【レコードプレーヤーのセッティングと操作】林正儀がおすすめする「アナログ」の楽しみ方

家電・AV

レコードは見てよし、聴いてよし、触れてよしの三拍子がそろう。レコード盤や針先のクリーニング、アームの調整など一見煩わしそうだが、そんな儀式こそカッコいいではないか。若者が磁石のようにアナログにひきつけられるのも当然かもしれない。不便で手間のかかる作業が、新鮮な魅力となっている。ジャケットを見ながらレコードを袋から取り出し、いつもの愛聴盤に針を落とそう。

本稿は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

レコードはとても楽しい!これが私のアナログライフだ!

評論家・林正儀氏が語る
『皆さんにおすすめしたいレコードのある日常』

レコードは見てよし、聴いてよし、触れてよしの三拍子

“懐かしさ”と”新しさ”で人気が再燃しているのが、アナログレコードだ。1960~1980年代にアナログ全盛期を謳歌した世代と、現在の若者世代の両方から支持され、国内、海外とも人気が高まっている。

昨今、定額聴き放題のサブスクやネットワークオーディオが主流になっている中で、こうしたレコード需要の高まりはアナログ愛好家の筆者としても大歓迎。

コロナ禍で在宅時間が増え、レコードを聴き始めたという30代の人に話を聞くと、アナログらしい音の温もりや柔らかさを感じるという。また、ネット配信と違って、レコードには形があるので大事にしたい、かわいがりたいという気持ちになるそうだ。

私はシニアユーザーだが、改めてレコードのある日常っていいなと思う。

レコードは見てよし、聴いてよし、触れてよしの三拍子がそろう。レコード盤のクリーニングやカートリッジの針先クリーニング、アームの調整など一見煩わしそうだが、そんな儀式こそカッコいいではないか。若者が磁石のようにアナログにひきつけられるのも当然かもしれない。不便で手間のかかる作業が、新鮮な魅力となっている。

組み合わせるオーディオシステムも幅が広く、真空管アンプをペアにするのもアナログ感が増して楽しいし、外付けのフォノイコライザーなどをじっくりと選ぶのもありだ。

ガラード401を核にしたアナログシステム

筆者の主力アナログシステムだ。ガラード401とダイナベクターのトーンアーム。フォノイコは、アキュフェーズのC-47が稼働中だ。

愛情を注ぐほど音がよくなるのもレコードの魅力

ジャケットを見ながらレコードを袋から取り出し、いつもの愛聴盤に針を落とそう。今日はどんな音がするのか。ワクワクしながらスピーカーに耳を傾ける。これは、何ものにも代えがたい至福の時間である。

たまには最新録音の重量盤レコードを買ってみるのも楽しいだろう。今やレコードの最新情報は、ネットでもバッチリ入手できる。

レコードは、新譜でもメンテナンスによって微妙に音が変わる。愛情を注ぐほど、どんどん音がよくなるのもレコードの魅力なのだ。

確かに、CDは、トレーに乗せてボタンを押せばすぐに再生できて便利だし、音はデジタルでノイズもなく、しゃきっとしてクリア。でも、アナログの豊かさや深み、味わいは、実に音楽的でヒューマンだと思う。

ぜひ、あなたの好きな音楽を、レコードで聴いてみてほしい。

幅広いジャンルをコレクションしている

レコードコレクションの一部で、ボーカルやジャズ、本格的なクラシックまでジャンルはけっこう幅広い。別室にも、全集物が保管されているのだ。

レコードプレーヤーのセッティングと操作の基本

ここからは、レコードプレーヤーの組み立て、セッティング、調整について解説しよう。特にポイントとなるのが、トーンアームの調整だ。再生の作法などを含め、まとめて覚えておいてほしい。

パーツ類がとても多いので注意して扱いたい

まず、プレーヤー各部の構成を確認すると、回転を受け持つターンテーブルと、レコード針の付いたカートリッジを含むパイプ状のトーンアーム、そして、ボディ本体に大別できる。それぞれに主要パーツがあり、注意して扱うことが大切だ。

ターンテーブルは、レコードを乗せるマットや、駆動用のゴムベルトもチェックしよう。ゴムベルトは、モーターの回転をターンテーブルに伝える役割があるので確実に装着したい。

バランスウエイトやカートリッジなど、パーツが最も多いのがトーンアームだ。調整の方法は後述する。

本体に関しては、置き方が最も重要で、まず、プレーヤーを平らな場所に設置すること。傾きやガタがあってはいけない。

そこで活用したいのが水準器だ。これは、気泡の位置によって水平かどうかを確認できるアクセサリーで、ターンテーブルに乗せてチェックすればいい。付属していない場合は、別途そろえておきたい。

