2025年6月9日より宮城県仙台市内限定で発売している、既存の「グロー・ハイパー」用スティックは使えない全くの新機種『glo™ Hilo/グロー・ヒーロ』。なぜそこまでの進化を遂げる必要があったのでしょうか。一服してわかったのは、紙巻きタバコを思わせる強烈な吸い応えです。好評をうけて9月に全国発売となることがBATよりアナウンスされた同機種について、加熱式タバコ・ブームを草創期から見つめてきた筆者が魅力を分析してみました。
加熱式タバコの歴史を手短にまとめると……?
2016年にバラエティ番組「アメトーーク!」で始まった加熱式タバコ・ブームの火付け役は「アイコス」、その構造は専用タバコスティックの中心に内蔵されたブレードを差して加熱するものでした。ただ吸い応えは合ったものの、特有のニオイ(ポップコーン臭)などに違和感が多かったのも事実です。

ブーム初期の御三家(左から)「アイコス」「グロー」「プルーム・テック」
2017年にはBATが初代「グロー」を全国発売。細身のスティックを周辺から加熱する方式をとっていました。低温加熱式の「プルーム・テック」は存在したものの、加熱式タバコで高温加熱を採用したのは2020年の「プルーム・エス」から。これも周辺加熱式で、最新モデルの2025年7月1日発売の「プルーム・オーラ」についても変わりません。
アイコスは2021年に発売した「アイコスイルマ」以降は、ニオイの元となるタバコ葉のこぼれを一掃するスティック先端を閉じる形式となり、内部に埋め込んだ金属片を誘導加熱することで内外からタバコ葉に直接触れずに加熱する方式で、雑味の無いスムーズな喫味に変わりました。

デバイスのカラバリは、ルビー、オニキス、サファイア(公式オンラインショップ限定)、アンバー(今回使用/公式オンラインショップ限定)の4種類

同じくバッテリー内蔵の「「IQOS イルマ i ワン」と似たフォルムですが、少し背が高く、持ってみると少々フルート感が強いのが『グロー・ヒーロ』。しかし持つと自然に手のひらにフィットします
なぜこんな歴史を記しているかというと、今回紹介する『グロー・ヒーロ』(123.4×30.3×16mm/75g・税込3,980円・2025年6月9日宮城県仙台市内の主要コンビニと、宮城県在住者限定でglo™公式オンラインサイトで発売/9月に全国発売予定)が、初代アイコスのようにスティック内部のタバコ葉に、本体内蔵のピン型クオーツを差して直接加熱する方式を取っているからです。創生以来初めて、周辺加熱式から直接加熱式に変わった歴史的変化がここにはあるのです。
そうした従来と違う加熱方式を取っているため、使用できるのは従来製品と互換性の無いスティック「virto(ヴァルト)」(20本入・税込580円・発売はヒーロ同様)のみ(8種類展開)です。
『グロー・ヒーロ』の構造と特徴~えっ、たった5秒でもう吸える!?
グロー史上最高の約370℃の超高温加熱を行う「Turbostart™(ターボスタート)テクノロジー」
ヒーロの肝となるのが、「ターボスタート テクノロジー」です。グロー史上最高の約370℃の超高温加熱を実現。これは熱伝導率の高いピン型クオーツを内蔵、そのピンの部分をスティックに突き刺して使用することで、内部のタバコ葉に直接アクセスして強力な喫味を生み出すのです。

イメージ図
実際に内部をのぞいてみると、確かにピンがあります。最近の「グロー・ハイパー」用タバコスティック同様、ヒーロ専用タバコスティック「ヴァルト」も先端を閉じているのですが(スティックシール)、このピンは先端のフタを突き破って内部に到達します。

