〈ガッツリ系新業態〉築地銀だこがコロナで進化!まれに見る成功店をレポート

グルメ・レシピ

たこ焼チェーンの「築地銀だこ」を展開するホットランドでは、コロナ禍にあって、2020年にはリアル店舗の約7割が休業するなど苦難を強いられたが、それをバネとして、さまざまな施策に取り組んだ。まず、冷凍たこ焼の増産と販売チャネルの開拓。ロードサイド立地での店舗展開。主食業態の開発。そして「日本再生酒場」を展開する「い志井グループ」を事業承継して、グループ会社で展開している酒場事業を多様化。こうして、たこ焼、主食事業、酒場事業という企業グループを整えた。

コロナ禍で7割休業

たこ焼は、気軽に食べられる「和のファストフード」である。ショッピングモールやイベント会場といった人が集まる場所では、これを販売する「築地銀だこ」をよく見かける。この“人が集まる場所”というところが、このコロナ禍で大きな影響を被った。

「築地銀だこ」は、国内に約500店舗を展開していたが、2020年のコロナ禍にあって、そのうちの7割を休業。また、酒場業態を100店舗展開していたが、それも1カ月半の間休業した。大幅な売上ダウンである。

「築地銀だこ 本店」の店頭。本店は東京・築地の交差点角に構えている(筆者撮影)

このように、強烈な逆風を受けながら、これらを展開するホットランド(本社/東京都中央区、代表/佐瀬守男)は、売上をつくる活路を模索し見出していった。

冷凍たこ焼の販売

それはまず、「冷凍たこ焼の製造・販売」。
そもそもホットランドでは、冷凍たこ焼を製造・販売を行っていたが、コロナ禍で冷凍たこ焼の需要が拡大することを予測し、休業した実店舗の従業員を群馬県桐生市の自社工場に集結させ、冷凍たこ焼の製造を集中して行った。桐生市内のホテルを貸し切り、工場はフル稼働で、延べ人数70~80人がこの作業を行った。

冷凍たこ焼の販売は、大手コンビニチェーンに直談判したことによって、それが叶えられた。これによって製造数増、売上増となった。桐生の工場だけでは間に合わなくなり、ベトナムに工場をつくり、冷凍たこ焼は、日本のみならず海外への輸出も手掛けるようになった。

たこ焼の販路開拓

次に、「新立地の開拓」。
多くの商業施設内「築地銀だこ」店舗が休業になってしまったことから、2020年の5月ごろから、ロードサイド型店舗を郊外でやろうと動き出した。そこから5か月後の10月に東京・立川の五日市街道沿いに、このタイプの1号店を出店した。

同社では、東日本大震災の後に、石巻でトレーラーハウスを使用してたこ焼の提供を行った。当時のトレーラーハウスを20台近く、桐生にある工場で保有していたことから、出店までの時間を短縮させるという趣旨で、それを活用して店をオープンした。

すると、テイクアウト需要があることが分かり、たこ焼以外の商品開発を行なった。そこで、たこめし、焼そば、たい焼を販売したところ好調となり、月商1000万円を超える月もあった。そこで、出店はロードサイドにシフトして、コロナ禍の2年間でこのタイプの店を10店舗出店した。

新規に主食業態「野郎めし」オープン

そして「主食業態の開発」。
主要業態「築地銀だこ」の商品は、客層が幅広く、さまざまな時間帯で需要がある“和のファストフード”である。同社では、この他に主食業態をつくる構想を温めていた。そこで「野郎めし」という主食業態を開発した。コンセプトは、豪快で、ボリュームがあり、手軽な価格帯で、おなか一杯食べてもらうというもの。

昨年11月、群馬県太田市内にオープンした主食業態の「野郎めし」(筆者撮影)

昨年11月、群馬県太田市の国道50号線沿いに、その1号店をオープンした。敷地はコンビニ跡地で1300坪と広大であることから、大型トラックやトレーラーも駐車することが可能。ここで「しょうが焼」をアピールしたことによって、ドライバーだけではなく、周辺に住むサラリーマンやOL、ファミリーなども連日訪れるようになり、稀に見る成功店となった。ちなみに「しょうが焼定食」の並盛は748円(税込)である。これらの定食には「大盛」「野郎盛」もあり、“ガッツリ系”の要望に応えている。

「野郎めし」の代表的なメニューは「しょうが焼定食」で大盛、野郎盛とガッツリ系にも応えている(ホットランド提供)

