ペットにも自律神経の不調があるのでしょうか?ネコやイヌなどの動物でも、自律神経がはたらいて体を自然に調節しているというメカニズムは人間と変わりません。ペットの自律神経の不調について、書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 自律神経のしくみ』著者で埼玉医科大学名誉教授の荒木信夫さんに解説していただきました。
解説者のプロフィール
荒木信夫(あらき・のぶお)
埼玉医科大学名誉教授、よみうりランド慶友病院院長。1978年慶應義塾大学医学部卒業。1982年慶應義塾大学大学院医学研究科修了。1988年米国ペンシルバニア大学脳血管研究所留学。日本鋼管病院内科医長、埼玉医科大学神経内科講師、同助教授、同教授、埼玉医科大学医学教育センター長、同副医学部長を経て、2019年埼玉医科大学を定年退職。2021年より、よみうりランド慶友病院院長、現在に至る。日本自律神経学会理事長を務めている。
本稿は『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 自律神経のしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/平松 慶、北嶋京輔、栗生ゑゐこ
ペットにも自律神経の不調がある?
人間と同じように、ストレスや気温の寒暖差などで不調が起こる!
ネコやイヌなどの動物でも、自律神経がはたらいて体を自然に調節しているというメカニズムは変わりません。人間以上の長い野生の歴史を考えれば、人工的で不自然な生活を送るようになったペットのほうが、自律神経への負担は大きいかもしれません。自律神経の不調は、ネコやイヌの場合、特に「キー・ガスケル症候群(自律神経異常症)」と呼ばれます。
自律神経が乱れる原因には、人間同様にストレスや寒暖差などが挙げられます。ストレスの原因は、どこかに預けられる、引っ越して家が変わる、怒鳴られたりするなどさまざまです。イヌは鼻がきくぶん、人にとっては心地よいアロマがストレスの原因になっているなど、動物ならではのストレスもあるでしょう。
症状は人間とほとんど変わりません。元気がない、食欲がない、体重が減る、たびたび嘔吐する、下痢や便秘をする、瞳孔が常に開いているなどです。
ペットも人間も、自律神経の不調は同じ
▼キー・ガスケル症候群のおもな症状
当てはまる症状があれば、チェックしてみよう。複数該当した場合は、獣医に相談を。
▼元気がない
▼食欲不振
▼便秘
▼食後の嘔吐
▼涙の分泌減少とドライアイ
▼唾液の分泌減少と口臭
▼散瞳(瞳孔が常に開いている)
▼瞬膜(眼球を保護している透明または半透明の膜)の露出
▼ 腹部の膨張
▼食道アカラシア
▼徐脈(脈が遅くなる不整脈)
ストレスをやわらげるためには、ペットをよく観察し、ストレスの原因を探ることが先決です。対症療法としては、副交感神経のはたらきを促進したり、症状を軽減する薬剤を投与する方法があります。かかりつけの獣医に相談して、治療をしていきましょう。
▼キー・ガスケル症候群の治療法
副交感神経のはたらきを促進する薬剤を投与したり、ドライアイの場合は目薬をさすなど、症状に対する治療をする対症療法を中心に行う。
食道アカラシアの場合は、うまく吐き出せなかったりすると誤嚥性肺炎を起こすこともあるため、上を向くようにエサを置いて食べさせる。
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なお、本稿は書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 自律神経のしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。近年、「なんとなく体の調子が悪い」「気分がすぐれない」といった理由のわからない不調の原因として、自律神経の乱れがフォーカスされるようになってきました。自律神経がはたらくことで体の組織は活動しているので、体の司令塔ともいえる自律神経が乱れると、体のあちこちに不具合が起きてしまいます。つまり、自律神経を正常に保つことこそが、病気を予防し健康的な生活をおくるうえで最重要課題ともいえます。本書は、豊富なイラスト図解とともにオールカラーで自律神経のしくみをやさしく解説しています。