コロナ禍での自炊需要に伴い注目されたセカンド冷蔵庫ですが、新たなアイデアでその市場を確立させるべく動いているメーカーがあります。今回は日立、ハイアールがどのように「セカンド冷蔵庫」を位置づけるか、それぞれの新商品に注目し思惑を探ってみました。
セカンド冷蔵庫に対する日立とハイアールの思惑
先日、シャープが2nd冷蔵庫市場の伸びに疑問を持っている旨、レポートしました。
しかし、新しい冷蔵庫の市場として確立させるべく動いているメーカーもあります。日立とハイアールです。これらは、どんな商品で、この市場を作り上げようと考えているのでしょうか?
日立の思惑
ミニ冷蔵庫「Chiiil(チール)」に見られる考え方
日立がセカンド冷蔵庫として提案しようとしているのが、ミニ冷蔵庫「Chiiil」。定格内容積72L、外形寸法:幅559 ×奥行420 ×高さ750mm。ワンボックスの冷蔵庫です。ビジネスホテルなどになるカウンター机下の冷蔵庫を想像していただければ、当たらずと言えども遠からず。
違うのは、色数の豊富さと、繋ぎ置きできることです。
令和の時代、冷蔵庫はリビングに進出しました。というより、キッチン、ダイニング、リビングの境がなくなり、ダイニング、リビングからでもキッチンが見えるのが当たり前。最近の冷蔵庫は、イケメンでないと売れません。しかし大きな冷蔵庫は、在庫にすると大変。挑戦的な色味などは、一色くらいしか試すことができません。
「Chiiil」は、 ホワイト、ダークグレー、ノルディックという3色に加え、5月以降、グレージュ、トープ、オーク、モス、グラファイト、ブリック、ウェンジの7色が加えられます。これら10色を上下に2つ、左右には数個並べることも可能です。インテリアとしての自由度も高く、セカンドとして使うのは結構面白いと思います。
棚一つ、引き出し二つの中は、温度帯を「セラー」「冷蔵」から選べます。冷蔵は、2・4・6℃から、セラーは、8・12・16℃からセレクトできます。このモデルは、現在クラウドファンディングで先行発売されております。
しかし、気になる点がいくつか。
1つは、価格:76780円(税込)。容量が足らなくなったので、一時的に買ってしまおうということができる価格ではありません。5万円を越すのでかなり躊躇います。
2つめは、やはり冷凍庫がないことですね。冷凍庫自体は必ず必要なので、やはりメインとは言えません。
3つめは発表されていない消費電力です。2台目の冷蔵庫は電気代もよく考えなければなりません。確かに、新しい魅力を持つ冷蔵庫なのですが、もう少し、煮詰めたモデルであると嬉しいです。
ハイアールの考え方と強み
白物家電、世界NO.1の売り上げを誇るのが中国のハイアール。今年、日本での販社 ハイアール・ジャパンは今年で20周年。先日行われた20周年発表会でも、冷蔵庫の発表がありました。しかし、ここの製品より、トップがハイアール製品に言ったコメントがとても参考になります。
彼が言ったのは、ハイアールの生産規模がすごいこと。共通部品で、製品を作れば、かなり安く供給できること。日本市場で水準以上の品質を確保したことです。
ハイアールが作っているのは、完全な工業製品。あまりにもシンプルな佇まいに、いわゆるアート的な要素は皆無dす。美を求めるとすると「用の美」でしょうか。
つまり、普通の冷蔵庫の延長線上のセカンド冷蔵庫、というより小さな冷蔵庫というわけです。
メリットは、もちろん価格です。本体価格が安いと、電気代のサポートにもなります。ここら辺はハイアールの得意分野と言ってもいいでしょう。またハイアールの場合、冷凍庫に力を入れていることも、今はプラス方向へ働くかもしれません。
しかし、物としての魅力は、どうでしょうか?複数持つ場合、人は、別の魅力を持つものを欲します。色、形、性能、どんなことでもいいのです。そばに置いておく理由があるということです。残念ながら、ここはまだ目の肥えた日本人ユーザーを確実揺り動かすことができるレベルには達していないと思います。
最後に
セカンド冷蔵庫は、置き場と維持費が最後まで問題になる家電です。確かに、金額計算だけするとハイアールに軍配が上がると思いますが、コスト軸を外すと、日立の提案は、かなり面白そうです。セカンド冷蔵庫は、結論が出そうで、なかなか出せない、家電の魅力、ずっと付き合っていく家電の条件が問われているように感じます。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。