2021年5月31日に16,000円を切る実勢価格で発売された「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH」。APS-C向けレンズで25mm相当、開放F値は1.4と非常に明るい広角単焦点レンズです。しかもコンパクトで軽量なため、多くの方に注目される「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH」の「実写作例」や「解像力」、「ぼけディスク」などの各種チャートを撮影しましたので、その結果からおすすめ&残念ポイント、結論、そこに至って理由などを解説していきたいと思います。

執筆者のプロフィール

画像: 執筆者のプロフィール

齋藤千歳(さいとう・ちとせ)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在は昨年8月に生まれた息子と妻の3人、キャンピングカー生活にハマっており、約1カ月かけて北海道を一周するなどしている。
▼レンズデータベース(銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH)

約1.6万円、開放F1.4、高い中心解像力、わずか約250g

画像: 17mmという絶妙な焦点距離で開放はF1.4。APS-C向けですが16,000円を切る25mm相当の単焦点レンズとは非常に魅力的です。 http://stkb.co.jp/info/?p=16477

17mmという絶妙な焦点距離で開放はF1.4。APS-C向けですが16,000円を切る25mm相当の単焦点レンズとは非常に魅力的です。

残念なのは、絞り開放時の周辺解像力の低さ

「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」を紹介していきます。筆者は電子書籍を制作するために「解像力」「ぼけディスク」「軸上色収差」「サジタルコマフレア」「最大撮影倍率」「周辺光量落ち」といった各種チャートやテスト、さらに実写作例を撮影しました。テストにはソニーEマウント用モデルをクロップモード(有効画素数約1,800万画素)にしたSony α7R IIIに装着して使っています。

この結論から、みなさんに「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH」のおすすめポイントと残念ポイントをみなさまに、まず最初にお伝えしましょう。

「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」のおすすめポイントは

「安くて、明るくぼけもきれいで、予想以上によく写る、しかも小型軽量」

です。

逆に、もっとも残念なポイントは

「絞り開放での周辺解像力の低さ」

です。

そのため、「明るい広角単焦点がほしい」と考えている多くのユーザーのおすすめできるレンズといえます。しかし、「絞り開放から画面全体に高い解像力を発揮すると広角レンズ」を探しているユーザーにはおすすめできません。

この結論に至った理由を各種チャートなどから、みていきましょう。

16,000円を切る実勢価格

カールツァイスと同じ25mm単焦点を低価格で味わえる

「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」は実勢価格が16,000円前後。事実上15,950円となるレンズ。APS-C向けのレンズですが、開放F値が1.4の17mm広角レンズとしては破格です。

ライバルレンズがなにかあるかと考えたのですが、筆者が知る限りAPS-C向けの17mmというと17mmはじまりのズームレンズくらいで、これといったライバルレンズはありません。16mmや18mmであればAPS-C向けの単焦点レンズが数本ありますが、レンズ特性的にライバルという位置付けではない印象です。

そして、筆者のなかでは16mmや18mmではなく、17mmであることに意味があると考えています。一般的なAPS-C機での画角の変化は焦点距離にして1.5倍相当です。そのため16mmは24mm相当、17mmは25.5mm相当、18mmは27mm相当になります。24mm相当やほぼ28mmの27mm相当は一般的な焦点距離でしょう。しかし、25mm相当といえば、軽く10万円オーバーである憧れのカールツァイスLoxia 2.4/25、Milvus 1.4/25 ZEなどでしか味わえない、ちょっと優越感を覚えるカールツァイス得意の焦点距離。

しかも、「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」は開放F値が1.4と明るいわけです。カールツァイス得意の25mm相当で開放F1.4、そう考えると、よりお買い得に感じるのではないでしょうか。

画像: ZEISS Loxia 2.4/25。カールツァイスお得意の25mmの単焦点マニュアルレンズ。実勢価格は20万円近い高級品。取扱いはケンコー・トキナーです。 https://www.kenko-tokina.co.jp/camera-lens/carl_zeiss/loxia25mm.html

