11月1日、東京駅前丸ビルの地下1階のお弁当売場にたくさんのサラダが整然と詰め込まれた大型の冷蔵庫が登場した。これはレジ会計のないサラダ専門の販売店。これを営むのは「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス)」というサラダ専門店を展開するCRISPという会社。同社は、飲食業界に先駆けてモバイルオーダーを導入、利用者のオフィスにバーチャル店舗を開設したり、サブスクリプションサービスを行ったりと新しいフードサービスの在り方を切り拓いている。

サラダ販売店「クリスプ・ステーション」

東京駅前、丸ビル地下1階のお弁当売場の中に、たくさんのサラダが整然と詰め込まれた大型の冷蔵庫がある。店頭に従業員はいないが、「CRISP STATION(クリスプ・ステーション)」というサラダ販売店である(従業員は冷蔵庫の裏側にいる)。

サラダは8種類、価格は1295円(税込)で全品同一。この販売店は11月1日のオープン。筆者はこの日の夕方に購入を体験しに行ってみたところ、同じ売場にいる他の店の従業員たちが、首を傾げながら冷蔵庫を覗いていたのが印象的であった。

画像: 客層のほとんどが20代、30代の女性で11時50分ごろから人だかりができる(筆者撮影)

客層のほとんどが20代、30代の女性で11時50分ごろから人だかりができる(筆者撮影)

購入の仕方

「CRISP STATION」での購入の仕方は、冷蔵庫の扉を開けて、サラダが入ったボウルを取り出し、備え付けの紙袋やスプーンをピックアップして、自分のオフィス等で食べる時にサラダの容器に付いているQRコードをスマホで読み取り、キャッシュレス決済を行う。同時に領収書がメールで届く。

リモート勤務によって、丸ビルに入居しているオフィスの出社状況は通常の35%と聞いていたが、ランチタイムに「CRISP STATION」では人だかりができる。しかも20~30代の女性ばかり。ターゲットにジャストミートした販売店と言えるだろう。

モバイルオーダー導入の先駆け

「CRISP STATION」を運営するのは、株式会社CRISP(本社/東京都港区、代表/宮野浩史)。同社は2014年12月、東京・麻布十番にサラダ専門店の「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス」を創業。この店は、後に飲食業界に新しい潮流を生み出す存在となる。

代表の宮野氏は、1981年9月生まれ。コーヒーショップチェーンに勤務した後、飲食業で起業。その後「熱狂的なファンをつくる」という経営理念を掲げて「CRISP SALAD WORKS」の立ち上げにのぞんだ。

「飲食業にとって一番大事なことは、働く仲間に、お客さまに、お店に、愛情を持って本気で向き合うこと。これは絶対に忘れてはいけない本質だと思っている」

この信念によって、創業の店は想定の5倍を売り上げた。しかしながら、この繁盛ぶりは「本来の飲食店の姿ではない」と感じるようになった。それは、サラダをつくることだけに一生懸命になり、結果クオリティが下がる、お客さまもイライラする、といった良くない循環に陥っていた。

「例えば、夜中にスーツ姿のお客様が来店したら『まだ、お仕事でしたか? 夜遅くまで大変ですねぇ、今日も一日お疲れさまでした!』というちょっとしたことだけど、そんな一言こそがお店の価値であり競争優位性であり、注文や購買に必要ない無駄な会話や行為こそが、飲食店にしかできない価値を生み出す源泉のはず」

▼クリスプサラダワークス店舗一覧

このように宮野氏は考えるようになり、「機械でできることは全部機械に任せて、人間は人間だけが価値を生み出せるような人間らしい行為に時間を使えるようにしよう」と判断した。そして「儲かったお金はとにかくテクノロジーに投資して、既存の飲食の在り方を全部再定義しよう」という結論に至った。

画像: 「CRISP STATION」の様子。サラダを立体で陳列していて分かりやすい(筆者撮影)

「CRISP STATION」の様子。サラダを立体で陳列していて分かりやすい(筆者撮影)

モバイルオーダーアプリ「CRISP APP」

こうして、2017年にテクノロジーを開発する会社を設立し、同年7月にモバイルオーダーアプリ「CRISP APP」をリリースした。

AppStoreからダウンロード Google Play で手に入れよう

これによるサラダの購入の仕方は、好みのサラダをスマホで事前前注文し、そこで決済を行い、受け取る時間を指定。その時間に店舗に行って、注文していたサラダをピックアップする。店の従業員はお金に触る必要がなくなり、お客も店で注文するために並んだり、出来上がりを待つ必要がなくなった。今日ではコーヒーショップやファストフードをはじめとした飲食店の多くがこの仕組みを採用している。

