コロナ禍で、密を避ける交通手段として自転車の売れ行きが好調です。今回はシニア向けの電動アシスト自転車を対象に選び方を解説。実はいろいろなタイプがある電動アシスト自転車の、おすすめ車種を紹介していきます。
注目タイプは「シンプル」「低床」「三輪」で、小口径モデルが無難
電動アシスト自転車は、ペダルをこぐときの脚力の負担をモーターが補助してくれる。このアシスト機能の恩恵を特に感じられるのがシニア世代だろう。きつい上りの坂道でも、モーターのアシストでラクラク乗れる。
一口に電動アシスト自転車といっても、実はいろいろなタイプがある。
街乗りや買い物用のいわゆるママチャリタイプ、子供を乗せるための二人乗り用、ロードレーサーといったスポーツサイクルなどだ。その中でも、シニアにマッチしたタイプは、後述のように三つある。
もう一つ、電動アシスト自転車を選ぶときに気をつけたいのがタイヤサイズである。
街乗りや買い物用では26インチがスタンダードだが、シニアユースを前提にすると、22インチや20インチの小口径タイヤを選ぶのが無難。小口径のほうが小さい力で進むことができ、また、地面への足の接地もしやすくなる。本体も軽くなるので、狭い場所での取り回しが楽なのも大きなメリットだ。
シニア向け電動アシスト自転車のタイプ
シンプルタイプ
価格 | 10万~13万円前後 |
特徴 | タイヤ径は20~26インチと、さまざまなサイズがある |
基本的には20~22インチの小径タイヤを装備したモデルで、いわゆるママチャリ型のオーソドックスな電動アシスト自転車をこのカテゴリーとした(一部、26インチのものもあり)。
電動モーターを装備し、そのアシスト力により、走行時には、前から引っ張られているような感覚がある。タイヤサイズは小さめだが、普通の街乗りタイプの自転車と大差ないデザインであるのがこのタイプの特徴だ。
●ママチャリ型のデザインが特徴
低床タイプ
価格 | 8万~14万円前後 |
特徴 | フレームの位置が低く、またがりやすい |
通常の自転車と比べ、フレーム形状が少し変わっているのが特徴。フレームの最低地上高を低く設計しているのが、この低床タイプだ。低くすることで、またぎやすさ、乗り降りのしやすさが圧倒的によくなる。
また、重心も下げることができるので、走行時の安定感が増す。一本のパイプをU字型に成型したシンプルタイプなどのフレームに比べると少々車重が重くなるのが難点だろう。
●フレームが地面に近い位置にくる
三輪タイプ
価格 | 20万円前後 |
特徴 | 前後にカゴがあり、荷物を多く積める |
特徴は、転倒しづらいことと、二つの後輪の間に大きめのリアバスケットの搭載が可能で、荷物の積載量を多くできることだ。
三輪タイプはスイング式と固定式の2種に分けられる。スイング式は、ハンドルや前輪を含めたフレームの前部を傾けることが可能で、重心を左右に移動して曲がるために二輪タイプと同じような感覚で運転できる。固定式は、車体が傾かない構造。角を曲がるときも、車体を傾けずに走行する。
●三輪なので停止時でも倒れない
ヘルメットや自転車保険は絶対に必要?
個人賠償責任保障のある自転車保険への加入を義務付ける自治体が増えている。未加入でも罰則はないが、保険には入っておいたほうが安心。すでに加入している火災保険、傷害保険、自動車保険の中にはオプションで賠償責任保障が付いている場合があるのでチェックしておこう。
ヘルメットは幼児と65歳以上の高齢者には着用の努力義務があるが、いずれも強制力はなく、着用しなくても罰則などはない。しかし、これも保険同様、着用しておいたほうが安心だ。
●帽子のようなヘルメットもある
シンプルタイプパナソニック「ビビ・20・L」
実売価格例:11万3690円
バッテリー容量12.0Ah 充電時間約4.0時間
●タイヤ径:20インチ[20×1.75 HE]※【HE / WO】タイヤとリムの形状規格
●カラー:ウォームシルバー、チョコブラウン、ファインブルー
●21.7kg
取り回しのいいサイズ感で、荷物を多く積めるのが魅力
フレームだけでなくスタンドやリヤキャリアにもアルミ素材を採用。電動アシスト自転車の人気ブランド『ビビ』シリーズの中での最軽量モデルとなっている。20インチタイヤと比較的低めに設計されたフレームデザインによって、取り回しが楽。狭いスペースへの駐輪などもしやすい。
全体のサイズ感としてはコンパクトだが、荷物を多めに積めるのが魅力。大型の樹脂製フロントバスケットは、高さ240ミリ×奥行350ミリ×幅410ミリとゆとりのあるサイズ。リアキャリアの最大積載重量は18キロ。別売のリアバスケットを取り付ければ、さらに積載量もアップする。
楽に乗降できるフレーム設計
こんな人におすすめ!