ZEISS Loxia 2.4/25。カールツァイスお得意の25mmの単焦点マニュアルレンズ。実勢価格は20万円近い高級品。取扱いはケンコー・トキナーです。

明るいF1.4、広角でもぼける

非球面レンズの影響も小さくぼけもきれい

ある意味、レンズにとって明るいは正義といえます。そして、「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」の開放F値は1.4。広角とは思えない明るさです。

明るいズームレンズの開放がF2.8として、F1.4なら同条件なら4倍速いシャッター速度で撮影できます。そのメリットが下の作例です。

画像: TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH/Sony α7R III/25.5mm相当/絞り優先AE(F1.4、1/100秒)/ISO 1000/WB:晴天

TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH/Sony α7R III/25.5mm相当/絞り優先AE(F1.4、1/100秒)/ISO 1000/WB:晴天

千歳水族館の大水槽を撮影しました。25mm相当の画角と開放のF1.4でしっかりとシャッタースピードを確保したので、サカナがほぼぶれていません。

作例はF1.4で1/100秒、ISO1000で撮影しています。これが開放F2.8のズームレンズならシャッタースピードを1/25秒とするか、ISO感度を4000まで上げる必要があります。サカナがぶれるか、高感度ノイズの影響が出てしまうでしょう。やはりレンズが明るいことは大きなメリットです。

レンズが明るいメリットといえば、シャッタースピードがかせげることもありますが、やはり期待するのは大きなぼけでしょう。「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」は、焦点距離は短いですが、開放がF1.4と明るく、しかも最短撮影距離が短いので、ぼけの発生しやすいレンズです。

画像: 最短撮影距離で撮影したチャート。スペック表上は最短撮影距離20cm、最大撮影倍率は非公開ですが、チャートから約0.15倍程度であることがわかりました。

最短撮影距離で撮影したチャート。スペック表上は最短撮影距離20cm、最大撮影倍率は非公開ですが、チャートから約0.15倍程度であることがわかりました。

そのため、広角レンズながら積極的にぼけ表現を活用したい「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH」のぼけの質と形をチェックしたのが下記のぼけディスクチャートです。

画像: 非球面レンズの影響も小さくぼけもきれい

ぼけディスクチャートは、画面内に発生させた玉ぼけ(ぼけディスク)の質と形から、そのレンズのぼけを評価しています。単純にいうなら、ぼけディスクがより真円に近く、フチ付きや色付きがなく、ザワつきなどのないものが、素直でなめらかな上質なぼけがえられるといえるのです。

「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」の場合、非球面レンズを使っているので、ぼけディスクに同心円状のシワが発生してザワつく、輪線ぼけの発生が懸念されました。しかし、その影響は小さく、ぼけがザワつきやすい広角レンズとは思えないほど、ザワつきが小さいです。ぼけの質で気になるのは多少のザワつきと色収差などの影響と思われるフチの色付きくらいです。

また、絞り羽根枚数が多いほどぼけの形を真円に近づけやすいといわれる絞り羽根は10枚と多めです。しかし、枚数の割にはF1.8のぼけディスクチャートの結果をみるとわかるようにカクツキが目立つの残念なところでしょう。

とはいえ、「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」が低価格ながら、明るくぼけもきれいなレンズであることに納得いただけたでしょうか。

念のため、作例も紹介しておきます。

画像: TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH/Sony α7R III/25.5mm相当/シャッター速度優先AE(F1.4、1/200秒)/ISO 3200/露出補正:+1.0EV/WB:オート

TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH/Sony α7R III/25.5mm相当/シャッター速度優先AE(F1.4、1/200秒)/ISO 3200/露出補正:+1.0EV/WB:オート

息子を撮影したものです。17mmの広角レンズですが、近接撮影で絞り開放を選択しているので、思っているよりも大きくぼけるのがわかるのではないでしょうか。

予想以上の解像性能

残念ながら低い絞り開放付近の周辺解像力

安いし、ぼけもきれいだし、これで絞り開放から画面全体でしっかり解像してくれたら、まるで10万円を超えるような高級単焦点レンズといっしょ、と思うところ。しかし、残念ながら、現実はそうはうまくいきません。

