何種類もの果樹を栽培するのは大変ですが、庭木として植えていた木に食べられる実がついていたら、うれしいサプライズです。実のなる庭木のオリーブの育て方について、書籍『おいしい果樹の育て方』著者で、千葉大学環境健康フィールド科学センター助教の野田勝二さん(農学博士)に解説していただきました。
解説者のプロフィール
野田勝二(のだ・かつじ)
千葉大学環境健康フィールド科学センター・助教。農学博士。
専門は果樹園芸学、健康機能園芸学。柑橘類の研究のほか、園芸療法・園芸福祉に関する研究も行っている。また市民とともに、サスナティブルな街づくりの活動にも参画している
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/角しんさく、はやしゆうこ
オリーブ
モクセイ科オレア属 原産地/中近東〜地中海沿岸
花芽ができるには低温が必要
乾燥や潮風にも強く、やせた土地でも育ちます。鉢植えにする場合には水切れしないように注意しましょう。
花芽が作られるためには冬期に-10℃以下の低温にあう必要があり、冬に低温にならない地域では花芽ができにくくなります。
花は風媒花のため自然に受粉しますが、同じ時期に咲く受粉樹を植えて、両方の花をこすり合わせるようにして人工受粉するとよく実ります。
シンボルツリーにもなる常緑樹
オリーブは旧約聖書に平和と友愛のシンボルとして登場するほど古くから親しまれてきた果樹で、日本へは江戸時代に入ってきた記録があります。
常緑で銀色がかった葉が密に繁って美しく、庭木や鉢植えとして人気があります。
中近東から地中海沿岸が原産地ですが、丈夫で、寒さにも比較的強く、-10℃にも耐えます。
生食はできないので、重曹などで渋抜きしてから塩漬けやピクルスにすると歯ごたえのある味が楽しめる。渋抜きに苛性ソーダを使う場合は扱いに注意を。
栽培カレンダー
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
1 植えつけ・仕立て方
樹形によって、枝が比較的真っ直ぐ上にのびる直立性タイプと、分枝した枝がななめ上に伸びる開張性タイプがあるので、植えるスペースを考えて品種を選ぶとよいでしょう。
1本仕立て
直立性タイプの品種に向く仕立て方。地上から2m程度のところで主幹を切って高さを制限し、幹から出る主枝は上を切り返す。
2本仕立て
開張性タイプにおすすめ。主幹を低い位置で切り、主枝を2〜3本残して枝を整理する。分枝しやすいので不要枝を切って風通しや日当たりをよくする。
実のつき方を知ろう!
前の年に伸びた枝の中間あたりに花芽がつく。枝は先端を切っても花つきや実つきに影響しないので、伸びすぎた枝は先端を切る。
ひとつの花芽には20〜40個の花が房になって咲くので人工授粉する。実は摘果で1房に1〜3個にする。
2 摘果・収穫
品種の違う木を2本、近くに植えると実つきがよくなります。
1か所に実が集まってつくので、たくさん実がついたら養分の取り合いにならないように、大きめのものを1房に1〜3個残し、ほかは摘み取ります。
おすすめの品種
品種名 | 受粉樹の必要 | 花粉 | 特徴 |
マンザニロ | 必要 | 花粉あり | 隔年結果が少なく、実つきがよい。実はピクルスや塩漬けに向く。 |
ネバディロ・ブランコ | 必要 | 花粉あり | 花粉が多く、代表的な受粉樹用の品種。実つきもよくオイルに向く。 |
ルッカ | 不要 | 花粉あり | 隔年結果しやすい傾向あり。さかんに成長し実つきもよい。実はオイルなどに向く。 |
ミッション | 必要 | 花粉あり | 自家受粉しやすい。直立性で大木になるので、枝を低く切る。実は塩づけに向く。 |
レッチーノ | 必要 | 花粉あり | 丈夫で育てやすい。比較的実が大きくて実つきもよい。オイル、塩漬けに向く。 |
フラントイオ | 必要 | 花粉あり | 受粉樹にも向く。実つきがよく、実はオイルに向く。 |
ピッチョリーネ | 不要 | 花粉あり | 花粉が多く、1本でも結実する。受粉樹に向く。実はピクルスなどに向く。 |
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なお、本稿は書籍『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。果樹を育てたいけれど、どんなものがいいのか…。基本的には自分の好きなもの、食べたいものを選ぶのがいちばんです。だた果樹栽培に慣れていない人は、庭の広さや環境、手間をかけられる時間などを考慮して育てやすそうなものを選ぶのも一案です。本書では、苗木の選び方、幼木から成木までのお世話のコツ、肥料や病害虫対策など、果樹栽培の基本的な知識や、収穫した果実の保存方法とレシピなど、豊富な写真とともに紹介しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(8)「【果樹】ブルーベリーの育て方 鉢植えでも育てられる初心者向けの果樹」の記事もご覧ください。