買い物でたくさんの荷物を積みたいという人に。取り回しも楽なので、駐輪スペースが狭くて苦労しているならコレ!
シンプルタイプパナソニック「ビビ・L・押し歩き」
実売価格例:12万4350円
バッテリー容量12.0Ah 充電時間約4.0時間
●タイヤ径:26インチ[26×1-3/8 WO]
●カラー:チョコブラウン
●24.0kg
日本初の押し歩きモードを搭載。アシスト性がさらに充実
従来のアシスト機能はペダルをこぐ負担を軽減するものだが、これは日本初の「押し歩きモード」を搭載。押しながら歩くときにもアシスト機能が作動し、楽に進むことができるのだ。
車重が重くなりがちなアシスト自転車の場合、押し歩きは弱点の一つだったが、これをみごとに解消。地下駐輪場や歩道橋など、勾配のある場所を押し歩きする場合、とても役立つ。
押し歩き機能を使うときは、サドルをワンタッチレバーで引き上げ、操作パネルの「押歩き」スイッチを押す。乗るときはサドルを戻してペダルをこげばいい。もちろん、押し歩きモードのときでも、バッテリーは消費する。
押し歩き時は操作パネルのスイッチを押し続ける
こんな人におすすめ!
地下駐輪場を使う機会が多い人や、歩道橋などでの勾配のきついスロープをよく通るという人にピッタリ!
シンプルタイプ丸石サイクル「ふらっか~ずキュート アシスト」
実売価格例:10万5000円
バッテリー容量10.1Ah 充電時間約4.0時間
●タイヤ径:26インチ[26×1-3/8 WO]
●カラー:エナメルネイビー、メタリックエンジ、メタリックシルバー
●28.9kg
フロントモーターの採用により、こぎ出しが安定
フレームは最低地上高を低めに抑え、乗り降りのしやすいデザイン。テコの原理を応用し、強い力を入れずとも踏むだけで簡単にスタンドが立てられるFRワイドスタンドなど、シニアにも優しい装備が随所に見られる。
モーターユニットはペダルまわりのセンターではなく、前輪に装備。前から引っ張ってくれるアシスト感があり、こぎ出し時や、フロントバスケットに荷物をたくさん入れて乗ったとき、急坂を走行するときなどに安定感がある。
ハンドル部の情報ウインドウはモード切り替えスイッチのほか、バッテリーの残量なども表示。充電忘れのうっかりミスもこれで防げる。
内蔵センサーによって出力を調整
こんな人におすすめ!
発進時でもふらつかずに安定した乗り心地を求める人や、バスケットに荷物を満載して急坂を上らなくてはいけない人に。
シンプルタイプ丸石サイクル「ペットポーター アシスト」
実売価格例:12万9900円
バッテリー容量11.1Ah 充電時間約4.5時間
●タイヤ径:20インチ[20×2.125 HE]
●カラー:ラテベージュ×ブラウン、インクブルー×ブラック、ダークレッド×ブラック
●30.7kg
変則的形状のハンドルに収めたカゴにペットを入れられる
ペットを連れて公園で散歩したい、といったときに安心して自転車で出かけられるのがこの一台。変則的な形状のハンドルの間に専用の大型カゴ(別売で7700円)を固定。そこにスッポリと収まるペット専用バッグ(別売で1万6500円)を取り付ける。
バッグの内寸は長さ43センチ×幅25センチ×高さ28センチで、体重10キロほどまでの犬を入れることができる。底面に厚手のクッションを敷くなど、愛犬の居住性もよく考えられ、ストレスを与えることはないだろう。
ペット専用バッグを使わないときには、ハンドル部の大型カゴを荷物運搬用のバスケットとして使える。
安心して入れておける装備が充実
こんな人におすすめ!
少し離れた公園などに愛犬を連れて出かける機会が多い人、たくさんの荷物を運ぶことが多い人に向く。
シンプルタイプルイガノ「LGSアセント ミニ」
実売価格例:12万9979円
バッテリー容量12.0Ah 充電時間約4.0時間
●タイヤ径:20インチ(前輪)/18インチ(後輪)[前20×1.95 HE 後18×2.125 HE]
●カラー:マットカーキ、LGホワイト、サクセブルー、カフェベージュ
●24.9kg
スタイリッシュなデザインで、安定感のある低重心設計
ルイガノは、カナダ生まれの自転車メーカー。街中に溶け込むスタイリッシュなフォルムで、フレームと同色で一体感のあるリアキャリアやレトロな雰囲気のサドルなど、細部も好感の持てるデザインだ。別売のフロントバスケットは8タイプもラインアップされ、オリジナリティも出しやすい。
小径タイヤの採用により足つきはよく、また、フレームは低重心設計になっていて、シニアでも安心して乗ることができる。
モーターユニットは日本製を採用。12.3Ahのバッテリーを搭載し、最長77キロの走行が可能。電動アシスト自転車としての走行性能も過不足なく装備されている。
カジュアルに乗りこなしたい外車
こんな人におすすめ!