レコードプレーヤーの背面には、電源ケーブルや、アンプと接続するためのフォノ端子などがある。

フォノ端子は、プレーヤーの内部でトーンアームにつながっていて、その先は、音を拾うカートリッジだ。つまり、カートリッジで拾った電気信号の出口がフォノ端子ということ。RCA端子とアース端子がセットになっている。

セッティングの極意と注意ポイント

プレーヤーは平らな場所に置く

セッティングの基本は、平らな場所にレコードプレーヤーを置くことだ。レコード再生は盤面が水平であることが必須なので、必ず水準器を使って水平出しをしよう。また、プレーヤーのフット(脚部)で細かな調整を行える機種もある。

パーツの扱いは一つ一つ丁寧に

レコードプレーヤーはパーツが多い。ターンテーブルやベルト、カートリッジ/ヘッドシェルなど、一つ一つの役割や組み立て方をチェックしながら丁寧に進めよう。特に、音を拾うカートリッジはデリケートなので要注意だ。

カートリッジ/ヘッドシェル

ベルト

ターンテーブル

マット

トーンアームの調整がとても大切

レコードの音溝を正しくトレースするには、カートリッジを支えるトーンアームの調整が重要なポイントとなる。高さを調節したり、ウエイトでバランスを取ったり、カートリッジに合わせて針圧を調整したりなど、細かな作業が求められる。

フォノアース端子の接続は必須

プレーヤーの背面には、アナログ信号をアンプに出力するためのRCA端子がある。フォノイコのないプレーヤーでは、アンプの「PHONO」端子につなごう。アース端子も装備されており、アースの接続も必須だ。これを忘れると、ブーンというハム音が出る。

プレーヤー側の端子

アンプ側の端子

トーンアームの調整は説明書どおりにやればOK

それでは、トーンアームの調整について見ていこう。最初からほぼ組み上がっているプレーヤーもあるが、基本的にはアームの組み立てや調整は自分でやることになる。でも難しく考えず、説明書の手順どおりに行えば問題ない。

最初に、カートリッジを取り付ける。トーンアームが動かないようにアームレストに固定してから、先端にカートリッジを差し込み、シェルコネクターを回して固定しよう。

次に、いちばんのポイントとなる針圧調整だ。針圧とは、レコード針がレコードを下方に押さえる重さのこと。軽すぎず重すぎず、使用しているカートリッジで推奨されている正しい針圧に設定することが大切だ。

その手順としては、まず、バランスウエイトをトーンアームの後端に取り付けて(❶)、ウエイトを回しながら少しずつ動かしてアームの水平バランスを取る(❷)。

ウエイト側が重いとカートリッジ側が上がり、軽いとカートリッジ側が下がるので、カートリッジ側とウエイト側の重さが釣り合うようにしよう。ちょうどアームが水平に静止した状態がゼロバランスだ。ヤジロベエやシーソーをイメージするとわかりやすい。

バランスが取れたら、ウエイトの針圧調整リングの目盛りをゼロに合わせ(❸)、その状態からウエイトごと回転させてカートリッジの適正針圧(2グラムなど)に合わせればいい(❹)。

そして、設定した針圧分、アンチスケートをかければ調整終了だ(❺)。アンチスケートとは、レコードをかけたときにトーンアームが内側に引っ張られる力(インサイドフォース)をキャンセルする機構だが、超入門機の場合は省かれていることも多い。

アームの調整手順

バランスウエイトを取り付ける

※写真のプレーヤーは、ティアック・TN-400BT。

アームの後端(カートリッジと反対側)ウエイトを取り付ける。水平出しや針圧調整を行おう。

トーンアームの水平バランスを取る

ウエイトを回して位置を変え、アームの水平を取る。ヤジロベエの原理でバランスを取ろう。

リングの目盛りをゼロに合わせる

パランスが取れて水平になったら、針圧調整リングの目盛りをゼロに合わせる。

ウエイトを回して針圧を合わせる

続いてウエイト全体を回して、適正針圧にセットする。説明書にある数値に合わせればいい。

アンチスケートの値を合わせる

針の横滑りを防止するのがアンチスケートだ。これも、説明書にある数値に合わせよう。

操作自体は難しくないが作法は知っておきたい

操作手順を見ていこう。レコード再生は、レコード盤を取り出してプレーヤーにセットするところから始まり、回転数合わせ針の下ろし方などそれなりの手順がある。難しくはないが、その作法は知っておきたい。

まず、ターンテーブルにレコードを乗せよう。A面かB面か、かけたい面を確認したら、センターの穴がシャフト(軸)にすっと入るようにセットする。

電源ボタンをオンにしたら(❶)、レコードに合わせてプレーヤーの回転数をセットしよう(❷)。回転数でよくあるのは、「33 1/3」「45」「78」の三つ。33 1/3回転と45回転の2スピード対応のレコードプレーヤーが多いが、78回転を加えた3スピード対応プレーヤーも目立つようになった。

