〈2022年 中古カメラ買うなら〉おすすめの旧型デジタルカメラ4選 プロが実際に使って感じた魅力的なモデル

レビュー

中古カメラ店を訪れたり、ネット上で昔のカメラを検索すると、興味深い旧製品を見つける事ができます。単純に実用品として魅力的だったり(性能と価格のバランス)、現行製品とは異なる機構やデザインに惹かれたり。魅力を感じるポイントは人ぞれぞれでしょうが……。以前の記事(2021年12月31日公開)では、2011年と2012年に発売された4機種を"おすすめカメラ"として紹介しました。今回は、それから2年後の2013年と2014年に発売されたカメラの中から、4機種のおすすめカメラを紹介したいと思います。
(※以下、おすすめ1~4の番号は、順位を表わすものではありません)

〈中古カメラ買うなら〉(2021年12月31日公開の記事)は、こちら

執筆者のプロフィール

吉森信哉(よしもり・しんや)

広島県庄原市生まれ。地元の県立高校卒業後、上京して東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)に入学。卒業後は専門学校時代の仲間と渋谷に自主ギャラリーを開設し、作品の創作と発表活動を行う。カメラメーカー系ギャラリーでも個展を開催。1990年より、カメラ誌などで、撮影・執筆活動を開始。ライフワークは、暮らしの中の花景色、奈良大和路、など。公益社団法人 日本写真家協会会員。カメラグランプリ2022選考委員。

〈おすすめ1〉パナソニック LUMIX GM5

LUMIG GM5+LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.。そして、LUMIX G VARIO 35-100mm / F4.0-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.。この超小型軽量な組み合わせは、気ままな旅にピッタリだった。

ファインダー搭載機なのに"手のひらサイズ"

マイクロフォーサーズ規格では、小型軽量を売り(特長)にする製品が数多くあります。2013年11月に発売されたパナソニック LUMIX GM1などは、その最たる例です。シャッターとフラッシュ機構、センサーユニット、メイン基盤などの見直しで、レンズ一体型コンパクトデジカメ並の"手のひらサイズ"ボディを実現しました。

今回おすすめする「パナソニック LUMIX GM5」は、そのGM1の約1年後に発売された兄弟モデルです。GM1と同様、剛性感と軽さを備えたマグネシウム合金ボディが採用され、素材・形状・加工など、パーツの細部までデザインを追求。上面のダイヤルにはアルミの削り出し処理が施されています。

このように、基本的な外観デザインや作りはGM1を踏襲していますが、GM5は、内蔵フラッシュではなく電子ビューファインダーを搭載した製品です。約116万ドット相当の電子ビューファインダーにより、明るい屋外などでも被写体や構図をしっかり確認しながら撮影できるのです。

フラッシュ内蔵のGM1(後継モデルのGM1Sも含め)を選ぶか? 電子ビューファインダー搭載のGM5を選ぶか? GMシリーズに興味を持つ人の間で、その意見は分かれていました。私の場合、長年フィルム一眼レフに慣れ親しんできましたし、老眼が気になる世代でもあります。そのため、迷わずGM5を選択して購入しました。

コンパクトデジカメ並の"手のひらサイズ"でも、ボディの作りや仕上げは高品位。そして、ファインダーを覗く本格的な撮影スタイル……。それが「LUMIX GM5」の魅力です。

パナソニック LUMIX GM5のココが魅力!!

◆小型化を追求したボディにファインダーを搭載
◆マグネシウム合金ボディの採用や、パーツの細部までデザインを追求した高品位仕上げ
◆「電子水準器」や、MF時の「ピーキング」など、作画機能も充実

ライフワークの地、奈良県の明日香村での撮影。GM1と同様、GM5もシャッター機構の小型化のために、機械的な先幕のない独自の電子先幕シャッターを採用。1/500秒から高速側は電子シャッター。という制約はあるが、1/500秒までの電子先幕シャッターの感触・作動音は、かなり好みである!
パナソニック LUMIX GM5 LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.(22mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/160秒 -1.0補正 WB:オート ISO200

これも明日香村で撮影したもの。町中から岡寺(西國七番霊場)へ向かう参道の入口近くで、夕方の光と影が作り出す光景を狙う。電子水準器も活用しながら、電子ビューファインダーでじっくりと構図を決めた。
パナソニック LUMIX GM5 LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.(12mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/320秒 -0.3補正 WB:オート ISO200