電動アシストは必要だが、自転車のデザインにもスタイリッシュさを求めたい人に向く。
低床タイプパナソニック「SW」
実売価格例:7万9210円
バッテリー容量8.0Ah 充電時間約4.5時間
●タイヤ径:20インチ(前輪)/18インチ(後輪)[前20×1.75 HE 後18×2.125 HE]
●カラー:マットジェットブラック、マットクラウディグレー、デザートイエロー
●20.9kg
シンプル装備&軽量ボディは入門ユーザーに最適
またぎやすいU字型フレームを採用。小径タイヤで足つきもよく、安心して運転することができる。
このモデルのいちばんの特徴は、シンプルなこと。ほとんどの電動アシスト自転車に装備されているハンドル部のスイッチパネルが、SWには付いていない。電動アシストのオン/オフは、バッテリーの上部にあるスイッチを押すだけで、特にエコモードやパワーモードといった切り替えもないのである。
装備がシンプルということもあり、重量は20.9キロと、ほかの電動アシスト自転車に比べてかなり軽い。この軽さによって取り回しがしやすくなり、シニアには優しい一台といえる。
モード切り替えのないシンプルスイッチ
こんな人におすすめ!
初めて電動アシスト自転車を購入するユーザー。なるべく少ない出費で、アシスト機能の恩恵を受けてみたい人。
低床タイプブリヂストン「ラクット 20インチ」
実売価格例:13万5600円
バッテリー容量14.3Ah 充電時間約4時間10分
●タイヤ径:20インチ[20×1.75 HE]
●カラー:ルビーレッド、サファイヤブルー、シルキーベージュ
●25.1kg
走りながらの自動充電が可能で、走行距離は最長130キロ
フレームの底部の高さが23.5センチ。同じブリヂストンの20インチ車種と比べると約10センチも低く設計され、乗り降りのしやすさ、足つきなどはかなりいい。
ラクットシリーズが搭載している特筆すべき装備が自動回復充電機能だ。フロントに搭載されているモーターは左ブレーキをかけたり、走行中にペダルをこぐ動作を停止したりしたときに発電し、自動的に充電される。この機能により、エコモードで130キロという圧倒的な走行距離を実現しているのだ。
日常的な通勤や買い物で使うのであれば、充電は1ヵ月に1回程度で済む。同シリーズで24インチもある。
操作性と視認性に優れた操作パネル
こんな人におすすめ!
マンションなどの駐輪場から部屋までが遠くて、重いバッテリーを運搬したくない、充電回数を少なくしたいという人。
低床タイプヤマハ「パス シオン-U」
実売価格例:12万4350円
バッテリー容量12.3Ah 充電時間約3.5時間
●タイヤ径:20インチ[20×1.95 HE]
●カラー:グロススモークイエロー、スノーホワイト、レッド、エスニックブルー
●21.5kg
軽量化にこだわりつつ、アシストパワーもかなり強力
乗り降りがしやすい低床U型フレームの採用だけでなく、車重21.5キロと、パスシリーズのスタンダード車種に比べて、約5キロの軽量化も実現。駐輪場など、狭い場所での取り回しがとても楽だ。
シニアにも優しいうえに、頼もしい走行性能も魅力。強モードのアシストレベルがパワーアップされ、載せた荷物が重いときや急な坂道でも今まで以上に楽に走行できる。
もちろん、この強いアシストパワーは、こぎ出しからいきなりかかってくるわけではない。始動時はスムーズかつ優しく、強い負荷を必要とするときにはアシストパワーがサポートしてくれる。同シリーズで24インチもある。
低床ながらポップで好感の持てるデザイン
こんな人におすすめ!
急坂の多い地域に住んでいて、これまで使っていたモデルのアシストパワーにちょっと力不足を感じているならコレ!
三輪タイプパナソニック「ビビライフ」
実売価格例:20万4610円
バッテリー容量16.0Ah 充電時間約4.5時間
●タイヤ径:18インチ(前輪)/16インチ(後輪)[前18×1.75 HE 後16×1.75 HE]
●カラー:ブルー、チタンシルバー
●34.1kg
車体を傾けて曲がることができるスイング式を採用
後ろの二輪が接地したまま、フロントの部分だけ左右に傾けることができる可変式スイング機構を搭載。
二輪自転車では曲がるときに車体を左右どちらかに倒し込むが、固定式三輪車では重心を移動させずにハンドルだけで曲がっていくことになる。可変スイング機構を備えたビビライフの場合、車体が傾くため、二輪自転車の感覚で曲がることができるのだ。
可変スイング機構の傾きの角度は0~10度、0~25度の2段階で調整でき、さらに傾かせないで固定させることも可能。また、ロングドライブモードで約93キロの走行が可能など、アシスト性能も充実。
安全性を向上させる2灯のテールランプ
こんな人におすすめ!
