ドラム式洗濯乾燥機で話題になりがちなのが、洗濯ドラム(洗濯槽)が「まっ直ぐ」なのか「斜め」なのかということです。以前からアクアは「斜めドラム」を採用していましたが、今回は「まっ直ぐドラム」を採用。宣伝にも使っています。「斜めドラム」から「まっ直ぐドラム」に変えたアクア社の本意をレポートします。
なぜアクアは「斜めドラム」から「まっ直ぐドラム」に変えたのか?
「斜めドラム」のメリットは?
モーターは基本、回転軸を「垂直」もしくは「水平」にして使われます。これはモーターへの負荷が少ないからです。今でもそうですが、洗濯機の寿命は「回転モーターの寿命」と言われています。子どもの頃、洗濯機が壊れた時は見事でしたね。突然「ガラン、ガラン」とけたたましい大きな音を
がしたかと思うと、止まりました。一番に青くなったのはお袋。洗濯が終わってませんでしたからね。お風呂に水張って足で踏んで、流水で濯ぎます。二槽式だったので、幸い脱水はできました。その夜は、家族会議。洗濯機は安くないですからね。家族間了承というやつです。2〜3日して新しいのが来ました。この間、服を汚さないように言われていたのですが、夏ですから無理っていうモノです。今思い出しても、大変でした。
当時は、日本にはモーターに負荷の少ない縦型洗濯機しかありませんでした。技術はだんだん進化し、モーター寿命も伸びます。そのうちに、ドラム式洗濯機も作られるようになりました。当初作られたのは当然「まっ直ぐ」です。
そしてドラムを斜めにした「斜めドラム」が開発されました。確かにモーターは進化、耐久性もよくなりましたが、モーターへの負担は一番かかります。何も好き好んで「斜め」を採用することはありません。
それなのに、アクアは何故「斜めドラム」を採用したのでしょうか?いくつかの理由がありますが、一番大きな理由はユーザーニーズが「節水」だったからだそうです。
ドラムがまっ直ぐの場合は、ドラムの部位で差なく水が溜まります。しかし斜めの場合は、上には水がなく、下(底)に水が溜まります。その深さがある部分で洗えば、節水できるという考えです。
ところが一箇所に洗濯物を溜めて洗うので、洗濯物が絡んだりして、洗浄力は落ちます。団子状態で洗いますので、洗いムラもでます。また乾燥も不利です。
しかし、ドラム式洗濯機は「本体の価格が高い」ためランニングコストが安いことが求められたのです。アクアは、そのユーザーニーズを優先。斜めドラムを採用したというわけです。
ちなみに斜めドラムのメリットは節水以外に幾つかあります。一つは、口が上を向いているので、洗濯物が入れやすいことです。また奥行きを短めにできますので、デザインバランスが取りやすい。結構ユーザーフレンドリーなのです。
「まっ直ぐドラム」のメリットは?
では「まっ直ぐドラム」のメリットはなんでしょうか?洗濯物は斜めドラムより入れにくいですし、水は理論通りの量を使いますが、「洗浄力」に関しては真っ直ぐが優位です。ドラム内に均一に置かれた洗濯物は、ムラなくきれいに洗われます。
アクアは、日本の業務用洗濯機=コインランドリーの7〜8割のシェアを持っています。業務用洗濯機に斜めドラムはありません。そして多くの人が、洗濯だけでなく乾燥まで使います。使用料金は一定ですから、ユーザーも節水などは考えていません。むしろ、きちんと汚れがおち、きちんと乾くことが求められます。
今回、もう一度、「洗濯とは何か、何故洗濯をするのか?」を考えたアクアは、このような理由でまっ直ぐドラムを採用したのでした。つまり「洗濯は汚れを落とすために行う」ということです。
アクア「AQW-DX12M」の特徴
今ドキのニーズを満たしている「AQW-DX12M」
洗浄力を求めたアクア AQW-DX12M(洗濯容量:12kg、乾燥容量:6kg)は、洗浄力以外にも、今ドキのニーズを満たした仕様になっています。今ドキと書きましたが、具体的にどんな性能が求められるのかをご紹介しましょう。
省スペース設計
1つ目は、「設置」。「設置面積は小さく、洗濯容量・乾燥容量は大きく」です。
アクアは、業界初採用の熱交換効率の高いマイクロチャネル方式や分離式ヒートポンプユニット構造により、64cmの洗濯防水パンの中に収まるように設計されています。64cmは、ちょっと前まで7〜8kgの縦型洗濯機用でしたから、買い替え時に、ドラム式で洗濯容量:12kgを買い換え候補に入れることができます。これは、かなり嬉しいです。
