丈夫で育てやすく、病害虫も少ないブルーベリーは初めての果樹栽培に適しています。コンパクトに育てやすく、ベランダでの鉢植え栽培でも十分に楽しめます。より多く収穫するためには、開花期が近い同じ系統の別品種を近くに植えると結実しやすくなります。ブルーベリーの育て方について、書籍『おいしい果樹の育て方』著者で、千葉大学環境健康フィールド科学センター助教の野田勝二さん(農学博士)に解説していただきました。
解説者のプロフィール
野田勝二(のだ・かつじ)
千葉大学環境健康フィールド科学センター・助教。農学博士。
専門は果樹園芸学、健康機能園芸学。柑橘類の研究のほか、園芸療法・園芸福祉に関する研究も行っている。また市民とともに、サスナティブルな街づくりの活動にも参画している
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/角しんさく、はやしゆうこ
ブルーベリー
ツツジ科スノキ属 原産地/北アメリカ
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品種によって白やピンク色の花を咲かせる。
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若葉は美しい黄緑色、秋には鮮やかな紅葉に。
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鉢植えでも育てられ、初めての果樹栽培に
丈夫で育てやすく、病害虫も少ないブルーベリーは初めての果樹栽培に適しています。実だけでなく、花や紅葉も魅力です。コンパクトに育てやすく、ベランダでの鉢植え栽培でも十分に楽しめます。
品種は豊富で冷涼な気候を好むハイブッシュ系と、温暖な気候を好むラビットアイ系に分類されます。1本で実がつかないことはないですが、より多く収穫するためには、開花期が近い同じ系統の別品種を近くに植えると結実しやすくなります。
栽培カレンダー
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1年間の成長 & お世話ポイント
▼花期の近い同系の別品種を近くに植える
▼酸性の土に植えつける
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おすすめの品種
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▼スパルタン
粒ぞろいがよく、生食、加工ともに向く。暑さ、寒さに比較的強い。裂果も少ない。
▼バークレイ
やせた土地でもたくさん実がつく。酸味が少なく風味がよい。裂果は少ないが、熟すと落果する。
▼ダロウ
枝が多く出て粒ぞろいがよい。さわやかな風味でジャムなどの加工品にも向く。十分に熟してから収穫する。
▼オニール
コンパクトに育てやすい。ジューシーで甘み、香りも強い。サザンハイブッシュ系の定番品種。ブルーム(白い粉)は少ない。
▼フローダブルー
樹勢が強くないので鉢植えにも向く。ピンク色の花が楽しめる。花が多くつきすぎたときは摘果を。風味がよい。
▼サンシャインブルー
赤いつぼみとピンク色の花が美しい。果実が小さい分、たくさん収穫できる。鉢栽培にも向く。しっかりした甘みと風味が魅力。
▼ブライトウェル
果肉は柔らかく、甘み、香りは強い。裂果は少ない。実つきがとてもよいので翌年の実が減りやすく、花芽を調整するとよい。
▼ホームベル
実つきがよい。ラビットアイ系の定番品種。ひこばえが発生しやすいが丈夫で育てやすい。
▼ティフブルー
晩生の定番品種。雨に当たると裂果しやすい。樹勢が強く実つきもよい。酸味があるため完熟してから収穫する。
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
1 植えつけ
関東以南なら10~12月に、以北なら3月に植えつけます。
庭植えの場合は日当たりのよい場所に。酸性で水はけのよい土が必須です。酸性でない土で栽培すると、肥料を吸収しにくく、実つきも悪くなります。
1本では実をつけにくいので、同じ系統の別品種のものを近くに植えましょう。
庭植え
(1)直径・深さとも50cmの植え穴を掘る。
(2)掘り上げた土にピートモスと肥料を混ぜ込む。
(3)植え穴に(2)を埋め戻す。
(4)深植えにならないようにして、苗木を植える。
(5)周囲に水鉢を作る。
(6)支柱を立てて固定する。
(7)たっぷり水やりをする。
(8)乾燥しやすい場所、氷点下になる場所では、ワラなどをかけておく。
植えつけ後、高さ30~40cmのところにある葉芽の1cm上で切り返し、発芽を促す。
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鉢植え
(1)8号以上の鉢を用意し、鉢底石を敷く。
(2)赤玉土とピートモスを同量混ぜたものを(1)に入れる。ブルーベリー専用の培養土を使ってもよい。
(3)苗木を植える。
(4)必要なら支柱を立てて固定する。
(5)たっぷり水やりをする。
(6)株元をワラなどで覆っておく。
植えつけ後、高さ30~40cmのところにある葉芽の1cm上で切り返し、発芽を促す。
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2 仕立て方
ブルーベリーは株元から新しい枝が発生してくるので、自然に株仕立ての樹形となっていきます。
幼木
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枝が伸びる
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勢いのよい枝を数本残す
成木
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実のつき方を知ろう!