三輪タイプに乗り替えても、重心移動で曲がる二輪自転車の操作感覚で乗りこなしたいならこれで決まり!
三輪タイプブリヂストン「フロンティア ラクット ワゴン」
実売価格例:20万800円
バッテリー容量14.3Ah 充電時間約4時間10分
●タイヤ径:20インチ(前輪)/16インチ(後輪)[前20×1.75 HE 後16×1.75 HE]
●カラー:ミスティミント、ルビーレッド、サファイヤブルー
●28.3kg
左ブレーキをかけるとモーターブレーキで制動をアシスト
走りながら充電してくれる自動充電を採用。左ブレーキをかけたときは、自動充電しながらモーターブレーキも作動。上りだけでなく、急な下り坂での走行も、モーターが制動をアシストしてくれる。
ペダルをこぐ力は後輪に伝達され、前輪はモーターがアシストするので、前と後ろの両軸駆動で、少々凹凸のある道路でも安定した走りを実現する。
低床フレームの採用で乗り降りがしやすく、サドルから地面までの最低地上高が67センチと低いので、足つきは非常にいい。シート角度などの見直しにより、こいだときの脚の角度が膝への負担を軽減するようにフレームが設計されている。
充電もしてくれるフロントモーター
こんな人におすすめ!
急坂を下るときのブレーキングに不安を覚えているなら安心。バッテリーの充電回数をできるだけ少なくしたい人にも。
三輪タイプヤマハ「パス ワゴン」
実売価格例:20万3770円
バッテリー容量15.4Ah 充電時間約4時間
●タイヤ径:18インチ(前輪)/16インチ(後輪)[前18×1.75 HE 後16×1.75 HE]
●カラー:カカオ、アイボリー、エスニックブルー
●29.3kg
フロント&リアバスケット搭載で、大量の荷物を運べる
乗り降りしやすい低床U型アルミフレーム。長時間座っていても快適さを損なわない「ふっかふかサドル」など、全体的な乗りやすさが特徴的。
また、荷物の積載量の多さも優秀。深さ285ミリのフロントバスケットの容量は19リットル。さらに、開口部のサイズが幅336ミリ×奥行486ミリで容量約39リットル、最大積載重量17キロのリアバスケットも搭載している。
アシスト機能も万全。十二分なアシストパワーはもちろんのこと、センサーが、こぐ力や道路状況を感知し、それに合ったアシスト力をコントロール。こぎ始めも、自然な感覚でスムーズにスタートできる。
前後合わせて約58リットルの収納量
こんな人におすすめ!
いつもたくさんの物を買い込み、荷物の量が多くなりがちな人。サドルの座りやすさや乗り心地にもこだわりたい人。
電動アシスト非搭載でおすすめのモデルはこれ!
電動アシスト自転車は、脚力が低下しがちなシニアにとっては非常にありがたい機能である。しかし、日常的に自転車を使う頻度が多いけれど、電動アシストだと価格面でちょっと、とお考えのシニア世代もけっこう多いのでは、と思われる。
そこでおすすめなのが、サギサカの「こげ~る」シリーズだ。
サギサカは自転車メーカーではあるが、車いすなどの介護用品も扱っている。そこで得た介護のためのスキルや経験を自転車に生かして作られたのが、このシリーズである。
またぎやすい低床フレームはもちろんのこと、安定感を向上させる低重心設計が特徴的。ペダルの重さを44%も軽減してスムーズな発進を実現しているほか、サドルに腰当てを付けることで、効率よくペダルに力を伝えられるようにしてある。
「こげ~る」シリーズでは、楽に乗れるというだけでなく、ある程度の負荷をかけて自転車をこぐことで、脚の筋力低下防止にもつなげるといったコンセプトも持っている。これは、介護という観点がないとなかなか発想できないものだろう。
サギサカ
こげーるneo
8万6180円(20型)
「超軽い」「軽い」「普通」の3段変速を採用。低重心設計により走行安定性がいい。シニアユースに特化した一台だ。
サギサカ
こげーるライブリー三輪車
9万9688円
電動アシスト三輪車に比べ、価格は約半分。介護のノウハウで生まれたパーツを随所に装備している。
※価格は記事作成時のものです。
■解説/打越俊浩(アウトドアライター)
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