解像力チャートを撮影した結果をみてみましょう。

画像1: 残念ながら低い絞り開放付近の周辺解像力

絞り開放のF1.4でA1サイズのチャートを撮影したものです。カメラの有効画素数から基準となるチャートは1.2になります。ご覧のとおり、中央部分は絞り開放から、かなり高解像なのですが、周辺部分はかなりぼやけているのがわかるでしょう。絞り開放では、周辺部分の解像が得意なレンズではありません。

さらに、この傾向を裏付けしてくれるのがサジタルコマフレアのチェックです。

画像2: 残念ながら低い絞り開放付近の周辺解像力

サジタルコマフレアのチェックは、非点収差やコマ収差などの発生を観察するために星空を撮影しています。撮影時の露光時間による星の動きによる変形もありますが、星が点や動いた分の線として、そのまま描写されているかをチェックしています。結果は下記のとおりです。

画像3: 残念ながら低い絞り開放付近の周辺解像力

掲載した星景写真の右上部分を拡大したのが上の2枚の写真です。絞り開放では非点収差やコマ収差などが複合したサジタルコマフレアが発生して、点、もしくは線で描写されるはずの星が、まるで羽根を広げた鳥のような、大きなエイのような形で描写されています。レンズにとって難しいことですが、絞り開放の画面周辺部で、点を点として描写できていないのです。原因はこれだけではありませんが解像力チャートの周辺部分の解像力の低さは、このあたりの影響も受けていると考えられます。

しかし、サジタルコマフレアも絞ると減少する傾向なので、絞ると解像力チャートがどう変化するかも確認しておきましょう。

画像4: 残念ながら低い絞り開放付近の周辺解像力

撮影条件などはF1.4のときと同じです。基準となるチャートも1.2ですが、明らかに周辺部分の解像力が改善されているのがわかるでしょう。また、倍率色収差も減少しているのがわかります。解像力のピークと推察されるF8.0〜F11あたりでは周辺部の解像力も含めて、1万円台の広角レンズとは思えない優秀な結果です。

せっかくなので、軸上色収差チャートの結果もチェックしておきましょう。

画像5: 残念ながら低い絞り開放付近の周辺解像力
画像6: 残念ながら低い絞り開放付近の周辺解像力

軸上色収差は光は色(波長)で屈折率が異なり、色ごとに焦点位置が異なります。その結果、軸上色収差が発生し、それぞれの色がズレたように描写され、解像力を低下させるわけです。高価なレンズでは、特殊なレンズなどを使って、これを抑え込むのですが、「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」はかなりコストパフォーマンス重視なレンズなので、絞り開放ではかなりはっきりと軸上色収差が発生します。立体物では絞ることで軸上色収差が減少するので、深くなる被写界深度の効果と相まってスッキリとした描写になります。本レンズの場合、軸上色収差の影響がほぼ感じられなくなるにはF4.0あたりまで絞る必要がありました。

各種収差チャートや解像力チャートの結果、実写などを総合すると、「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」は絞り開放から中央部の解像力は高くよく写りますが、周辺部までしっかりと解像させるのはF8.0〜F11あたりまで絞る必要があると感じました。

本レンズでは周辺部までしっかり解像したいときは、ガッツリ絞ると考えておくとよいのではないでしょうか。

ただし、F13あたりから絞り過ぎによる解像力低下が起きるので、絞り過ぎにも注意してください。

画像: TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH/Sony α7R III/25.5mm相当/絞り優先AE(F8.0、1/800秒)/ISO 100/露出補正:+1.3EV/WB:晴天

TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH/Sony α7R III/25.5mm相当/絞り優先AE(F8.0、1/800秒)/ISO 100/露出補正:+1.3EV/WB:晴天

雲を主役に撮影した1枚。十分以上の光がある状態だったので、画面全体の解像力が十分にアップするF8.0を選択しています。光量が十分状況ではF11を選択するのもおすすめです。ただし、F13以上まで絞ると絞り過ぎによる解像力低下が発生するので注意してください。