名店「日本再生酒場」を事業承継

さらに「酒場事業の強化」。
ホットランドでは、これまでグループ企業が「銀だこ酒場」「おでん屋たけし」「ごっつい」といったブランドで酒場業態を70店舗ほど展開していたが、昨年12月に「い志井グループ」を事業承継して、酒場事業に組み入れた。

い志井グループの「日本再生酒場」は、東京・新宿三丁目、末広通りの賑わいの発祥となった業態である。牛や豚の新鮮なホルモン焼が主力商品であり、元気のよい従業員が醸し出すいなせな雰囲気が売り物で、同社代表の佐瀬氏は、酒場事業を推進する上で「日本再生酒場」から多くのことを学んだという。

昨年10月、東京・秋葉原にオープンした「秋葉原ホルモン横丁」は昭和レトロを演出(筆者撮影)

佐瀬氏は、い志井グループ創業者で代表の石井宏治氏と交流するようになり、コロナ禍で厳しい経営を強いられるようになった石井氏から事業承継についての相談を受けるようになり、同グループを引き継ぐことを決断した。

「もつ焼」という強烈なコンテンツ

これによって、同社の酒場事業はい志井グループが培ってきた仕入れやノウハウを使うことができるようになり、酒場事業全体のクオリティがアップしてきている。

これらの酒場は「〇〇専門店」というもの。これまで「たこ焼とハイボール」や「おでんと酒」という専門性のはっきりとした店舗を展開してきたが、ここに「もつ焼」という強烈なコンテンツが加わった。

今年に入り、同社ではグループ会社を再編。
「築地銀だこ」の同社が中心となり、主食事業のホットランドネクステージ、酒場事業のオールウェイズをつくった。さらに、ファインインターナショナルという、店舗設計や内装を事業とする会社をグループ化し、ここでは、これからECサイトの運営をしていく計画だ。ここからは「日本再生酒場」のもつ煮込み、牛すじ煮込みや、この間育った「たこめし」といった商品を販売していくという。

マインドを引き継ぐ「石井学校」

さて、このオールウェイズでは早速斬新な動きを見せている。
群馬県桐生市に「日本再生酒場」の地方版を初めてつくり、3月1日にプレオープンした。場所は、JR桐生駅から徒歩10分、かつての繁華街で、今日ではシャッター通りとなっている路面。地元の酒、地元の食材、地元の取引先など、地元にこだわった独自のメニューを提供していくという。

この3月にオープンした「日本再生酒場 桐生編」(群馬県桐生市)。周辺はシャッター街だが存在感を放っている(筆者撮影)

同店の家賃は数万円で、都心の飲食店街のそれと比べると著しく低く、損益分岐点が抑えられる。このようなことから、オールウェイズでは、人口10万人の桐生市と匹敵するような地方都市で「日本再生酒場」を展開していくことを想定している。

「日本再生酒場 桐生編」は15時にオープン。夕方になるにしたがって店内はにぎわっていく(筆者撮影)

この桐生の店のもう一つの目的は「教育の場」。
そこで、以下のような構想を描いている。ホットランドグループでは、将来独立を目指して入社してくる人がいることから、前オーナーの石井氏に店に入ってもらい「石井学校」とする。石井氏の元で約1カ月間「商売」についてみっちり勉強する。そこで鍛えられた人物が、同社グループの店長になる。また独立のための登竜門とする。

3月1日のソフトオープンの日に、い志井グループの創業者である石井宏治氏(写真右端)が焼き台に立ち、いなせな雰囲気が漂っていた(筆者撮影)

まとめ

ホットランドグループは「築地銀だこ」で成長し主力業態となった。このターゲットはファミリーで、テイクアウトが主軸となる強い業態である。これが、コロナ禍によって冷凍たこ焼の販路をつくり、郊外ロードサイド立地での可能性を引き出した。そして「野郎めし」によって、“ガッツリ系”を引き寄せ、主食事業の活路を見出した。酒場事業では「日本再生酒場」が加わることで、事業内容を深化させるようになった。

このように、ホットランドグループにとって、コロナ禍は、より一層強い体質をつくり上げる大きなきっかけとなっている。

執筆者のプロフィール

文◆千葉哲幸(フードサービスジャーナリスト)
柴田書店『月刊食堂』、商業界(当時)『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆・講演、書籍編集などを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)などがある。
▼千葉哲幸 フードサービスの動向(Yahoo!ニュース個人)

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