LPレコードの場合、たいていは33 1/3回転だが、最近は、再生スピードを速くした45回転LPや78回転LPもあるので、再生前に(購入前も)必ず確認すること。また、ドーナツ盤とよばれるEPレコードは45回転だ。回転数が合っていないと、ボーカルの声が不自然に低くなったり高くなったりするので気をつけよう。

それでは、最後にトーンアームの扱い方(再生方法)だ。回転しているレコードに針を落とすのはコツがいるが、慣れれば楽しい儀式。怖がらずにやってみることだ。その場合、アンプのボリュームは絞っておき、音楽が始まったところでボリュームを上げよう。

筆者は、無意識に左右の手が動いて100%マニュアル操作(右手でアーム、左手でボリューム)をしているが、一般的にはアームリフターを使う方法がおすすめだ。

アームリフターを上げた状態でアームをスライドさせ、レコード盤のスタート位置で止める(❸)。そして、アームリフターを下げると静かにアームが下がり(❹)、盤の音溝に針が落ちて再生スタートとなる。ぜひマスターしてほしい。

再生の手順

電源をオンにする

※写真のプレーヤーは、ティアック・TN-400BT。

電源をオンにすると、ターンテーブルが回転をスタートし、スタンバイOKの状態となる。電源をオフにすると、回転が停止する。

レコードに合わせて回転数をセット

次に、回転数の切り替えボタンで、聴くレコードに合わせて、33 1/3回転、45回転を選ぼう。78回転に対応した製品もある。

トーンアームを盤の上まで移動する

アームリフターを上げた状態で、トーンアームをスライドさせて、レコード盤のスタート位置で止めておく。

リフターを下げて針を盤に落とす

アームリフターを下げると、静かにアームが下がり、レコード盤の音溝に針が落ちて再生が開始される。

レコードプレーヤーの基本用語を覚えよう!

【ベルトドライブ】
モーターの回転をゴムベルトを介してターンテーブルに伝える方式だ。立ち上がりはゆっくりだが、振動を吸収して回転が滑らか。レコードプレーヤーの大半は、この方式である。

【ダイレクトドライブ】
モーター軸にターンテーブルを直結した駆動方式で、「DD方式」という呼び方もする。モーターが低回転数で回り、強い駆動とクオーツ制御による回転数の正確さが特徴だ。

【ターンテーブル】
レコード盤を乗せて、一定の速度(回転数)で回転させる。アームなどを含むレコードプレーヤー全体のことを「ターンテーブル」と呼ぶこともある。

【回転数】
レコードプレーヤーには、レコードに合わせて回転数を切り替える機能がある。LP盤は33 1/3回転が主で(45回転や78回転もある)、EP盤は45回転で、昔のSPレコードは78回転だ。

【トーンアーム】
カートリッジを支え、レコードを再生するための機構を持ったアーム。ショートアームとロングアームがあり、形によってS字やJ字、まっすぐなストレートアームなどがある。

【バランスウエイト】
トーンアームに取り付けるパーツで、トーンアームの水平バランス(釣り合い)を取るためにアームの後部に装着するおもりだ。カウンターウエイトともいう。

【ヘッドシェル/カートリッジ】
音溝の振動を拾うのがカートリッジで、ヘッドシェルに取り付けて使う。カートリッジ交換ができるのはユニバーサル型のS字かJ字型のアームだ。ストレート型の場合は、アームとシェルが一体なので簡単に交換できない。

【MM型(VM型)/MC型】
針の振動をマグネットの動きに変えて発電するのがMM型で、コイルの動きに変えるのがMC型。前者は出力電圧が大きく、針交換も簡単で入門者に最適。後者は高音質だが、低出力のためMCトランスが必要。上級者向けだ。

【MCトランス】
昇圧トランス、ステップアップトランスともいう。1次と2次の巻線を持つトランス(変圧器)で、低出力なMCカートリッジにつないで約10倍にアップする機能がある。あとはアンプのMM入力端子につなげばOKだ。

【フォノイコライザー】
カートリッジの小さな出力電圧を増幅し、さらにRIAAという補正カーブの回路を通してフラットな特性を得るためのもの。単体のモデルもあるが、最近は、レコードプレーヤーやアンプに内蔵されるケースも増えている。

【フォノ端子】
レコードプレーヤーを接続する際につなぐアンプの入力端子がフォノ端子だ。内部にフォノイコライザー回路を持ち、微弱なレコード信号を受け入れる仕組み。MM型専用が多く、MC型の場合は外付けのMCトランスが必要。

【ダストカバー】
ホコリは、レコード盤の大敵である。レコードプレーヤーは、ホコリよけのダストカバー(アクリル製)付きが多いが、レコードをかける際はダストカバーを外す人も多い。

■解説/林正儀(AV評論家)

※情報は記事作成時のものです。
※この記事は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)に掲載されています。

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