前年に伸びた枝の先端付近に花芽(純正花芽)がついて、翌年の春に開花し、実がなります。
実がなった枝先は収穫後に枯れてしまうので切り詰めておきます。
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前年に伸びた枝の先端付近に花芽がつく。
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房状に花が咲き、実になる。葉芽からは新しい枝葉が伸びる。
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実がついた枝先は枯れ、新しく伸びた枝の先端付近に花芽がつく。
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
3 摘花・人工授粉
1つの花芽から5~10個の花が房状に咲きます。
植えつけて1~2年の幼木に実をならせると、その後の生長が悪くなるため、この間に花がついたときは摘花を。
また、たくさん花がつきすぎたときも適度な数に摘花をするとよいでしょう。
摘花
粒の大きい実にしたいときは、摘花を。密集している部分の花を間引くとよい。
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人工授粉
通常、受粉は虫によって行われるが、たくさん実らせたいときや虫の少ない都市部では人工授粉をするとよい。
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筆先などに同じ系統の異なる品種の花粉をつけ、花の中でかき混ぜるように動かす。
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4 収穫
花が咲いた順に熟していきます。実が大きくなってブルーになってから4~5日たったころが収穫適期。熟していれば手でつまんで軽くひねるとすぐに取れます。
結実後は水切れしないよう注意し、鳥被害が心配されるときはネットをかけましょう。
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白い粉は「ブルーム」と呼ばれ、果実を雨や乾燥から守っている。新鮮な証拠なので、このまま食べても大丈夫。
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軸の根元が実と同じブルーになっていれば、完熟している。
病害虫
ほかの果樹に比べてひどい病害虫被害はあまり見られません。まれにイラガ、ミノガなどが葉を食害することも。見つけ次第、捕殺します。
▼灰色かび病
花、幼果、若い葉や芽に感染する。低温多湿な年に多い。灰色の菌糸で覆われて褐色になってやがて枯れる。剪定で風通しをよくしておく。
▼イラガ
葉脈を残して葉を食害する。幼虫には毒を持ったトゲがあり、触れると電気が走ったような痛みを伴います。駆除の際は必ず手袋をつける。
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
野田プロ集中講座 枝を充実させるには
花芽を増やしたいときは夏季に勢いよく伸びた枝の先端を切って、脇芽の生育を促します。
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1年後
▼切り返さないと
切り返さずにおくと、葉芽から先があまり伸びずに花芽の総量が少なくなる。
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▼切り返すと
切り返すと、葉芽がしっかりと生長し、その先にたくさん花芽がつく。
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5 冬季剪定
本格的な剪定は冬の休眠期に。慣れないときは花芽と葉芽の区別がつくようになってから行うと安心です。
ブルーベリーは主枝が複数あるので、バランスをとりながら枝を切り取ることが大切です。
花芽が多いと実がつきすぎて小さくなるので、先端を切り詰めて数を減らします。
1年目
分岐を促すために、充実した枝先を1/2程度の位置で切り返す
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2-3年目
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4年目以降
▼(1)枝の先端を切る
長く伸びた枝は、根元から3/4程度残して先端を切る。
▼(2)古い枝を切る
主枝を新しい枝に更新するため、これまでの主枝は枝のわかれ目の位置で切る。
▼(3)新しい枝の先端を切る
新しく主枝にする枝を充実させるために、枝の先端を切る。
▼(4)ひこばえを根元から切る
不要なひこばえ、古くなったなったひこばえは根元から切っておく。
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なお、本稿は書籍『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。果樹を育てたいけれど、どんなものがいいのか…。基本的には自分の好きなもの、食べたいものを選ぶのがいちばんです。だた果樹栽培に慣れていない人は、庭の広さや環境、手間をかけられる時間などを考慮して育てやすそうなものを選ぶのも一案です。本書では、苗木の選び方、幼木から成木までのお世話のコツ、肥料や病害虫対策など、果樹栽培の基本的な知識や、収穫した果実の保存方法とレシピなど、豊富な写真とともに紹介しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
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※(7)「【果樹】病害虫への対処法 主な病気と害虫一覧(写真)|薬剤のタイプと選び方」の記事もご覧ください。