(または発酵しすぎ)でも、伸ばした生地の厚みや形がバランス悪くても、焼いてみれば意外と美味しく食べられます。私自身、パンやお菓子作りはいまだに失敗が絶えませんが(汗)、ピザは失敗らしい失敗をしたことがありません。みなさんも、おうちならではのスペシャルなピザを楽しんでください。
※参考文献:谷口亜樹子編著『食品加工学と実習・実験』光生館,2020(青山佐喜子さんも執筆者の一人)、久保田紀久枝・森光康次郎編『食品学-食品成分と機能性-』東京化学同人,2017年、主婦の友社編『基本のイタリアン』主婦の友社,2019
文◆ 野村ゆき(栄養士・編集ライター)
編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題にかんする情報+好奇心のアンテナを広げ、分かりやすい記事をモットーに執筆中。青山先生のレシピがきっかけで、おうちピザにどハマり中です!