SPECS Panasonic LUMIX GM5

形式:ミラーレスカメラ 撮像センサー/有効画素数:4/3型Live MOSセンサー/1600万画素 記録媒体:SD,SDHC,SDXC(UHS-I対応) ファインダー倍率/視野率:約0.92倍/約100% モニター:3.0型/約92万ドット ISO感度(拡張含む):100~25600 連続撮影速度:約5.8コマ/秒(メカシャッター/H/AFS時) サイズ(幅×高×奥)/質量:約98.5×59.5×36.1mm/約211g(バッテリーとSDカード含む) 発売年月:2014年11月 発売時の参考価格:10万円前後(レンズキット DMC-GM5K)

〈おすすめ2〉ニコン D750

軽量コンパクトな望遠ズームレンズ「AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR」を装着したニコン D750。全域F2.8の大口径望遠ズームを装着したD800シリーズとはひと味違う、軽快な組み合わせである。

FXフォーマット初のチルト式モニター搭載機

ニコンFXフォーマット(35ミリ判フルサイズ)のデジタル一眼レフは、プロフェッショナル仕様のD一桁シリーズと、ハイアマチュアも視野に入れたD三桁シリーズに大別できます(※)。2012年9月発売の「D600」は、D三桁のフルサイズ機で最初に"小型軽量"をコンセプトに打ち出した製品でした。

おすすめする「D750」は、そのコンセプトを継承する軽快なフルサイズモデルです。外装が骨格を兼ねるモノコック構造や、炭素繊維複合素材とマグネシウム合金の採用などで、軽さと同時に高い強度と剛性も確保。また、統合基板と撮像ユニットのほぼ同一面の配置や、駆動系ユニットの最適な配置などにより、ボディの大幅な薄型化も実現しています。

そして、ニコンFXフォーマットのモデルで、初めてチルト式可動液晶モニターが採用されました。上向き最大約90度から下向き最大約75度まで。この範囲内で自由に角度調整できるので、カメラのポジションやアングルを変化させたライブビュー撮影が可能になるのです。

中古市場でカメラを探す場合、発売時期・仕様・販売価格などのバランスが重要になります。発売日が2008年7月発売のD700は、古めの製品でセンサー有効画素数も1210万画素と、現在では物足りなさを感じます。2017年9月発売のD850は、名機の誉れ高い高画素機ですが、そのぶん中古相場もかなり高めです。

その点、D750は小型軽量のコンセプトを継承し、センサー有効画素数も2432万画素と十分。チルト式可動液晶モニターの採用も、実用性を高める重要なポイントです。しかも、中古品の販売価格はD850の半額程度とリーズナブル。そういったトータルバランスの高さが光ります。

(※)35ミリ判フルサイズを採用するのは、D一桁シリーズはD3以降の製品。D三桁シリーズは、D100、D200、D300、D300S、D500以外の製品(三桁の数値と発売順は一致しない)。その他、2013年発売のDf。

ニコン D750のココが魅力!!

◆小型軽量ボディに、機動性を高めるチルト式液晶モニターを搭載
◆モノコック構造の採用により、薄型かつ高強度のボディを実現
◆仕様・性能のバランスがハイレベルで、中古市場での価格もリーズナブル

紅白の梅を背景に、サンシュユの鮮やかな黄色が目を引いた。D750と全域F4の望遠ズームの組み合わせは「フルサイズ一眼レフ+高性能レンズは、携行時の負担が大きそう」という印象を覆してくれる。
ニコン D750 AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR(200mmで撮影) 絞り優先オート F4 1/200秒 +0.7補正 WB:晴天 ISO125

多くのカモメが舞う海辺の公園で、それらが手すりに止まる瞬間を狙う。カメラを大きく下げてレンズを上に向ける事で、手すりやカモメがダイナミックに見せられる。モニターのチルト機構は、こういった撮影で威力を発揮する。
ニコン D750 AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR(24mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/250秒 WB:オート1 ISO100

SPECS Nikon D750

形式:デジタル一眼レフ 撮像センサー/有効画素数:35mm判フルサイズCMOSセンサー/2432万画素 記録媒体:SD,SDHC,SDXC(UHS-I対応) ファインダー倍率/視野率:約0.7倍/約100% モニター:3.2型/約122.9万ドット ISO感度(拡張含む):100~51200 連続撮影速度:最高約6.5コマ/秒 サイズ(幅×高×奥)/質量:約140.5×113×78mm/約840g(バッテリーとSDカード含む) 発売年月:2014年9月 発売時の参考価格:23万円前後