軽量でコンパクト

約250gでΦ56×57.5mmはポケットサイズ

画像1: 約250gでΦ56×57.5mmはポケットサイズ

「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」のメーカー公表データによるサイズは、最大径は約56mm、長さは約57.5mm(マウント部除く)、質量は約250gです。コンパクトで軽量なレンズといえるでしょう。

しかし、筆者はカメラッグに入れることを考慮して、前後レンズキャップを装着して大きさ、重さを計測してみました。

結果は、上の写真のとおりで、質量は約269g。無限遠側にピントを合わせた状態で約70mm、最短撮影距離側のピントを合わせた状態で約72mmのレンズ長になります。

レンズフードは付属しないので、ねじ込み式のフロントレンズキャップを装着した状態でも、もっとも太くなるのはリアレンズキャップ部分で最大径は約61mmでした。

画像2: 約250gでΦ56×57.5mmはポケットサイズ

手に持った状態は上の写真のとおりで、すっぽりと手の平に収まるイメージ。ちなみに筆者の手の大きさは、いちばん長い中指の先から手首までが約17cm、軽く開いた状態で親指の先から小指の先までの直線距離が約17cmなので、男性としては小さめです。

金属を多用したレンズなので、手にとるとずっしりとした印象を受けます。最大径と長さ、質量から単純に計算した密度がだいたい1.77g/㎤なので大きさの割に重めのレンズといえます。

絞り環は約3mm幅でレンズ先端部に配置。クリック感あり。開放のF1.4から最大絞り値であるF16まで1/2段ステップで選択可能です。操作感は、十分になめらかで安っぽさはありません。

絞りリング部分は約4mmの幅でレンズ中央部に配置されています。操作感は、かなりなめらか。16,000円切る価格帯のレンズとは思えない出来です。

まったく抵抗なく、上着のポケット入れて持ち歩ける大きさと質量は、撮影時の取り回しもよく、大きなアドバンテージといえるでしょう。

まとめ

明るくて安い広角レンズを探しているなら絶対おすすめ

チャートや実写の結果などからみていただいたとおり、「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 CASPH」は、安くて軽くて、ぼけもキレイ。絞り開放付近の周辺解像力は弱いが、F8.0あたりまで絞れば、十分以上に画面全体を解像するレンズです。しかも25mm相当という憧れの高級レンズカールツァイスのような画角も楽しめます。非常にお買い得なレンズといえるでしょう。

手軽で明るい広角単焦点を探している方すべてにおすすめできます。

しかし、チャートの結果どおり、絞り開放から画面全体がバキバキシャープに写る高性能な広角レンズを探している方にはまったくおすすめできません。また、絞り開放で星景写真をハイクオリティで撮影したいという方にも、サジタルコマフレアの結果から、おすすめできないでしょう。このような用途にはやはり高性能な高級レンズが向いているといえます。

画像: 【レビュー】安くて、明るくて、よく写る、しかもコンパクトな
「銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH」 実写チャート評価
【国内正規品】銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPH (富士フイルムX, ブラック)
銘匠光学(めいしょうこうがく)TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPHは、35mm判換算26mm相当(APS-C)の大口径広角レンズです。APS-C用のCシリーズでは初となる非球面レンズを採用し、良好な画質と手軽に持ち運べる携帯性を両立しています。開放F値1.4の大口径で、被写体を際立たせるような表現や暗い場所での撮影に適しています。外装は、他のCシリーズと統一感を持たせたデザインを採用し、アルミニウム合金製の上質な仕上げとなっています。
対応マウント:富士フイルムX / 焦点距離 : 17mm(35mm判換算:26mm相当)
フォーカス:MF(マニュアルフォーカス) / ...
¥15,930
2021-06-01 10:08

●銘匠光学 TTArtisan 17mm f/1.4 C ASPHの基本スペック

対応マウント:キヤノン EF-M、ソニー E、フジフイルム X、マイクロフォーサーズ
レンズ構成:8群9枚
絞り羽根枚数:10枚
フィルター径:40.5mm
大きさ:Φ約56×57.5mm(マウント部除く)
質量:約250g
実勢価格:16,000円前後

(技術監修:小山壮二)

This article is a sponsored article by
''.