ネット預金/証券、仮想通貨といったお金に関する資産は、デジタルとはいえ、資産継承は規定の書類提出が求められる。また、仕事をしている人なら、進行中の仕事データは、確実に仲間に渡せるよう、わかりやすいフォルダーに保存しておきたい。
■取材協力
伊勢田篤史(いせだ・あつし)さん
日本デジタル終活協会 代表理事。「相続で苦しめられる人を0に」という理念を掲げ、終活弁護士として活動している。近著に「社長が突然死んだら?」。
[別記事:【デジタル終活のやり方】パソコン・スマホで遺すべきデータは?保存は「無料」のクラウドへ→]
進行中の仕事データは、わかりやすいフォルダーに保存しておこう
金融資産以外でも、引き継いでもらいたいものは、はっきりと意思を表示しよう。
引き継いでもらうもので最もイメージしやすいのは、ネット銀行やネット証券会社などの金融資産だろう。どこに口座があるかはもちろんだが、遺族としては預金や有価証券の内容、証拠金取引の状況なども不安になるところだ。
また、仕事をしている人なら、職場の人に迷惑をかけないためにも、日々の業務で使っている「ワード」や「エクセル」などの現在進行中の仕事データは、確実に仲間に渡せるよう、わかりやすいフォルダーに保存しておきたい。
ほかにも、個人の趣味として調べたり研究したりしているものがある人なら、その成果物がデータとしてパソコンの中に蓄積されているはず。こういったものは、遺族が興味なければ扱いに困る可能性はあるものの、「自分が熱中していたものであること」「不要であれば処分してもらってかまわないこと」を伝え、具体的にどうするかは任せてもいいだろう。
SNSを利用していたり、趣味のブログやホームページを開設したりしているなら、遺族がログインできるよう、その情報も整理しておきたい。まだ一部だが、追悼アカウントという仕組みが用意されたサービスもある。
●金融関係はきちんと準備を
●主なネット金融機関
銀行 | 楽天銀行 | 証券会社 | SBI証券 |
ソニー銀行 | |||
イオン銀行 | 楽天証券 | ||
PayPay銀行 | |||
auじぶん銀行 | 松井証券 | ||
新生銀行 | |||
住信SBIネット銀行 | マネックス証券 | ||
東京スター銀行 |
●主なSNSなど
LINE | ミクシィ |
ツイッター | |
インスタグラム | TikTok |
フェイスブック | …など |
デジタル遺産も、引き継ぎに関してはリアル遺産と変わらない
資産継承では例外は認められないので準備が肝心。必要な情報はすべて書き残そう。
パソコンやスマホ内のデータについては、「遺す」場合と基本的な考え方は共通だ。必要なものと不要なものを分け、内容と引き継ぎ先をフォルダー名でわかりやすくしつつ、ノートでも引き継いでもらう先をはっきり指定しておこう。
ネット預金/証券、仮想通貨といったお金に関する資産は、デジタルとはいえ、手続き自体は店舗型金融機関とそれほど変わらない。資産継承は遺族が各社へ問い合わせる必要があり、また、規定の書類提出が求められる。
資産継承については、例外はまず認められないので、必要な情報が抜け落ちないよう、きちんとノートに記載しておこう。また、キャッシュカードの保管場所も忘れずに書いておきたい。
ネット銀行の住宅ローンや、クレジットカード会社やカードローンなどの借金が残っている場合は、同様に遺産となるので、併せて伝えなければならない。
SNSの場合は、一身専属なので、そのまま継承できないことが多いが、「フェイスブック」は家族や友人を「追悼アカウント管理人」としてあらかじめ指定しておくことで、例えば、お別れメッセージを投稿してもらうなどの管理を任せられる。「インスタグラム」にも追悼バッジを表示する機能があり、今後はほかのサービスでも増えていくかもしれない。
なお、ブログやホームページのサービスでは、遺族からのリクエストに対してできることが明示されていないが、問い合わせ窓口に連絡することで、アカウント削除などに対応してもらえることもある。
ただし、確実ではないので、自分の死後に削除してほしい、もしくは逆に継続してほしいというときは、遺族がサービスにログインできるようアカウント/パスワードをきちんと伝えておいたほうがいい。サービス規約の内容によっては、法的にはグレーゾーンとなるが、何もできずに困るのは遺族なので、ログイン情報はきちんと伝えておくべきだろう。
●ネットでも規定の書類が必要
●フェイスブックは家族や友人に託せる
●インスタグラムはフォームから申請
■解説/大坪知樹(フリーライター)