〈おすすめ3〉富士フイルム X-M1

標準ズームレンズ「XC 16-50mm F3.5-5.6 OIS」が付属するレンズキット。発売当時の価格は8万5000円前後とリーズナブル。自分が購入したこの中古品は、4万円台とさらにリーズナブルだった。

X-Trans CMOSセンサーを採用する小型軽量の実力派モデル

富士フイルムのXシリーズには、ハイエンドからエントリーまで、いろんなタイプの機種がラインナップされています。そのグレードの大きな分岐点になるのが「センサーがX-Trans CMOSセンサーか否か」という点です。X-Trans CMOSセンサーは、富士フイルム独自のカラーフィルター配列により、光学ローパスフィルター(※)なしでモアレや偽色を抑制します。それによって、35mmフルサイズに匹敵する高解像力を実現するのです。

このX-Trans CMOSセンサー、現行製品の中では、エントリークラスのX-T200とX-A7以外の機種に採用されています(X-Trans CMOS 4センサー、X-Trans CMOS 5 HSセンサー、など)。

おすすめする「X-M1」は、レンズ交換式Xシリーズの3番目にあたり、当時はX-Trans CMOSセンサーを採用するモデルだけが発売されていました(翌年発売のX-A1で通常のCMOSセンサーを採用)。そのため、X-M1のニュースリリースでも「小型軽量でフルサイズセンサー搭載機に匹敵する高画質を実現!」と謳われています。そして、長年の銀塩フィルム開発で培ってきた画質設計技術により、独自の美しい色再現も実現します。この点を高く評価するユーザーも多いのです。

先発の2モデル(X-Pro1、X-E1)とは違い、X-M1にはファインダーが搭載されていません。その点をどう評価するかは、人によって違うでしょう。ですが、それによって軽快な小型軽量ボディが実現したのです。また、先発の2モデルにはないチルト式可動液晶モニターの採用も見逃せません。

X-M1以降、X-“M”の名前を継ぐ製品は発売されていません。小さくて軽く、機動性が高く、写りは一級品! そんなX-M1は"隠れた名機"と呼びたくなる実力派モデルです。

(※)センサー前面に取り付けられる、モアレや偽色を抑えるための光学フィルター。ただし、解像性能が若干低下するというデメリットもある。

富士フイルム X-M1のココが魅力!!

◆フルサイズ載機に匹敵する高画質を実現するX-Trans CMOSセンサーを採用
◆長年のフィルム開発で培われた、独自の美しい色再現を実現
◆小型軽量設計のボディに、機動性を高めるチルト式可動モニターを搭載

京都市内を流れる鴨川沿いの風景。これといって色味のない景色だったが、爽やかな青空の色が印象に残った。富士フイルムのデジタルカメラは、こういった自然風景の色再現が実に見事である。
富士フイルム X-M1 XC 16-50mm F3.5-5.6 OIS(16mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/400秒 WB:オート ISO200

神社の境内で、朱塗りが鮮やかな本殿に近づき、16mm(フルサイズの24mm相当)の広角域で、遠近感を強調するように撮影。その描写に不満はないが、X-M1には電子水準器が搭載されていない。そこが数少ないX-M1の不満点である。
富士フイルム X-M1 XC 16-50mm F3.5-5.6 OIS(16mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/240秒 -0.3補正 WB:オート ISO400

SPECS FUJIFILM X-M1

形式:ミラーレスカメラ 撮像センサー/有効画素数:APS-Cサイズ X-Trans CMOSセンサー/1630万画素 記録媒体:SD,SDHC,SDXC(UHS-I対応) ファインダー:- モニター:3.0型/約92万ドット ISO感度(拡張含む):100~25600 連続撮影速度:約5.6コマ/秒 サイズ(幅×高×奥)/質量:116.9×66.5×39mm/約330g(電池とカード含む) 発売年月:2013年7月 発売時の参考価格:8万5000円前後(レンズキット)

〈おすすめ4〉カシオ EXILIM EX-10

"攻める!" そんなキャッチフレーズを付けたくなる、エッジの効いたシャープなEXILIM EX-10ボディ。コントロールリングの菱形ローレット加工や、自動開閉式のレンズキャップも、シャープな印象を強めてくれる。

高品位ボディに、世界初の2軸ブラケティング機能を搭載

1995年にカシオは、世界で初めて液晶モニターを搭載したデジタルカメラ「QV-10」を発売しました(センサーは総画素数25万画素のCCD)。その後も同社は、EXILIMシリーズの初代で世界最薄カードサイズの「EXILIM EX-S1」や、フル画素60コマ/秒・1200fpsハイスピード動画撮影を実現した高倍率ズーム機「EXILIM PRO EX-F1」など、デジタルカメラ史に名を残すモデルを、数多く発売してきました。