画像: 冷蔵庫の脇にスプーンと紙袋が置かれている(筆者撮影)

冷蔵庫の脇にスプーンと紙袋が置かれている(筆者撮影)

さまざまな購入動機を捉えていく

「CRISP APP」が発端となり、CRISPでは次々と多様なサービスを展開していく。商品の売り方に関する取り組みについては以下のようになる。

▼クリスプサラダワークスのメニュー一覧はこちら

まず「CRISP BASE(クリスプ・ベース)」を2020年の冬から開始。これはオフィスの中にサラダが食べたい人が5人以上集まることで「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス)」のバーチャル店舗を開設、決まった時間に配送料無料でサラダを届ける(週1回・5食が目安)。このサービスは現在約80カ所で行っている。ちなみに同社では、商品のデリバリーを専門業者に委託していたものを2020年8月より自社デリバリーに切り替えている。

画像: 容器の側面に商品名とサラダの内容が書かれている(筆者撮影)

容器の側面に商品名とサラダの内容が書かれている(筆者撮影)

サラダのサブスクリプションサービス

2021年7月、「CRISP REPLENISH(クリスプ・リプレニッシュ)」を立ち上げた。これはサラダのサブスクリプションサービスで、お客が選んだカスタムサラダを、指定した場所に配送料無料で届ける。週に2回以上注文することでこのサービスが可能となる。

宮野氏はこう語る。

「モバイルオーダーは、コロナ禍の以前から商業施設の関係者の間で話題になっていた。ランチタイムのお弁当売場は、ものすごい行列になっている。お弁当屋さんも、何がたくさん売れているのか把握できないで廃棄が出ている。だから、モバイルオーダーの事前注文は役に立つだろうと。しかしながら、あまり普及しなかった。それはお客様が、ランチタイムに食べるお弁当を、購入するぎりぎりになるまで決めないから。結果、たまたま目にした店舗で『これでいっか』という感じで決める」

この「たまたま目にした店舗で」という購入動機に対応した店舗が「CRISP STATION」ということだ。ちなみに、「CRISP STATION」丸ビル店のサラダは、麻布鳥居坂店で製造している。

画像: 蓋を開けた状態。これらを混ぜ混ぜして食べる(筆者撮影)

蓋を開けた状態。これらを混ぜ混ぜして食べる(筆者撮影)

調理ロボットで製造体制を革新

一方、「CRISP SALAD WORKS」でモバイルオーダーが普及した背景についてこう語る。

「それは、ここのサラダが食べたいというファンが生まれたから。要するに90分前にモバイルオーダーから『指名買い』をして、その時間になったらピックアップするというスタイルが出来上がっていった」

ちなみに、「CRISP SALAD WORKS」のお客の現状は、4割がモバイルオーダーによるもので、オフィス街にある丸の内店では7割を占めている。

画像: スマホで決裁した状態(価格はオープン当初のもの)(筆者撮影)

スマホで決裁した状態(価格はオープン当初のもの)(筆者撮影)

これからはリアル店舗、バーチャル店舗の両方とも満遍なく増やしていくという。リアル店舗は消費者に「CRISP SALAD WORKS」の存在とサービスを知ってもらうための最も効果的な媒体と捉えている。このサービスを体験した人がファンになってバーチャル店舗につながっていく。

サラダ調理ロボットを開発中

「CRISP SALAD WORKS」でファンを培い、彼らの定期購入の場として「CRISP BASE」「CRISP REPLENISH」が存在する。そして、お弁当売場でたまたま見かけて購入するという動機に向けて「CRISP STATION」が存在する。このようにCRISPでは同社の商品の購入パターンを最大化する試みを展開している。

同社では、現在、サラダ調理ロボットを開発中。2022年7月末に店舗導入を目指している。このロボットのサラダ製造能力は1時間当たり60食とのことだが、これは同社の熟練した従業員と同等とのこと。しかし、ロボットは「疲れる」ということがなく、また、客の注文内容を間違えることなく淡々とつくり続けていく。CRISPが続々と挑戦する「再定義」によってフードサービスがどのように変化していくのか大いに注目される。

執筆者のプロフィール

画像: 執筆者のプロフィール

文◆千葉哲幸(フードサービスジャーナリスト)
柴田書店『月刊食堂』、商業界(当時)『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆・講演、書籍編集などを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)などがある。
▼千葉哲幸 フードサービスの動向(Yahoo!ニュース個人)



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