「グロー・ハイパー・プロ」でおなじみのカラフルな「EasyView(イージービュー)スクリーン」を搭載
加熱開始ボタンは上下に分かれており、下ボタンのスタンダードモードで5分10秒、上ボタンのブーストモードで4分10秒喫煙できます。バッテリーはUSB Type-C経由の高速充電により、40分で80%までの充電が可能。90 分でフル充電となり、20本分が吸えるとのこと。
度肝を抜く5秒起動:紙巻き並みの機動力!
タバコを取り出してライターでスパスパふかしながら火をつける。ついたらグッと吸って「うまい!」となる紙巻きタバコ。ピン型クオーツによる加熱方式は、熱伝導に優れていることで、スティックを差してボタンを長押しして起動すると、わずか5秒で吸い始められるのです(「ターボスタート・テクノロジー」)。
このタイム感はまさに、紙巻きタバコ感覚。すかさずスティックの隙間から白い蒸気も沸き立って、気分を高めます。こういうところでも人は紙巻き感を感じるものなのですね。
『グロー・ヒーロ』を使って、『ヴァルト』を吸ってみた!
まずスティックを差すのに苦労するのかと思ったら、サクッと装着できて拍子抜け。スティックのフタ部分を突き破っている感じはほぼありません。起動したら、ほんとに5秒起動。余裕をかます暇なく、すかさず吸える状態に。もはや感動に近いです。
【レギュラー】『ヴァルト・ダーク・タバコ』
最初はやはりレギュラーの『ヴァルト・ダーク・タバコ』から。香料などの影響を受けないため、タバコデバイス本来の実力がわかりやすいからです。ますは「スタンダードモード」で一服。ダークという名称からよくある燻製臭のするタイプかと甘く見ていたら、ガツンとした高級シガータイプのアロマとともにタバコ葉の旨味が襲ってきます。重い、ビリビリ来る、ニコチン特有の辛味もあるという三本柱で紙巻きフィールを感じます。
これはうまい。タバコ葉の味わいが好きな人、濃厚な洋モクタイプが好きな人なら、ハマるはず。しかも「グロー・ハイパー」の約4分30秒が、約5分10秒に延びただけでやけに長く楽しめる感覚(もちろんアイコスイルマiの6分にはかなわないですが、5秒スタートがその差を補っている印象)。
グローと言えば、きつめのタバコ味に付きものだったのが、いぶした酸味とポップコーン臭。それが今回は激減している。喫味が強烈になってニオイも低減というのは、ちょっとすごい!
次に「グロー・ハイパー」時代はわずか3分しか吸えなかった「ブーストモード」も約4分30秒まで喫煙時間が伸びています。グッと吸い込むと、強烈パンチ。一気にいがらっぽさが急上昇し、紙巻き感が炸裂。本当に火が付いていないのか疑ってしまうくらいのインパクトです。近年の加熱式タバコのスムーズさになれた喉だと、油断するとむせるくらい。
【レギュラー】「ヴァルト・バランスド・タバコ」
もう一つのレギュラーが「バランスド・タバコ」。スタンダードモードで吸って驚いたのが、ライト/マイルド系タバコのタール値高めの酸味と調和した味わいが、タバコ葉の旨味と共にガンとやってきて、こちらの方が紙巻きタバコ的な味わいが強いよう。吐き出す蒸気も心地よい酸っぱさが混じり、スムーズながらしっかりとうまいのが特徴。
もう一つ驚きがあって、それはブーストモードで吸ったとき。はじめにキンとした紙の燃えるような金属系の酸味と、ニコチンの辛みが調和して、紙巻きファンがもっとも納得しそうな味わいに。
【カプセル入りメンソール】「ヴァルト・アイスド・メンソール・クリック」
『ヴァルト』はレギュラー以外、すべてカプセル入りです。メンソールやフレーバーをフィルターなどに染みこませると、箱を開けた瞬間から清涼感が劣化しはじめるので、閉じ込めるのは正解だと思います。カプセルなら、潰したときがいつも開けたてということになりますからね。
『アイスド・メンソール・クリック』は、「マールボロ・ブラックメンソール」をルーツに持ち、人気のある「ブラメン系」。甘さ控えめで強冷感のメンソールタイプです。カプセルというと味変用に吸ってる途中で切り替えることができるものですが、BATによると現実には70%以上の人々が、最初からカプセルを潰して吸っているのだそう。
スタンダードモードで味わうと、いきなり喉奥への冷感ストレートパンチ。冷えます、喉が。その後に駆け足で追いかけてくるのがタバコ葉の旨味とメンソールの苦味。これがなんともうまい。
ちなみに『ヴァルト』のカプセルタイプはすべて、カプセルを潰さずにひと吸い味わうと、キンと来る紙巻きフィールを味わえるのがお気に入り。ブーストモードで味わうと、ニコチンのシャープな切れ味と冷涼感が一気にアップ。喉奥がヒリヒリすればするほど良いという人におすすめです。
【カプセル入りメンソール】「ヴァルト・メンソール・クリック」
「自分はメンソールが吸いたいわけではなく、タバコが吸いたいんだ!」と思う人には、しっかりとしたタバコ葉の旨味と苦味、そこに甘すぎないメンソールが調和する『ヴァルト・メンソール・クリック』がおすすめ。
スタンダードモードでは、野太いメンソール感と、辛すぎない清涼感がニコチンの辛味と共にまっすぐに喉奥に向かってくるタイプです。
ブーストモードでもケミカルさの無い辛口ペパーミント感が広がった上で、ビリビリとしたタバコ葉の苦味も登場。メンソール派脇役派の人に。
【カプセル入りメンソール】「ヴァルト・ミント・クリック」
これも清涼感MAXというよりも、本来のメンソールタバコらしい味わいの『ヴァルト・ミント・クリック』。スタンダードモードでは、フリスク的なフィーリングもあるけれど、ペパーミント一辺倒では無く、スペアミントの甘さと柔らかさが目立って爽やかにキメられます。
ブーストモードで吸うと、一気にニコチンの辛味が前面に出てきて主役が交代。タバコ7:メンソール3くらいのバランスとなって、これはこれでタバコとしてうまい。
【カプセル入りフレーバーメンソール】「ヴァルト・アイスド・ベリー・クリック」
ベースになっているのは「ヴァルト・アイスド・メンソール・クリック」。そこに爽やかなベリー風味を追加して、いわゆるブラメン系の硬派な冷感フレーバーメンソールでありながらフルーティーなのが『アイスド・ベリー・クリック』です。清涼感が喉にはしっかりビリビリ届いているのだけれど、心憎いことにベリー風味がうまくフォローして、いくぶんまろやかに味わえるように仕組まれています。
ブーストモードで吸うと、紙巻きテイストがアップ。それでもベリー風味がスマートに雑味をマスキングしているのでおいしい。ただちょっとケミカルさを感じる部分もありました。
【カプセル入りフレーバーメンソール】『ヴァルト・ベリー・クリック』
フレーバー系メンソールで王道と言えば、やっぱりベリーメンソール。なんと2つもベリーがあるのに驚きます。『ヴァルト・ベリー・クリック』は同じベリーでも、ジューシーさが強いタイプ。甘酸っぱいベリーならではのフレーバーに、ほどよく追加されるタバコ味がスパイシーに感じます。
ブーストモードにすると、ちょっとジューシーさの中に感じられるケミカル感がほどよく飛んで、おいしく味わえました。
【カプセル入りフレーバーメンソール】「ヴァルト・メロン・クリック」
最後に来るのがメロンフレーバー。これまた思い切ったことを……と思ったのは、いままでメロンフレーバーというものはたいていケミカルで、素直においしかった経験が少ないから。しかしスタンダードモードで実際に吸ってみると、実に爽やかなメンソールに、国産のおいしい赤肉メロンの果皮の香りも含んだ自然なメロンフレーバーでした。これは素直においしいと言えます。
ブーストモードでもケミカルさを感じないし、ありがちなバブルガムテイストに寄ることもなく、自然なままのメロンとタバコ味の組み合わせ。こんなに相性がいいとは、驚きました。
まとめ:たった5秒で吸えるの! ニコ・タール感が強烈なのにニオイ低減とはどういうこと!?

