〈探訪〉復活した江戸っ子の味「江戸味噌」の魅力に迫る!どんな味?どんな香り?

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日本のソウルフード、"味噌汁"。味噌には、長野の信州味噌や愛知の八丁味噌、九州の麦味噌など、地域によって味や原料、色などが異なるさまざまな種類が存在します。実は江戸時代にさかのぼると、江戸の町にも「江戸味噌」なるローカル味噌がありました。一時は完全に廃れてしまったというその味噌は、どんな味、香りの味噌なのか? その謎に迫るべく、江戸味噌を現代に復活させ、醸造・販売する専門店、「東京江戸味噌広尾本店」を訪ねました。

そもそも江戸味噌とは?

江戸の町で庶民に愛されていた味噌

日本の食卓に欠かせないソウルフード、「味噌汁」。その歴史は古く、鎌倉時代にはすでに誕生していたと言われています。江戸時代に入ると、庶民も毎日味噌汁を飲むようになりました。当時江戸の町で多くの人に食されていた味噌が、今回紹介する「江戸味噌」です。

江戸味噌とは、江戸生まれの味噌で、白味噌、仙台味噌、田舎味噌(麦味噌)、八丁味噌とともに日本を代表する「5大味噌」として知られていました。

そもそも、江戸味噌って、どんな味なの?スーパーで売られている味噌とは何が違うの?そんな素朴な疑問に答えてくれたのは、江戸味噌の味を現代に再現している「東京江戸味噌広尾本店」の社長・河村浩之さん(以下、河村社長)です。

江戸味噌を復活させた河村社長。

クセのないやさしい甘さが特徴

「江戸味噌は、江戸時代に江戸っ子が常食していた、濃い赤褐色の味噌のことです。香りや味にくせがなく、やさしい甘さが楽しめるのが魅力です」(河村社長)

河村社長によると、江戸味噌の最大の特徴は、「発酵期間が短い」ということ。一般的な味噌は半年~1年ほどかけて発酵・熟成させるのに対し、江戸味噌はわずか2週間で完成するそうです。

なぜそんなに短期間で作るのでしょうか?

「江戸は人口が多く住宅が狭かったことから、味噌を自家醸造するスペースがありませんでした。そこで、店で味噌を買う、という習慣が生まれ、江戸の町中に小規模の味噌醸造元ができたのです。しかし味噌醸造元にしても、場所の確保が難しいのは同じ。そこで、少量の味噌を短期間でくり返し作る必要性がありました。そこで生まれたのが、短期間で発酵を完了させて作る、江戸味噌だったのです」(河村社長)。

フレッシュな状態で使われていた!

一般的に短期間で発酵するというと、熟成が足りず、もの足りない味になるのでは?という疑問も浮かびます。しかし「それは違います」と河村社長は言います。

「江戸味噌は、短期間で完成するように、きちんと設計されているのです。具体的には、塩分の濃度を低くする※1、米麹の量を増やす※2、蒸した大豆を使い、高温で発酵させる※3、といった工夫によって、短期間でもしっかり発酵が完了することが可能になっています」(河村社長)。

また、麴をたっぷり使い、かつ大豆を蒸して作ることで、口にしたとき麹と大豆由来の味がしっかり感じられるといいます。

※1.通常味噌の塩分濃度は12~14%のところ、江戸味噌の塩分濃度は9~10%。
※2.一般的な味噌の1.5~2倍の量の米麹を使う
※3.通常約30℃ほどで発酵・熟成させるところ、江戸味噌は約50℃。

ただし江戸味噌は、塩分濃度が低いことから、常温での長期保存ができません。そのため、冷蔵庫のない江戸時代には、人々は味噌を少量ずつ頻繁に購入して使っていたようです。

「今、我々が使う味噌は長期保存が利くもの、というイメージですが、江戸味噌はつねにフレッシュな状態で使われていたのです。このフレッシュさというのも、江戸味噌ならではの魅力ですね」(河村社長)。

唯一味を再現するお店「東京江戸味噌広尾本店」

太平洋戦争中、製造を禁止された

江戸時代には広く庶民に浸透していたこの江戸味噌ですが、残念なことに明治時代に入ると衰退の一途をたどります。保存期間がより長く、安価に作れる仙台味噌などにシェアを奪われ、醸造元が姿を消していったのです。

さらに、太平洋戦争中には、米麴の量が多いことから贅沢品とされて製造を禁止され、以後完全に姿を消してしまったのだそう。

河村社長は、2014年ごろ戦前の文献からその存在を知り、復刻を試みました。江戸味噌の洗練された味にほれ込んだ河村社長は、東京・広尾の商店街に店舗(東京江戸味噌広尾本店)を構え、その味を広めています。

東京メトロ広尾駅から徒歩6分ほどのところに店舗がある。

4つの味噌をテイスティング!