洗浄力と清潔度
2つ目は、「洗浄能力」。絡みや洗いムラを抑え、きれいに洗ってくれることです。前述の「まっ直ぐドラム」で、そうなるよう設計したのですから、これも当然クリアです。
3つ目は、「清潔度」。コロナ禍ですから、ここ2年、すごく指摘されているニーズです。
これに対しては、まず有効なのは「高温でのお湯洗い」です。うがい手水に身を清める日本人としては、洗うと言う行為はポイント高いのですが、割と忘れがちなのが、お湯、温度の効能です。一つには洗剤の働きを活性化させ、よく汚れが落ちるようになります。
そしてもう一つのメリットは、バイ菌を殺すことです。日本の場合、お湯洗いの温度は、上は60℃位ですが、感染病で何度もパンデミックに遭っている欧州では、木綿なら90℃のお湯で洗える洗濯機も存在します。こうなると熱湯消毒しているようなモノ。濃度により効果が異なる化学物質による除菌より確実です。
しかし、60℃でもバカにしてはいけません。部屋干しで指摘されるニオイ菌を殺すことができます。実際、私はお湯洗い&部屋干しですが、ニオイで困ったことはありません。
加えて、AQW-DX12MはUV(紫外線)ランプも装着しています。こちらも医療機器の滅菌などに使われる技術です。ただし効果があるのは、照射されている部分だけ。熱のようにだんだん全体の温度が上がり、洗濯槽内どこでも効果があると言うモノではありません。照射範囲内です。また布一枚で光エネルギーは遮られますので、効き目が無くなったりします。過信に、ご注意ください。
洗剤の自動投入
4つ目は、最近注目を集めている「洗剤、柔軟剤の自動投入機能」。当然、この機能もあります。が、如何せん、12kgの大型ドラムを小型の筐体に見事に詰め込んだモデルですから、残りスペースが少なく、液体洗剤:約560ml、柔軟剤:約470mlです。正直、洗剤を完全に入れ切ることはできません。ちょっと余る感じです。
お手入れのしやすさ
5つ目は、「日常のメンテナンス」です。縦型全自動洗濯機でも、槽内の「糸くずキャッチャー」の手入れは毎回すると思います。それと同じメンテナンスがドラム式でも必要です。「フィルター掃除」がそれです。ドラム式洗濯機には、洗濯時に使われる排水フィルターと、乾燥時に使われる乾燥フィルターが設けられています。しかし乾燥フィルターの綿埃は実にすごい。笑うしかないほど出てきます。このためメーカーはプレフィルター、メインフィルターと2枚あるところも多いです。
AQW-DX12Mは、このうち、メイン乾燥フィルターを自動で清掃します。洗い流すのですね。このため、排水フィルターは使用後毎回、乾燥プレフィルターは、乾燥機能使用時毎回掃除が必要です。
まとめ
今後の課題はズバリ「AI」
さて、今ドキのニーズを全て満たしているアクア AQW-DX12Mですが、完全無欠かというとそうではありません。洗濯機にはまだ、先があります。
洗濯という行為は人間しかしません。服を着るのは人間くらいですから。そして化学物質を大量に使います。このため、地球環境を守る意味で、もっと効率化しなければなりません。また、同じ行うなら、きちんと汚れを落とさなければなりません。そうでないと無駄に衣類を買い換えることになります。ファッション産業を回すという意味では買い換えが必要なのかも知れませんが、ある意味、膨大な浪費でもあります・・・。それはさておき、洗濯には、まだまだ「効率」と「汚れをきちんと落とす効果」が求められます。
こんなときに頼れるのは、ビッグデーターとAIです。センサーとの組み合わせにより、人間では不可能な緻密な対応ができます。そして今後、この洗濯機にもAI搭載がどんどん求められていくと思います。それはお気に入りのウェアをきちんとケアしながら永く使うということでもあります。残念ながらAQW-DX12MにはAIが搭載されていません。
しかし、これだけの機能が揃っているのです。使いこなせるとファッションの幅がすごく広がる洗濯機と言えます。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。