左が喫煙前、右が喫煙後でしっかり穴があいてます
デバイスがちょっと高めかなと思ったけれど、実際に使ってみると『グロー・ヒーロ』はそれだけの価値があると思いました。初期加熱式タバコを思わせるガツンとした吸い応えは、やはりピン型クオーツによるタバコ葉への直接加熱の影響が大きいはず。実際直接加熱の加熱式タバコ自体は吸う機会が無くなっていたけれど、改めてその喫味の強さ(良さ)を再認識しました。正直懐かしい感じです。

上が使用前、下が使用後。見事に内部の一部だけが茶色く変色している程度。ここまで密閉されているとやはりニオイが漏れにくいよう
それでいて「グロー」シリーズなのに、ニオイが気になりにくいのも大きなポイント。2024年末からブレンドを変えて、次々とスティックの味わいを高めてきた成果がこの『グロー・ヒーロ』×『ヴァルト』で頂点を極めた感じです。何というか……、戻れません。
最初は宮城県仙台市内限定だったので、正直なところおいしかったら次のスティックが買えなくて困るかもと思っていたのですが、すっかり気に入ってしまいました。心配していた地域も、9月に全国発売になるということでひと安心。
ただ、「グロー」シリーズと言えば、ランニングコストの安さも魅力だったので、正直1箱580円という最高値領域への到達は、お財布や電子マネーの残高に厳しい……。ここは1つ、もう少し低価格ラインのスティックシリーズも出してほしいと切に願うところです。
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