東京江戸味噌広尾本店では、この江戸味噌をはじめ、江戸時代に江戸で食されていた4つの味噌を、試飲・試食しながら100g単位で購入ができます。

4つの味噌とは、江戸味噌江戸甘味噌仙台味噌田舎味噌

江戸甘味噌は、米麹の量が江戸味噌よりもさらに多く、高級で甘さの強い味噌。原料の割合は西京味噌と同じですが、蒸し大豆を使うため、甘みに加え旨みもしっかりしていて、コクがあります。仙台味噌は、仙台藩の藩邸で作られていた辛口味噌、田舎味噌は、関東周辺で作られ江戸に運ばれていた、麦を原料にした独特の香りの味噌です。

写真左から(透明のグラス)、江戸味噌、江戸甘味噌、仙台味噌、田舎味噌。比べてみると色や香り、味わいの違いがはっきりと分かった。

店に入ると、店員さんがカウンター越しに江戸味噌の由来や、ほかの味噌との味の違いを詳しく教えてくれます。

いずれも鰹出汁で溶いたものを、グラスでテイスティングできます。比べてみると、江戸味噌の特徴がよくわかります。口にした瞬間、味噌本来の味わいをしっかり感じるのですが、さっぱりしてくどさがなく、あと味がさわやか。やさしい甘みも印象的です。塩味は強くないので、全体的にまろやかな印象です!

濃い赤褐色の江戸味噌、くどさのないさっぱりした甘さが特徴。100g単位から購入が可能。300gの瓶(写真左)のほか、500gのパッケージの物も用意されている。

料理にも活用してほしい!

河村社長は江戸味噌について、「味噌汁だけでなく、さまざまな料理につかってほしい」と語ります。

「江戸味噌は短期間で熟成することで、アルコール発酵が起こりません。いわゆるツンとした味噌臭がなく、あと味がスッキリしているんです。味噌が素材の味や香りを邪魔せず、逆に素材そのものの味を引き立ててくれます。和食にも洋食にも使いやすいんです」(河村社長)

河村社長のお勧めは、炒め物や味噌鍋などに使うこと。もちろん、味噌汁にしても、出汁の味がしっかり感じられて、深みのある一杯になるそうです。

まとめ

店頭では100gから購入可能

おいしく、料理にも便利なこの江戸味噌。江戸時代には保存が利かなかったということですが、冷蔵庫のある現代なら、3ヵ月の冷蔵保存が可能です。

店頭では、味噌は100g単位で購入可能です。価格は江戸味噌の場合100g税込432円。江戸甘味噌、仙台味噌、田舎味噌も同様に量り売りされているので、複数購入して、味を比べてみるのもオススメです。遠方の方なら、オンラインショップでいずれの味噌も300gから購入できます(江戸味噌の場合300g税込1296円)。

味噌をもっと料理に活用したい、毎日の食卓に発酵食品をもっと気軽に取り入れたい、と思っている方なら、きっとおいしさや便利さに満足が得られるはずです。

なにより、江戸時代に作られていた物と同じ味噌を現代の食卓で食せるという点に、ロマンを感じます。時代劇や、時代小説のファンなら、「あのお話の主人公も、この味を楽しんでいたのかも」なんて思いを馳せながらいただくのも一興かもしれませんね!

ぜひ一度、店頭またはオンラインショップで購入してみてください。

【SHOP DATA】

東京江戸味噌 広尾本店
〒150-0012 東京都渋谷区広尾5-1-30(東京メトロ広尾駅から徒歩6分)
TEL:03-3447-4130
営業時間:11:00~17:00
休業日:土日祝日

オンラインショップ:https://www.edomiso.jp/products/list.php

◆執筆/高尾麻里(Edittor)
小売業専門誌出版社を経て、健康雑誌の編集に携る。趣味は何もしないでぼーっとするタイプの旅と乱読・積ん読。

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