2013年に発売された「EXILIM EX-10」は、フラッグシップモデルに位置付けられた製品で、他モデルよりも大きめのCMOSセンサー(1/1.7型の裏面照射型)が採用され、開放F値が「F1.8-2.5」と明るい光学4倍ズームレンズを搭載しています。

そして、EXILIMエンジンHS Ver.3を進化させた「EXILIMエンジンHS Ver.3 ADVANCE」を搭載。これによって描写性能に対するチューニングが施され、新機能の2軸ブラケティング撮影機能「プレミアムブラケティング」も実現しました。このプレミアムブラケティングは、1回のシャッター操作で、フォーカスと絞り、ホワイトバランスと明るさなど、2つのパラメータの設定値を3段階変化させ、合計9枚を連写する機能です

外観にも注目してみましょう。まず目を引くのが、エッジの効いたスタイリッシュなデザインです。本体のフロントとリアパネルには、高剛性なマグネシウム合金を採用。トップパネルに高光沢アルマイト処理が施され、ファンクションリングには緻密なローレット加工が施されています。先進的な撮影機能だけでなく、こういった高品位なボディの作りや仕上げも、EXILIM EX-10の魅力的な要素と言えるでしょう。

カシオ EXILIM EX-10のココが魅力!!

◆シャッター1回で9種類の描写が得られる「プレミアムブラケティング」搭載
◆1/1.7型センサー&開放F1.8-2.5大口径ズームレンズで上質な描写
◆高剛性で高品位な仕上げのスタイリッシュボディ

冬咲きのサクラを見かけたので、開花状態の良い枝に接近し、ズームの望遠端で開放絞りで撮影。大型センサーを採用する一眼レフやミラーレスほどではないが、結構上質なボケ描写を得る事ができた。
カシオ EXILIM EX-10(112mm相当で撮影) 絞り優先オート F2.5 1/100秒 WB:日陰 ISO200

色味の少ない冬の公園だが、抜けるような青空と、夕方特有の斜光線と影により、味わいのある“冬の風景”になっていた。画質に関しては、特に凄みのある写りではないが、画面の周辺部まで乱れが少なく、細部の描写も自然だな、と感じた。
カシオ EXILIM EX-10(28mm相当で撮影) 絞り優先オート F4 1/200秒 WB:オート ISO80

SPECS CASIO EXILIM EX-10

形式:コンパクトデジカメ 撮像センサー/有効画素数:1/1.7型CMOSセンサー/1210万画素 記録媒体:SD,SDHC,SDXC(UHS-I対応) ファインダー:- モニター:3.5型/約92万ドット ISO感度(拡張含む):80~12800 連続撮影速度:30コマ/秒 サイズ(幅×高×奥)/質量:約119.9×67.9×48.6mm/約384g(電池とカード含む) 発売年月:2013年11月 発売時の参考価格:8万円前後

まとめ

バラエティに富んでいた、2013年や2014年に発売されたカメラたち

2013年から2014年頃は、レンズ交換式カメラの主流だったデジタル一眼レフだけでなく、ミラーレスカメラの新製品も次々と発売されていました。世界初の35mm判フルサイズミラーレスカメラ「ソニー α7」が発売されたのも2013年です。今回紹介したパナソニック LUMIX GM5や、富士フイルム X-M1などは、小型軽量設計のミラーレスカメラですが、高品位なデザインや作りも特徴に挙げられます。こういった通好みのモデルにも注目したいものです。

また、この頃はレンズ一体型(いわゆるコンパクトデジカメ)の高級・高性能モデルも数多く発売されていました。APS-Cサイズの大型センサーを採用したスナップ向きカメラのニコン COOLPIX Aやリコー GRが発売されたのも2013年です。カシオからは、紹介したEXILIM EX-10に続いて、2014年には同様のボディに全域F2.8の高倍率ズームレンズを搭載したEXILIM EX-100も発売されています。

この頃に発売された製品を見返してみると、カテゴリーやタイプがバラエティに富んでいることに気づきます。ミラレースカメラ、高級コンパクト、デジタル一眼レフ。人によって探し物は違うと思いますが、中古市場で気になるカメラを見つけたら、実は2013年や2014年に発売された製品だった……。そういうことも多いかもしれませんね。

撮影・文/吉森信哉

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